子育て支援に関わる庁内及び関係団体との連携協力体制の整備(大阪府寝屋川市)

子育て支援に関わる庁内及び関係団体との連携協力体制の整備

1  自治体・団体名: 大阪府寝屋川市,寝屋川市教育委員会

2  自治体・団体の概要(人口244,914人 平成19年1月1日現在)
 本市は,大阪府の北東部,淀川左岸に位置している。住宅都市として発展し,市制施行50周年を迎えた平成13年に特例市となる。

3  地域の特徴
 本市は現在,第四次寝屋川市総合計画(2001年~2010年)の第3期実施計画(2005年~2007年)に基づき,まちづくりを推進している。第3期実施計画策定の方針である「元気都市 寝屋川」を実現するために,市民との協働によるまちづくりをめざしている。
 家庭や地域の教育力を高めるために,平成12年度に全12中学校校区に地域教育協議会が設置され学校・家庭・地域が協働して「地域の子どもは地域で育てよう」と様々な取組みを行っている。また,全24小学校において「地域子ども教室」の設置及び「子どもの安全見守り隊」の結成がされ,地域のボランティアの方とともに,子どもたちの体験活動や登下校時の見守り活動がおこなわれている。

4  連携の取組状況
1 連携に至るまでの経緯
 平成10年6月の第16期中央教育審議会「新しい時代を拓く心を育てるために-次世代を育てる心を失う危機-(答申)」,平成12年12月の教育改革国民会議「教育を変える17の提言」を受けて,平成14年2月「寝屋川市家庭教育推進庁内検討委員会」を設置し,平成14年4月「寝屋川市家庭教育推進計画(3ヵ年計画)」を策定した。推進計画に基づき,推進初年度は,市民ぐるみの推進組織として平成15年2月に「寝屋川市家庭教育支援連絡会」を設置し,「ねやがわ家庭教育フォーラム2002」(15年度より「元気子育てフォーラム」に改名)を開催した。また,毎月第3日曜日を「家庭の日(元気ふれあいサンデー)」と決め啓発を開始した。推進2年目は,「赤ちゃんに絵本を贈ろう」事業及び「子育て支援カレンダー」作成・配付,「家庭教育ふれあいセミナー」の開催を開始した。推進3年目は,2年目の事業の充実に一層力を入れるとともに,平成17年3月に「寝屋川市家庭教育指針」を策定した。

2 連携した取組の具体的内容・方法・実施状況
「家庭教育庁内検討委員会」の概要
 家庭教育の推進及び支援に関する施策の企画及び立案,部課の連絡及び調整,推進及び支援を目的に,平成14年2月に設置された。
 地域教育振興室長を委員長として家庭教育に関係する以下の19課の委員をもって構成されている。
(1)人・ふれあい部(人権文化課長,男女共同参画課長,市民生活部消費生活センター所長)
(2)環境部(環境政策課長)
(3)保健福祉部(福祉政策課長,健康増進課長,こども室長,障害福祉課長)
(4)学校教育部(学務課長,教育指導課長,教育研修センター所長)
(5)社会教育部(社会教育課長,スポーツ振興課長,教育センター所長,中央図書館長,中央公民館長,かがやき教育課長,地域教育課長)
 年間3回程度開催している。

「家庭教育支援連絡会」の概要
 家庭教育に関する情報収集及び意見交換,家庭教育の支援策についての意見交換,その他家庭教育の支援に関する意見交換を目的に,平成15年2月に設置された。
 構成する委員は以下の家庭教育に関わる関係機関,団体,公募市民など15名で構成され,委員長は互選によって選出される。
(1)地域教育協議会
(2)地域コーディネーター
(3)社会教育委員
(4)市立校園PTA協議会
(5)市子ども会育成連絡協議会
(6)小・中学校校長会
(7)幼稚園園長会
(8)保育所所長会
(9)こどもセンター・子育て支援センターの職員
(10)家庭児童相談室の職員
(11)家庭教育に関して熱意のある市民
(12)前各号に掲げる者の他青少年健全育成に係わる者
 年間4回程度開催している。

