学習指導要領「生きる力」

第2章 各教科 第6節 音楽

第1 目標

 表現及び鑑賞の活動を通して,音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育てるとともに,音楽活動の基礎的な能力を培い,豊かな情操を養う。

第2 各学年の目標及び内容

〔第1学年及び第2学年〕〔第3学年及び第4学年〕〔第5学年及び第6学年〕
1 目標
  • (1) 楽しく音楽にかかわり,音楽に対する興味・関心をもち,音楽経験を生かして生活を明るく潤いのあるものにする態度と習慣を育てる。
  • (2) 基礎的な表現の能力を育て,音楽表現の楽しさに気付くようにする。
  • (3) 様々な音楽に親しむようにし,基礎的な鑑賞の能力を育て,音楽を味わって聴くようにする。
2 内容
A 表現
  • (1) 歌唱の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 範唱を聴いて歌ったり,階名で模唱したり暗唱したりすること。
    • イ 歌詞の表す情景や気持ちを想像したり,楽曲の気分を感じ取ったりし,思いをもって歌うこと。
    • ウ 自分の歌声及び発音に気を付けて歌うこと。
    • エ 互いの歌声や伴奏を聴いて,声を合わせて歌うこと。
  • (2) 器楽の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 範奏を聴いたり,リズム譜などを見たりして演奏すること。
    • イ 楽曲の気分を感じ取り,思いをもって演奏すること。
    • ウ 身近な楽器に親しみ,音色に気を付けて簡単なリズムや旋律を演奏すること。
    • エ 互いの楽器の音や伴奏を聴いて,音を合わせて演奏すること。
  • (3) 音楽づくりの活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 声や身の回りの音の面白さに気付いて音遊びをすること。
    • イ 音を音楽にしていくことを楽しみながら,音楽の仕組みを生かし,思いをもって簡単な音楽をつくること。
  • (4) 表現教材は次に示すものを取り扱う。
    • ア 主となる歌唱教材については,各学年ともウの共通教材を含めて,斉唱及び輪唱で歌う楽曲
    • イ 主となる器楽教材については,既習の歌唱教材を含めて,主旋律に簡単なリズム伴奏や低声部などを加えた楽曲
    • ウ 共通教材
      • 〔第1学年〕
        「うみ」 (文部省唱歌)林柳波(はやしりゅうは)作詞 井上武士(いのうえたけし)作曲
        「かたつむり」 (文部省唱歌)
        「日のまる」 (文部省唱歌)高野辰之(たかのたつゆき)作詞 岡野貞一(おかのていいち)作曲
        「ひらいたひらいた」 (わらべうた)
      • 〔第2学年〕
        「かくれんぼ」 (文部省唱歌)林柳波作詞 下総皖一(しもふさかんいち)作曲
        「春がきた」 (文部省唱歌)高野辰之作詞 岡野貞一作曲
        「虫のこえ」 (文部省唱歌)
        「夕やけこやけ」 中村雨紅(なかむらうこう)作詞 草川信(くさかわしん)作曲
B 鑑賞
  • (1) 鑑賞の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 楽曲の気分を感じ取って聴くこと。
    • イ 音楽を形づくっている要素のかかわり合いを感じ取って聴くこと。
    • ウ 楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを言葉で表すなどして,楽曲や演奏の楽しさに気付くこと。
  • (2) 鑑賞教材は次に示すものを取り扱う。
    • ア 我が国及び諸外国のわらべうたや遊びうた,行進曲や踊りの音楽など身体反応の快さを感じ取りやすい音楽,日常の生活に関連して情景を思い浮かべやすい楽曲
    • イ 音楽を形づくっている要素の働きを感じ取りやすく,親しみやすい楽曲
    • ウ 楽器の音色や人の声の特徴を感じ取りやすく親しみやすい,いろいろな演奏形態による楽曲
  • 〔共通事項〕
    • (1) 「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を指導する。
      • ア 音楽を形づくっている要素のうち次の(ア)及び(イ)を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取ること。
        • (ア) 音色,リズム,速度,旋律,強弱,拍の流れやフレーズなどの音楽を特徴付けている要素
        • (イ) 反復,問いと答えなどの音楽の仕組み
