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第2章第6節 調査結果

 本研究会議の開催に当たり、海外における先進的な取組の実態を視察し、提言に活かすことは当初から計画されていた。視察先の決定に当たっては、虐待対応が多機関・多職種による連携を必須の前提とすることに鑑みて、日本においてはとりわけ馴染みの薄いスクールソーシャルワークの実態に焦点を絞ることにした。スクールソーシャルワークという機能が的確に位置づけられることで、学校現場や教育行政がどのような役割を期待されることになるのかを把握することは、今後の我が国における対策を検討していく上でも多くの示唆を得ることにつながると考えられる。
 視察先としては、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ市と、カナダ共和国トロント市とし、それぞれ三名、二名によって視察が行われた。両市とも、スクールソーシャルワークの伝統があり、渡航手続きや視察日程の設定上も好適であることから決定された。

1 アメリカ(シカゴ)の取組
 アメリカでの児童虐待防止への取組は、1874年ニューヨーク市において親から虐待を受けていた少女メアリー・エレンを発見し、救済したことに始まると言われている。さらに、1962年には小児科医師Kempeが全米小児科学会において「親によって子どもに行われる身体的虐待が特殊な家庭での出来事ではなくて、一般家庭でも日常的に行われている」との調査報告を行っている。それを契機に社会的関心が急速に高まり、児童虐待防止法が1974年に制定された。我が国の児童虐待防止法の制定は2000年であり、虐待防止先進国のアメリカに学ぶべきことは多い。調査班は、そのアメリカ合衆国イリノイ州シカゴ市の公立学校5校を訪問し、児童虐待防止に向けた取組について現地調査を行った。
(1) 現地の学校での取組で注目すべき点
虐待の兆候を発見した時の通告システムの確立
校内にSchool Social Worker(以下SWr.と記す)、サイコロジスト、ガイダンスカウンセラーを配置
School Police(警察官)が常駐もしくは定期的に駐在 警察との連携
児童虐待防止のための生徒への教育プログラムの確立、実践

(2) 虐待防止対応の実際
1《虐待の兆候の発見》
吃音から心理的虐待を発見できる場合がある
身体的虐待による体の傷や痣の確認
 教師が服を脱がせて確認することはできない。
  School Nurseは服の下の傷を確認する権限がある。
 警察は写真を撮るよう指示するが、通告から24時間以内ならあざは消えない。(写真に撮って残す学校もあれば、学校は教育の場であり、調査は州政府の調査員や警察に任せるべきと撮らない学校があった。)
生徒の話すことと傷が合致しない場合は通告する。
作文や詩の授業で虐待を発見することもある。
他国からの移住で、母国の習慣では虐待ではない扱いでも、アメリカでは虐待に該当する例もある。行為を否定はせず、他に何か方法はないか一緒に考える。

2《情報収集》
病院からの情報収集も判事の許可が必要であり、情報を得ることは非常に難しい。
無断欠席が長引いている場合は警察官が直接に家庭へ出向く。
虐待に関する情報は、同一地域であれば進学の際に引き継がれる。
情報の引継ぎは口頭で行い、書類は作成しない。
他地域の学校に進学する場合は一切引き継ぎを行わない。

3《虐待の通告》
通告義務 疑われるケースは、すべてのスタッフに通告義務がある。
通告方法 電話かEメールで行い、その後文書で報告する。
通告先 DCFS(Division of Children and Family Services-子ども家庭サービス部)
通告者 学校によって異なる。SWr.が行う学校と特に定まっていない学校とがある。
SWr.が通告する場合は、担任が直接通告した場合、子どもや親との関係に軋轢が生じることを避ける配慮がなされている。
生徒が教師に報告した場合は教師が通告し、SWr.はアテンドを行う。SWr.に報告した場合は、SWr.が通告する。
通告者は子どもや親に虐待のことについて質問はできない。
調査はDCFSの担当官が行う。
通告の宣言 生徒にも親にも予め伝える。
生徒には、通告により傷つくことはないこと、虐待が継続してはならないこと、通告後も援助することを伝える。

