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学習指導要領「生きる力」

第3章 言語活動を充実させる指導と事例

(1)生徒の発達の段階等に応じた指導の充実

  高等学校における教育には,義務教育の成果を更に発展拡充させ,国家及び社会の形成者としての必要な資質を養い,学問研究や技術の習得に結び付けていくことが求められている。そのためには,高等学校においても小・中学校と同様に,各教科・科目等において,基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに,知識・技能を活用する学習活動,とりわけ記録,要約,説明,論述,討論といった言語活動を発達の段階に応じて行い,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養っていくことが重要である。
先に示した中学校版の指導事例集においては,次のような点を重視するよう求めている。

  • 帰納・類推,演繹などの推論を用いて,説明し伝え合う活動を行う。
  • 日常生活の中で気付いた問題について,自分の意見をまとめ説得力ある発表をする。
  • 社会生活の中から話題を決め,それぞれの視点や考えを明らかにし,資料などを活用して話し合う。
  • グループで協同的に問題を解決するため,学習の見通しを立てたり,調査や観察等の結果を分析し解釈したりする話合いを行う。
  • 新聞,読み物,統計その他の資料を基に,根拠に基づいて考えをまとめ報告書を作成する。
  • 実験や観察の結果,調査結果などを整理し重点化し,相手に分かりやすく,ポスターやプレゼンテーション資料などに表現する。
  • テーマを決めて複数の本や資料などを読み,内容を比較したり,批判的にとらえたりするなど,知識や考えを深める。 

高等学校では,これを踏まえて,高校生としての学習活動にふさわしい言語活動を着実に行う必要がある。
現在,高等学校には多様な生徒が在籍しており,学習指導要領の規定も,共通性を維持しつつも,一定の弾力性をもっている。言語活動の充実についても,このような高等学校教育の共通性と多様性のバランスに配慮しつつ,義務教育段階での学習内容の確実な定着を図り,多様な内容を様々な方法で学ぶという点から捉える必要がある。
  このことも踏まえ,生徒の実態に応じて,高等学校において取り上げる言語活動としては,例えば,次のような点に留意する必要がある。

  • 現代の社会生活で必要とされる実用的な文章を読んで内容を理解し,自分の考えをもって話し合う。
  • 文字,音声,画像などのメディアによって表現された情報を,課題に応じて取捨選択してまとめる。
  • 授業のまとめとして,その時間のポイントなどを説明する。
  • 課題についての自分の考え方を板書し,どのようにすればよりよい考えや表現になるかを考える。
  • 適切な主題を設定し,資料を活用して探究し,考えを論述する。
  • 観察,実験などの結果を分析し解釈して自らの考えを導き出し,表現する。
  • 学習の成果を互いに伝え合ったり,助言し合ったりして,新たな追究に向かう。
  • 自己評価や相互評価を通して,自己の変容を確認する。

(2)教科等の特質を踏まえた指導の充実及び留意事項

高等学校における言語活動は,義務教育段階で身に付けた言語に関する能力,高等学校国語で指導する内容等を基本に,各学科に共通する各教科・科目や主として専門学科において開設される各教科・科目など,全ての教科・科目等において充実する必要がある。なお,主として専門学科において開設される各教科・科目のうち職業に関する各教科・科目についても,実習(実験)等において,言語活動を行うことが大切である。その際,各教科・科目等の特質を踏まえつつ,言語活動を通じて意図的,計画的に指導するということに留意し,国語の各科目との関連も図りながら言語活動を行っていくことが求められる。
そのためには,例えば,思考力,判断力,表現力等に係るどのような力を育むために,それにふさわしいどのような言語活動を,どの場面で行うのか等を,各教科・科目等の指導計画に明確に位置付けることが求められる。そして,実際の指導では,教師のみならず生徒も言語活動についてその目的を意識しながら学習に取り組むことができるようにする工夫が必要となる。このことを通じて,各教科・科目等の授業の構成や進め方自体が改善され,主体的に学習に取り組み,生涯にわたる学習の基盤を培うことにもつながる。

◎各学科に共通する各教科

<国語>

  国語科においては,学習指導要領に示されている国語の各科目の内容の(1)に示す指導事項を,内容の(2)に示す言語活動例を通して指導することとしている。
  このことは,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」の指導(関連する〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の指導を含む。),「読むこと」における,近代以降の文章を教材として扱う指導,古典を教材として扱う指導など,国語の全ての指導に共通する。
言語活動を取り上げる際には,それが目標としている言語能力を育成するのにふさわしい学習活動かどうかを十分に吟味する必要がある。このため,国語科における言語活動は,指導過程を考える上で重要な位置を占めることになる。実際に単元の指導と評価の計画を作成する過程では,次の(2)に言語活動が位置付けられる。

