ここからサイトの主なメニューです

第1章第3節 児童虐待防止法及び学校の役割等

1 学校の役割等:
(1) 学校のアドバンテージ:
 児童虐待の防止については、平成12年に児童虐待防止法が成立し、そこでは、1子どもに対する虐待の禁止、2児童虐待の定義、3虐待防止に関する国及び地方公共団体の責務、4関係機関及びその職員に対する早期発見等の努力義務、5発見者の早期通告義務、6虐待を受けた子どもの保護のための措置などの規定が整備された。現在、同法等に基づき、厚生労働省を中心として政府全体で、関係機関が相互に連携しながら児童虐待防止等に関する施策の総合的な推進を図ることとして、その取組が進められている。
 このような、児童虐待防止に関する関係機関の中で、子どもを支援するための機関や社会的リソースは多種多様に存在するが、その中でも、学校は、一定年齢の子ども達(学齢期児童生徒)に対して、網羅的に目配りができ、その日常的な変化に敏感に反応し、対応できることが大きな特徴である。
(参考)「学校のアドバンテージ」:
 学校が、他の機関や社会的リソースと比べてアドバンテージ(利点)がある点は、
1学校が、全国に約5万校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特殊学校)存在しており、その他の児童福祉施設、保健・医療機関又は警察関係機関等と比べても、その量的規模が圧倒的に大きいこと、
2学校には、免許を持ち、然るべきトレーニング(養成及び研修)を経た教員(全国約百十万人(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特殊学校))がおり、その他の児童福祉施設、保健・医療機関又は警察関係機関等における関係職員数と比べても、その人的規模が圧倒的に大きいこと、
3学校は、子どもがその一日の大部分を過ごす場所であり、教職員は日常的に子ども達と長時間接していることで、子ども達の変化に気づきやすい立場にいること、
4学校の教員は、1人で対応する必要はなく、養護教諭、生徒指導主事、学年主任、教頭、校長、スクールカウンセラー等の異なる知識・経験・能力を持った職員集団がいて、困ったことがあれば、複数で「チーム」となって課題解決に当たることができること、
5『子どもの教育を担っている』という大義名分があるため、教育という観点から、家庭や保護者に対して働きかけをする事ができること、などがある。

(2) 虐待防止に関する学校等の役割:
 児童虐待防止法においては、学校及び教職員に対して、児童虐待を早期に発見し、虐待の被害を防止するための適切な対策をとり、児童生徒の安全を確保するために、具体的に以下のような役割が求められている。

※学校及び教職員に求められている役割:
1学校及び教職員は、児童虐待の早期発見のための努力義務が課されていること、
2児童虐待を発見した者は、速やかに福祉事務所又は児童相談所へ通告しなければならない義務が課されていること、
3児童虐待の被害を受けた児童生徒に対して適切な保護が行われるようにすること、
4児童相談所等の関係機関等との連携強化に努めること、など

 このように、学校及び教職員に求められている役割は、あくまで日頃から子ども達に接している立場から求められる役割と「教育」の観点からできることである。そして、このような学校等に対して、教育委員会にできる役割は、「学校等の取組への支援及び一般的な家庭教育の充実のための支援」等がある。
 その一方で、学校等でできないこととしては、1虐待が疑われる家庭への立入調査等の介入、2虐待を受けた子ども又は虐待を行う保護者に対する医療・福祉・保健的な措置等であり、これらの役割を学校や教職員が担うことは困難である。
 このように、児童虐待防止の取組において、学校に「できること」と「できないこと」を明確にしていくと同時に、「学校にできること」については組織的な対応を進めていくことが重要である。このようにして、児童虐待の防止に関して、学校及び教職員に過大な責務や負担を負わせないようにする必要がある。

