『生徒指導メールマガジン』 第16号

(平成18年1月31日)
文部科学省初等中等教育局児童生徒課

目次

  1. 巻頭言:「ゼロトレランス方式」について(児童生徒課長坪田眞明)
  2. 大阪府教育委員会(市町村教育室小中学校課及び児童生徒支援課):「生徒指導に関する大阪府のユニークな取組について」
  3. 施策紹介:
    • 「平成18年度予算案における生徒指導関係事業について」
  4. 主要行事の予定又は連絡事項等
  5. 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

1.巻頭言:「ゼロトレランス方式」について(児童生徒課長坪田眞明)

  各都道府県・指定市教育委員会の生徒指導関係者の方々には、日頃から生徒指導の充実についてご尽力をいただいており、この場を借りて深く感謝申し上げます。
  ところで、文部科学省では、昨年中盤から相次いだ児童生徒による重大な問題行動等への対応の充実を図るために、「新・児童生徒の問題行動対策重点プログラム」(以下「新プログラム」という。)をとりまとめ、昨年9月27日に公表したところです。新プログラムは、昨年の長崎県佐世保市での小6女児同級生殺害事件に対応して作成した「児童生徒の問題行動対策重点プログラム」をフォローアップし、家庭教育の支援等を加えるなどして見直しを図ったもので、一連の事件を含む児童生徒の問題行動等に係る当面の重点的対応策を提示しています。
  その後も、児童生徒の問題行動は、新プログラムが想定したような重大深刻な問題行動が跡を絶たないばかりか、全体的な減少傾向の中にあって暴力行為、いじめ等が相当な規模で発生しており、特に小学校の暴力行為については2年連続で過去最高を更新するなど、予断を許さない状況にあります。新プログラムにおいては、1.生徒指導の組織体制の整備、2.有害情報対策・情報モラル教育の充実、3.社会性を育成する教育等の充実、4.家庭教育への支援の一層の充実の四点の柱を当面の重点課題として位置付けています。都道府県等の皆様には、一昨年来、生徒指導の充実に向けて大変なご努力を払っていただいたところですが、新プログラムの趣旨等をご理解いただいた上で、同様に重要な課題となっている児童生徒の安全の確保の問題と併せて、一層の取組をお願いします。
  ところで、新プログラムでは、学校の生徒指導の組織体制の整備の中で、「「ゼロトレランス(毅然とした対応)方式」のような生徒指導の取組みを調査・研究する」という施策を提示しています。
  この「ゼロトレランス方式」とは、クリントン政権以来、米国の学校現場に導入されている教育理念及び教育実践を表現したもので、学校規律の違反行為に対するペナルティーの適用を基準化し、これを厳格に適用することで学校規律の維持を図ろうとする考え方であり、軽微な違反行為を放置すればより重大な違反行為に発展するという「破れ窓理論」による説明も見られます。
  「ゼロトレランス方式」については、我が国では、これまで、「銃が蔓延し契約観念の発達した米国社会独自の理念」とか「教育的意義より政治的意図が強いポリシー」とする見解や、直訳では「寛容度ゼロ」となることから、「規律違反=放校」という厳罰主義・管理徹底主義の言い換えにすぎないなどの評価をされることが多かったわけですが、その後の米国における成果等を踏まえると、施策の名称はともかく、その根底にある「(処罰)基準の明確化とその公正な運用」という理念そのものは、学校規律という身近で基本的な規範の維持を指導・浸透させる過程で、児童生徒の規範意識(一定の規範に従って行動するという意識)を育成するという観点から、我が国の生徒指導の在り方を考える上でも参考とすべき点が少なくないものと考えています。
  一方、我が国の生徒指導に関する考え方においては、問題行動(非行)等に対する具体的対応は、これを生徒指導の「消極面」として捉え、こうした「消極面」よりは、「積極面」としての児童生徒の健全育成活動やカウンセリング機能を活用した生徒指導の意義を強調しつつ、「一人一人の個性の伸長を図りながら、同時に社会的な資質や能力・態度を育成し、さらに将来において社会的に自己実現できるような資質・態度を形成していくための指導・援助であり、個々の生徒の自己指導能力の育成を目指す」(生徒指導資料第20集)ものとされています。このような生徒指導の考え方は、生徒指導の分野で取り扱う対象として、不登校のような「非社会的」な問題行動が生徒指導上の大きな課題となってきたこと等とも無関係ではないように思われますが、児童生徒の人格の育成を目指すという教育の基本理念・基本的目標からして、そのような生徒指導の考え方自体は至当であると考えます。ただ、生徒指導の「消極面」と「積極面」とは、どちらか一方で足りるとか二律背反的なものとして捉えるべきものでなく、双方共に追求し実践されなければならないものであることは、再度認識する必要があると考えています。
  また、「消極面」といわれる問題行動への個別的対応としての生徒指導については、学校における生徒指導の現場において,教職員それぞれの判断と対応に頼って運用されてきたのが実情であり、その具体的対応方針や基準の在り方について、必ずしも十分な検討が行われてこなかったという経緯も否定しがたいところです。経験豊富な教員の大量退職を迎え世代交代が進む中で、問題行動に毅然として対応し、生活指導等を通じて学校規律を回復させ、子どもの規範意識の育成に資するという生徒指導の側面について、その今後の在り方等を様々な観点から検討していくことは大変意義深いものと考えています。
  さらに、我が国においても、名目はともかく実質的には「ゼロトレランス方式」に相当する取組を導入・実践し効果を上げている学校が既にあることも忘れてはならない事実です。そうした実践事例についても幅広く調査を進め、我が国の実情に合った、いわば日本型「ゼロトレランス」なるものを提唱し得るとすれば、今回の調査研究が有意義なものとなると考えます。
 このような我が国での実践事例の調査等を含め、今後の生徒指導の在り方を考える上で参考となる点については、現在、国立教育政策研究所生徒指導研究センターにおいて、有識者による調査・研究を進めていただいており、当該調査・研究の参考とすべく、先般、センター及び児童生徒課との連名による調査も実施したところですが、都道府県等教育委員会の皆様方には、是非、本調査・研究の趣旨をご理解いただき、建設的な意見等を寄せていただきたいと思っています。