(1)当該単元の目標を設定し,単元の評価規準を設定する。
(2)目標を実現するのにふさわしい言語活動,教材を取り上げる。
(3)当該単元の授業で実際に用いる具体的な評価規準を設定する。
(4)当該単元の各次における指導と評価の展開を計画する。 

国語の指導において言語活動を充実するためには,不断の見直しが大切である。そこで,授業の展開がうまくいかない,目標に照らして生徒の実現の状況が芳しくないというような場合には,取り上げた言語活動が適切であったかどうかを見直し,改善する必要がある。
  学習指導要領の内容の(2)に示しているものは,中学校までも含めて既に指導していることである。また,例として示しているので,これらの全てを行わなければならないものではなく,それ以外の言語活動を取り上げることも考えられる。

<地理歴史>

地理歴史科においては,習得した知識,概念や技能を活用して,世界や日本の歴史的事象や地理的事象,現代社会の諸事象について考察し,その内容を説明したり自分の考えを論述したりする学習活動を充実する。
○ 「世界史A」及び「世界史B」においては,世界史学習のまとめとして,現代の課題に関する適切な主題を設定させ探究する学習を設け,諸資料の活用,論述,討論などの学習活動を充実する。また  「世界史B」においては,上記の学習のほかに,時間軸や空間軸,資料の読解などに関わる主題を設定して行う学習を設けて,言語活動の充実を図る。
○ 「日本史A」においては,歴史を考察し表現する学習のまとめとして,近代と現代の学習を踏まえ,適切な主題を設定し追究・探究して考えを表現する学習活動を充実する。「日本史B」においては,同じく,資料に基づいて歴史を解釈する学習や歴史的解釈が複数成り立つ背景を説明する学習などを踏まえ,適切な主題を設定し資料を活用して探究し考えを論述する学習活動を充実する。
○ 「地理A」及び「地理B」においては,各科目ともに項目の内容に即して適宜言語活動の充実を図るとともに,特に各科目最後の項目では,それまでの学習成果を活用して,生活圏や我が国が抱える地理的な諸課題を捉え,その解決に向けた取組などについて探究する中で,地図を有効に活用して事象を説明したり,自分の解釈を加えて論述したり,討論したりするなどの学習活動を充実する。

<公民>

公民科においては,現代の社会的事象と人間としての在り方生き方に関する基礎的な知識,概念や技能を習得するとともに,有用な情報を適切に収集・選択・活用して,社会的事象の本質や人間の存在及び価値などについて,広い視野に立って多面的・多角的に考察し,公正に判断するとともに適切に表現する学習活動を充実する。
○ 「現代社会」においては,習得した知識,概念や技能を活用して,社会的事象について倫理,社会,文化,法,経済,国際社会など多様な角度から考察し説明するとともに,科目のまとめとして議論などを通して自分の考えをまとめたり,説明したり,論述したりするなど課題を探究する学習活動を充実する。
○ 「倫理」においては,先哲の考え方・生き方などについて習得した知識,概念や技能を活用して,現代の倫理的諸課題について自己の課題とつなげて考察し探究するとともに,自己の確立を促すように主体的に考え自分の意見を整理して発表したり,異なった意見をもつ人と議論したりするなどの学習活動を充実する。
○ 「政治・経済」においては,習得した知識,概念や技能を活用して政治や経済に関わる課題を探究し,資料を適切に読み取り,解釈して自分の考えを導き出し,その過程や結果を説明したり論述したりする学習活動を充実する。

<数学>

数学科においては,生徒が学習した数学を積極的に活用して数学的論拠に基づいて適切に判断することができるよう,数学における基本的な概念などの理解を深めるとともに,事象を数学的に考察・処理し,その過程を振り返って得られた結果の意義を考えたり,自らの考えを数学的に表現し根拠を明らかにして説明したり議論したりする学習活動を充実する。
○ 数学における基本的な概念などについて,具体例を工夫するなどして概念の意味理解を深める学習活動を充実する。
○ 生徒の誤りや疑問を積極的に取り上げ,それを解決することを通して理解を深める学習活動を充実する。
○ 具体的な事象から課題を設定したり,コンピュータを活用するなどして結果を予想させたりする学習活動を充実する。
○ 思考の過程や判断の根拠などを数学的に表現したり,数学的に表現されたものを比較してよりよい表現に改めたりする学習活動を充実する。

