学習指導要領「生きる力」

Q&A

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8.図画工作・美術に関すること

Q(小・中学校)問8−1

 〔共通事項〕を新設した趣旨は何ですか。〔共通事項〕の指導に当たりどのような点に留意すればいいですか。

A答8−1

 小学校図画工作科に関しては,いろいろな調査などから,児童が図画工作を勉強しても,生活や社会にどのように役立つのか分からないと感じていることが分かりました。また,中央教育審議会などで,膨大な視覚情報にさらされている児童に必要な力を身につけてほしいという声がありました。そこで,表現でも鑑賞でも,造形遊びでも絵や立体,工作でも,共通して働いている資質や能力を〔共通事項〕としてまとめ,これをもとに指導を行うことを示しました。具体的には,児童が自分の感覚や活動を通して形,色,動きや奥行きなどの造形的な特徴をとらえ,これを基に自分のイメージをもつことが十分に行われるように学習活動を検討する必要があります。

 中学校美術科において,生徒一人一人の表現や鑑賞の能力を豊かに育成していくためには,発想や構想をする場面,創造的な技能を働かせる場面,鑑賞の場面のそれぞれにおいて,形や色彩,材料などの性質や感情などに意識を向けて考えさせたり,対象のイメージをとらえさせたりすることが重要です。そのためには具体的に感じ取ったりイメージしたりするための視点や,指導の手立てが必要となります。このため,今回の改訂では〔共通事項〕を設け,表現及び鑑賞の学習の中で共通に指導する事項として位置付けました。

 〔共通事項〕は,形や色彩,材料などの性質や,それらがもたらす感情を理解したり,対象のイメージをとらえたりするなどの資質や能力を育成し,表現や鑑賞の能力を高めることをねらいとしています。これらは,表現及び鑑賞の学習の基盤となるものであり,すべての学習活動において共通に指導することが大切です。

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Q(小学校)問8−2

 材料や用具の取扱いについて,どのような点に留意すればいいですか。

A答8−2

 今回,「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」に,各学年で取り扱う材料や用具を,児童がこれらに十分に慣れることができるようにすることなどの指導の配慮事項とともに示しました。指導に当たっては,材料や用具を使ったり生かしたりする経験を重ねながら,児童が材料や用具の適切な扱いに慣れるようにする必要があります。具体的には,材料や用具の経験が十分にできるような時数が設定されているか,用具を使いながら創造的な技能が発揮できるような学習過程になっているか,6年間を通して材料や用具をもれなく取り扱っているかなどを検討することが考えられます。

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Q(中学校)問8−3

 中学校美術科における「美術文化」をどのようにとらえればよいですか。

A答8−3

 「美術文化」は,様々な国や地域における美術に関する作品,作風,作家,価値観,美意識などの表現の総体であるといえます。しかし,「美術文化」を広く扱いすぎると教育として何を指導するのかが不明確になります。そのため,中学校美術科では,特に伝統的,創造的な側面を重視して「美術文化」をとらえることが大切です。

 「美術文化」の学習では,過去の文化遺産としての美術作品などを鑑賞することは重要ですが,それは,その時代のみの独立したものではなく,さらに遠い過去から現代に続く大きな歴史の中でつくられたものであることを意識させる必要があります。例えば,生徒は今生きている現代から過去を見ることになるので,身近な生活や地域にある日用品,美術作品,建造物などから共通に見られる表現の特質などに気付かせ,現代社会の中で身に付けた価値観などを生かして,過去の作品を理解し,伝統や文化に対する関心を高め理解を深めるなどの指導が大切です。

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Q(中学校)問8−4

 「A表現」の(1)において「主題を生み出すこと」が独立して示された趣旨は何ですか。

A答8−4

 「A表現」(1)は,感じ取ったことや考えたことなどを基に,発想や構想をする学習です。ここでは,生徒が対象から感じ取ったことや湧出したイメージ,様々な事象を通して考えたことや想像したこと,夢や希望などから,表現したい主題を生み出し,それを基に構想を練ることが大切です。ただ単に○○を描く,○○をつくるといった題材では,表現意図があいまいなまま,見たものをそのまま描こうとする生徒も少なくありません。見たままに描くことも一つの表現ですが,表現したい主題がなく,そっくりに描くことのみを求めるのであれば美術の表現活動のねらいとしては十分とはいえません。

 生徒自らが表したいことを心の中に思い描くことを重視し,生徒一人一人が自己の感じ取ったことや考えたことなどを基に,主題が見いだせるような指導の充実を図るため事項を独立して示しています。

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Q(中学校)問8−5

 創現行学習指導要領で「A表現」の内容に位置付けられていた「スケッチ」について,どのように取り扱えばよいですか。

A答8−5

 「A表現」において「スケッチ」についての独立した指導事項はなくなり,「第3指導計画の作成と内容の取扱い」に示されました。これは,今回の「A表現」の内容の構成が「発想や構想に関する指導事項」と「創造的な技能に関する指導事項」に整理されたので,「スケッチ」は,「発想や構想に関する指導事項」と「創造的な技能に関する指導事項」の両者を含んでいるためすべてに関わる学習として整理されました。