2.大阪府教育委員会(市町村教育室小中学校課及び児童生徒支援課):「生徒指導に関する大阪府のユニークな取組について」

  大阪府では、以下の3つのユニークな取組を行っております。文部科学省児童生徒課においては、この大阪府の取組は、各都道府県教育委員会の参考となるものではないかと思い、大阪府教育委員会の小中学校課及び児童生徒支援課に依頼して、以下の3つの取組についてご執筆頂きました。これら各取組の詳細については、上記2課にお問い合わせ下さい。

1 「学校の危機管理時の支援体制について」(大阪府教育委員会市町村教育室小中学校課)

  教員がセクシュアル・ハラスメントをした。生徒が体罰により大怪我をした。子どもの傷害事案で学校内が混乱している。保護者の対応で学級運営や学校教育活動が正常にできない。全国的に見て、このような事案の報告が教育委員会に入らない日や、新聞に載らない日がないと思えるくらいに、学校教育の現場では、様々な危機と背中合わせである。このような事案が起こるたびに、「生徒へのセクシュアル・ハラスメントで教員が懲戒免職処分」、「生徒への体罰により減給1ヶ月」というような新聞報道がなされることも多くあり、さらには「○○(丸丸)では、教員の懲戒処分には、原則、氏名公表」というようなことまでがニュースになる。このような顛末が繰り返されるたびに、学校の危機における支援体制の必要性について深く考えることがある。
  本稿が、学校の危機管理となっているが、学校の危機とは何であろうかということを考えたとき、まず、学校の主役は誰なのかという基本的な命題の結論を教育委員会として押さえておかなければならない。その答えは明らかで「学校で学ぶ子ども」たちが主役ということである。学校の危機として、学校内に様々な事案が起こり、教職員が対応に追われる、そして学校業務が混乱になる。新聞やテレビなどで学校名が明らかになる。このような状態が子どもたちにとって望ましい環境であるとは言えない。このようなに学校が危機に直面した時に、教育委員会が学校の支援や適切な対応についての指導とは、学校を管理することでなく、管理職のマネージメント力と生徒指導を担当する指導主事として学校にいる子どもたちの支援体制をつくることが必要と考えている。そのためには、高度に専門的なスキルと体制が求められるのではないだろうか。
  このような学校の危機管理や危機状況の支援のために、大阪府教育委員会では平成16年度から『被害者救済システム』を「学校における子どもの人権侵害防止推進事業」として運用している。この事業は、学校や教育委員会が行う対応や取組に、子どもの権利侵害事象に精通する弁護士、臨床心理士や精神科医などの支援を受けられる体制を構築したものである。
  事業の詳細はWeb(http://www.pref.osaka.jp/kyoishinko/kotogakko/seitosidou/qsystem.html)を確認いただきたいが、これまでの具体的な事案を紹介したい。(事案は内容を一般化しています)

事案1

  学校でセクシュアル・ハラスメント事案が生起した。教員の処分内容が新聞に掲載される。子どものケアをはじめ、学校での対応をどうするか。

支援1

  教育委員会からの指導助言を行うほかに、弁護士と臨床心理士を学校へ派遣し、生徒への対応についての研修と教員がどのように対応を行うかについてのケース会議を開催した。この結果、子どものケアの方法や保護者への対応と説明についての具体的な指示を行い、被害者だけでなく、すべての子どもが、事象後に安心して学校生活を送れる体制ができた。