4《通告後の対応》
24時間以内に州政府が調査、対応を行う。
州政府係員が家庭訪問を行い、生徒から事情を聞き、危険性があれば保護する。
学校から通告した場合、生徒を帰宅させることに危険が伴う場合には、警察で保護する。その間に親戚等の預けられる家庭を探す。
通告後、校長に必ず報告する。校長には通告を止める権限はない。
担任には一般的な情報のみ伝え、その後のケアはSWr.とサイコロジストが行う。
里親捜しは州政府が行う。
里親に出す前に、親戚に2週間預ける。
Safety Plan〕州政府の対策が間に合わない場合、緊急避難場所として親戚等へ預ける対策を練る。避難後通告し、事情判明後、家庭に戻して事後調査を行う。
DCFSの判断で援助システムを考え、州政府係員がフォローアップを行う。

5《教員の研修》
虐待の兆候発見や通告義務に関しての研修を実施している。
新採用時に研修カリキュラムが組まれていて継続的に実施する。その後は随時、必要に応じて個人的に研修を行うが、学校外部での全体研修はない。

6《生徒への教育》
保健の授業が中心となり、SWr.がコミュニケーションスキルや、特定のトピック(摂食障害・デートレイプなど)について指導を行う。
幼稚園で人との対処方法を教える。
小学校1年生で体に関しての授業で児童虐待を扱う。
4年生以降でGood and Bad Touchについて考えさせ、性的虐待について学ぶ。
Peace for program〕人格を信頼する授業プログラム
 友達をよく観察し、異常があったら察知をする。友達が虐待を受け、そのことを口止めされても教師に話すことが本当の友達であることを教える。
Protection Coaching〕親から虐待を受けそうになったら911番へ電話をかける、いかに自分の身の安全を守るか、警察では何を話すか、友達の家へ逃げ込んだとき何を話せばよいかなどを教える。

7《警察の関与》
警察官をゲストティーチャーとして招く。ドラッグ対策も行う。
無断欠席が多い場合、学校担当警察官と家庭訪問を実施して状況把握を行い、状況に応じて通告する。
地域や家族の情報を熟知している警察派遣のSWr.が配置されている。
学校配置のSchool Policeは教員も生徒も相談できる。ドラッグ、盗難、アルコール問題などの予防対策に重点を置いている。

8《SWr.の活動》
生徒にオフィスを見せて親密な雰囲気づくりと気軽に相談できる人間関係の醸成。
年度当初のオリエンテーションでSWr.の役割や機能について説明し、気軽に相談できる相手として認識してもらう。
生徒が危険を感じたときに学校が避難場所となれるような位置づけを行う。
社会人として、いかに皆と融和して暮らせるか教える。
教室に相談コーナーを設置してカウンセリングを実施する。
虐待を受けている生徒の友達が来談した場合については、秘密厳守を約束した上で、本人が傷ついている場合、本人が誰かを傷つける心配がある場合には通告する。
調査でなく情報収集を行い、通告後、校長・副校長に報告を行う。
DCFSの調査官が学校で生徒から事情聴取する場合は、不安を和らげるためと真実を語らせるために同席するが、発言することは認められていない。
教師の要望により教室で授業を行う。
教師との人間関係を良好に保つために校長がルールを決め、生徒と教師の双方を援助する目的で教室に入る。
特別支援教育の統括的役割をしている。
学習が遅れがちの子どもには親とカウンセリングを行い、家庭での学習プログラムを一緒に考え援助を行う。
All about me program〕自分自身のことについて生徒に書かせ生徒の事を深く理解する。
親への対応は何が悪かったのかではなく、今後どうしたらよいか支援する。
家庭訪問の方法は学校によって異なる。
子育て学級をトレーラーキャンプやバ-ガーキングで行うSWr.もいる。一方、自分の役割は学校のSWr.なので家庭訪問は実施しないというSWr.もいる。
生徒を傷付けず、極力気持ちよく勉強できる環境づくりを行う。そのために、家庭状況等の情報を細かく報告してもらう。

9《外部機関との連携》
DCFSが専門の窓口なので、SWr.が関わることは少ない。


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