<理科>

  理科においては,科学的な思考力や判断力,表現力を育成する観点から,観察,実験などの結果を分析し解釈して自らの考えを導き出す学習活動及びそれらを表現する学習活動を充実する。
○ このためには,まず年間の指導計画を見通して,観察や実験などを十分に行い,生徒が結果を分析して解釈して自らの考えを導き出す機会やそれらを行うための時間を確保することが必要である。
○ 観察,実験などの結果を分析し解釈させる際には,生徒に観察や実験の目的を十分理解させ,生徒が観察や実験に主体的に取り組むようにすることが求められる。このため,例えば生徒自身に実験の計画を立てさせたり,既習の知識や予備的な実験に基づいて実験結果を予想させたり,仮説を設定させたりすることなどが重要である。
これらの学習活動を行う際には,科学的な思考力や判断力を育成する観点から,生徒一人一人にじっくり考えさせるとともに,グループで協議させた後,自らの考えをまとめさせることも考えられる。
○ 自らの考えを表現させる際には,観察や実験で得られた結果と考察とを意識して区別しながら表現させることが大切である。また,口頭での発表,プレゼンテーション,報告書の作成など,多様な表現活動の機会を設定することが大切である。報告書を作成させる際には,その見通しをもたせるため,例えば,前年度の報告書などを参考として提示し,活用させることが考えられる。
生徒が話合いに慣れていないときには,ノートに自分の考えたことを記載させてから発言させたり,少人数のグループ内で協議したのち,クラス全体に発表させたりするなど,生徒が円滑に話合いに参加できるよう工夫することが大切である。

<保健体育>

保健体育科においては,生涯にわたって健康を保持増進し,豊かなスポーツライフを継続する資質や能力の育成を図る観点から,主に体を動かす活動を通して,コミュニケーションや感性・情緒に関する学習活動及び知的活動を充実する。また,健康・安全に関する知識を活用する学習活動を充実する。
○ 「体育」においては,各運動場面で,体を動かす機会を適切に確保した上で,相手や仲間のよい演技を讃え合う,互いに助け合い高め合う,合意形成に貢献するなどのコミュニケーションを図る学習活動を充実する。また,例えば,自己に応じた目標の設定,目標を達成するための課題の設定,課題解決のための練習法などを選択と実践,演技や発表を通した学習成果の確認,新たな目標の設定といった課題解決の方法を活用するなど,知識を実践に活用する学習活動を充実する。
○ 「保健」においては,健康に関する資料等で調べたことを基に話し合い,個人や社会生活における健康・安全に関する課題を把握したり,解決の方法を整理したりするなどの学習活動を充実する。また,健康に関わる概念や原則を基に,自分たちの生活や事例と比較したり,分類したり,分析したりしたことについて,筋道を立てて説明するなどの学習活動を充実する。

<芸術>
(音楽)

  芸術科(音楽)においては,創意工夫して音楽表現をする能力や味わって聴く能力を育成する観点から,音楽を形づくっている要素を知覚し,それらの働きを感受しながら,例えば,表現領域では自己の表現意図を言葉で表したり,鑑賞領域では根拠をもって批評したりする学習活動を充実する。
○ 音によるコミュニケーションの充実を図るため,音楽に対するイメージ,思い,意図などを相互に伝え合う活動を位置付けて,仲間とともに創意工夫して音楽を表現する喜びを味わうようにしたり,鑑賞した音楽に対する多様な感じ取り方があることを理解し,一人一人の音楽に対する意識を広げたりすることができるようにする。
○ 言葉と音楽との関係を重視する観点から,歌唱表現において,歌詞の内容や言葉の特徴を生かして歌ったり,日本語のもつ美しさを味わったりする学習活動を充実する。
○ 鑑賞の能力を育むために,音楽を形づくっている要素や構造などを客観的な理由として挙げながら,それらと曲想との関わりや,楽曲や演奏に対する自分なりの評価などを述べる活動を位置付けて,主体的,創造的に味わって聴くことができるようにする。

(美術)

  芸術科(美術)においては,表現や鑑賞の能力を育成する観点から,感じ取ったことや考えたこと,目的,機能などを基に主題を生成し,創造的な構想を練ったり,作品についてお互いに批評し合ったりするなどして,作品の理解を深めるなどの学習活動を充実する。
○ 表現においては発想や構想の能力を高めるために,スケッチやデッサンを活用したり,図式化や言葉により思いや考えを整理したりするなどの学習活動を充実する。
○ 鑑賞においては鑑賞の能力を高めるために,美術作品やお互いの作品について批評し合い討論するなどして,自他の見方や感じ方の相違などを理解し,見方や感じ方を広げ,作品に対する理解を深めるなどの学習活動を充実する。