      • イ 身近な音符,休符,記号や音楽にかかわる用語について,音楽活動を通して理解すること。
〔第3学年及び第4学年〕〔第1学年及び第2学年〕〔第5学年及び第6学年〕
1 目標
  • (1) 進んで音楽にかかわり,音楽活動への意欲を高め,音楽経験を生かして生活を明るく潤いのあるものにする態度と習慣を育てる。
  • (2) 基礎的な表現の能力を伸ばし,音楽表現の楽しさを感じ取るようにする。
  • (3) 様々な音楽に親しむようにし,基礎的な鑑賞の能力を伸ばし,音楽を味わって聴くようにする。
2 内容
A 表現
  • (1) 歌唱の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 範唱を聴いたり,ハ長調の楽譜を見たりして歌うこと。
    • イ 歌詞の内容,曲想にふさわしい表現を工夫し,思いや意図をもって歌うこと。
    • ウ 呼吸及び発音の仕方に気を付けて,自然で無理のない歌い方で歌うこと。
    • エ 互いの歌声や副次的な旋律,伴奏を聴いて,声を合わせて歌うこと。
  • (2) 器楽の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 範奏を聴いたり,ハ長調の楽譜を見たりして演奏すること。
    • イ 曲想にふさわしい表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。
    • ウ 音色に気を付けて旋律楽器及び打楽器を演奏すること。
    • エ 互いの楽器の音や副次的な旋律,伴奏を聴いて,音を合わせて演奏すること。
  • (3) 音楽づくりの活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア いろいろな音の響きやその組合せを楽しみ,様々な発想をもって即興的に表現すること。
    • イ 音を音楽に構成する過程を大切にしながら,音楽の仕組みを生かし,思いや意図をもって音楽をつくること。
  • (4) 表現教材は次に示すものを取り扱う。
    • ア 主となる歌唱教材については,各学年ともウの共通教材を含めて,斉唱及び簡単な合唱で歌う楽曲
    • イ 主となる器楽教材については,既習の歌唱教材を含めて,簡単な重奏や合奏にした楽曲
    • ウ 共通教材
      • 〔第3学年〕
        「うさぎ」 (日本古謡)
        「茶つみ」 (文部省唱歌)
        「春の小川」 (文部省唱歌)高野辰之作詞 岡野貞一作曲
        「ふじ山」 (文部省唱歌)巌谷小波(いわやさざなみ)作詞
      • 〔第4学年〕
        「さくらさくら」 (日本古謡)
        「とんび」 葛原(くずはら)しげる作詞 梁田貞(やなだただし)作曲
        「まきばの朝」 (文部省唱歌)船橋栄吉(ふなばしえいきち)作曲
        「もみじ」 (文部省唱歌)高野辰之作詞 岡野貞一作曲
B 鑑賞
  • (1) 鑑賞の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 曲想とその変化を感じ取って聴くこと。
    • イ 音楽を形づくっている要素のかかわり合いを感じ取り,楽曲の構造に気を付けて聴くこと。
    • ウ 楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを言葉で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさに気付くこと。
  • (2) 鑑賞教材は次に示すものを取り扱う。
    • ア 和楽器の音楽を含めた我が国の音楽,郷土の音楽,諸外国に伝わる民謡など生活とのかかわりを感じ取りやすい音楽,劇の音楽,人々に長く親しまれている音楽など,いろいろな種類の楽曲
    • イ 音楽を形づくっている要素の働きを感じ取りやすく,聴く楽しさを得やすい楽曲
    • ウ 楽器や人の声による演奏表現の違いを感じ取りやすい,独奏,重奏,独唱,重唱を含めたいろいろな演奏形態による楽曲
  • 〔共通事項〕
    • (1) 「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を指導する。
      • ア 音楽を形づくっている要素のうち次の(ア)及び(イ)を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取ること。
        • (ア) 音色,リズム,速度,旋律,強弱,音の重なり,音階や調,拍の流れやフレーズなどの音楽を特徴付けている要素
        • (イ) 反復,問いと答え,変化などの音楽の仕組み
      • イ 音符,休符,記号や音楽にかかわる用語について,音楽活動を通して理解すること。