事案2

  子どもがカッターナイフを使用して、傷害事案を起こした。事件を嗅ぎ付け、マスコミが学校へ来た。子どもを落ち着かせるための対応や保護者への説明に学校は苦慮している。

支援2

  学校へ弁護士とスクール・ソーシャル・ワーカーを派遣し、ケース会議を開催した。教員の対応についての指示など行った。教育委員会の指導だけでなく、専門的な支援があるということで、学校長をはじめ、教員も安心できた。専門的な対応を学校が行ったことで、保護者やマスコミを含め、学校は早く落ち着きを取り戻した。

  このように、学校の危機の際において、専門的な支援体制があることは、現場の校長や教員にとっては非常に安心のできる機能であり、この事業のメリットのひとつと考えている。学校をよりよくするためには、学校や教員を管理することだけで達成できるものではないと考えている。かつての大阪府でもあったことだが、教員を処分したり、学校任せの子どものケアや、綱紀粛清やなどの管理の通達をすることだけで、子どもへのケアや事象の対応が不十分ということでは、学校の危機管理ができているとは言えないのではないだろうか。
  今日もまた、どこかで事案が起きる。そこで生徒指導を担当する教育委員会の指導主事として何ができるのか、問われているのではないだろうか。

2 「小学校におけるスクール・ソーシャル・ワーカーの活動について」(大阪府教育委員会市町村教育室児童生徒支援課)

(1)配置のねらい

  大阪府は、平成16年度の不登校児童生徒数が全国で最も多く、とりわけ問題行動をともなう中学校の「あそび・非行型」不登校生徒の占める割合が高い。しかし、それらの問題行動の要因をたどると、学校生活に起因するものだけでなく、幼児期からの虐待、DV等の不適切な養育環境、子どもの発達を無視した過保護・過干渉など、様々な家庭環境に起因すると思われる問題が含まれており、学校だけの取組みでは解決が困難な事例が多い。
  また、中学校で顕在化する問題行動であっても、小学校でその兆候が現れている例も多く、早期の適切な取組みが求められている。しかし、小学校教員の中には、学級の児童のことは担任ひとりが責任を持つという意識を持ち、チームで対応した経験を持たない者がまだまだ多く、また問題行動の抑制や不登校の未然防止に対する関係機関との連携についても、情報も経験も不足している状況があった。
  そこで、大阪府教育委員会では、社会福祉に関して高度に専門的な知識・経験(社会福祉士等)を有し、過去に学校で相談・援助活動経験のある人材を選び、スクールソーシャルワーカー(以下、SSW)として小学校に配置し、福祉的な手法の導入とともに、チーム対応や関係機関との連携等に関する教員のスキルアップを目指すこととした。
  SSWは、福祉の視点から児童とその環境を見つめ、事例のアセスメントや課題解決に向けてのプランニングを行うケース会議を開催し、関係機関との調整・連携を進めるとともに、必要に応じて教員とともに家庭訪問するなど直接支援も行うこととしている。

(2)配置の概要

  SSWは府内7地区の7小学校に1日6時間、週3日(うち1日は配置市以外の地区内での活動日)配置されている。主な活動内容は次の通りである。

  1. 不登校児童や課題を抱える児童の状況把握
  2. 不登校児童や課題を抱える児童・保護者・教員に対するケースマネージメント
  3. 学校・保護者・関係機関との円滑な連携のための連絡調整
  4. 市町村教育委員会の要請による虐待ネットワーク会議等への参加や研修会での講演、配置地区内の他市町村立小中学校への支援

(3)活動の状況

  配置9ヶ月間(4月~12月)の活動状況であるが、7小学校を中心に290の事例に対応している。相談対象は教員77パーセント、保護者10パーセント、本人その他が13パーセントであり、相談内容は31パーセントが虐待、21パーセントが育成相談(不登校・いじめ・育児等)に関わるものである。

