学習指導要領「生きる力」

高等学校 新学習指導要領Q&A(教師向け)

1.総則に関すること

Q (高等学校)問1−1

 「普通教育に関する各教科・科目」を「各学科に共通する各教科・科目」とし、「専門教育に関する各教科・科目」を「主として専門学科において開設される各教科・科目」に改めたのはなぜですか。〔総則第2款の2及び3関係〕

A (高等学校)答1−1

 学校教育法施行規則別表第3及び学習指導要領に示す各教科について,従前は,普通教育に関する教科と専門教育に関する教科とに分けていましたが,今回の改訂では,それぞれを各学科に共通する教科(共通教科)と主として専門学科において開設される教科(専門教科)に分けることとしました。
 
 これは,従前,普通教育に関する教科とされていたものについても当該教科に属する科目の中には専門的な内容を扱い得るものがあり,教科によって普通教育と専門教育を明確に区分することが困難なので見直したものです。 

Q (高等学校)問1−2

 必履修教科・科目について、特に必要がある場合には、標準単位数よりも少ない単位を配当すること(減単)ができるとは、どのような場合でしょうか。
 また、その他の必履修教科・科目や必履修以外の教科・科目についてはどうでしょうか。〔総則第3款の1の(1)関係〕

A (高等学校)答1−2

 必履修教科・科目について、標準単位数よりも少ない単位を配当することが認められるのは、生徒の能力・適性,進路等の実態を踏まえ、特に必履修教科・科目に加え専門教科・科目を履修しなければならない専門学科において多様な選択履修を可能とする必要がある場合などが主として想定されています。
 また、専門学科以外の学科においても、生徒の能力・適性,進路等の実態を踏まえ、教育的な配慮に基づいた判断として、例えば、生徒の実態等を踏まえ、単位を少なくして配当しても当該科目の目標の実現が可能であると判断できる場合には、必履修教科・科目について、標準単位数よりも少ない単位を配当することが認められます。
 
 ただし、減単を行う場合も,当該科目の目標を実現できる範囲で行うことが前提となります。
 したがって、例えば,「国語総合」では,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」及び〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕のすべてを取り扱うことが必要です。また,内容の取扱いに示す「話すこと・聞くこと」及び「書くこと」の授業時数の目安については減じる単位数に応じた時数を配当することなどについての配慮も必要です。同様に,「数学Ⅰ」では「数と式」,「図形と計量」,「二次関数」,「データの解析」及び〔課題学習〕のすべてを取り扱うことが必要であり,「コミュニケーション英語Ⅰ」では「聞くこと」,「話すこと」,「読むこと」,「書くこと」の4技能をバランスよく指導するとともに,言語材料についても適切に取り扱うことに配慮する必要があります。
 
 このように、当該教科・科目の目標を実現できる範囲で行う必要があるという基本的な考え方は、共通必履修科目のみならず、標準単位数を示しているその他の必履修教科・科目や必履修以外の各教科・科目についても同じですが、具体的に何単位を減じるかについては、各教科・科目の特性をふまえ、慎重な判断が必要です。
 
 なお、国語・数学・外国語の各教科については、現在、選択必履修科目のうち2単位科目を必履修科目として設定して教育課程が編成されているような場合には、総則第3款の1(1)の減単を認めるただし書きの規定を活用することは考えられます。

Q (高等学校)問1−3

 各学校が標準として学習指導要領に示されている単位数よりも増やしたり減じたりして配当することについて、都道府県教育委員会が作成する「高等学校教育課程編成の手引」等の中で一定の制約を設けることは可能でしょうか。

A (高等学校)答1−3

 各教育委員会は、地域の実状や学校・学科等の特性等に応じ、設置する高等学校の教育課程の編成について指導することは可能ですので、標準として示されている各教科・科目の単位数を各学校が増やしたり減らしたりして配当することについて制限を設けることも可能です。
 
 例えば,単位を増加させるときには、標準単位数の2倍を超えることができないとしたり、「国語総合」の減単位は3単位までとし,2単位に減じることはできないこととしたりすることなどが考えられます。

