子育て支援ネットワーク会議(神奈川県大和市)

子育て支援ネットワーク会議

1  自治体・団体名: 神奈川県大和市

2  自治体・団体の概要
 昭和34年に人口3万6千人余りで市制を施行し,現在の人口は,222,690人,世帯数92,857世帯,1平方キロメートルあたり人口密度8,229人(面積27.06平方キロメートル)となり,平成12年には全国初の特例市へ移行し,地方分権時代の核都市として,市民,企業,行政が一体となり,「自治と協働のまちやまと」を目指している。

3  地域の特徴
 大和市は,都心から40キロメートル圏内の神奈川県のほぼ中央に位置し,横浜,町田,相模原,藤沢,海老名,座間,綾瀬の各市に隣接する自治体であり,市域は南北に細長く,丘陵起伏がほとんどない。
 面積は約27平方キロメートルと小さなまちですが,3つの鉄道が東西南北に走り,東京へ1時間弱,横浜へは20分で行くことが出来る位置にあり,市内に8つある駅は,15分以内の徒歩圏内にある。
 また,道路網も国道16号線,246号線及び467号線のほか県道4線が縦横に走り,東名高速道路横浜町田インターチェンジにも近いなど,交通の利便性に恵まれていて,とても便利なまちである。

4  連携の取組状況
1 連携に至るまでの経緯
 当市は,都内や横浜,川崎等大都市の通勤圏であり,市の特徴である交通の利便性などから,流入人口も多く,いわゆるベッドタウンとして,子育て世帯の比率が高い傾向が続いている。
 平成元年のころから,公立保育園7園を中心として「地域育児センター事業」の充実(あそぼう会・相談・地域交流など)を図り,保育園が地域に開かれた社会資源として,その専門性を活用し,地域との交流事業が始まっていた。
 平成6年11月から,子育てボランティアグループ「わらしっこ倶楽部」が保健福祉センターを活動拠点に,月2回の活動(親子の集い)をするほか,子育て情報紙の発行や子育てサークルの情報交換会なども手がけていた。
 同時期の平成6年7月から13年7月までに市内11地区で民生委員・児童委員協議会の「地域子育てサロン」が開始され,充実してきた。
 また,平成8年から12年までに,教育委員会の「学習センター」や「青少年センター」でも子育て支援事業が実施され,充実してきた。
 一方,平成11年4月,組織改正により,児童課が児童育成課となり,保育担当と児童福祉担当のほかに母子保健担当が加わり,平成11年12月には,市立の保育園内に「子育て支援センター」を開設し,正職の保育士1名と嘱託の保育士2名の計3名の職員で子育て支援の拠点として,さまざまな事業を開始した。
 こうして,市民と行政がそれぞれの立場で効果的な活動を行い,子育て家庭が子育て支援事業に対する期待を増大させる中,その成果も徐々に出てきていたが,個々の活動の中では,子育て中の母親などからの相談や,何気ない言動の中から散見する「児童虐待」の芽に気づき始めていた。
 当時から児童虐待は,社会問題としてとらえられ,行政などの取り組みに期待されていたが,まだ組織的なネットワークは整備されていなかった。市民を含め,各子育て関連事業に携わる人たちの間では,児童虐待に対する的確かつ早急な対応のため,情報共有の必要性を痛感していた。
 このような中,子育て支援センターが中心となり,子育て支援事業実施団体や組織の担当者が子育て関連活動情報を含め,さまざまな情報を共有する場として,平成12年度から「子育て支援ネットワーク会議」を組織し,子育て支援情報の共有と同時に,児童虐待についての共通認識を深めることとなった。
 会議のメンバーと主な活動内容は,次のとおりである。(団体,組織の名称は現在の名称とした。)
(1)  大和市民生委員児童委員協議会児童委員部会代表【地区子育てサロン】
(2)  子育て支援グループ「わらしっこ倶楽部」代表【親子交流会】
(3)  大和市生涯学習センター幼児教育担当【施設開放】
(4)  大和市青少年センター子ども広場担当【施設開放】
(5)  大和市母親クラブ連絡会代表【地域親子交流】
(6)  特定非営利法人ワーカーズ・コレクティブ チャイルドケア代表【子育てサポート】
(7)  神奈川県大和保健福祉事務所母子保健担当者【未熟児・双子の集い】
(8)  大和市地域育児センター(公立保育園)代表【地域交流】
(9)  大和市地域育児センター(民間保育園)【地域交流】
(10)  大和市子育て支援センター【常設子育てサロン】
(11)  大和市公立保育園一時保育事業担当者【一時保育】
(12)  大和市児童育成課母子保健担当【サロン等への保健師派遣】
(13)  大和市児童育成課児童福祉担当【虐待通報窓口】
 この会議は,児童の健やかな成長を願い,子育て家庭が抱える母親の育児不安や孤立感を軽減するため,子育て支援の関係機関等が,それぞれ何ができるかを明らかにする事によりネットワーク化を図り,利用を促進すると共に,これからの子育て支援のあり方を考えていく場としており,年1~2回の定例会議を開催し,各機関の取り組み状況について情報交換や協議等を行い,連携の方策等を検討している。
 以下,関連する主な活動の経緯を記述する。
平成13年1月   「子育て支援ネットワーク会議」立上げ
(次年度から年2回開催を計画)
平成13年10月 まごころ福祉センター(高齢者在宅介護支援センター併設)開設
と同時に,子育て支援センターを保育園から同センターに移転
平成13年9月 児童育成課に「児童問題(虐待)ネットワーク推進会議」を設置
平成14年1月 子育て支援センターに「虐待未然防止教室」の開設
平成14年4月 7つの地域育児センターに「地域子育て連絡会」を設置