【事例】

  母親からの子どもの家庭内暴力と万引きの相談に、校長がSSWを紹介する。SSWが母親と5回の面接を行った結果、長年にわたる父親から母親への暴力や、父親・兄から本人への暴力、母親の精神的な病気、困難な生活状態等、家庭環境が与える本人への身体的・心理的負担がかなり大きいことがわかった。 そこで、関係教職員やSSWによる校内ケース会議を開催し、SSWは母親との面談を継続すること、管理職・関係教職員は子どもが安心できる環境づくりに努めることを確認した。
  第2回の会議には、兄が通う中学校の生徒指導主事・担任も参加し、情報交流を行った。
  さらに次第に明らかになる事例の深刻さから、子ども家庭センター(児童相談所)とも相談のうえ、市の虐待防止ネットワークに通告を行うとともに、ネットワーク事務局・子ども家庭センター・保健所の精神保健福祉士も交えた連携ケース会議を開催した。会議では、今後、母親の精神的なケアは兄の通う中学校のスクールカウンセラーが担当すること、当該児童や兄の生活状況の把握や学習支援については小・中学校教員が連携して行うこと、子ども家庭センターもグループワークや相談活動を通して支援を行うこと等の役割分担を決めた。また、母親の主治医とSSWが話し合いの場を持つなど医療機関との連携も行った。
  現在は、母子ともに落ち着きを示しているだけでなく、小学校からの情報により兄についての支援も中学校を中心に行われている。
  この事例のように深刻なケースについては、SSWのコーディネートにより、積極的に子ども家庭センターや市の福祉機関等の関係機関との連携を行い、効果を上げている。

(4)今後の課題

  都道府県レベルでSSWを導入した先進事例はほとんど見られず、本府の取組みも試行錯誤の繰り返しである。そこで、導入初年度である今年度は、SSW及び配置7市教育委員会担当指導主事との連絡会を毎月実施し、各校の取組事例や生徒指導体制、教員の意識の変化等を交流しながら、成果と課題を整理している。
  現在の課題として以下の3点が挙げられる。
  まずは、SSWの役割である。冒頭に述べたように、小学校においては、チームでの対応や関係機関との連携に不慣れな教員が多い。児童や保護者の思いを受け止め、児童のために懸命に取り組む担任の思いを大切にしつつ、関係機関と連携しながらチームとしていかに取り組むか、そのためにSSWがどんな役割を担うべきなのか。これは事例によって様々であり、多くの事例を重ねる中で考えていく必要がある課題である。
  次に、SSWの人材確保である。学校という組織の中で、教育の専門家である教員と連携しながら活動するためには、SSWの側に資格以上に学校等での活動経験から生まれるコミュニケーション力が重要になる。残念ながら、本府では社会福祉士の資格を持ちながら学校での活動経験を持つ人材が少なく、SSWの配置を効果あるものとするためにも、そのような人材をいかに確保するかが大きな鍵である。
  最後に、配置市以外の地区活動の促進である。現在のところ、SSWの地区活動日は週1日しかないが、府としては府内の多くの小学校にSSWの活動が認知され、状況に応じてチームでの対応や関係機関との連携を進める開かれた生徒指導体制の充実をめざしたいと考えている。そのために、10月には配置校でのケース会議等の取組みや配置市での研修会等の実践例を基にした短期間で実施可能な「活動プラン」を冊子にまとめ、府内全市町村教育委員会に配布した。今後も、SSWの効果的な活用について情報発信を続けながら、積極的に他小学校へのSSW派遣にも取り組んでいきたいと考えている。

3 「『指導総合コーディネーター』について」(大阪府教育委員会市町村教育室小中学校課)

(1)概要

  中学校において生徒指導上の諸問題を解決するためには、学校のあらゆる教育活動が相互に関連し、一貫した整合性のあるものとして展開される必要がある。そのために、大阪府では、各校務分掌間の有機的な運用と、学校全体の指導体制の充実を図るとともに、家庭、地域や警察等の関係機関との連携のもとに、学校の総合的な問題解決機能の向上を図るために、平成15年度より、中学校に「指導総合コーディネーター」という役割を導入することとした。
  指導総合コーディネーターは、平成15年度は13中学校、平成16年度は63中学校、平成17年度は87中学校に加配措置しており、教育指導に熱意と識見を有し、実践力、企画・調整力に優れた教育経験が豊かな教諭がその役割を担っている。

(2)業務内容

  指導総合コーディネーターは、配置校において、校務分掌を兼ねることは可能であるが、あくまで「指導総合コーディネーター」として位置付け、学級担任・教科担任は担当せず、おおむね次の事項を担当することとしている。

  1. 学校の持つ教育機能を総合的に向上させるコーディネーターとして、学校内外にわたって活動する。
  2. 中学校の教育指導の核となり、学校における教育力を向上させることによって、学校内の指導体制の充実を図る。
  3. 家庭、地域や警察等関係機関との連携を担うことにより、学校外からの生徒指導サポートの充実を図る。
  4. 大阪府教育委員会が指定する研修及び研究会等に参加し、校内にその成果の普及を図る。

