(平成17年2月25日)
文部科学省初等中等教育局児童生徒課
(1)「非行防止教室等プログラム事例集」については、前号(第4号:1月28日付け配信)にて紹介したところですが、今回、文部科学省のホームページ上に掲載いたしましたので、是非ご覧下さい。なお、この「非行防止教室等プログラム事例集」については、3月中に国・公・私立の全ての小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特殊教育諸学校、全ての都道府県警察本部及び警察署、並びに全ての児童相談所等関係機関に配布する予定です。
(2)また、「生徒指導メール・マガジン」バックナンバーも文部科学省ホームページ上に掲載しておりますので、お知らせいたします。なお、本メール・マガジンは、配信された皆様が「公の目的のために使用する場合に限り、当方に事前の又は事後の断りの必要なく、その全文又は一部を転用又は引用することができる」こととしておりますので、皆様におかれても積極的に広報頂ければ幸甚に存じます。
『夢』と言う言葉と『志』と言う言葉があります。それぞれ辞書上の意味はあるでしょうが、私は、時々以下のように考えることがあります。
例えば、「医者になりたい」という『夢』を持っている人がいるとします。本来ならば、その夢のもっと根本的なところにある「一人でも多くの病気や怪我で苦しんでいる人達を救ってあげたい」という『社会又は人のため』の思いがあるべきでしょう。この文章の中で、私は、勝手にこの「社会又は人のための思い」を『志』として表現したいと思います。
どんなに優れたコンピュータがあったとしても、それを「社会のため又は人のために良いことに使いこなそう」とする人間の意志がなければ、宝の持ち腐れです。同様に、どんなに「知・徳・体」を兼ね備えた優れた人間であっても、その自分の能力を「社会のため又は人のために良いことに使用しよう」とする人間の「志」が必要ではないでしょうか。
例えば、「教師になりたい」という『夢』を持っている人がいるとすれば、その根本的なところに「一人でも多くの子どもにより幸せな人生が歩めるような資質や能力を育てたい」という『社会又は人のため』の思い、『志』があるべきだと思います。
『夢』の実現は、何年にもわたる努力が必要であり、簡単には達成できません。それ故に『夢』を実現した場合には達成感があるのですが、『夢』は達成したら『夢』ではなくなるのです。その一方、『志』の達成は、人間の一生を要する大事業です。そして、それ故に『志』の実現には際限が無いけれども、だからこそ、人生の目標として設定する意味があるのだと思います。これまでも、能力があって努力も重ねてめでたく「夢」を実現した人が、その夢を達成した後で、目的を見失って、一度しかない人生の大切な時間を漫然と過ごしてしまったり、道を踏み誤ったりするケースは、枚挙にいとまがありません。
私は、「人のために生きる人生」は、人のためにもなるけど、その「人のために行う行為」を通じて「自分が生きている意味」とか、「自分の行っていることの必要性」や、「自分の存在や人生の意義」を見出すことができるのではないかと考えております。
「人のために」という「志」を持っている人は、『志』の実現に際限が無いが故に、自分の人生の目的意識を見失うことが無いのではないかと考えております。たった一度きりの人生なのだから、精一杯「人のために生きる」事を通じて、自分が生きている意味を感じながら、充実して過ごしていくこと、そんな人生もあっても良いのではないでしょうか。
最後に、文部科学省職員の心意気の一端の紹介をしましょう。文部科学省の幹部の部屋に行くと、よく目にするものに、初代文部大臣の森有禮の自筆による『自警』の書が掲げられております。それは「一向に省務の整理上進を謀り、若し其の進みたるもいやしくも之に安ぜず、愈々謀り、愈々進め、終に以って其の職に死するの精神覚悟あるを要す。(ひたすらに文部省の仕事に当たり、熟達に努め、仮にある程度進んでもそれに満足することなく、一層考え、努力し、最後にはその職に殉ずるくらいの命がけの精神覚悟が無ければならない)」というものです。あまりにも壮烈ですが、子ども達の人生の将来に関係する、教育行政に携わる者にはこのような心意気が必要なのかもしれません。
521校の市立学校を有する横浜市教育委員会においては、児童・生徒指導を「児童・生徒が相互理解に支えられた人間関係の中で、自他の尊厳を実感し、自己を健やかに生かしていけるよう、その人格形成の支援する教育機能」と捉えている。
また、具体的指導方針を、
としている。
児童・生徒の健やかな人格形成の支援と非行等問題行動の防止対策として、教育委員会、学校、家庭、地域の連携を一層強化する中で、関係機関とも効果的な連携に努め、児童・生徒指導に取り組んでいる。
児童・生徒の非行等問題行動の防止や健全育成に関する施策を推進するため、昭和58年度から教育委員会事務局内に担当組織を設置している。