「家庭教育庁内検討委員会」及び「家庭教育支援連絡会」の役割
 「家庭教育庁内検討委員会」においては,各課で実施している事業のうち,子育て支援や家庭教育に関するすべての事業をまとめ,行政として実施している全事業を把握した。その中で,家庭教育推進に関する事業を対象者や内容によって,「学習の機会の充実と啓発」,「人とつながる場と機会の充実」,「人と人・家庭と地域と学校・組織と組織をつなぐ」の3つの事業に分類し,家庭教育に関する事業としての位置づけをはっきりとさせることで,それぞれの事業を推進する中で,家庭の教育力を高める機会としての位置づけを再確認することができた。また,各課における事業の見直しの中でも家庭教育としての観点を持つことができ,今後においても寝屋川市の家庭教育を連携して進めていくことが可能となった。
 「家庭教育支援連絡会」は,子どもや保護者と常に接している関係機関や市民などで構成されている。平成14年度より,家庭教育推進のための新規事業を次々と展開してきたが,「家庭教育支援連絡会」において各方面からの情報や意見を交え,検討をすることによって,市民のニーズをふまえた事業展開をすることができた。また,実施中の事業についても,情報交換,意見交流ができ,事業の改善に活用できている。

3 連携した取組
 絵本の読み聞かせをつうじて,赤ちゃんと過ごす時間をつくり,赤ちゃんに愛されている実感を育くむために行っている「赤ちゃんに絵本を贈ろう」事業においては,中央図書館との連携で,本の紹介・展示のコーナーが充実できた。また,健康増進課との連携で,1歳6か月児健康診査の案内封筒に「赤ちゃんに絵本を贈ろう」事業の案内を同封し,健康診査に訪れた方を対象に,健診会場の1階に「えほんのへや」を設置することができた。さらに,ボランティア団体の方々の協力により,実際に読み聞かせをしながら絵本を贈呈することができた。また,子育て支援情報(こども室・中央図書館・地域教育課など)を絵本とともに配付し,啓発の機会となった。
 保護者が小学校の入学前に,日々の生活を通して自らの家庭を見つめなおし,自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう作成している「子育て支援カレンダー」においては,庁内全部局において企画されている5歳児が家族と参加できる行事の情報や(保健所,学校給食会,健康増進課,幼稚園養護部会,こども室,NPO法人ななクラブから)親子クッキングのレシピの提供を受けることができた。中央図書館からの絵本の紹介コーナー,こども室からこども支援センター,ファミリーサポートセンターの事業内容や利用方法の紹介,相談窓口の紹介(家庭児童相談室,教育研修センター,健康増進課や大阪府諸機関)など庁内外の子育て支援情報を盛り込んだ支援カレンダーを作成することができた。
 「元気子育てフォーラム」の開催では,家庭教育支援連絡会の委員を通じ,民生委員児童委員協議会,市立校園PTA協議会,婦人会協議会,子ども会育成連絡協議会,青少年指導員会,12中学校区地域教育協議会の後援をうけることで,多数の関係者及び市民が参加して開催することができている。また,「家庭教育学級」「家庭教育ふれあいセミナー」の開催で案内は市広報だけでなく,PTAを通じて子育て中の保護者へ参加を呼びかけている。「家庭教育サポートチーム」の派遣では,学校教育部と連携する中で,学校のもつ教育機能を効果的に活用することができた。
 また,大きな成果として,これからの寝屋川市の家庭教育推進の方向性を明らかにした「寝屋川市家庭教育推進指針」の策定がある。「庁内検討委員会」で検討し,策定実務担当者会議を立ち上げた。寝屋川市の実態を把握するため「寝屋川市における家庭教育意識調査(平成14年7月実施)」,「寝屋川市子ども意識調査(平成16年7月実施)」を実施し,策定アドバイザーの神戸学院大学人文学部教授神原文子氏の指導や「家庭教育庁内検討委員会」,「家庭教育支援連絡会」において,それぞれの担当・専門分野から多くの意見を集め,寝屋川市の現状に即した家庭教育の指針が策定できた。寝屋川市の子どもたちに,もっとも大切である「自己肯定感」を育むことを目標に,親・家庭や子育て支援団体への「はげまし」「あと押し」「ネットワークづくり」の3つが大切であるとの認識でつくられたのが「寝屋川市家庭教育推進指針」である。(図1参照)
 
