ここからサイトの主なメニューです

これからの図書館サービスの在り方

2  これからの図書館の在り方

 
2  これからの図書館サービスの在り方
 
(1) レファレンスサービス
 
(1-1) レファレンスサービスの意義
 
 レファレンスサービスが行われていないと,実際に資料が所蔵されていても,利用者が探し出せず,あるいは短時間で回答を得られないため,効率的な利用ができず,資料が活用されない。
 利用者は,司書と相談することによって,問題解決の鍵を得るとともに,必要な情報や資料が提供され,課題を解決できる。
 評価の高い図書館ほど,レファレンスデスクと担当職員の配置を進めるなど,レファレンスサービスに力を入れている。

(1-2) これまでのレファレンスサービスの問題点
 
 これまでの図書館は資料提供を重視してきたが,レファレンスサービスが不十分であったため,資料の提供が十分行われなかったのではないか。
 レファレンスデスクが奥まった場所や2階の参考図書室にあったため,レファレンスサービスの存在を知る利用者が少なく,利用が少なかった。
 レファレンスサービスが不十分な理由として,利用者に知られていないことのほか,図書館サービスの成果が貸出冊数で評価されてきたこと,参考図書や雑誌が少なく図書中心の蔵書構成であること,貸出業務とレファレンス業務を分けることに対する職員の心理的抵抗があったことが挙げられる。
 利用者の求める情報を的確に提供するには,レファレンスサービスを通じた雑誌記事の検索と提供が必要である。特に調査研究には雑誌記事の提供が必要である。
 雑誌記事の探索と提供にはレファレンスサービスが不可欠である。図書館資料が図書中心だったため,レファレンスサービスが不十分になり,レファレンスサービスが不十分だったため,図書の提供が中心になるという悪循環があったのではないか。
 レファレンスサービスが不十分な図書館では,貸出に多くの人手が必要になるため,レファレンスサービスに充てる人手がないという意見が多く,この点を解決する必要がある。

(1-3) レファレンスサービスの改善
 
 レファレンスサービスを行うには,貸出サービスのみを優先することなく,貸出とレファレンスにバランスよく人手を配分するべきである。レファレンスサービスを不可欠のサービスとして位置づけ,レファレンスデスクを設置して,確実に職員を確保しなければならない。
 貸出部門でも「本の案内」等のレファレンスデスクを設けて,レファレンスサービスを行うと,多くの利用者がレファレンスサービスを知り,気軽に質問できるため,好評である。
 貸出カウンターにいる職員は,そこに寄せられる要求のみを利用者の要望と受け止める傾向がある。レファレンスデスクを設けて,レファレンス質問を受けることにより,職員は専門的資料や調査研究に対するニーズがあることを実感できる。
 レファレンスデスクの設置によって,レファレンスサービスの担当者が確保でき,職員のレファレンス能力が向上する。それによって,利用者の質問が増え,内容も高度になる。職員はその要望に応えるため,さらに技術を磨くようになる。このような良い循環が働く。
 レファレンスサービスでは,最終的な回答を提供することは困難なことも多いため,様々な資料や情報を提示することが重要である。主題に関する専門知識がなくても,探索能力が高ければ,質問への回答は可能である。
 「レファレンスサービス」という言葉はわかりにくいため,レファレンスデスクのサインや利用案内では,「調べもの相談」,「探し方・調べもの案内」などのわかりやすい表現を用いてはどうか。
 図書館に来館しにくい人や勤務時間後に図書館の利用を望む人のために,電話,ファックス,電子メールでレファレンス質問を受け付けることが必要である。
 レファレンスサービスの現状を評価するためには,現状を相互に比較しうる統計と,サービスの質を評価する取組が必要である。
 地域資料に関する目録や索引の作成等もレファレンスサービスの一環で,これによって,地域資料の多面的な検索が可能となり,収集資料の価値が高まる。
 小・中・高等学校及び大学の授業で情報リテラシー教育や図書館利用教育を行うべきである。

(1-4) 利用者別・課題解決のためのレファレンスサービス
 
 地域の課題解決には図書館のレファレンスサービスと情報発信が必要である。図書館は受け身でなく,レファレンスサービスの認知度を高め,レファレンス回答データベースの構築などの情報提供を積極的に行うべきである。
 レファレンスサービスの体制が整えば,外部の組織・団体へ図書館サービスについてPR・アピールし,情報提供サービスを展開することができる。
 レファレンスサービスの存在を市民一人一人にPRするのは難しいため,学校,行政部局,市民団体,商工会議所等の組織に働きかけ,開館時間中に来館困難な人にも広報することが必要である。
 レファレンスサービスをPRするだけでは,それがどう実生活に役立つかが分かりにくいため,サービス対象の集団ごとに,レファレンスサービスの利用方法や利用例を具体的に提示して,利用を促進する必要がある。行政支援,学校支援,ビジネス支援等の表現はその例と考えられる。