2 連携した取組の具体的内容・方法・実施状況
 子育て支援センターは市内に1カ所であり,市の中央ではあったが,駅から徒歩10分の場所で,また,保育園の2階を間借りしていたこともあり,利用者の親子にとっては,「遠い」「行きづらい」という印象があった。また市内で活動しているそれぞれの団体や機関の状況を把握し,育成するためにも,子育て支援担当者は,地域に出向いていくことが必要であり,関係機関との連絡調整が一番重要と考えた。
 子育て支援センターの設置以前までは,ボランティア団体の「わらしっこ倶楽部」が中心になって,子育てサークルの情報交換会を行ったり,団体自らが子育て中の親の集いの場を運営しながら,子育て情報紙の発行などを行っていた。
 こうした中で,児童育成課としては,子育て支援センターの運営に当たり,その役割を考えた場合,単に常設のサロンを開設しているだけでは,本市の子育て支援策としては脆弱であり,子育て支援センターを中心としたネットワーク化が必要であると感じていた。
 そこで,地域に出向いて,それぞれの活動を把握するため,保育園やボランティアグループ,地区民生員協議会の地区サロンなどに足を運び,教育委員会の学習センターでも施設を開放して,ボランティア団体等が子育て支援の場を作り出し,市内の各地域で毎日のように「集いの広場(サロン)」が開催されていることが分かった。
 このような情報を,地域を歩きながら把握していくうちに,それぞれの活動の主旨や活動の仕方も違っており,情報を集約してどの親子にも地域でそれぞれが参加しやすい環境を作るため,互いの情報を共有し,市全体の子育て環境を向上させる方法はとれないかと,1回目の会合を13年1月に市の保健福祉センターで行った。
 一方,子育て支援センターは,「わらしっこ倶楽部」の活動の一部を引き継ぐ形で,各サークルの情報交換会を実施し,子育て親子の生の声を聴く機会を作るとともに,常設の子育てサロンの運営や,地域の子育てサロンの育成に力を入れることとなった。
 おりしも市域全体の関係団体・機関のネットワーク化が進む中で,全国的に子ども虐待の事件が相次ぎ,相談機関同士のネットワーク化も進んで,保育園(地域育児センター)が,地域の中に埋もれている,外に出ることができない親子を,保育園等に取り込むことができないか,あるいは地域の見守り役を強化できないかと考え,保育園単位の地区割りを作り,保育園(施設を拠点とした)連絡会を14年4月~6月に,子育て支援センターが調整役となって設置に向けた検討を行い,「地域子育て連絡会」を7つの保育園内に設置した。
 市内で活動していた約20の育児サークルを7地区に分割し,地域子育て連絡会に参加してもらうことにより,育児サークルの育成も含め,保育園が地域子育ての拠点として連絡会を通したネットワークづくりを行うこととなり,各組織の子育て支援活動を有機的に繋げるとともに虐待防止ネットワークの基礎が組織されることとなった。