  具体には、生徒指導主事は、学校における生徒指導全般を所管するものであるが、指導総合コーディネーターは、生徒指導主事をはじめとして、各分掌・委員会の主任・チーフ等と連携し、学校における課題解決のために、生徒指導面、学習指導面、進路指導面などさまざまな観点から取組みを構築していくコーディネート役である。
  さらに、平成17年度第1回指導総合コーディネーター研修会では次の3点を活動のポイントとして示した。

生徒の実態把握

  担任や授業を持つ教員からの情報を収集するなどして、指導総合コーディネーター自らが一人ひとりの生徒の状況を把握し、きめ細やかな指導や対応を行っていく。

目標達成への行動戦略

  現状を分析し、解決すべき課題を明確にした上で、長期の目標を立て、それに向けた中期・短期の目標を設定し、目標達成のための方策を企画立案し全教職員で実行していく。

関係諸機関・保護者・地域との連携協力

  地域・PTA・関係諸機関との連携を推進する。

(3)研修

  大阪府教育委員会において、指導総合コーディネーター対象に年間3回の研修会を実施している。第1回はコーディネーター全員を対象としたもので、第2回は府内を7地区に分け地区別にて研修会を行う。第3回は、コーディネーターと中学校生徒指導主事、小学校生徒指導担当合同の研修会を行っている。特に、第2回の地区別研修では、コーディネーターが10数名単位で実践交流及び研究協議を行うことで、コーディネーターの資質の向上に効果を挙げている。

(4)実践例

  以下は、府内の指導総合コーディネーター配置校において、加配教員がコーディネートして実施している取組みの一部である。

1.問題行動・不登校等への取組み
  • 情報共有のシステムの構築
      (定期的な小中合同の生徒指導担当者会議やプロジェクトチームの設置、個表の作成、幼稚園定期訪問など)
  • 問題行動未然防止の取組
      (小中学校相互の出前授業、小中合同の生活実態調査、子育てカレンダーの作成、生徒会活動の活性化、喫煙防止教育ビデオの作成など)
  • 不登校未然防止の取組
      (小中合同の不登校対策会議の開催、児童生徒の居場所づくりとしての校内適応指導教室の設置及び運営、教育相談体制の充実、小学校での「居心地アンケート」の実施など)
2.保護者・地域・関係機関との連携
  • 地域教育協議会との連携(子どもの安全見守り活動など)
  • PTAとの連携(校区清掃活動、環境整備活動の実施など)
  • 所轄警察との連携(非行防止教室、防犯教室、薬物乱用防止教室の実施など)
3.学習指導・進路指導の充実に向けた取組み
  • 児童生徒の実態把握(入学時の学力調査の実施、)
  • 多様な教育活動(国際コミュニケーションルームの設置、)
  • 小中連携した授業改革の推進
      (ビデオを活用した授業研究や小中合同の研究授業や教材開発、コーディネーターによる小学校での総合的な学習の時間における授業補助、小学校教員による中学校授業参観・交流、算数・数学のカリキュラム小中合同開発など)
  • 進路指導の充実
      (小中9年間のキャリア教育カリキュラムの開発、卒業生全員の進路先訪問、職業体験学習の充実など)
4.人権教育の充実
  • 人間関係づくりのスキルを身に付ける取組
      (幼小中11年間を見通したプログラムやカリキュラムの開発、幼小中教職員のグループエンカウンター研修の開催、コミュニケーション能力を身に付けるカリキュラムの実践など)
  • 道徳教育の充実(3年間通した道徳の時間におけるカリキュラムの作成など)

(5)まとめ

  現在、大阪府内の中学校においては、暴力行為、不登校など、多くの課題を抱え、大変厳しい状況である。そのため、生徒指導体制の強化と構内組織の活性化は是非とも必要であり、コーディネーターを配置することにより、校内組織が十分に機能するとともに、学校が組織体として活性化し、教育効果をあげ、教員が個人として対応するのではなく、学校が共有すべき問題として組織的に対応することが可能となる。
  さらに、指導総合コーディネーターは、監督やコーチにように決してベンチにいるのではなく、活躍する場はあくまでフィールド内であり、プレーヤーであることを前提に、指導総合コーディネーター自身が行動することは当然、校長や教頭そして担任や他の教員の持つ情報を収集・整理し、教員の効果的な行動に結び付けていくことを期待するものである。

3.施策紹介

「平成18年度予算案における生徒指導関係事業について」

(1)わかる授業・楽しい学校の実現

1.教育課程の基準の改善

  新しい学習指導要領の下,基礎・基本の確実な定着を目指し,わかる授業を行い,子どもたちに達成感を味わわせる。また,総合的な学習の時間などを通じ,自ら学ぶ意欲を引き出すなど,楽しい学校の実現を図る。

2.高等学校教育の個性化・多様化

  生徒の多様な能力・適性,興味・関心等に対応し,総合学科や単位制高校など特色ある学校・学科・コースの設置の促進や,生徒の選択幅の広い多様な教育課程の編成,高等学校入学者選抜の改善などを推進する。