(2) 専門的情報の提供
 
 図書館が提供すべき専門的な情報として,最近,行政,ビジネス,医療,法律等の情報が挙げられることが多いが,図書館は,これらの主題に限らず,広範な主題の専門的情報を提供することができ,これまでも専門的情報を提供してきたことに注意するべきである。
 レファレンスサービスの利用案内で,医療相談や法律相談,学校の宿題には応じないとしている図書館があるが,資料の探し方や専門機関の案内は行っていることが多いので,そのことを明示すべきである。基本的に,図書館ではどんな分野の相談であれ,何らかの対応を行うべきである。
 専門的情報を提供するには,図書資料の提供やレファレンスサービス以外に,関係機関との連携によって,その主題に関するセミナー等を開催し,合わせて,その主題に関する各種の情報や図書館資料を展示したり,そのリストを作成・配付して,紹介・提供すると,効果的である。
 行政の各部局や議員に対する支援サービスとして,(1)地方公共団体や地方自治に関する新聞記事の切り抜き,関係雑誌の目次をまとめた冊子,地方自治に関する図書リストを提供する,(2)各部局や議員からのレファレンス質問に迅速に回答し,必要な資料を期間内に提供する,(3)各部局と連携して,要求のある資料リストを作成し,図書館資料の展示会を開催する,などのサービスが行われ,関係者から高く評価されている。
 商工会議所の図書館や中小企業の資料室が閉鎖・縮小される傾向にあり,中小企業や個人事業者がビジネス情報を入手しにくくなっているため,図書館にビジネス情報の提供が求められている。
 新しいビジネスに取り組むには,数年前から現在までのビジネス・サイン(新しいビジネスの兆候)を調べることが必要であり,そうした支援が図書館に期待されている。
 ビジネス支援には,レファレンスサービスが重要であるが,その経験のある図書館職員が少ないために,新たなサービスに取り組むことをためらっている。新たなサービスを提供するためにも,レファレンスサービスへの一層の取組が必要である。
 現在,各省庁によって,今後の社会では,市民に対する医療,法律,ビジネス,行政などの専門的な情報の提供が必要であることが指摘され,研究が行われている。市民への体系的な情報の提供には図書館を活用することが効果的である。図書館ではこれらの情報の提供に努めるとともに,図書館を活用した専門的な情報の提供方法について検討する必要がある。

(3) 閲覧・貸出・リクエストサービス
 
 閲覧・貸出・リクエストサービスは最も基礎的な図書館サービスである。今後,コピーサービスや電子情報の利用の増加が予想されるが,このサービスは今後も基礎的なサービスであることが予想される。今後は,本の案内やレファレンスサービスによって,利用者が求める資料を確実に探索・提供することを重視するべきである。
 貸出・リクエストサービスは,一般には定着していると考えられているが,すべての図書館で定着しているわけではない。貸出・リクエストの冊数が少ない図書館では,基礎的なサービスとして,貸出・リクエストサービスを充実させる取組が必要である。

(4) 児童・青少年サービス
 
 子どもの読書離れを防ぎ,子どもの読書を盛んにするために児童サービスを充実すべきである。
 子どもの読書活動推進計画を策定していない市町村では,早急に策定することが望まれる。
 読み聞かせは,読み手と聞き手が同時に読書を楽しむ共有体験である。親や保育者など愛着関係にある人から,子どもは本とのつきあい方を学ぶ。愛着は人格の発達や言語をはじめとする学習の基盤として重要である。
 読み聞かせは,子どもの文字を読む負担を軽減するため,子どもは物語に集中することができる。そのため,読み聞かせは子どもが文字を読めるようになった学齢期でも必要である。また、年齢層や素材をより広くとらえて,中・高校生に対しても行われている。
 読書離れの進む中・高校生に対して,図書館で本の選び方に関する助言が行われることが望ましい。また、文庫や新書を素材にした読書会や朗読会,読者の書評の公開によって,同じ本をめぐる意見交換の場などを提供できる。
 図書館を利用して課題解決学習や調べ学習を行うことによって,児童は,情報収集の方法を学び,情報を結びつけ知識を体系化する過程をたどることができる。この過程で自分なりの発見に至る喜びを体験することは,さらに学習を発展させる動機づけとなる。
 青少年の精神的発達や社会への適応に関して様々な問題が生じている。青少年に対しては,これまでヤングアダルトサービスが行われてきた。このサービスを普及させるとともに,このような問題をかかえた青少年に対する図書館サービスの在り方について研究を進める必要がある。
 児童生徒の読解力を育成するため、幅広い読書や課題解決学習を保障する継続的な学校図書館支援が必要である。
 小・中・高等学校の授業で情報リテラシー教育や図書館利用教育を行うべきである。

