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要約

1. 背景
 高度情報化社会においては、図書館の使命である情報の体系化・整理という役割は、ますます重要性を帯びてくるものと考えられる。特に、地域における情報基盤の整備を受けて、地域社会における様々な資料や情報を有効活用できるように供することによって、地域の課題解決やそのための人々の取組への展開を支援すること等、図書館には重要な役割を果たすことが期待されている。

 
行財政改革
小さな政府を指向
新しい「公共」の担い手として、自立した個人・地域に期待
プラス
個人を取り巻く環境の変化
競争社会、雇用慣行の変化
知るものと知らざるものの間の格差拡大
今、公共図書館には、新しい役割が期待されている。
地域における期待
自立を目指す個人の努力を支えるための環境整備
地域の自立を促す環境整備
プラス
電子自治体の推進
地域公共ネットワークの整備・活用
電子自治体のメニュー充実に期待
新たな公共図書館に期待される役割:課題解決型の公共図書館

2. 様々なネットワークを有機的に結合した重層的なネットワークの形成
 上記の背景にあるような図書館の機能を地域において十分に発揮し、地域における期待に応えうる充実した情報提供を実現していくためには、公共図書館がハブとなって、地域内の資料、情報・知識、人、組織、及び資料の図書館相互貸借等による多種多様な情報資産を有機的に結合した「重層的なネットワーク」を形成していく必要がある。(下図参照)
 その上で、公共図書館の特長注釈5である、1豊富な情報資産(古文書からデータベースまで、絵本から専門書まで)、2司書によるレファレンスや情報検索機能、を核としながら、重層的なネットワークを活用することにより、課題解決型の新しいサービスの提供が行われることとなる。
注釈5  本報告書では、公共図書館が、他の社会教育施設や館種の異なる図書館と比べた場合の優れた“特徴”を中心に記述する場合、“特長”という表現を用いている。
  重層的なネットワークの図
3. 新しいサービスとしての課題解決型公共図書館における情報提供イメージ
 公共図書館において課題解決型のサービスを実現していくためには、司書のサービスによって、それぞれの利用者が有する課題に応じ、先述の重層的なネットワークのなかから横断的に情報が収集(横串の情報選定)され、利用者に十分かつ効果的に提供されることを可能とするための環境整備を図ることが必要である。(下図参照)
  課題解決型公共図書館における情報提供イメージ図
4. 想定される地域課題の抽出
 利用者が有する様々な課題のうち、主要なものとして、現在、公共図書館が行っている国内及び海外の先進事例に加え、公共図書館側の期待効果としての「図書館業務からの視点」、「ネットワーク化からの視点」及び、利用者側の期待効果としての「課題解決からの視点」等を踏まえ、目指すべき公共図書館の取組として優先すべき課題候補を検討した。

<地域課題の解決支援>
1 ビジネス支援
空洞化する駅前商店街の活性化や、特産物のブランド化による地域振興のためのビジネス支援策への需要が高まっている。これまでの公共図書館の取組はビジネス関連の蔵書を集めたビジネス支援コーナーを設置する等の取組が多かったが、ICTを活用し、産業振興担当部署との連携や地域の情報資産の動員を図ることによって、より高度なサービスの提供が可能となる。
2 行政情報提供
行財政改革の流れから公共の担い手の見直しが図られるなかで、地方の行政や議会の政策立案支援と住民の政策立案過程への参加、及び、住民の生活課題にかかる行政情報の総合的提供への需要が高まっている。そのためには、行政情報の総合的収集、電子化、及び、住民の生活課題に対応した体系化が必要となり、その役割を担うものとして公共図書館への期待が高まっている。
<個人の自立化支援>
3 医療関連情報提供
医療サービスが高度化し、多様な選択肢が可能となるなかで、納得して治療を受けるための情報への需要が高まっている。公共図書館では、医療専門書の情報に加え、医療専門データベース、医療機関のウェブ上に公開された資料等、最新の情報を組み合わせて提供し、病気に対する基礎的理解を助けるとともに、健康、予防医学、死生観等、関連する幅広い情報の提供を行うことができる。
4 法務関連情報提供
隣人訴訟、環境問題、カード犯罪、リストラ、相続、損害賠償、著作権侵害等、日常生活においても法律の知識が必要となる悩み・疑問・具体的手続に関する情報提供への需要が高まっている。手軽で経済的負担のない情報源として地域の公共図書館の果たす役割は大きい。
<地域の教育力向上支援>
5 学校教育支援(子育て支援含む)
総合学習等の時間において、自分の住む地域に関する調査を行う児童・生徒に対して適切な資料・情報を提供することや、教員に対して教材作成支援のための資料・情報を提供するための支援体制作りを、公共図書館と学校との連携により構築することが求められている。また、子育て支援に関しては、必要な資料・情報の提供のほか、行政や外部のボランティア団体との連携による取組が必要となる。
6 地域情報提供・地域文化発信
失われる可能性のある地域固有の風習、祭祀、方言等に関する情報を、博物館や郷土史料館等との連携により、公共図書館が中心となってデジタルアーカイブ化し、体系的に整理保存する。また、地域外の住民に当該地域の理解を促進することや学術研究等のため、インターネット等を使った情報発信も積極的に行う。