「児童・生徒指導センター」は、児童・生徒指導担当課長、担当係長1名、指導主事4名、警察OBの嘱託員4名で構成される。生徒指導関連事業の実施、学校への指導、地域や関係機関との連携、保護者との相談・助言など、児童・生徒指導に関する施策を推進している。
中学校における生徒指導体制を強化するため、昭和48年度から、全市立中学校に生徒指導専任教諭を配置している。生徒指導専任教諭に対しては、週当たり授業時数を10単位時間以内に軽減し、生徒指導に専念させている。校内教育相談の推進役、担任や学年への相談支援やケースカンファレンス、地域や関係機関対応など、校内生徒指導における専門性の高いコーディネーターとして位置づけている。
また、小学校には児童指導担当教諭、高等学校には生徒指導担当教諭が校務分掌として置かれている。
保護者、地域、警察、市立・私立学校の代表者によって、非行等問題行動の防止、健全育成に係る情報交換、対策等を協議する「横浜市児童・生徒指導中央協議会」を昭和43年度から設けている。PTAや青少年健全育成団体、警察、学校などから約140名により構成されている。
また、各校種ごとに、「小学校児童指導担当教諭協議会」(年間延べ約17回開催、昭和56年度設置)、「中学校生徒指導専任教諭協議会」(年間延べ約30回開催、昭和48年度設置)、「高等学校生徒指導担当者協議会」(年間延べ約8回開催、昭和57年度設置)を設け、頻繁に協議の場を設け、対策協議を重ねている。いじめ、不登校、暴力行為、学級崩壊、性非行・薬物乱用等防止などの今日的課題克服のための対策等に取り組んでいる。
さらに、警察署(20署)ごとに学校関係者と警察署員が参加する「学校警察連絡協議会」を設け、少年犯罪や非行の未然防止を目的とした情報交換や対策協議を行っている。
いじめなどの学校生活における課題について、児童・生徒自らの問題解決能力の向上を図る「ゆめはま子どもリーダー研修」を平成12年度から開催している。研修では、いじめや学級崩壊などの児童・生徒に身近な問題の克服や児童会・生徒会活動の効果的な取り組み方、コミュニケーションに係るトレーニングなどを行っている。
従前からの取組は、児童・生徒の問題行動の未然防止に一定の成果を挙げてきた。いじめや暴力行為の根絶には至っていないものの、迅速かつ適切な対応や指導が行われ、問題の拡大や二次被害の防止がなされるとともに、再発防止につながっている。
しかしながら、文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、平成15年度における横浜市での暴力行為の発生件数は、小・中・高等学校全体で2,295件(前年度1,822件)、前年度比26%増であった。
校種 | 14年度(件) | 15年度(件) | 増減率(%) | ||
---|---|---|---|---|---|
横浜 | 小学校 | 51 | 162 | 217.6 | 111件増 |
中学校 | 1,729 | 2,100 | 21.5 | 371件増 | |
高等学校 | 42 | 33 | マイナス21.4 | 9件増 | |
計 | 1,822 | 2,295 | 26.0 | 473件増 | |
全国 | 小学校 | 1,393 | 1,777 | 27.6 | 384件増 |
中学校 | 26,295 | 27,414 | 4.3 | 1,119件増 | |
高等学校 | 6,077 | 6,201 | 2.0 | 124件増 | |
計 | 33,765 | 35,392 | 4.8 | 1,627件増 |
また、平成15年度の横浜市におけるいじめの発生件数は728件(前年度580件)、前年度比25.5%増であった。特に小学校では139件から257件に、108件の大幅増であった。
校種 | 14年度(件) | 15年度(件) | 増減率(%) | ||
---|---|---|---|---|---|
横浜 | 小学校 | 139 | 247 | 77.7 | 108件増 |
中学校 | 436 | 476 | 9.2 | 40件増 | |
高等学校 | 5 | 5 | 0.0 | ‐ | |
計 | 580 | 728 | 25.5 | 148件増 | |
全国 | 小学校 | 5,659 | 6,051 | 6.9 | 392件増 |
中学校 | 14,562 | 15,159 | 4.1 | 597件増 | |
高等学校 | 1,906 | 2,070 | 8.6 | 164件増 | |
計 | 22,127 | 23,280 | 5.2 | 1,153件増 |
そのため、平成16年度においては、従前からの取組を強化するとともに、新たな取組を行っている。
上記の調査結果を受け、外部の委員を含めた「児童生徒指導上の諸問題緊急対策プロジェクト」を立ち上げた。暴力行為やいじめなど児童・生徒指導上の諸問題の克服に向け、調査結果を分析し、緊急対策や長期的な対応策の検討を行っている。委員は、学識経験者、臨床心理の専門知識者、保護者、警察、福祉、学校関係者によって構成されている。