(工芸)

芸術科(工芸)においては,表現や鑑賞の能力を育成する観点から,自己の思いや使う人の願いなどを考えて心豊かな発想をし,創造的な構想を練ったり,作品についてお互いに批評し合ったりするなどして,作品の理解を深めるなどの学習活動を充実する。
○ 表現においては発想や構想の能力を高めるために,スケッチや図面にして検討したり,模型を試作して確かめたりすることや,生徒間で意見を交流したり,言葉により考えを整理したりするなどの学習活動を充実する。
○ 鑑賞においては,鑑賞の能力を高めるために,工芸作品やお互いの作品について批評し合い討論するなどして,自他の見方や感じ方の相違などを理解し,見方や感じ方を広げ,作品に対する理解を深めるなどの学習活動を充実する。

(書道)

芸術科(書道)においては,表現や鑑賞の能力を育成する観点から,書こうとする言葉(素材)や意図にふさわしい表現を,書の古典を踏まえながら構想,工夫したり,制作過程で意見を交換して表現の深化を図ったり,作品について互いに根拠をもって批評し合ったりする学習活動を充実する。
○ 書こうとする言葉(素材)の選定場面において,自分の心に響く言葉(素材)を選ぶようにし,その内容にふさわしい表現を構想,工夫する。
○ 書の古典のもつよさや美しさを感受し,それを言葉で表現したり,評価したりする活動を通して,書の見方を広げ,書の伝統と文化について理解を深める鑑賞活動を充実する。
○ 作品の制作過程において,作品の制作意図や表現の工夫について意見を交換したり,完成した作品について互いに批評し合ったりする学習活動を充実する。

<外国語>

外国語科においては,外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を育成する観点から,「聞くこと」,「話すこと」,「読むこと」及び「書くこと」の4技能の総合的な指導を通して,これらの4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成する言語活動を充実する。
○ 生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮する。
○ コミュニケーション能力を養うために,生徒が実際に情報や考えなどの受け手や送り手となってコミュニケーションを行う言語活動を充実する。その際,言語の使用場面(「特有の表現がよく使われる場面」,「生徒の身近な暮らしや社会での暮らしにかかわる場面」など)や言語の働き(「コミュニケーションを円滑にする」,「気持ちを伝える」など)を適切に組み合わせることにより,各言語活動が効果的なものとなるよう留意する。
○ 「聞くこと」及び「読むこと」については,英語を聞いたり読んだりして,情報や考えなどを理解したり,概要や要点を捉えたりする言語活動を充実する。
○ 「話すこと」及び「書くこと」については,聞いたり読んだりしたこと,学んだことや経験したことに基づき,情報や考えなどについて,話し合ったり意見の交換をしたりすることや,簡潔に書くことなどの統合的な言語活動を充実する。
○ ワークシートなどの補助資料を効果的に用いることによって,各言語活動が円滑に進むように工夫する。
○ 文法については,コミュニケーションを支えるものであることを踏まえ,文法の用語や用法等に関する説明は必要最小限としつつ,当該文法を実際に用いて言語活動を行うことによって,文法をコミュニケーションに活用することができるようにするための指導を行うことに留意する。

<家庭>

  家庭科においては,学習した知識及び技術を活用して生活に関わる諸問題を解決する能力を育む観点から,実践的・体験的な学習を通して衣食住,家族,保育,消費,環境など家庭生活の様々な事象の原理・原則を科学的に理解する学習活動や,それらに関わる知識と技術を実際の生活上の意思決定や問題解決に活用するなどの学習活動を充実する。
特に,学習した知識と技術を生かして,自己の家庭生活や地域の生活と関連付けて生活上の課題を設定し,解決方法を考え,計画を立てて実践することを通して生活を科学的に探究する方法や問題解決の能力を身に付けさせることを目的とする,「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」を充実する。
○ 合理的な判断力や創造的思考力,問題解決能力の育成を図るため,衣食住などの生活における様々な事象や科学性を説明する活動や判断が必要な場面を設けて理由や根拠を論述したり,正解が一つに絞れない課題を考える際,最適な解決方法を探究したりする学習活動を充実する。
○ 乳幼児との触れ合いや高齢者との交流等を通して自己の考えを明確にし,自己を表現し,他者を理解し,他者と意見を共有し,互いの考えを深めることなどの協同的な関係を築く学習活動を充実する。
○ 衣食住などの生活における様々な事象やものづくりなどに関する実践的・体験的な活動を一層重視し,その過程で様々な語彙の意味を実感を伴って理解させる学習活動を充実する。