(3) 教職員の留意点:
 教職員は、与えられた役割のもとで、「児童虐待を受けた者は自分の学校や学級にも存在しうる」という意識を持って対応する必要があり、被虐待児童を発見した場合には、「特別な対応方針を検討し、それを実行する」ことが必要である。
 また、教職員は、日常的に子ども達と接する機会が多く、子ども達の変化に気づきやすい立場にあることから、早期発見努力義務・早期通告義務が課されているが、被虐待児童については、多様なケースが考えられるため、当該児童生徒の状況を勘案せずに、一律に他の子どもと同様の対応をしたり、無理に集団に溶け込ませようとすると、逆に当該児童生徒にストレスを付加することとなり、指導がマイナスに作用することがありうるため、特に注意が必要である。
 さらに、これらの子ども達に対しては、教育上の指導だけで課題が解決するとは限らず、福祉・医療・警察等の関係機関との連携が必要となる場合がありうるので、他の子どもと同様の指導で対処するわけにはいかない。
 このため、教師は、このような子どもがいた場合には、これを「自分だけの力で何とかしよう」、「自分の指導力不足ではないか」などと思って、抱え込むことなく、早期に校内関係者(校長、教頭、生徒指導主事、担任、養護教諭及びスクールカウンセラー等)で共通理解、アセスメント(評価)及び対応策を検討する必要がある。
 そのためには、校長は、教職員が上記のような状況に遭遇した時に、安心して管理職や生徒指導主事又は養護教諭等に相談ができ、校内で対応策を検討できるよう、校内の連携・協力体制の整備や教職員間の共通理解を図ることなどについて積極的に取り組む必要がある。
 重要な点は、これらの子どもをいかに早く発見し、校内挙げて対応を検討して対応し、必要であれば、関係機関と連携することにより回復措置の取組を実施することである。そのために、あらかじめ、これらの子ども達がいた場合の校内の対処方針を決め、その周知を図るとともに、必要な校内体制作りを行い、さらに、関係機関との日頃からの連携に努めておくことが重要である。

2 改正児童虐待防止法及び児童福祉法:
 児童虐待の防止の充実に向けて、平成16年に虐待防止法及び児童福祉法の2つの法律が改正されている。
(1) 児童虐待防止法の改正:
 児童虐待防止法における主な改正事項は、
1 法の目的規定の改正(ア:児童虐待が児童の人権を著しく侵害するものであり、将来の世代の育成にも懸念が生じること、イ:国及び地方公共団体の責務を定めること、ウ:児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置を定めることなど)、
2 児童虐待の定義の見直し(ア:保護者以外の同居人による児童に対する身体的虐待、性的虐待及び心理的虐待を保護者が放置することも、保護者としての監護を著しく怠る行為(ネグレクト)として児童虐待に含まれること、イ:児童の面前で配偶者に対する暴力が行われること等直接児童に向けられた行為ではなくても、児童に著しい心理的外傷を与えるものであれば児童虐待に含まれること)、
3 国及び地方公共団体の責務の改正(ア:関係機関等との連携強化等必要な体制の整備、イ:研修等の必要な措置、ウ:広報その他の啓発活動、エ:調査研究及び検証、などの取組を行うこと)、
4 児童虐待の早期発見等(ア:児童虐待の早期発見努力義務が教職員等の「個人」だけでなく学校等の「組織」にも課されたこと、イ:国及び地方公共団体の施策に協力すること、ウ:学校等は児童虐待防止のための教育又は啓発に努めなければならないこと)、
5 児童虐待にかかる通告義務の拡大(「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大されたこと)、
6 警察署長に対する援助要請等、
7 面会・通信制限規定の整備、
8 児童虐待を受けた子ども等に対する学業の遅れに対する支援、進学・就職の際の支援、
などに関する規定が整備された。

(2) 児童福祉法の改正:
 一方、児童福祉法における児童虐待防止対策等に関連した主な改正事項としては、
1 児童相談に関する体制の充実(ア:児童相談に応じることを市町村の業務として法律上明確にしたこと、イ:児童相談所の役割を専門的な知識及び技術を必要とするような重篤な事例への対応や市町村の後方支援に重点化したこと、ウ:保護児童に関して「要保護児童対策地域協議会」を法的に位置づけ、関係者間での情報交換と支援の協議を行うこととしたこと)、
2 児童福祉施設、里親等の在り方の見直し、
3 要保護児童に関する司法関与の見直し、
などに関する規定が整備された。
 以上のような児童虐待防止法及び児童福祉法の改正の趣旨及び内容については、既に通知や会議等において周知を図っているが、今回の調査研究で学校への周知徹底が必ずしも十分でないことが示されたことから、今後ともその趣旨の徹底を図る必要がある。


前のページへ   次のページへ