平成16年11月に、神奈川県警察本部と本市教育委員会の間で「児童生徒の健全育成に関する警察と学校の相互連携に係る協定」を締結した。これは、児童・生徒の非行防止、犯罪被害防止、健全育成を目的として緊密な連携を行い、これまで行ってきた学校警察連絡協議会等における連携に加えて、関係児童生徒の個人にかかる情報についても、必要があると判断される場合に、学校・警察が相互に情報交換して効果的な支援・指導を行うことを内容としている。なお、本協定は本市個人情報保護審議会の承認を得て締結された。
「人権教育」というと、みなさんその重要性を認識していながらも、「具体的にどうして良いのか分からない。」といった壁に直面することもあるのではないでしょうか。そうした背景には、やはり「人権教育」は、なかなか一言では説明しきれない、難しいものなんだという認識があるとも言えるでしょう。
しかし、児童生徒一人一人が(これは大人にも言えることですが)、しっかりと人権感覚を身につけ、相手の立場に立って物事を考え、判断できるようになることは、児童生徒の問題行動等を未然に防ぐ上での有効な一つの手立てとなるのではないでしょうか。そうした意味で、「人権教育」の観点に立って、日々の児童生徒に対して接することは、大変有意義なことと言えるでしょう。
そこで、「人権教育」とは何かをなるべく分かりやすく表現するとともに、実際に学校教育において「人権教育」を実施する際のポイントについてまとめられたのが、昨年6月に発表された「人権教育の指導方法等の在り方について[第一次とりまとめ]」(以下、[第一次とりまとめ]。)です。以下では、[第一次とりまとめ]の内容を中心に紹介したいと思います。
「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が平成12年に成立するとともに、同法に基づき、14年3月に「人権教育・啓発に関する基本計画」(以下、基本計画。)が閣議決定されました。
この基本計画においては、これまで人権に関する各般の施策が講じられてきたものの、依然として生命・身体の安全にかかわる事象や不当な差別その他の人権侵害が存在していることが指摘されています。また、学校教育における人権教育の現状に関しては、「教育活動全体を通じて、人権教育が推進されているが、知的理解にとどまり、人権感覚が十分身に付いていないなど指導方法の問題」などの問題があるとして、人権教育に関する取組の一層の改善・充実を求めています(なお、知的理解にとどまり人権感覚が身に付いていないとは、例えば、いじめをすることは許されないと理解はしてはいるが、具体的な行動としてはいじめに加担してしまうケースなどが考えられます)。このため、基本計画は、「人権教育・啓発の推進方策」として、「人権教育の充実に向けた指導方法の研究を推進する」ことなどを明示しています。
このような動きを受けて、一昨年に人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(座長:福田弘筑波大学教授)が設けられ、人権についての知的理解を深めるとともに人権感覚を十分に身に付けることを目指す人権教育の指導方法等の在り方を中心に具体的な検討が重ねられました。
人権とは、「人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」であるとされています。特に、全国各地で児童生徒をめぐって起きている様々な事件にかんがみるとき、何よりもまず人間の生命はかけがえのないものであるということが強調されるべきです。人権教育に取り組むに際しては、人権に関わる概念や人権教育が目指すものについて明確にし、教職員がこれを十分に理解し組織的・計画的に進めることが肝要です。[第一次とりまとめ]では、人権尊重の理念について、特に人権感覚の側面に焦点を当てて児童生徒にも分かりやすい言葉で表現するならば、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]であると言うことができるとされています。
すなわち、一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解するとともに、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるようになり、それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるようにすることが、人権教育の目標であるとされているのです。
[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるような人権感覚は、そのことを児童生徒に繰り返し言葉で説明するだけで身に付くものではありません。このような人権感覚を身に付けるためには、学校生活全体の中で自らの大切さや他の人の大切さが認められていることを児童生徒自身が感じ取ることができるようにすることが肝要です。また、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるということが態度や行動にまで現れるようにするためには、例えば、1.他人の立場に立ってその人に必要なことが分かるような想像力や共感的に理解する力、2.伝え合い分かり合うためのコミュニケーションの能力やそのための技能、3.人間関係を調整する能力及び解決方法を見いだしてそれを実現させる能力やそのための技能などを培うことが求められます。