【えほんのへやのようす】


【子育て支援カレンダー】


【元気子育てフォーラム2006】

図1
【図1】

4 連携した取組の成果と課題
 各事業において,アンケートを実施して,対象者・参加者の意識を調査している。(表 18年度アンケート結果参照)
事業名 アンケート項目 (アンケート回答数)
赤ちゃんに絵本を贈ろう
  • お子さんに読み聞かせていただけますか。
  • 本を読み聞かせることが,親子のきずなづくりに役立つと思いますか。
100パーセント(126人)
99パーセント(126人)
子育て支援カレンダー
  • 子育てや家庭について考えるきっかけになりましたか。
66パーセント(341人)
元気子育てフォーラム2006
  • 今後の子育ての参考になりましたか。
97パーセント(428人)

 「家庭教育庁内検討委員会」と「家庭教育支援連絡会」のそれぞれの場で,各事業ともいろいろな観点で,情報交換,意見交流ができたことで,市民ニーズに対応した実施をすることができスタート当初より,参加者・対象者の感想も予想以上にも良好であった。
 しかし,設置当初より両者はともに,本市の家庭教育を推進する上で非常に大きな役割を果たしているが,それぞれが検討する観点が違うため,両者が連携,連動して本市の家庭教育の推進をする位置づけがあいまいであった。

5  今後の方向性や展望
 本市においては「寝屋川市家庭教育推進指針」の策定において「家庭教育庁内検討委員会」及び「家庭教育支援連絡会」の両者が同じ内容を検討する機会が増えてきた。そのため,地域教育課が担当課として企画・立案・実践などを行い,両者が連携する中で,事業支援を受けることで,広く庁内関係課,協賛団体の協力を得ることができるよう位置づけをした。(図2参照)
 親の生活が多様化する中で,親自身が子育てに関する情報を受けとる場や手段が同居する親や近所とのつながりが中心であった時代から,テレビ,新聞,雑誌などマスコミからの情報の影響が大きくなってきている。さらに最近ではインターネット等を利用したブログやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどコミュニケーションツールの利用も広がっており,新しいネットワークが広がってきている。このような情報を得る手段や場の多様化,そして,価値観の多様化も進む中で,家庭教育を推進するために,多方面から親に対する子育て支援情報を提供するとともに,親のニーズに応じた様々な内容の学習機会の提供が必要である。そのために,今後,さらに庁内外での連携を推進していかなければならない。
 現在,本市では「寝屋川市こどもプラン」(次世代育成支援行動計画)に基づいて子育て支援事業が実施されており,このプランの中で家庭教育の推進は重点施策の1つになっている。子育て支援と家庭教育支援は密接に関わっており,福祉部こども室との連携は,ますます重要になっている。(図3参照)

図2
【図2】

図3
18年度は,こども室との連携から,こどもセンター(地域子育て支援センター)に地域の親子が集まる「つどいの広場事業」において,つどいの広場を利用する保護者に対して「家庭教育ふれあいセミナー」を開催した。つどいの広場の利用をする中で顔見知りになった人たちとともに学習に参加できたこともあり,参加者の感想は非常に好評であった。19年度についても開催回数を増やして実施できるよう,こども室とともに企画をしている。こども室の親に対する子育て支援と地域教育課の家庭教育支援については,図3のように,対象者及び内容について重複している部分が多く,今後さらに庁内での連携を推進し,家庭教育支援事業を展開していく。

6  担当者連絡先
 寝屋川市教育委員会社会教育部地域教育振興室地域教育課 伊藤卓央
 電話  072-838-2018   FAX  072-828-4147

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