<情報>

情報科においては,情報活用能力を育むことをねらいとし,習得した情報に関する知識・技能や科学的な見方・考え方などを活用して,高度に情報化した社会に積極的に参画したり,その発展に寄与したりすることができる能力・態度の育成を重視する。言語活動を取り上げる際には,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う学習活動を取り入れ,言語などを活用して,新たな情報を創り出したり,分かりやすく情報を表現したり,正しく伝達したり,他者と共同して問題を適切に解決する学習活動を充実する。
  その際,「情報教育が目指している情報活用能力をはぐくむことは,基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着とともに,発表,記録,要約,報告といった知識・技能を活用して行う言語活動の基盤となるものである。」という平成20年答申の提言の趣旨を十分に踏まえた学習活動とする必要がある。
○ 「社会と情報」においては,情報手段などを適切に活用して情報を収集,処理,表現するとともに効果的なコミュニケーションを行うために必要な基礎的な知識・技能を習得させるために,情報手段等の目的に応じた適切な選択,情報の信憑性や著作権への配 慮の必要性・重要性,望ましい情報社会の在り方と情報技術の適切な活用等について,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等の学習活動を充実する。
○ 「情報の科学」においては,情報や情報技術を問題の発見と解決に効果的に活用するための科学的な考え方を習得させるために,複数の問題解決策の考案と目的・状況に応じた解決策の選択,問題解決の過程と結果の評価・改善,情報技術の進展が社会に果たす役割と影響等について,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等の学習活動を充実する。

◎主として専門学科において開設される各教科のうち職業に関する各教科

<農業>

  農業科においては,農業の各分野についての興味・関心を高め,身に付けた知識,技術の定着を図るとともに,それらを用いて,諸課題について,主体的,合理的,かつ倫理観をもって解決する実践的な学習を通じて言語活動を活性化させ,言語能力を高める。
○ 実習(実験)においては,事前学習を徹底し,何のために行うのか(意義),どのように行うのか(方法)について,安全管理を含め,言語での理解と言語活動によるグループ内での共有化を図る。また,結果の予測,結果の記録,そして結果に関する考察を グループ内での話合いを通してまとめていくなどの学習活動を充実する。
○ 報告書の作成においては図書館やICTなどを活用し,得られた事実を正確に記述することとそれらを基に自分の考察した内容を分かりやすく表現することにより,まとめ上げる力の向上に留意する。
○ 発表活動においては,自分がまとめ上げた内容,伝えたい内容をいかに相手に分かりやすく理解してもらえるかに留意した発表方法を工夫する。質疑応答においても,質問者は発表内容を理解の上,疑問点をわかりやすく伝え,回答者は質問内容を理解した上で論理的な回答をすることで,コミュニケーション能力の向上も図る。

<工業>

  工業科においては,工業の各分野に関する実践的なものづくりを通して身に付けた知識,技術及び技能を確実に習得させ活用する能力を育成する観点から,実習(実験)におけるグループでの活動などを通して論理的に討議するなどの言語活動を行い,工業技術者としての規範意識,倫理観等をもって,自ら考え,課題を探究し解決する実践的な態度を育成するための学習活動を充実する。
○ 実習(実験)においては,グループ内で実習工程や実験方法などについて話し合い,どのような結果が得られるかを予測させ,得られた結果について比較・検討し,なぜ,そのような結果となったのか,その原因について,論理的に自分の考えをまとめて討議するなどの学習活動も充実する。
○ 報告書の作成においては,読解力や情報を選択する能力を身に付ける観点から,図書館やICTなどを活用して調査し,得られたデータや結果と自らの有する知識・経験と結び付けて分析・評価,比較考察,批判的検討を加え,自分の意見を論述するなどの学習活動を充実する。
○ 授業で自分の考えを表現する場合は,ICTを活用するなどして情報を的確に理解し,小グループで討議したり,討議した内容を発表したりするなどの学習活動を充実する。