さらに[第一次とりまとめ]では、以上の基本的考え方を踏まえつつ、学校教育における指導の改善・充実のために、1.教職員における人権尊重の理念の理解・体得、2.学校教育活動全体を通じた人権教育の推進、3.学校としての組織的な取組とその点検・評価、4.家庭・地域との連携及び校種間の連携、5.自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫、6.児童生徒の発達段階や実態に即した内容・方法、7.教育の中立性の確保、8効果的な学習教材の選定・開発、という8つの視点に留意することが必要かつ効果的であるとしています。
特に、1.の教職員に関して言えば、児童生徒一人一人の大切さを自覚し、一人の人間として接するという教職員の姿勢そのものが、人権教育の重要な部分であると言えるでしょう。また、教職員同士の間においても互いを尊重する態度を大切にし、例えば指導上の課題について互いによく話し合う事ができるような環境づくりに努める事が求められます。
以上、[第一次とりまとめ]の紹介をしてきました。まだ[第一次とりまとめ]を手にとってごらんになられていない方は、このたびの紹介を機会に手にとってごらんになられてはいかがでしょうか。文部科学省でも、人権教育の重要性を踏まえ、種々の施策に取り組んでいるところです。具体的には、学校教育の分野において、「人権教育研究指定校事業」や「教育総合推進地域事業」、「人権教育の指導方法等に関する調査研究」等を実施し、人権教育の着実な推進に努めています。「人権教育研究指定校事業」や「教育総合推進地域事業」については、各学校、地域に先進的な取り組みをいただいているところです。また、「人権教育の指導方法等に関する調査研究」では、今後[第2次とりまとめ]に向けた議論を進めていくこととなっております。
今後とも各学校、地域で「人権教育」がより一層推進され、知的理解のみならず人権感覚を身につけた児童生徒がはぐくまれることが期待されます。
(1)昨今、高校生を対象とした奨学金(高校奨学金)を取り巻く状況は大きく変化しております。地方分権、国庫補助金改革、また特殊法人改革という大きな流れの中で、これまで国が関与してきた部分について見直しが図られ、今後は都道府県が高校奨学金に関して中心的な役割を果たしていくことになります。高校奨学金については、これまで旧日本育英会(現日本学生支援機構)が全国の生徒を対象に事業を実施してきたほか、都道府県及びその他の地方公共団体等がそれぞれのニーズに基づき独自に事業を実施してきました。以下、ここ数年の高校奨学金に関する動きについて説明させていただきます。
(2)平成13年度末をもって、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(いわゆる「地対財特法」)が失効したことに伴い、これまで特別対策として実施してきた「地域改善対策高等学校等進学奨励費補助事業」が終了し、その後においては、高校の奨学金については都道府県が行う一般奨学金事業を拡充することにより対応することとされ、また、大学の奨学金については旧日本育英会による奨学金事業を拡充することにより対応することとされました。このため、高校の奨学金については、経済的理由により修学が困難な者に奨学金を貸与する都道府県に対して、これに要する経費について国が補助を行う「高等学校奨学事業費補助」を平成14年度に創設するとともに、大学の奨学金については、旧日本育英会の貸与人員の増加等の充実を図ってまいりました。「高等学校奨学事業費補助」については、平成14年度の高校入学者から対象として実施してきており、順次各学年を対象とし、平成16年度に制度が完成しました。この補助金については、「三位一体の改革について」(平成16年11月26日政府・与党合意)に基づき、平成16年度をもって廃止することとなりました。これに伴う財源措置については、所得譲与税として税源移譲されるとともに、所要の事業費が地方財政計画に計上され、地方交付税の基準財政需要額に算入されることとなっております。今後は、都道府県が、経済的理由により修学困難な者に対する高校奨学金事業を適切に実施することとなります。
(3)一方、特殊法人の整理合理化の流れの中で、旧日本育英会は平成15年度末をもって廃止され、平成16年度から新たに学生支援業務を総合的に実施する独立行政法人日本学生支援機構(※ 日本学生支援機構ウェブサイトへリンク)(※ 別ウィンドウで開きます。)が設立されました。これに伴い、旧日本育英会において実施されてきた奨学金事業については、日本学生支援機構に引き継がれ実施されております。この特殊法人改革は、平成13年12月の閣議決定(特殊法人整理合理化計画)に基づき行われましたが、この閣議決定の中で、「高校生を対象とした資金は、平成7年の閣議決定の趣旨に即し、関係省庁との連携の下に早急に条件を整備して都道府県に移管する」こととされました。これを踏まえ、旧日本育英会(現日本学生支援機構)において実施してきた高校奨学金事業については、平成17年度の高校入学者から都道府県へ移管することとなりました。