3.進路指導の充実

  生徒一人一人の進路希望等に基づいた進路選択・決定への指導が行われるよう,中学生の高校体験入学など啓発的体験活動を一層充実するとともに,高等学校入学時の学校生活への適応等について計画的に指導するようガイダンスの機能の充実を図る。

4.出席停止制度の適切な運用

  小・中学校の出席停止制度について,要件の明確化,手続に関する規定の整備,出席停止期間中の学習支援等の措置を講ずることを内容とする学校教育法の改正(平成14年1月施行)に基づき,一層適切な運用を図る。

(2)心の教育の充実

1.児童生徒の奉仕活動・体験活動の充実

○豊かな体験活動推進事業 平成18年度予算案額:470百万円

  「体験活動推進地域・推進校」,「地域間交流推進校」,「長期宿泊体験推進校」を指定するとともに,「体験活動推進地域・推進校」の中で命の大切さを学ばせるのに有効な体験活動について調査研究を実施する。また,ここで得られた実践成果をブロックごとに開催する交流会等を通じて広く全国に普及させる。

  • 体験活動推進地域・推進校 756校
      (命の大切さを学ばせるのに有効な体験活動についての調査研究協力校を含む)
  • 地域間交流推進校 141校
  • 長期宿泊体験推進校 282校
2.道徳教育の充実等

○道徳教育推進事業 平成18年度予算案額:295百万円

  • ア:児童生徒の心に響く道徳教育推進事業
      学校教育全体の中で自他の生命のかけがえのなさ等を積極的に取り上げ、命を大切にする心などを育むための指導方法、教材開発等について実践研究を行い、その成果の普及を図る。
  • イ:伝え合う力を養う調査研究
      児童生徒が互いの考えや気持ちを伝え合う力を高め、生活上の問題を言葉で解決する力を育てるとともに、相互理解や望ましい人間関係づくりを進めるためのカリキュラム等の在り方について、実践研究を行う。
  • ウ:豊かな心を育む地域推進事業(新規)
      学校の道徳教育を中核に、地域の様々な団体や機関、有志などの積極的な支援の下で、全国のモデルとなる子ども達の豊かな心を育てる幅広い教育活動を展開し、その成果を普及する。
  • エ:「未来を拓く心」を育てる支援活動の充実(心のノート)
      児童生徒が身に付ける道徳の内容を分かりやすく表した「心のノート」をすべての小中学生に配布し、道徳性の育成を図る。

(3)教員の資質能力の向上

1.教員養成における生徒指導関係科目の履修の充実

  教員のカウンセリング能力の向上のため,教育職員免許法を改正し,教員養成課程における生徒指導,教育相談等に関する内容を充実(平成12年より全面適用)。

2.生徒指導上の諸課題に対応するための指導者の養成を目的とした研修(独立行政法人教員研修センターの運営費交付金において措置)

  各教育委員会等の指導主事等を対象に、今日的な生徒指導の在り方等について、必要な知識等を演習形式により修得させ、各地域においてこれらの内容を踏まえた研修等が行われることを目的に実施。

3.生徒指導資料の作成

  小・中・高等学校において生徒指導にあたる生徒指導主事,学級担任その他の教員のために,生徒指導上の諸問題への対応に関する理論や実践などをわかりやすく解説した指導資料等を作成し,各学校や教育委員会等に配布する。

  • 第1集 「生徒指導上の諸問題の推移とこれからの生徒指導」
  • 第2集 「不登校への対応と学校の取組について」

(4)教員の加配等

1.生徒指導担当教員に係る定数措置

  きめ細かな生徒指導の充実を図るため,従来から生徒指導を担当する教員の定数を措置。

2.児童生徒支援加配

  小中学校において,学習進度が著しく遅い児童又は生徒が在籍する学校及びいじめ,不登校,暴力行為,授業妨害など児童又は生徒の問題行動等が顕著に見られる学校等,特にきめ細かな指導が必要とされる学校において,児童生徒の状況に応じ,特別な学習指導,生徒指導,進路指導が行われる場合に,各都道府県の申請に基づき教員定数を加配。なお,高等学校においては,中途退学の多い学校等に対し,各都道府県等の申請に基づき教員定数を加配。

(5)教育相談体制の充実

1.スクールカウンセラー活用事業補助 平成18年度予定額:4,217百万円

  平成13年度から,スクールカウンセラーを活用する際の諸課題についての調査研究事業を行うために必要な経費の補助を実施。(補助対象:都道府県・政令指定都市、配置校数:約1万校、補助率:1/2、資格要件:臨床心理士,精神科医,心理学系大学教員,このほか,スクールカウンセラーに準ずる者(心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務について一定の経験を有するもの)を配置することも可)。

