新しい学習指導要領リーフレット 制作後記~リーフレットを読み解くためのヒント~

平成29・30年改訂の新しい学習指導要領の理念を実現するためには,その趣旨・内容について,学校や教育関係者はもちろんのこと,保護者や地域の方々,産業界等を含め広く共有し,社会全体で協働的に子供の成長に関わっていくことが重要だと考えています。
そのため,文部科学省では,多くの方々に新しい学習指導要領について興味・関心をもっていただくために,そしてこれからの学校教育について御理解いただくために,リーフレットをはじめとする周知・広報のための資料を作成しました。
このページでは,リーフレットに込められている意味を,「リーフレットを読み解くためのヒント」として解説します。
<リーフレット表紙・リーフレット中面(改訂の趣旨)>
○「生きる力~学びの,その先へ~」

情報化や技術革新,グローバル化等により予測を超えて加速度的に進展することが予想される中,学校教育には,
子供たちに,このような変化の激しい社会を生きるために必要な力である「生きる力」を育成することが求められています。
新しい学習指導要領では,日々の授業での学びを通して,この「生きる力」を一人一人の子供たちに確実に育成することを
目指しています。このことを「生きる力 学びの その先へ」と表現しました。

○イラスト「4羽の黄色の鳥」

4羽の鳥は,幼児期,小学校段階,中学校段階,高等学校段階と成長していく姿であり,予測困難な社会の変化に対応する「生きる力」を発揮し,大空(これからの社会)を自由に飛んでいく姿を表現しています。

学習指導要領リーフレット(表紙)   学習指導要領リーフレット(中面1)

<リーフレット中面(改訂の内容)>
どのように学ぶか~「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善~

「アクティブ・ラーニング」と聞くと,グループ・ディスカッションや子供たちがプレゼンテーションをする授業形態をイメージされるかもしれませんが,新しい学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善」とは,子供たちの「学び」そのものが,「アクティブ」で意味あるものとなっているかという視点から授業をより良くしていくことを指します。具体的にどのような授業を目指すか,リーフレットでは4つの例を挙げています。
 ・一つ一つの知識がつながり,「わかった!」「おもしろい!」と思える授業
 ・見通しをもって,粘り強く取り組む力が身に付く授業
 ・周りの人たちと共に考え,学び,新しい発見や豊かな発想が生まれる授業
 ・自分の学びを振り返り,次の学びや生活に生かす力を育む授業
このような授業を行うことで,学校教育における質の高い学びを実現し,子供たちが学習内容を深く理解し,資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けられるようになることを目指します。

○「カリキュラム・マネジメント」の確立

「カリキュラム・マネジメント」とは,子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて,各学校が設定する学校教育目標を実現するために,教育課程に基づき組織的かつ計画的に教育課程の質の向上を図っていくことを目指すものです。後述する新しい学習指導要領の「社会に開かれた教育課程」という理念を踏まえれば,これからの「カリキュラム・マネジメント」は,リーフレットに挙げたような以下の三つの側面から進められることが重要です。
 ・教師が連携し,複数の教科等の連携を図りながら授業をつくる
 ・学校教育の効果を常に検証して改善する
 ・地域と連携し,よりよい学校教育を目指す
このような「カリキュラム・マネジメント」の充実を通じて,学校全体として教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的体制の確保,実施状況に基づく改善などを通じて教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図ります。

 

学習指導要領リーフレット(中面2)

○何ができるようになるか~「資質・能力の三つの柱」~

新しい学習指導要領では,子供たち一人一人に「生きる力」を育成するために,各教科等において,以下の三つの資質・能力を育成することとされました(「資質・能力の三つの柱」)。
 ・実際の社会や社会の中で生きて働く「知識及び技能」
 ・未知の状況にも対応できる「思考力,判断力,表現力等」
 ・学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力,人間力等」
「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善」と「カリキュラム・マネジメント」により,これらの三つの資質・能力をバランス良く育むことを目指します。