5. 地域において必要な情報基盤整備のための取組
 上記3.における情報提供イメージを実現していくためには、これらの課題内容に共通の情報基盤の構築が必要となると考え、その主なシステム化要件を、以下のとおり挙げる。
1 公共図書館及び他施設・他機関保有の資料を課題別に体系化する取組を進め、その整理に従いメタデータを付与することによって、資料目録を総合的にデータベース化し、高度な情報検索を支援するための仕組を構築
2 司書のレファレンスに関する経験・ノウハウを集めたレファレンス事例をデータベース化し共有するための環境整備(課題別レファレンス機能等)を通して、司書の課題解決能力の向上と地域課題解決へのノウハウの蓄積に資する仕組を構築
3 将来にわたり公共図書館及び他施設・他機関の共有・活用に供するための、地域資料(郷土資料)の電子化と、地域のウェブ資料を含む電子資料のアーカイブ化の取組を推進
4 利用者の公共図書館利用環境の向上や、ウェブ上からの公共図書館サービスの利用等へのアクセスを容易にするため、公共図書館における情報基盤の整備を推進

6. 実証実験
 公共図書館の活性化への取組は、地域の自主性により進められるべき性格のものである。しかしながら、本研究会で示す課題解決型の公共図書館を全国で実現していくにあたっては、国の率先により、全国の意欲的な司書の斬新なアイディアや優れたノウハウを集約することによって全国的な参考事例とし、各地で重複的な取組が行われることを避けながら有効かつ効率的に地域の取組が展開されることが必要である。そのため、国がモデル的な実証実験によってサービスの有効性を確認することによって課題解決型図書館の、普及のための展開を支援する必要があると考えられる。

  モデル的な実証実験の図
7. 今後の展望
 公共図書館の設置者である地方公共団体を取り巻く環境の一層の変化やICTの更なる進展に対応しながら、課題解決型の図書館づくりを進めていくために今後必要と考えられる課題を列挙する。
1 都道府県や市町村で整備が進められている地域公共ネットワークの高速な通信環境において、グループウェアを活用することにより可能となる分野横断的な公共アプリケーションの開発
2 今後進展していくユビキタス・ネットワーク社会において、例えば地上デジタルテレビ放送を通した情報提供に公共図書館のデータベースの情報が利用される等、日常生活に溶け込んだ新たなネットワーク情報サービスの提供における公共図書館の役割
3 ネットワークを介した集中管理が可能となるなかで、各種データベースを始め、電子書籍や電子ジャーナル等、電子化された情報源の利用契約、提供方針、安全管理等に関し、実際の利用に即した公共図書館のサービス・ガイドラインの検討
4 公共図書館におけるデジタル化、ネットワーク化の進展に伴い、新たに司書に求められる高度な情報組織化や情報検索を実現するための、情報通信技術の活用能力や知的財産権に関わるスキルや知識の在り方

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