『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について

~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申)(令和4年12月19日 中央教育審議会)(抄)

第2部 各論

2. 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成

(2)優れた人材を確保できるような教員採用等の在り方

1. 教員採用選考試験の実施スケジュールの在り方
  教員採用選考試験の実施時期は、4~5月に出願、7月に1次試験、8月に2次試験を実施し、9~10月に合格発表・採用内定を公表するのが一般的であり、少なくとも20年以上大きな変化は見られない。
  一方、民間企業において、学生が内々定を獲得する時期、就職活動を終了する時期はますます早期化しており、民間企業の内々定解禁日(6月1日)までに、就職活動を事実上終了している学生も増加している。民間企業等の就職活動の早期化により、就職活動を不安に思い、少しでも安定した就職先を決めたい学生は、教師を目指していても先に民間企業に就職先を決めてしまうとの指摘もある。
  また、公務員についても、国家公務員総合職春試験の実施時期の前倒しが検討されているところであり、他の国家公務員試験や地方公務員試験の実施時期についても影響を与える可能性もある。
  こうした状況も踏まえ、教員採用選考試験についても、その実施時期の早期化・複線化について検討する必要がある。一方で、一部の自治体から、同日に実施する近隣の自治体との兼ね合いから独自の早期化が難しい、一部の自治体のみが早期化・複線化すると、結果的に他の自治体の教員採用選考試験との重複合格により、辞退者が多く発生する可能性があるといった指摘がある。
  このため、国と任命権者、教員養成大学などの大学関係者等が協議しながら、学生の負担・学修への影響等にも留意しつつ検討し、志願者の視点に立って、養成と採用との一体的な改革を進めていくことが必要である。
  国においては、教員採用選考試験の早期化・複線化を含めた多様な入職ルートの在り方について、近年の課題解決に繋がる研究を行うことが求められる。また、その際、試験問題についても、単なる知識再生型ではなく、思考力・判断力・表現力等を中心に問うような試験問題の在り方についても、併せて検討に着手すべきである。
2. 多面的な採用選考
  民間企業における採用活動において、インターンシップで得られた学生の情報を活用する動きもある中で、教員採用選考においても人物重視の多面的な採用選考として、教師養成塾などの学習成果や教育実習など大学での学習成果・経験を活用することや、民間企業との採用選考の併願を容易にする観点から、民間企業の提供する適性検査の利用等を検討する必要がある。また、検討に当たっては、各自治体の先行事例も参考に、これまでに特別な選考を通じ教職に就いたものについて、現在教師としてどのように活躍しているか調査を行うことも有用である。
  また、教員免許状を保有しているが現在教職についていないものの教職への入職を促していくことも重要である。この観点から、例えば現在も多くの自治体が実施している民間企業等の勤務経験者に対する面接を中心とした特別な選考の拡充を行うことや、そのような選考を夏季のみならず、秋季~冬季にかけて実施すること、期間を区切った入職を希望する者に対し、任期付任用職員として教職に就くことを前提とした選考を実施するなど、すでに一部の自治体で行われている取組みを推進していくことも考えられる。

(3)多様な専門性や背景を持つ人材を教師として取り入れるための方策

1. 特別免許状に関する運用の見直し
  特別免許状は、教科に関する優れた知識及び技能等を有する者を教師として迎え入れることを目的とした制度であり、教科担任制を採用している中学校や高校はもとより、小学校においても、特定の教科を指導する専科指導を担当する教師として活躍することが期待されている。
  昭和63年度の制度創設以来、授与年数は年々増加しているが、
  ・教科について、英語や看護が中心であり、理数系教科の授与が少ないこと
  ・公立学校での活用が進んでいないこと
といった課題が見られる。
  一部の自治体では、特別免許状の授与を前提に、高度理系人材や英語のネイティブ教員、ICTのスペシャリスト、スポーツで優秀な活動実績を有する者等を対象とした採用選考試験を実施している。各任命権者においては、こうした好事例も参考にしながら、特別免許状の授与を前提とした採用選考試験の実施を拡大すべきである。文部科学省においては、人材の掘り起こし、採用、研修・講習の実施を支援すべきである。(中略)
  特別免許状が、任命ないし雇用しようとする者(任命権者たる教育委員会、国立大学法人、学校法人)による推薦に基づいて行う制度であることを理由に、授与基準や手続について、任命権者・雇用者向けのみに周知し、一般向けに公表されていない事例が散見される。
  特別免許状の授与を希望する者の予見性を高める観点から、全ての都道府県教育委員会において、特別免許状の授与基準や手続について、ホームページ等を通じて周知すべきである。
  これらの状況を踏まえ、特別免許状の授与手続きの透明化の観点から、全ての都道府県において授与基準や審査実施時期等について公表されるよう、文部科学省から授与権者に促す必要がある。

5. 教師を支える環境整備

(2)多様な働き方など教師を支える環境整備

1. 教員免許更新制の発展的解消を契機とした、失効・休眠免許保持者の円滑な入職の促進
  令和4年7月1日に教員免許更新制が発展的に解消されたことを契機に、教員免許状を取得していたが、長く教壇を離れていた者や教職経験のない者(いわゆる免許失効者・休眠免許保持者)が、再び有効な免許状を得て教職に就く機会が増えることが予想される。
  特に、「教師不足」が発生する中で、年度途中に産休・育休や病気休暇等の理由により臨時的任用教員を採用する必要がある場合、新卒で教員採用選考試験の受験準備をしている者は、既に臨時的任用教員として勤務している、あるいは他の民間企業等で勤務している可能性が高い。このような場合に、過去に免許状を取得し、教育職員免許法改正以前に未更新により免許状を失効した者・休眠状態にある免許状を保有している者を活用することは、「教師不足」の解消に向けた重要な方策の一つである。
  このため、免許状の授与権者である教育委員会においては、未更新を事由として失効となった免許状の再授与手続きについて、申請書類を一部省略するなど、簡素化を進める必要がある。
  また、入職者の不安を軽減し、円滑な入職につなげるためには、任命権者は、最新の教育事情等に関する研修等を適切な時期に実施することが必要である。その際には、独立行政法人教職員支援機構が提供しているオンデマンド型研修動画の活用や、国によるオンラインの研修コンテンツ開発支援を加速化することも必要である。また、こうした失効・休眠免許保持者を臨時的任用教員として活用する場合には、各任命権者において、勤務内容の軽減など引き受けやすい勤務環境を調整することも重要である。

 

〇答申全体は 「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申)(中教審第240号) を参照

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