<商業>

  商業科においては,ビジネスの諸活動に関する具体的な事例を取り上げ,考察,討論,発表などを行う学習活動や,ビジネスに関する具体的な課題を設定し,地域や産業界と連携して,様々な情報を収集・分析・評価し,発表するなどの学習活動を充実する。
○ マーケティング分野においては,商品開発に関する課題を設定し,マーケティングに関する知識と技術を活用して市場調査を行い,その結果を踏まえて商品企画書を作成して地域や産業界にプレゼンテーションを行うなどの学習活動を充実する。
○ ビジネス経済分野においては,企業の経済活動について具体的な事例を取り上げ,経済や法規などに関する知識を活用して,考察や討論を伴うケーススタディを行うなどの学習活動を充実する。
○ 会計分野においては,財務指標の具体的な例を用いて,会計に関する知識と技術を活用して企業の実態の分析を行い,その結果を表現するなどの学習活動を充実する。
○ ビジネス情報分野においては,ビジネスに関する情報を処理する課題を設定し,情報の処理や活用に関する知識と技術を活用して情報の収集・処理・分析を行い,報告書や提案書を作成してプレゼンテーションを行うなどの学習活動を充実する。

<水産>

水産科においては,水産や海洋の各分野における基礎的・基本的な知識,技術及び技能を確実に習得させ活用する能力を育成する観点から,実習(実験)におけるグループ活動などを通して,安全を確認し合ったり理論的に討議したりするなどの言語活動を行い,水産業及び海洋関連産業に従事する者としての規範意識,倫理観等をもって,自ら考え,課題を探究し解決する実践的な態度を育成するための学習活動を充実する。
○ 実習(実験)においては,事前に安全や実習の工程等の注意事項について確認を行うとともに,実習中においては,コミュニケーションを図りながら事故等の防止に努める。また,得られた結果について比較・検討し,その原因についてグループ内で討議するなどの学習活動を充実する。
○ 報告書については,従前から自分の考えをまとめ,誰が読んでも分かるように書くこと,さらに,考察は得られたデータや結果の意味を考え,図書館やICTなどを活用して,調査することから読解力を身に付けたり,情報を選択する能力を身に付けたりして,まとめることなどの学習活動を充実する。
○ ICTの活用,グループでの実習の工程や方法等についての検討結果の予想,事後に発表会を行うほか,校内外においてポスターセッションを行うなど学習活動を充実する。

<家庭>

家庭科においては,生活産業への消費者ニーズの的確な把握やサービス提供等を行う企画力・マネジメント能力を身に付け,生活文化を伝承し創造する人材を育成する観点から,衣食住,ヒューマンサービスなどの各分野における基礎的・基本的な知識,技術の定着を重視するとともに,就業体験等,実社会や職業との関わりを通じて,コミュニケーション能力等に根ざした実践力を高める学習活動を充実する。
○ 「課題研究」においては,調査,研究,実験,産業現場等における実習,作品製作等の成果や課題について報告書の作成や発表を行う,文章や資料等を読んだ上で,知識や経験に照らして多面的・多角的に自分の考えをまとめて論述するといった学習活動を充実する。
○ 子供や高齢者に関する情報を的確に理解したり,自分の考えを適切に伝えたりするなど,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等互いの考えを深める上で必要なコミュニケーション能力を高める学習活動を充実する。
○ 自分の考えや与えられたイメージを,創意工夫したりアイディアを生かしたりするなど,適切な表現方法により創造的に製作するなどの学習活動を充実する。

<看護>

  看護科においては,国民の健康の保持増進に寄与する能力の育成を図る観点から,看護実践の場における体験を通して看護の本質とその社会的な意義を理解する学習活動や看護の基礎的・基本的な知識と技術を用いて臨床における課題解決を図る学習活動を充実する。
○ 看護の専門性を深めるために,校内実習や看護実践の場における実習の後には,その体験を振り返り,十分な時間をかけて考察し,記録にまとめ,発表及び協議するなどの学習活動を充実する。また,看護科の各科目で学習した知識・技術を活用して,患者を科学的な視点で観察し,看護上の問題に対して実施した援助の結果を分析・評価して表現するなど,臨床における問題解決の思考力を養う学習活動を充実する。
○ 医療職者として必要な倫理観やコミュニケーション能力および豊かな人間性を育むために,多様な実習場面で人間の生命や人権を尊重し,患者や保健医療福祉関係者,仲間などと互いの考えを伝え合うなどして相互理解を深め,信頼関係を構築し,協働する学習活動を充実する。