3 連携した取組に到る過程での課題や工夫した点・対処法
 各団体や組織がそれぞれ活動している中で,活動の内容や方法においても,地域や対象が限定されていることなどにおいても,実務担当者としては,子育て支援の一翼は担っているものの,はたして本当に効果的な支援ができているのかどうかなど,疑問や閉塞感がつきまとう状況は否めなかったようであった。
 そのような中,「子育て支援ネットワーク会議」を開催し,関係者が一堂に会して,お互いの情報を共有し合い,連携の仕方を議論し,市民にとって子育てのしやすい環境作りをすることを狙いとした。
 また,児童虐待が社会問題化し,地域の情報ネットワークを強化していくために,保育園の地域育児センターを核としたネットワークを作る必要から,保育園(地域育児センター)毎に「地域子育て連絡会」を平成14年度に設置し,市内を7地域に分け(現在は9地区),その地域の単位育児サークルや児童委員,地区担当の保健師,学習センター職員などが集まって情報交換し,情報連絡網を強化した。また,年1~2回参加メンバーの企画によって「それぞれに抱えている問題のケースなども参加できる(虐待未然防止のための)地域育児講座」を開催し,官主導で行うべきことも徐々に充実させていった。

4 連携した取組の成果
 成果としては,次のようなことがあげられる。
(1)  お互いの情報を共有するため「子育て情報誌(こころんひろば)」を発行し,大和にある子育て情報資源を1冊にまとめ,保健福祉センターに訪れる方や保育園,各種検診会場で配付できるようにした。さらに,市民生委員児童委員協議会で作った「子育てマップ」も好評で,市内の相談機関が網羅してあるリーフレットを,4ヶ月健診時に子育て支援センターの職員が健診会場に出向いて,若い母親に声を掛けながら配付している。
(2)  地域の育児サークルの存続や運営方法などについて,地域育児センターが保育士を派遣するなどの,人材協力や指導助言ができる体制がとれるようになった。
(3)  地域育児センターは,公立の7保育園だけでなく,新設する民間保育園も支援拠点としての役割を担ってもらえるよう,民間認可保育園の担当者も「子育て支援ネットワーク会議」のメンバーとしたことから,ネットワークが広がり,地域育児センターを民間保育園にも拡大することができた。
(4)  福祉・保健機関・教育委員会・育児サークル・ボランティアグループ・NPOなど行政と市民団体等の連携がとれるようになった。
(5)  虐待の情報を把握した場合の対処方法が徹底された。

5 連携した取組の課題
 課題としてあげるとすれば,次の点である。
(1)  子育て支援の拠点施設として「子育て支援センター」の役割は重要である。すでに設立から7年が経過しているが,コーディネーターとしての職員の育成及び資質向上のためには,児童育成課の職員体制,研修計画等が今後重要になってくる。
(2)  情報共有後の「情報の活用」が充分機能しているか,「いつでも,どこでも相談できる市域全体の子育て環境」アップにつながっているか,などの評価ができる体制を作っていくことも重要である。

5  今後の方向性や展望
 子育て支援ネットワーク会議は,平成16年度に策定した「大和市次世代育成支援行動計画(やまと子どもプラン)」の中でも計画事業に位置づけられ,子育て支援センターが核となって市内の子育て環境をネットワークを通じて改善してきたが,17年以降,公の施設の指定管理者制度導入の動きの中で,当市子育て支援センターについても18年4月から,市社会福祉協議会が指定管理者として管理運営していくことになった。
 今後,指定管理に移行したことによって,今まで培ってきたノウハウが後退しないよう,市としての姿勢を継続していく必要がある。
 また,本題である「子育て支援ネットワーク会議」及び「地域子育て連絡会」は,子育て支援センターが指定管理者に委託したことによる過渡期にあり,現在活動がやや停滞しているが,もう一度原点に立ち返ってキーパーソンの役割を果たせるよう体制を強化していきたい。

6  担当者連絡先
 大和市役所 保健福祉部児童育成課児童福祉担当課長補佐 山口 茂
 〒242-8601 大和市下鶴間1-1-1
  電話  046-260-5608(直通)
FAX  046-264-0142
ikusei@city.yamato.lg.jp

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