○何を学ぶか~具体的に取り組むこと・これからも重視すること~

具体的に取り組むこと・重視する教育が記載されています。上半分の黄色楕円では,教育内容の主な改善事項の一部を紹介しています。下半分には,上半分の教育内容を学ぶ教科等を幼児期の教育,小学校(特別支援学校小学部),中学校(特別支援学校中学部),高等学校(特別支援学校高等部)と分けて紹介しています。
新しい教育内容・教科等の中には,リーフレットを手にした大人の方々が子供の頃には学校で学ばなかったものもあると思います。自分たちの時代には学ばなかった,時代に応じて教育は変化しているんだ,こういうことを今の子供達は学んでいるんだといったことを,リーフレットのこの部分から感じていただきたいと考えています。

 

学習指導要領リーフレット(中面3)

<リーフレット中面(保護者へのメッセージ)>
○「社会に開かれた教育課程」

ここまで,「資質・能力の三つの柱」「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善」「カリキュラム・マネジメント」など,新しい学習指導要領における重要な改善を示してきましたが,これら全ての基盤となる考え方が「社会に開かれた教育課程」です。「社会に開かれた教育課程」とは,よりよい学校教育を通じてよりよい社会を作るという目標を学校と社会とが共有し,それぞれの学校において,必要な教育内容を明確にしながら,社会との連携・協働によってそのような学校教育の実現を図ることを目指すものです。すなわち,学校は,社会と自校との関わりを捉え,社会とのつながりを考えた教育課程を編成して,社会と共有・連携しながらその教育課程を実施していくことが求められるのです。

○保護者へのメッセージ

保護者の方々に「保護者の皆さまの働きかけが,子供たちの「生きる力」を育む大きな原動力になります」というメッセージを伝えるとともに,「平成29年度全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」により児童生徒の学力と相関関係があるとされた保護者の働きかけ等のうち,保護者や児童生徒にとって身近な内容のものを紹介しています。
 □学校や友達のこと,地域や社会の出来事など家庭での会話が多い。
 □テレビ・ビデオ・DVDを見る時間などのルールを決めている。 
 □テレビゲーム(携帯電話やスマートフォンを使ったゲーム等を含む)をする時間を限定している。
 □子供に本や新聞を読むようにすすめている。
 □子供に最後までやり抜くことの大切さを伝えている。
 □自分の考えをしっかり伝えられるようになることを重視している。
 □地域や社会に貢献するなど人の役に立つ人間になることを重視している。

 

学習指導要領リーフレット(中面5)

<リーフレット裏面>
○新しい学習指導要領で目指す学びを体験!オリンピック・パラリンピックのメダルをつくるなら

子供たちに必要な資質・能力を育んでいくためには,その教科等をなぜ学ぶのか,それを通じてどのような力が身に付くのかという,教科等を学ぶ本質的な意義を明らかにする必要があります。子供たちは,各教科等の学びの中で,学んだ知識を活用したり,身につけた思考力を発揮したりしながら,新しく学んだ知識と関連づけてより深く理解したり,課題を見いだして解決策を考えたりします。
こうした教科での学びは,社会人になってからも重要な働きをします。各教科等を通じて得た力が大人になってからどのように生かされるのかを,リーフレット裏面で示しました。小学校の新しい学習指導要領の全面実施が東京2020オリンピック・パラリンピックの開催年である2020年と同年であることから,東京2020オリンピック・パラリンピックのマスコットであるミライトワ,ソメイティにも協力してもらい,「オリンピック・パラリンピックのメダルをつくるなら」をテーマとしました。
リーフレットの裏面に挙げた例のように,一つの事柄であっても,各教科等の学びで得た力を生かしながら世の中の様々な物ごとを理解し思考することができるのです。

学習指導要領リーフレット(裏面)

~最後に~

新しい学習指導要領の理念である「社会に開かれた教育課程」を実現するためには,冒頭でも述べたように,新しい学習指導要領の趣旨・内容について,多くの方々と共有することが重要です。新しい学習指導要領のリーフレットを手にした方々に,新しい学習指導要領について御理解いただき,子供たちの学びを応援していただけたらと考えています。

 

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初等中等教育局教育課程課

(初等中等教育局教育課程課広報担当)