Q (高等学校)問1−4

 総合的な学習の時間について,「特に必要がある場合には,その単位数を2単位とすることができる」とされていますが,この趣旨及び「特に必要がある場合」の具体的な内容はどのようなものですか。「理科課題研究」や理数科の「課題研究」,総合学科における「産業社会と人間」における学習活動もその対象と考えてよいでしょうか。〔総則第3款の1の(2)関係〕

A (高等学校)答1−4

 今回の改訂において,第1章総則第3款の1の(2)のただし書として,「特に必要がある場合には,その単位数を2単位とすることができる」ことを明示しました。
 これは,総合的な学習の時間の目標の実現のためには,卒業までに履修する単位数として3~6単位の確保が必要であることを前提とした上で,各教科・科目において,横断的・総合的な学習や探究的な学習が十分に行われることにより,総合的な学習の時間の単位数を2単位としても総合的な学習の時間の目標の実現が十分に可能であると考えられ,かつ,教育課程編成上,総合的な学習の時間の単位数を3単位履修させることが困難であるなど,特に必要とされる場合に限って,総合的な学習の時間を履修させる単位数を2単位とすることができるという趣旨です。
 
 例えば,学校設定教科・科目又は他の教科・科目において,横断的・総合的な学習や探究的な学習が十分に行われる場合など,2単位とすることができるのは限定的であることに十分注意しなければなりません。
 
 「理科課題研究」や理数科の「課題研究」といった科目において,このような学習が十分に行われる場合は,このようなケースに該当するものと考えられます。
 なお,総合学科については,平成5年の創設の際に,学科の特色として,将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視するということが挙げられており,そのような特色を踏まえ,「産業社会と人間」,「課題研究」が原則履修科目として位置付けられていました。
 その後,平成11年の学習指導要領改訂において、総合的な学習の時間が創設された際に,この「課題研究」に相当するものとして,総合的な学習の時間において「生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題について,知識や技能の深化,総合化を図る学習活動」を行うことをもって,「課題研究」が原則履修科目から除かれました。このような経緯を踏まえれば,総合学科において「産業社会と人間」を履修していることをもって,総合的な学習の時間について2単位とするということは,慎重に検討する必要があります。
 
 生徒に履修させる総合的な学習の時間の単位数については,各学校で十分に検討した上で配当するとともに,教育課程における総合的な学習の時間の位置付けを明確にすることが必要です。特に標準単位数を減ずる場合においては,その理由について,外部への説明責任が果たせるよう,教職員の共通理解を図るとともに,減じることと比較して同じ程度の成果が期待できる学習活動が十分に行われることについて,各教科・科目の指導計画において探究的な学習などを明示するとともに,総合的な学習の時間の全体計画においても具体的に示すことなどが求められます。

Q (高等学校)問1−5

 休業日の期間に授業日を設定することは可能なのでしょうか。また、どのようなことに配慮しなければならないでしょうか。〔総則第4款の1関係〕

A (高等学校)答1−5

 長期休業期間を具体的にどのように置くかについては、学校教育法施行令第29条において、学校の設置者が定めることになっています。
 
 学習指導要領の規定は長期休業期間の変更について、学校にその権限を付与する趣旨のものではなく、長期休業期間中に各教科等の時間をまとめて確保することができることを確認的に規定したものであり、各学校においてどのような手続きを経て長期休業期間中に授業日を設定できるようにするかは、各設置者の定めるところによることとなります。
 
 なお、高等学校においては、各教科・科目や総合的な学習の時間は、必要がある場合には、特定の期間に授業を行うことが可能ですが、特別活動(ホームルーム活動)は、総則第4款の1の「特定の期間に行うことができる」との規定の対象外となっています。
 これは、高等学校は教科担任制であり、小学校と比較して学級担任が不断に生徒と接することが難しいという事情や、ホームルーム活動の重要性に鑑み、毎週、ホームルームの時間を設けることを求めているためです。