<情報>

情報科においては,情報の各分野に関する知識・技術の習得や情報の意義や役割の理解などを通して,情報産業が求める創造力,問題解決力や統合力,職業倫理等の創造的な能力と実践的な態度を身に付けた人材の育成を重視する。言語活動を取り上げる際には,生徒が主体的に考え、討議し、発表し合う学習活動を取り入れ、言語などを活用して,新たな情報を創り出したり,分かりやすく情報を表現したり,正しく伝達したり,他者と共同して問題を適切に解決する学習活動を充実する。
○ 基礎的分野においては,高度な情報技術者が共通に身に付けるべき情報の表現と管理,問題の発見・解決,情報技術等に関する基礎的な知識・技能や態度を身に付けさせるために,情報技術者の役割や使命・責任,情報技術の適切な選択・活用,情報の文書化の重要性・必要性,問題解決の過程と結果の評価・改善等について,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等の学習活動を充実する。
○ システムの設計・管理分野においては,システム全体の設計・構築や管理・運営を担う等の高度な情報技術者が必要とする知識・技術や態度を身に付けさせるために,問題解決の目的に応じたアルゴリズムの選択・改善,ネットワークやデータベースの運用管理・セキュリティ管理・障害管理の重要性・必要性,情報システムの開発過程や結果の評価・改善等について,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等の学習活動を充実する。
○ 情報コンテンツの制作・発信分野においては,様々な表現メディアを駆使して情報コンテンツを制作するとともに適切に発信できる高度な情報技術者が必要とする知識・技術や態度を身に付けさせるために,情報メディアの社会や情報産業における役割や影響,社会生活における情報デザインの目的・役割や重要性,情報コンテンツの開発過程や結果の評価・改善等について,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等の学習活動を充実する。

<福祉>

  福祉科においては,社会福祉の増進に寄与する創造的な能力と実践的な態度を育てる観点から,社会福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術を総合的,体験的に習得させ,社会福祉の理念と意義を理解させるとともに,社会福祉に関する諸課題を主体的に解決する学習活動を充実する。
○ 社会福祉の専門性を深めるために,校内実習や介護実践の場における実習の後には,その体験を振り返り,十分な時間をかけて考察し,記録にまとめ,発表及び協議するなどの学習活動を充実する。また,福祉科の各科目で学習した知識・技術を活用して,福祉・介護を科学的な視点で観察し,社会福祉の問題に対して実施した援助の結果を分析・評価して表現するなど,問題解決の思考力を養う学習活動を充実する。
○ 社会福祉人材として必要な倫理観やコミュニケーション能力及び豊かな人間性を育むために,多様な実習場面で人間の尊厳の尊重や自立支援の必要性を前提とし,高齢者・障害者や保健医療福祉関係者などと互いの考えを伝え合うなどして相互理解を深め,信頼関係を構築し,協働する学習活動を充実する。

◎総合的な学習の時間

  問題の解決や探究活動の過程においては,他者と協同して問題を解決しようとする学習活動や,言語により分析したり,まとめたり表現したりするなどの学習活動が行われるようにする。
○ 探究的な学習活動を充実するため,PISA型読解力(※3)における読解のプロセスを参考とした「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」という探究の過程を重視する。
○ 多様な情報の入手,他者の尊重と自らの役割の自覚,交流の広がりと深まりの実現に向けて,他者と協同して取り組む多様な学習活動を行う。
○ 体験したことや収集した情報を整理したり,分析したりして思考する活動へと高めるとともに,他者に伝えたりまとめたりして自分の考えを明らかにする学習活動を行う。

◎特別活動

特別活動においては,よりよい生活や人間関係を築く力,社会に参画する態度や自治的能力を育成する観点から,自己の考えや思いを自分の言葉で適切に表現するとともに,考え方の違いや多様性を尊重しながら集団として合意形成を図り協同的な問題解決を目指す活動を充実する。特に,体験的な活動の後には,体験を通して感じたり気付いたりしたことを自己と対話しながら振り返り,文章等でまとめたり,発表し合ったりする活動を重視し,他者と体験を共有して幅広い認識につなげる必要がある。
○ 望ましい人間関係を主体的に形成し,ホームルームや学校づくりに参画するとともに,生活の中で起こる様々な問題や課題について積極的に取り組み,解決していこうとする自主的,実践的な態度を育成するため,例えば,「ホームルーム内の組織づくりと役割の遂行」,「自主的・自律的な活動やルールと集団生活の向上」,「ホームルーム生活の充実のための工夫」などのような題材を設定し,グループやホームルーム全体で話し合う活動などを展開する。
○ 男女相互の理解を一層深めるとともに,人間として互いに協力し尊重し合う態度を養い,家庭や社会における男女相互の望ましい人間関係の在り方や男女共同参画社会などについて幅広く考えていくため,例えば,「男女相互の理解と協力」,「人間の尊重と男女の平等」,「異性交友の望ましい在り方」,「男女共同参画社会と自分の意識」などのような題材を設定し,アンケートやインタビューを基に話し合ったり,新聞やテレビ等の資料を基に話し合ったり討論したりして展開する。
○ 教科・科目あるいは類型やコースを適切に選択し,意欲をもって進んで学習に取り組み,充実した学校生活を送るとともに,自己の個性を伸ばす観点から,ガイダンス機能の充実を図るとともに,例えば,「選択教科・科目の理解と私の選択」,「先輩に学ぶ類型やコースの選択」などのような題材を設定し,選択教科・科目をどのような視点で選択したらよいかを話し合ったり,どのような理由で,どのような類型,コースを選択しようとしているかを互いに発表し合ったりする活動を展開する。
○ 将来の社会的・職業的自立のために必要な望ましい勤労観・職業観を確立するため,例えば,「職業と仕事」,「働くことの意義と目的」,「職業生活」,「働くことと生きがい」などのような題材を設定し,調査やインタビューを基に話し合ったり,発表やディベートを行ったりするなどの活動を展開する。