〔第5学年及び第6学年〕〔第1学年及び第2学年〕〔第3学年及び第4学年〕
1 目標
  • (1) 創造的に音楽にかかわり,音楽活動への意欲を高め,音楽経験を生かして生活を明るく潤いのあるものにする態度と習慣を育てる。
  • (2) 基礎的な表現の能力を高め,音楽表現の喜びを味わうようにする。
  • (3) 様々な音楽に親しむようにし,基礎的な鑑賞の能力を高め,音楽を味わって聴くようにする。
2 内容
A 表現
  • (1) 歌唱の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 範唱を聴いたり,ハ長調及びイ短調の楽譜を見たりして歌うこと。
    • イ 歌詞の内容,曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって歌うこと。
    • ウ 呼吸及び発音の仕方を工夫して,自然で無理のない,響きのある歌い方で歌うこと。
    • エ 各声部の歌声や全体の響き,伴奏を聴いて,声を合わせて歌うこと。
  • (2) 器楽の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 範奏を聴いたり,ハ長調及びイ短調の楽譜を見たりして演奏すること。
    • イ 曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。
    • ウ 楽器の特徴を生かして旋律楽器及び打楽器を演奏すること。
    • エ 各声部の楽器の音や全体の響き,伴奏を聴いて,音を合わせて演奏すること。
  • (3) 音楽づくりの活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア いろいろな音楽表現を生かし,様々な発想をもって即興的に表現すること。
    • イ 音を音楽に構成する過程を大切にしながら,音楽の仕組みを生かし,見通しをもって音楽をつくること。
  • (4) 表現教材は次に示すものを取り扱う。
    • ア 主となる歌唱教材については,各学年ともウの共通教材の中の3曲を含めて,斉唱及び合唱で歌う楽曲
    • イ 主となる器楽教材については,楽器の演奏効果を考慮し,簡単な重奏や合奏にした楽曲
    • ウ 共通教材
      • 〔第5学年〕
        「こいのぼり」 (文部省唱歌)
        「子もり歌」 (日本古謡)
        「スキーの歌」 (文部省唱歌)林柳波作詞 橋本国彦(はしもとくにひこ)作曲
        「冬げしき」 (文部省唱歌)
      • 〔第6学年〕
        「越天楽今様(えてんらくいまよう)(歌詞は第2節まで)」 (日本古謡) 慈鎮(じちん)和尚作歌
        「おぼろ月夜」 (文部省唱歌)高野辰之作詞 岡野貞一作曲
        「ふるさと」 (文部省唱歌)高野辰之作詞 岡野貞一作曲
        「われは海の子(歌詞は第3節まで)」 (文部省唱歌)
B 鑑賞
  • (1) 鑑賞の活動を通して,次の事項を指導する。
    • ア 曲想とその変化などの特徴を感じ取って聴くこと。
    • イ 音楽を形づくっている要素のかかわり合いを感じ取り,楽曲の構造を理解して聴くこと。
    • ウ 楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを言葉で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさを理解すること。
  • (2) 鑑賞教材は次に示すものを取り扱う。
    • ア 和楽器の音楽を含めた我が国の音楽や諸外国の音楽など文化とのかかわりを感じ取りやすい音楽,人々に長く親しまれている音楽など,いろいろな種類の楽曲
    • イ 音楽を形づくっている要素の働きを感じ取りやすく,聴く喜びを深めやすい楽曲
    • ウ 楽器の音や人の声が重なり合う響きを味わうことができる,合奏,合唱を含めたいろいろな演奏形態による楽曲
  • 〔共通事項〕
    • (1) 「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を指導する。
      • ア 音楽を形づくっている要素のうち次の(ア)及び(イ)を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取ること。
        • (ア) 音色,リズム,速度,旋律,強弱,音の重なりや和声の響き,音階や調,拍の流れやフレーズなどの音楽を特徴付けている要素
        • (イ) 反復,問いと答え,変化,音楽の縦と横の関係などの音楽の仕組み
      • イ 音符,休符,記号や音楽にかかわる用語について,音楽活動を通して理解すること。