(5) 障害者・高齢者・多文化サービス
 
 これらのサービスは,他のサービス以上に,実施状況の格差が大きいと思われる。基本的なサービスはどの図書館でも行われるように,具体的なサービスの指針を作り,サービスの実施状況を調査し公表するとともに,先進的事例の紹介を行う必要がある。
 サービスをよく実施している図書館では,特定の職員が熱心に取り組んでいる場合が多いが,しばしば,職員全体の理解が不十分な場合があるので,職員全体が理解できるように配慮する必要がある。
 視覚障害者だけでなく,さまざまな障害に対応したサービスが必要である。情報技術の進展によって,メディアの製作・再生方法が多様化しているため,情報技術の活用を進めるべきである。
 情報技術の活用によって,障害者が自分で情報を活用できる範囲が広がり,自立の促進にもつながることから,そのような観点からも取組を進めるべきである。
 定年退職した社会人が社会参加・社会貢献するために,余暇を生かして学習を続け,知的生産を行う場として図書館は最適である。高齢者が利用しやすいように,図書館の施設,設備,サービスに配慮する必要がある。
 今後,高齢者や在日外国人の増加が予想されるため,高齢者サービス,多文化サービスへの取組を強化する必要がある。

(6) 図書館資料の整備と提供
 
(6-1) 資料の収集と資料費の確保
 
 図書館は,出版物に関する情報の提供や資料の貸出・閲覧によって,読者を開拓し,出版物の利用や流通を広め,促進する役割を果たしている。図書館資料は,有職者や成人を含む様々な人々に調査研究や課題解決を含む様々な目的で利用されている。これらの実情をとらえ,PRすべきである。
 現状では,資料費の不足のため,専門書や専門雑誌を十分購入することができず,収集される資料の範囲が限定されている。
 図書館における複本購入冊数はそれほど多いものではなく,また,図書の販売よりも遅れて利用されるため,図書の売り上げへの影響はそれほど大きなものではないと考えられる。他方,評価は高いが販売部数の少ない図書については、多くの図書館で購入されることで出版を支えている側面がある。
 図書館がその機能を果たすには,印刷資料やデータベースの購入のための資料費の確保が必要である。
 地方公共団体の合併が進むなかで全域サービスや均等なサービスを行うには人口1人当たりで一定の資料費の確保が必要である。
 資料費を確保するには,情報拠点としての図書館の機能や意義のアピールが必要である。
 選書方針は,利用者や教育・出版関係者などの関心の対象であるので,説明責任を果たすために選書方針を作成して公開する必要がある。
 幅広い資料を収集するために,図書館間で分担収集・保存のための協力を進めるべきである。
 行政部局で購入している雑誌のバックナンバーや専門書を図書館で管理,再利用することも有用である。

(6-2) 雑誌の意義
 
 これまで図書館資料は図書中心だったが,出版販売額の半分以上は雑誌であるから,今後はもっと雑誌を重視する必要がある。特に調査研究には雑誌記事が重要である。バックナンバーの保存と提供は図書館独自の役割であり,書店には困難である。
 中小図書館では,広範囲にわたる雑誌の収集・提供・保存は難しいため,検索・提供にレファレンスサービスを活用する必要がある。インターネット上で公開されている『国立国会図書館雑誌記事索引』注釈11を利用し,雑誌記事の入手には県立図書館,大学図書館,国立国会図書館を利用するべきである。国立国会図書館の配送サービスを活用すると便利である。

注釈11  『国立国会図書館雑誌記事索引』:国立国会図書館が国内刊行の和文雑誌約9,000誌の掲載記事を対象に編集・刊行している雑誌記事のデータベースで,論題及び論題中の単語,著者名から検索できる。国立国会図書館のウェブサイトで無料公開されている。

(6-3) 地域資料の意義
 
 郷土資料や地方新聞の記事等の地域資料については,図書館の努力で収集し,分析・紹介するとともに,郷土史,地域文化など地域に関する資料を出版することも必要である。
 総合的学習の時間が始まってから,子どもたちの図書館利用が増大している。特に地域に関する調べ学習が盛んになっているが,子ども向けの地域資料が不足しているため,図書館が子ども向けの地域資料を作成して提供することも必要になっている。
 地域資料としては,活字資料以外に,写真,8ミリ・16ミリ映画,ビデオ等の映像資料がある。地域の様子や生活の姿を具体的に記録できる点で優れている。活字資料と共に重要であるが,組織的系統的に保存されていない。これらの資料についても,図書館が積極的に収集し,保存すべきである。

(6-4) パンフレット・チラシの意義
 
 様々な行政機関や地域団体が情報提供のために多様なチラシやパンフレットを作成・発行している。図書館は多数の利用者が来館するため,これらの資料の展示・配付に適している。各機関に呼びかけてチラシを収集・展示し,利用者が持ち帰れるようにすれば,各種の機関と利用者の両方にとって効果的である。

(7) 資料に関する情報の組織化
 
 市販マーク(目録データ)を修正・加工することによって,よりくわしく的確な資料検索ができるように配慮すべきである。
 地域資料や行政資料など市販マークに収録されていない書誌データを積極的に作成し公開することは,地域図書館の重要な使命である。
 今後,印刷資料だけでなく,視聴覚資料,電子資料を含むすべての資料・情報を合わせて検索できるように,組織化の方法を工夫すべきである。


前のページへ 次のページへ


 

-- 登録:平成21年以前 --