2.「子どもと親の相談員」等の配置 平成18年度予定額:500百万円

  小学校段階における不登校や問題行動などの未然防止・早期発見のため,「子どもと親の相談員」を引き続き配置するとともに,近年の小学生における暴力行為の増加を踏まえて,生徒指導体制の充実や関係機関との連携を推進する「生徒指導推進協力員」の配置を拡充する。(子どもと親の相談員配置予定:910校、生徒指導推進協力員配置予定:210地域、委託先:都道府県教育委員会(47都道府県)、勤務形態:週3日,1回あたり半日程度、主たる職歴の状況:子どもと親の相談員:退職教員,民生児童委員など、生徒指導推進協力員:退職警官,退職教員(校長)など)

(6)家庭・学校・地域の連携

1.問題行動に対する地域における行動連携推進事業 平成18年度予定額:526百万円

  問題行動等を起こす個々の児童生徒に着目して的確な対応を行うため,学校,教育委員会,関係機関等からなるサポートチームの形成など,地域における支援システムづくりを行う(47地域4ヶ所)。また,「あそび・非行」の不登校児童生徒や学校内で深刻な問題行動を起こす児童生徒に対応するため,学校復帰や立ち直りに向けた,学校内外での支援の場や機能の在り方について調査研究(自立支援教室の設置:47地域2ヶ所)を行う。

2.生徒指導総合連携推進事業 平成17年度予算額:55百万円(国立教育政策研究所)

  家庭,学校,地域住民,関係機関等が一体となり,問題行動等の予防と児童生徒の健全育成に向け,地域のネットワークづくりを踏まえた実践的な推進事業を実施。(委嘱先:都道府県教育委員会(47都道府県)、委嘱期間:2カ年)。

3.問題を抱える青少年のための継続的活動の場づくり事業 平成17年度予算額:76百万円

  非行等の問題を抱える青少年の立ち直りの支援策として,地域のボランティア団体,青少年団体,スポーツクラブ等と連携・協力し,社会奉仕活動や体験活動,スポーツ活動などを行うことができる継続的活動の場(居場所)を構築する。

(7)不登校の子どもたちに対する対応

1.教育支援センター(適応指導教室)の整備

  教育委員会が設置・運営する不登校児童生徒の学校復帰に向けた指導・支援を行う教育支援センター(適応指導教室)の設置を推進(平成16年度:1,152ヵ所)。

2.スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN) 平成18年度予定額:836百万円

  不登校児童生徒の早期発見・早期対応をはじめ,より一層きめ細かな支援を行うため,学校・家庭・関係機関が連携した効果的なネットワークの在り方とともに、ひきこもりがちな不登校児童生徒やその保護者に対応するため訪問指導員を指定地域に配置し、効果的な訪問指導の在り方について調査研究を行い、地域ぐるみのサポートシステムを整備する。(広域スクーリング・サポート・センター:47箇所、地域スクーリング・サポート・センター450箇所)。

3.不登校への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業 平成18年度予定額:104百万円

  不登校児童生徒等に多様な支援等を行うため,実績のあるNPO,民間施設,公的施設に対し,効果的な学習カリキュラム,活動プログラム等の開発を委託するとともに、新たに「あそび・非行」の不登校児童生徒の立ち直りや学校復帰を支援するためのプログラムの開発を委託する。

4.出席扱いについての措置

  不登校児童生徒が教育支援センター等の学校外の機関で指導等を受ける場合について,一定要件を満たすときは校長は指導要録上「出席扱い」にできることとする。(「登校拒否問題への対応について」(平成4年9月24日初等中等教育局長通知),「不登校への対応の在り方について」(平成15年5月16日初等中等教育局長通知))。
  この場合,通学定期乗車券制度(いわゆる「学割」)の適用を受けることができる。(「登校拒否児童生徒が学校外の公的機関等に通所する場合の通学定期乗車券制度の適用について(平成5年3月19日初等中等教育局中学校課長通知))
  また、平成17年7月より構造改革特区の取組を全国化し、不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用して行った学習活動について、訪問による対面指導が適切に行われていることなどの一定の要件を満たす場合、指導要録上”出席扱い”することができることとする。

5.中学卒業程度認定試験における受験資格の拡大

  不登校のため,結果として中学校を卒業できなかった場合においても,同年齢の生徒に遅れることなく高校受験ができるようにするため,中学校在学中に中学校卒業程度認定試験を受験できるよう学校教育法施行規則を改正。