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

  1. 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
    • (1) 第2の各学年の内容の〔共通事項〕は表現及び鑑賞に関する能力を育成する上で共通に必要となるものであり,表現及び鑑賞の各活動において十分な指導が行われるよう工夫すること。
    • (2) 第2の第5学年及び第6学年の内容の「A表現」の指導に当たっては,学校や児童の実態等に応じて,合唱や合奏,重唱や重奏などの表現形態を選んで学習できるようにすること。
    • (3) 国歌「君が代」は,いずれの学年においても歌えるよう指導すること。
    • (4) 低学年においては,生活科などとの関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにすること。特に第1学年においては,幼稚園教育における表現に関する内容などとの関連を考慮すること。
    • (5) 第1章総則の第1の2及び第3章道徳の第1に示す道徳教育の目標に基づき,道徳の時間などとの関連を考慮しながら,第3章道徳の第2に示す内容について,音楽科の特質に応じて適切な指導をすること。
  2. 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。
    • (1) 各学年の「A表現」及び「B鑑賞」の指導に当たっては,音楽との一体感を味わい,想像力を働かせて音楽とかかわることができるよう,指導のねらいに即して体を動かす活動を取り入れること。
    • (2) 和音及び和声の指導については,合唱や合奏の活動を通して和音のもつ表情を感じ取ることができるようにすること。また,長調及び短調の楽曲においては,145及び57などの和音を中心に指導すること。
    • (3) 歌唱の指導については,次のとおり取り扱うこと。
      • ア 相対的な音程感覚を育てるために,適宜,移動ド唱法を用いること。
      • イ 歌唱教材については,共通教材のほか,長い間親しまれてきた唱歌,それぞれの地方に伝承されているわらべうたや民謡など日本のうたを含めて取り上げるようにすること。
      • ウ 変声以前から自分の声の特徴に関心をもたせるとともに,変声期の児童に対して適切に配慮すること。
    • (4) 各学年の「A表現」の(2)の楽器については,次のとおり取り扱うこと。
      • ア 各学年で取り上げる打楽器は,木琴,鉄琴,和楽器,諸外国に伝わる様々な楽器を含めて,演奏の効果,学校や児童の実態を考慮して選択すること。
      • イ 第1学年及び第2学年で取り上げる身近な楽器は,様々な打楽器,オルガン,ハーモニカなどの中から学校や児童の実態を考慮して選択すること。
      • ウ 第3学年及び第4学年で取り上げる旋律楽器は,既習の楽器を含めて,リコーダーや鍵(けん)盤楽器などの中から学校や児童の実態を考慮して選択すること。
      • エ 第5学年及び第6学年で取り上げる旋律楽器は,既習の楽器を含めて,電子楽器,和楽器,諸外国に伝わる楽器などの中から学校や児童の実態を考慮して選択すること。
    • (5) 音楽づくりの指導については,次のとおり取り扱うこと。
      • ア 音遊びや即興的な表現では,リズムや旋律を模倣したり,身近なものから多様な音を探したりして,音楽づくりのための様々な発想ができるように指導すること。
      • イ つくった音楽の記譜の仕方について,必要に応じて指導すること。
      • ウ 拍節的でないリズム,我が国の音楽に使われている音階や調性にとらわれない音階などを児童の実態に応じて取り上げるようにすること。
    • (6) 各学年の〔共通事項〕のイの「音符,休符,記号や音楽にかかわる用語」については,児童の学習状況を考慮して,次に示すものを取り扱うこと。
      音符,休符,記号や音楽にかかわる用語の図

-- 登録:平成21年以前 --