今後、都道府県において円滑に高校奨学金事業が実施されるよう、国においても所要の財政措置を講じることとしており、平成17年度予算案においては、奨学金の貸付原資としての経費(約91億円)を都道府県に交付することとしております。また、都道府県においては高校奨学金事業の移管に伴い事務処理が増加するため、この事務処理に要する経費については地方交付税措置が講じられることとされております。これらの財政措置の下、各都道府県においては今年度から予約採用など御尽力いただいているところですが、今後とも適切に実施願います。なお、平成16年度以前に高等学校等に入学した者については経過措置として日本学生支援機構が奨学金を貸与することとされております。また、移管後の高校奨学金事業の具体的な内容(所得要件、学力要件、貸与月額等)に関しては、地方分権の観点から、各都道府県が地域住民のニーズを踏まえて、それぞれ決定していくことになります。
(4)このような経緯から、平成17年度以降、高校奨学金は、これまでの事業実績を踏まえつつ、各都道府県が地域のニーズに対応した事業内容を決定し、実施していくこととなりますが、奨学金は教育の機会均等の実現とともに、セーフティネットとしての重要な役割を担うものであることから、各都道府県におかれては引き続き、円滑な事業の実施に取り組まれますよう、よろしくお願いします。
※ CAP(Child Assault Prevention)とは、「子どもへの暴力防止」の略で、子供達が、いじめ、誘拐、虐待等様々な暴力から自らを守るための教育プログラムです。それを子ども達に一方的に説明するのではなく、寸劇や話し合いを通じて暴力に対して子ども自身の力で色々対処できることを学んでいくものです。
以下、ある地方公共団体のCAPの取組を紹介しましょう。
平成9年度に痴漢や強制猥褻などの性犯罪が各地的で発生し、いろいろなやってみたがこれという手がなく、平成10年度に小学校3校でCAP(子どもへの暴力防止プログラム=Child Assault Prevention)を試行的に実施した。まず、試行校の先生にCAPを受けさせてみて有効ではないかということになり、校長会でも報告し、予算化した。CAPを実施するかどうかは学校の希望によっているが、平成13度には49校のすべての小学校で実施している。その後、新学習指導要領の実施の影響もあり、時間的な理由から減少し、現在、39校で実施しているところである。実施学年は2年生又は3年生、実施単位は学級ごとだが、同じ学年の全ての学級で実施。ほとんどが学級活動の時間の中で行われている。プログラムの時間は1時間程度で、その後30分程度の復習時間として相談活動などを行う。実施時期は夏休み前に行っている。
CAP団体は米国に本部があり、1985年に森田ゆり氏が我が国に導入した。兵庫県にある「CAPセンター・ジャパン」が各実施団体のネットワーク的な組織である。各実施団体は、その下部組織ではなく、それぞれが独立した存在である。CAPの実施団体は全国にあり、本地方公共団体においては「青い空」と「CAPユニット」の2団体に委託した。同2団体としたのは、学校の希望する日時にできるだけあわせてやってもらうためであった。この地区ではこの団体に委託しないといけないというような制限はなく、どの実施団体を選択するかは委託側の自由に委ねられている。ただし、料金についてはどこの団体も同じようである。
CAPプログラムに係るすべての権限は米国の団体にあり、許可なくプログラムを実施・模倣することは禁じられている。CAPの指導員はスペシャリストと呼ばれ、各実施団体において24時間の受講と16時間以上の実習又は見学を受けた者でなければCAPを実施することができない。CAPは保護者用、子供用のワークショップと教員の研修会がセットになっており、保護者用は3万5千円、子ども用は1学級2万5千円、2学級目からは2万円(5千円は交通費)、教員の研修会も同様に一定の料金が必要となっている。
子どもワークショップの1週間程度前に実施した。子どもワークショップで大人に相談するようにとの指導をするので、子どもから相談があったときに冷たい態度をとらないようになどといった指導を行う。忙しいから話を聞かない時の子どものショックの大きさや子どもの話に耳を傾けることの大切さを指導する。対象児童の保護者だけでなく、それ以外の全学年の保護者、児童・民生委員や保護士などにも参加を呼びかけている。
年に1回、CAPスタッフを講師にして、小中学校の生活指導主事を対象に研修会を自由参加にて実施している。
(全てを記載しているわけではありませんので、必ず正式文書で確認をお願いします。)
今回は特になし。
初等中等教育局児童生徒課
-- 登録:平成21年以前 --