Q (高等学校)問1−6

 10分程度の短い時間を単位として特定の各教科・科目の指導を行う場合について、留意すべき点は何でしょうか。〔総則第4款の7関係〕

A (高等学校)答1−6

 10分程度の短い時間を単位として指導を行う際には、当該各教科・科目や学習活動の特質に照らし妥当かどうかの教育的な配慮に基づいた判断が必要です。このため、既に学習した内容の確実な定着を図るための繰り返し学習などであれば、10分間程度の時間における指導になじみうるものと考えられますが、それまでに生徒が学習したことのないような内容を10分程度の短い時間に指導することは通常は想定し難いと考えられます。
 また、特別活動のホームルームの時間や総合的な学習の時間などについても、通常は10分程度の短い時間を単位として指導を行うということは想定し難いと考えられます。
 
 総則第4款の7のなお書きの規定は、「当該各教科・科目を担当する教師がその指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任をもって行う」必要があるとされており、当該10分程度の時間での指導の成果を活用するためには、ある程度まとまった時間において当該成果を踏まえた指導をすることが通常考えられます。例えば、10分程度の時間の活用を各教科・科目の授業時数の一部として設定し、その成果を活用する授業時間を確保したり、10分程度の時間を単位として義務教育段階の学習内容の確実な定着を図る学習活動を行う場合、その内容を基礎としている各教科・科目の指導との密接な連携を図ったりすることが考えられます。また、義務教育段階の学習内容の確実な定着を図る学習活動であっても10分程度の時間の指導のみではその内容の定着が十分に図れない生徒がいる場合などには、上記のようなある程度まとまった授業時間において対応することのほか、当該教科の担当教員が補充的な指導を十分に行うといった工夫をすることも考えられます。

Q (高等学校)問1−7

 義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るために、学校設定教科・科目を設定する場合、当該科目の目標や内容には高等学校の内容を含まなければならないのでしょうか。(義務教育段階の復習だけを目的とすることはできるのか。)
 「義務教育段階での学習内容の確実な定着を図ることを目標とした学校設定科目等を履修させた後に,必履修教科・科目を履修させるようにすること」とありますが,このような学校設定教科を高等学校で開設することは、第2款5(1)に示される「高等学校教育の目標及びその水準の維持等に十分に配慮」と矛盾しないのでしょうか。〔総則第5款の3の(3)関係〕

A (高等学校)答1−7

 総則の解説においては、次のように記述しており、義務教育段階の学習内容の確実な定着を図ることだけを目的とする学校設定教科・科目も開設することが可能であることを示しています。

 なお,学校設定科目の目標や内容については、「その科目の属する教科の目標に基づき」定めることとされており(総則第2款の4),学校設定教科及び当該教科に関する科目の目標や内容については「高等学校教育の目標及びその水準の維持等に十分配慮」しなければならないとされているが(総則第2款の5),高等学校教育の目標は義務教育の成果を発展・拡充させることであることから,生徒の実態に応じ義務教育段階の学習内容について確実な定着を図り,その成果を発展・拡充させるために,義務教育段階の学習内容の確実な定着を図ることを目標とした学校設定教科・科目を高等学校の教科・科目として開設し,その単位数を卒業までに修得すべき単位数に加えることは,このような高等学校教育の目標や総則第2款の4及び5の規定に適合するものである。

 高等学校を卒業するまでにすべての生徒が必履修教科・科目の内容を学習する必要がありますが,その内容を十分に理解するためには,義務教育段階の学習内容が定着していることが必要です。それが不十分であることにより必履修教科・科目の内容が理解できないということのないよう,今回、必履修教科・科目を履修する際又は履修する前などにそうした学習内容の確実な定着を図れるようにする配慮を求めたというのがこの規定を設けた趣旨です。
 
 したがって、学校設定教科・科目を設定する際には、当該科目を含めた各教科・科目の体系性・系統性等を踏まえながら、高等学校を卒業するまでに必履修教科・科目の内容を理解し、身につけられるよう、高等学校3年間の教育課程を見据えた上で、当該学校設定教科・科目の目標や内容を定めるべきことに十分留意することが必要です。

Q (高等学校)問1−8

 義務教育段階の学習内容の確実な定着を図ることを目標とした学校設定科目については、必履修教科・科目と並行履修することとしてもよいでしょうか。〔総則第5款の3の(3)関係〕