(3)指導事例


これまで述べた言語活動の意義や指導の在り方などを踏まえ,参考となる具体的な指導事例を以下に掲載する。
  指導事例は,「第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方」及び「第2章 言語の役割を踏まえた言語活動の充実」を踏まえ,国語科をはじめとした教科等の取組を収集した。これらは,新しい高等学校学習指導要領が全面実施される以前の実践であるが,可能な限りその趣旨を考慮し,言語活動の充実に資するものを収集している。

ア 指導事例の示し方

各指導事例は,一つの事例を見開き2ページで示し,左側のページは【学習活動の概要】,右側のページは【解説】としている。概ね次のような構成を基本としているが,各教科等の特性に応じて工夫している。

【学習活動の概要】

(文頭に,教科・科目等名,言語活動の特色を記述。)

  1. 単元(題材)名
  2. 単元(題材)の目標
  3. 単元(題材)の評価規準
  4. 取り上げる言語活動と教材等(単元の概要)
  5. 単元(題材)の指導計画

(評価規準は,新学習指導要領を踏まえたものとしている。) 

【解説】

【指導事例と学習指導要領の関連】
【言語活動の充実の工夫】 

イ 指導事例の活用

各高等学校においては,国語科以外の各教科等の授業においても言語活動を取り入れた学習活動が行われてきたところであるが,以下の事例を参考に,これまでの取組を見直し,それぞれの教科等の目標を実現するため,効果的な指導に改善していくきっかけにすることが望まれる。
  見直しに当たっては,これまで行ってきた言語活動を把握,検証することが求められる。その上で,指導計画の作成に当たっては,各教科等の目標と指導事項との関連,教材や教具について十分研究し,効果的な指導を行うための言語活動の工夫・改善に向けて検討する必要がある。
その際,言語活動を充実すること自体が目的ではなく,言語活動により,各教科・科目等の目標に即し,基礎的・基本的な知識及び技能の習得,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力を育むことを目指すことに留意する必要がある。このため,基礎的・基本的な知識・技能の習得を図るための繰り返し学習等を削減したり,話合いの時間を大幅に増やしたり,新たに言語活動のための単元を特設したりするなどの対応は必ずしも必要ではない。
  なお,平成25年のPISA調査結果では,それまで課題とされてきた読解力を始はじめ,各分野において,経年比較可能な平成15年以降で順位・得点とも過去最高の成績となっている。
こうした結果の背景には,基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力などの確かな学力を育成する取組などが着実な成果を上げたものと考えられる。
高等学校においても,これらの能力をいっそう育成していくため,引き続き言語活動を充実し,授業の改善に努めることが必要である。
言語活動の優れた指導事例は,以下に示すもの以外にも,これまでに各高等学校において多くの蓄積があると考えられ,それらを学校内で共有することが求められる。また,教育委員会等においても,高等学校のみならず小・中学校等も含めて,優れた事例について,域内で把握,共有,普及していくことが期待される。これら学校や設置者の取組により,創意工夫を生かした様々な指導手法が開発・実践されることが望まれる。


(※3)Programme for International Student Assessment(PISA:ピザ)の略。生徒の学習到達度調査と訳される。経済協力開発機構(OECD)が実施。主に,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野について調査を実施。PISAにおいて,読解力とは「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考し,これに取り組む能力」と定義されており,側面別には,「情報へのアクセス・取り出し」「統合・解釈」「熟考・評価」の3つに分類し,到達度を測定。

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-- 登録:平成24年06月 --