 そのため,絵としてのスケッチだけでなく,アイデアスケッチやプレゼンテーションのためのスケッチなど,「A表現」の様々な学習において効果的に取り入れることが大切です。

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Q(中学校)問8−6

 現行学習指導要領では,第2・3学年の「A表現」に示されていた「環境のデザイン」についての学習は,どのように取り扱えばよいですか。

A答8−6

 「A表現」において「環境のデザイン」に関する独立した指導事項はなくなりましたが,「環境のデザイン」は,美的感覚を生かして環境の中に洗練された構成や装飾をする学習であるととらえられるので,「A表現」(2)アの「構成や装飾を考えた発想や構想」として行うことができます。

 また,身近な環境に目を向け,安らぎや自然との共生などの視点から,生活を美しく豊かにする美術の働きをについて理解させることは重要なので,第2学年及び第3学年の「B鑑賞」のイとして項目を独立して設け,鑑賞の視点から学習の充実を図ることとしています。

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Q(小・中学校)問8−7

 鑑賞の指導において,言語活動の充実を図った趣旨と指導上の留意点について教えてください。

A答8−7

 小学校図画工作科において,子どもたちは表現や鑑賞の場面で,自然に話したり聞いたり,話し合ったりするものです。そのことによって発想を深めたり,つくりだす喜びを味わったりしています。このような本来子どもたちが持っている鑑賞の能力を十分に高める学習活動を工夫することが,言語活動の充実において重要です。発達の段階に応じて各学年でどのような作品を用意するのか,どのような方法で鑑賞活動を行うのか,題材のどこに鑑賞を位置づけるのかなどを考える必要があります。その際,教科目標にも示しているように創造的な活動として鑑賞が行われるように題材を構成する必要があります。

 中学校美術科「B鑑賞」において造形的な視点を豊かにもって対象をとらえるためには,言葉で考えさせ整理することも重要です。なぜなら,言葉にすることにより,それまでは漠然と見ていたことが整理され,美しさの要素が明確になるからです。さらに,言葉を使って他者と意見を交流することにより,自分一人では気付かなかった価値などに気付くことができるようにもなります。

 このように,対象のよさや美しさ,作者の表現意図や工夫などを豊かに感じ取らせ,考えさせ,味わわせるためには,造形に関する言葉を豊かにし,言葉で語ったり記述したりすることは有効な方法であるといえます。

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Q(小・中学校)問8−8

 図画工作科の内容と中学校の関係教科の内容との連携について教えてください。

A答8−8

 図画工作科は,中学校の美術科と技術・家庭科の技術分野の両方につながる教科です。今回の改訂においては,図画工作科と美術科は,育成する資質や能力を整理し発想や構想の能力,創造的な技能などの系統性を踏まえて改善しています。具体的には,表現領域において,図画工作科では,(1)を「材料を基に造形遊びをする」,(2)を「表したいことを絵や立体,工作に表す」こととして整理しています。このうち(2)が美術科の表現領域へ直接発展し,(1)は美術科での表現活動を支える力となります。さらに小学校図画工作科でも中学校美術科でも〔共通事項〕を設定し,9年間を通して育てたい資質や能力を明確に示しています。中学校技術・家庭科の技術分野との関連では,図画工作科において材料や用具を使ったり生かしたりする経験が十分に行われ,児童がそれらの適切な扱いに慣れているか,児童が手や体全体を働かせてものをつくっているか,工作に表す内容に適切な時数が配分されているかなどについて配慮する必要があります。

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Q(小・中学校)問8−9

移行措置で留意すべきことは何ですか。

A答8−9

 小学校図画工作科において,平成23年度からの新学習指導要領の完全実施が円滑に行われるためには,まず,現在行われている学習を新学習指導要領の観点から検討することが大切です。例えば,〔共通事項〕をもとに,児童が自分の感覚や活動から色をとらえている姿を確かめ,児童の発想がいっそうふくらむように授業を展開することが考えられます。題材を発想や構想,創造的な技能などが十分に育成されているかという観点から見直すことも大切です。特に,「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」で示した材料や用具などが年間指導計画でもれなく押さえられているかを確認することは重要です。

 中学校美術科は,新学習指導要領においても現行学習指導要領の基本的な考え方を引き継ぎ,育成する資質や能力を一層明確にして内容を整理しているので,これまで行ってきた題材を発想や構想,創造的な技能,鑑賞,〔共通事項〕の視点から見直し,育成する資質や能力を明確にして指導することが重要です。

 また,現行学習指導要領で第2・3学年の「A表現」に示されていた「環境のデザイン」についての学習は削除し,「B鑑賞」に位置付けて学習の充実を図ったので,移行期間中に「A表現」を新学習指導要領で,「B鑑賞」を現行学習指導要領で行った場合,環境のデザイン等に関する学習が行われないことが考えられますので配慮する必要があります。

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初等中等教育局教育課程課

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