A (高等学校)答1−8

  学校設定科目を必履修教科・科目と並行履修することについては、学習指導要領は特段の制約がないため可能ですが、むしろ、当該必履修教科・科目の単位数を増やした上で、適宜義務教育段階の学習を取り入れる方が、当該必履修教科・科目の内容や進度に応じて、より柔軟に指導することを可能にすると思われます。
 また、義務教育段階の学習内容の定着が不十分である場合などは、その定着を図った上で、高等学校の必履修教科・科目の履修をすることが指導の効果が高いケースも多いと考えられることから、教育課程の編成上の都合だけからではなく、生徒の学習効果等を踏まえて適切な教育課程を編成することが必要です。

Q (高等学校)問1−9

 高等学校において,「道徳教育の全体計画」を作成することを新たに規定したのはどういう理由からでしょうか。また、計画書の提出を義務付けるのですか。〔総則第5款の3の(4)関係〕

A (高等学校)答1−9

 今回の改訂は、教育基本法や学校教育法の改正を踏まえたものであり、道徳教育の充実は極めて重要な課題となっています。
 高等学校の道徳教育は,人間としての在り方生き方に関する教育を学校の教育活動全体を通じて行うこととされているが,そのことを意識した指導が十分になされていないとの指摘があります。
 
 すなわち、学校における道徳教育は、全教育活動が有機的に関連し合って進められなければならないが、その中軸となるのは、学校の設定する道徳教育の基本方針です。全体計画は、その基本方針を具体化する上で、学校として特に工夫し、留意すべきことは何か、各教育活動がどのような役割を分担するのか、家庭や地域社会との連携をどう図っていくのかなどについて総合的に示すものでなければなりません。
 
 このため,高等学校における道徳教育の充実を図る観点から,道徳教育の全体計画を作成することを今回の改訂において明記したものです。
 
 計画書の提出を設置者が求めるかどうかは,当該設置者の判断によります。

Q (高等学校)問1−10

 道徳の全体計画について、いつから作成しなければならないのでしょうか。また、学年ごとに作成することになるのでしょうか。〔総則第5款の3の(4)関係〕

A (高等学校)答1−10

 平成22年度からは、規定が適用されるので、平成21年度中に準備をしておくことが望まれます。
 
 なお、この規定は、平成22年度に在籍する全生徒に適用があるため、全学年にわたる学校全体の計画を作成するということが大切です。

Q (高等学校)問1−11

 単位の修得について、年次ごとに各教科・科目等の単位認定を行うとする規定に「原則とする」との表現が盛り込まれたのはどういう理由からですか。
 さらに、盛り込むに当たって想定された、年次を超えて単位認定を行うケースを教えていただきたい。〔総則第6款の1の(3)関係〕

A (高等学校)答1−11

 2以上の年次にわたって各教科・科目等を履修する場合の基本的な扱いは,従前と同様、可能な限り学年ごとに単位認定を行うことが原則です。
 
 なお、今回の改訂において、単位認定を各年次ごとに行うことを「原則とする」とした趣旨は、例えば,特定の年度における授業時数は1単位(35単位時間)に満たないが,次年度に連続して同一の科目を設定するような場合などにおいて,2以上の年次にわたる授業時数を合算して次年度(後年度)において、単位の認定を行うことも可能としたものです。
 
 具体の例としては、総合的な学習の時間について1年次に50単位時間、2年次に35単位時間、3年次に20単位時間を配当するようなケースが考えらます。
 
 なお、このように複数の年次にわたって学習活動を行う場合には、十分な見通しをもった適切な指導計画の下で履修させた上で、その成果を適切に評価する必要があります。

Q (高等学校)問1−12

 学習指導要領の改訂に伴うセンター試験の受験科目変更については,どのようになる予定でしょうか。

A (高等学校)答1−12

 平成24年度の高等学校入学生については、センター試験は、新学習指導要領の数学及び理科に対応したものを受験することになります。このため、平成24年度高等学校入学生の募集が始まる平成23年度の早い段階までには、平成26年度中に実施される大学入試センター試験の受験科目が決まるよう、文部科学省高等教育局や独立行政法人大学入試センターとは十分に連携を図っていくこととしています。

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

-- 登録:平成21年以前 --