6.高等学校の入学者選抜の改善について

  高等学校の入学者選抜にあたって,不登校生徒については,進学動機等を自ら記述した書類など調査書以外の選抜資料の活用を図るなど,より適切な評価に配慮するよう都道府県教育委員会等に通知。

7.研究開発学校等の指定

  不登校を含め生徒指導上の諸問題に対応したカリキュラム・指導方法等を開発するため,研究開発学校制度(学習指導要領等の現行の教育課程の基準によらない教育課程の編成・実施を特例的に認める制度)等を活用して実践的な研究を行っている。

8.不登校児童生徒を対象とした学校の設置に係る教育課程の弾力化

  学校教育法施行規則の一部を改正(平成17年文部科学省令第38号、同年7月6日交付、施行)し、文部科学大臣が小学校、中学校、高等学校又は、中等教育学校(以下「小学校等」という。)において、不登校児童生徒を対象として、その実態に配慮した特別の教育課程を編成する必要があると認める場合、当該小学校等において教育課程の基準によらず特別の教育課程を編成することができることとする。なお、当該措置はこれまで構造改革特区として行っていたものを全国化したものである。

(8)学校における児童虐待防止

1.学校等における児童虐待防止に向けた調査研究 平成18年度予算案額:10百万円

  今年度から、各学校・教育委員会における児童虐待防止に向けた取組の充実を図るため、国内・諸外国の先進的取組等を収集・分析等の調査研究を行う。

(9)その他

1.薬物乱用教室の充実 平成18年度予算案額63百万円

  薬物乱用防止教室をはじめとする各種施策を推進し、薬物乱用防止教育の一層の充実を図る。

2.中高生の心と体を守るための啓発教材の作成 平成18年度予算案額:112百万円

  中高生が、自らの心と体を守ることができるよう、喫煙、飲酒、薬物乱用などの問題について、総合的に解説する啓発教材を作成する。

4 主要行事の予定又は連絡事項等

  (全てを記載しているわけではありませんので、必ず正式文書で確認をお願いします。)

「豊かな体験活動推進事業ブロック交流会」

  • 北海道・東北ブロック(福島県:「コラッセ福島」) 2月2日(木曜日)~3日(金曜日)
  • 中国・四国ブロック(愛媛県:「愛媛県県民文化会館」) 2月6日(月曜日)~7日(火曜日)
  • 中部ブロック(岐阜県:「ホテル・グランベール岐山」) 2月9日(木曜日)~10日(金曜日)

「問題行動に対する地域における行動連携推進事業・連絡協議会」

  (航空会館(東京都港区新橋1-18-1):7階) 2月15日(水曜日)

「不登校フォーラム(京都府)」

  (ルビノ京都堀川(京都府京都市上京区東堀川通下長者町下ル)) 2月24日(金曜日)

生徒指導メール・マガジン第17号

  2月28日(火曜日)

「キャリア・スタート・ウィーク・キャンペーン」が始まっております。

  文部科学省ホームページにおきまして、「キャリア・スタート・ウィーク・キャンペーン」の詳細について掲載いたしましたので、ご覧ください。

  また、文部科学省では、中学校でキャリア教育の中核である職場体験を通した学習活動の一層の推進を図るため、学校はもとより受入企業・事業所等や家庭・保護者の皆様へのご理解を深めるとともに、活用していただくため、「中学校職場体験ガイド」として取りまとめました。このガイドについては、文部科学省ホームページにおいても公表しております。是非、ご活用いただきますようよろしくお願い申し上げます。

  文部科学省では、引き続き、各種施策を通じ、キャリア教育を推進してまいりますので、キャリア教育へのご理解・ご尽力をお願い申し上げます。

5 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

  今回は特になし。

本件連絡先

  • 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 生徒指導企画係
  • メール・マガジン問い合わせ先 <jidou@mext.go.jp
  • 電話:03‐5253‐4111(内線3055)、FAX:03‐6734‐3735
  • ※ 生徒指導及び進路指導上の優れた実践事例を公募したいと思います。全国的に紹介したい事例がある場合には、ご執筆の上、送信いただきたいと思います(その際、執筆者が都道府県・指定都市教育委員会でなくても、学校又は市町村教育委員会の執筆でも可です)。内容を見て、「各地域又は学校の優れた取組みの紹介」の項で紹介していきたいと思います。
  • ※ 教育課題についての質問や提言、他の都道府県教育委員会へ伝えたいニュースや連絡事項などありましたら、上記アドレスまで返信メールの送信をお願いします。なお、恐縮ですが、質問に関しては、全体に周知する事が必要なものについて、本メール・マガジンで回答していきます。
  • ※ メール・マガジンは、文書による通知・連絡とは異なり、あくまでも文部科学省からの情報提供を目的としています。通知・連絡については、従来通りの方法にて行いますのでご留意願います。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --