教科書記述の内容、教育現場での問題点、改善すべき点などを把握するため現職教員並びに保護者を対象としたアンケート調査を実施する。アンケートは、小学校国語の研究対象3社の教科書を対象として行う。
「A社」「B社」「C社」のいずれかの社の教科書を使用している現職の教員。「A社」「B社」「C社」のいずれかの社の教科書を使用している児童を持つ保護者。
調査結果を見るに際しては、以下の点に留意。
各都道府県教育委員会から、調査対象の教科書を採択している地域のうち最も人口数の多い市区町村の教育委員会へアンケートを送付。
市区町村教育委員会では、採択地区で最も児童数の多い小学校の校長へアンケートを送付。
アンケートの送付のあった小学校は校長から教員、保護者に配付。
ただし、本基準に合わない場合は、各都道府県教育委員会の裁量に任せた。
また、返信方法は、教員、保護者ともに記入者個人が返信用封筒にて委嘱先であるみずほ総合研究所宛に直接送付し回収した。
本調査は、以上のような調査対象選定の過程を経ており、無作為抽出とはならないことから、集計結果を全国平均の姿と言い切ることはできない。
しかし、以上のような調査対象選定プロセスを経ることで、教育への関心の高い保護者層、全国規模での現場の教員の意見を収集することができ、本調査目的である現場教員、保護者などの意見を参考とした教科書の改善・充実に向けた検討に資する結果を得ることができた。
回答者の勤務地は省略。無回答1件を除く455件の回答を得ることができた。
図表1-1 勤務年数
回答者の勤務年数は「21年以上(51.8パーセント)」が最も多く、次いで「1年~5年(15.6パーセント)」、「16年~20年(14.9パーセント)」の順になっている。
図表1-2 中学校の教員免許の保持
中学校の教員免許の保持は(複数回答)、「国語(21.3パーセント)」が最も多く、次いで「社会(15.8パーセント)」、「保健・体育(6.6パーセント)」の順になっている。また、回答者のうち、34.2パーセントの教員が中学校の教員免許を保持していない結果になっている。
図表1-3 国語の指導の担当学年
現在国語の指導を担当している学年(複数回答)は、「3学年(18.6パーセント)」が最も多く、次いで「1学年(18.2パーセント)」、「4学年(16.9パーセント)」の順になっている。
図表1-4 教科書出版社名
国語の指導に使用している教科書は、「A社(46.7パーセント)」が最も多く、次いで「B社(35.7パーセント)」、「C社(16.4パーセント)」の順になっている。
図表1-5 国語の指導の選好度
国語の指導が好きかどうかについては、「まあ好き(41.7パーセント)」と答えた教員が最も多く、「好き(39.0パーセント)」の教員と合わせると約8割(80.7パーセント)の教員から指導が好きだとの回答があった。
図表1-6 国語の指導のしやすさ
国語が教科として指導しやすいかについては、「まあ指導しやすい(31.1パーセント)」が最も多く、「指導しやすい(14.9パーセント)」と合わせると、46.0パーセントの教員から指導しやすいとの回答があった。
図表1-7 授業での教科書の使用方法
授業での国語の教科書の使用方法は、「常に教科書を中心に授業を進める(48.2パーセント)」に対し、「単元によっては副教材を組み合わせている(47.4パーセント)」と「常に教科書と副教材を組み合わせている(3.3パーセント)」を合わせると50.7パーセントとなっており、常に教科書を中心に授業を進める教員と教科書と副教材を組み合わせて授業を進める教員は、ほぼ同じ割合となっている。
副教材を利用する理由(Q8-1.自由回答形式)では、「児童の理解が深まるため」、「教科書の内容だけでは不十分なため」、「指導がしやすい、授業を進めやすい」といった回答が多く寄せられた。
図表1-8 国語の授業形態
国語の授業形態(複数回答)は、「クラス単位の一斉指導(93.9パーセント)」がほとんどを占めている。また、その他の回答の内容では、「グループ学習」や「単元によりコース別少人数学習」等の回答が寄せられた。
図表1-9 教科書の内容の工夫や配慮の度合いについて
現在の教科書がどの程度工夫されているか、5つの項目について調査を行った。
なお、「十分に工夫されている」を5点、「やや工夫されている」を4点、「どちらといえない」を3点、「やや工夫が足りない」を2点、「工夫が足りない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると「学習活動の方法、手順(3.76)」が最も高く、「単元の学習内容が定着したかの確認(2.86)」が最も低い結果になった。「児童の理解度に応じた指導が行えること(2.87)」、「単元の学習内容が定着したかの確認(2.86)」については平均の3ポイントを下回っている。
図表1-10 イラスト・写真等の本文との関連付けについて
イラスト・写真等の使用が本文の内容と適切に関連付けられているかについては、「まあ関連付けられている(52.2パーセント)」が最も多い結果となっている。「適切に関連付けられている(43.6パーセント)」を合わせると、ほとんどの教員(95.8パーセント)が本文の内容と関連付けられていると回答している。
図表1-11 イラスト・写真等の分量について
イラスト・写真等の分量については、「適切な分量になっている(84.0パーセント)」が最も多い結果となっている。
図表1-12 色分け・強調の効果について
重要な学習上のポイントや学習内容を明確にするための色分け・強調が効果的に用いられているかについては、「まあ効果的に用いられている(64.3パーセント)」が最も多い結果となっている。「効果的に用いられている(15.1パーセント)」と合わせると、約8割(79.4パーセント)の教員が効果的に用いられていると回答している。
図表1-12-1 色分け・強調が効果的でない理由
色分け・強調が効果的に用いられていないと答えた教員の効果的に用いられていない理由については、「必要な箇所に色分け・強調がされていない(72.2パーセント)」が最も多く、次いで「不必要なものが多い(12.2パーセント)」の順になっている。
図表1-13 教科書準拠の副教材や補助教材の使用有無
教科書に準拠した副教材や補助教材の使用については、「使用している(49.3パーセント)」、「使用していない(48.7パーセント)」と回答した教員がほぼ半分となっている。
図表1-13-1 教科書準拠の副教材や補助教材の使用理由
教科書に準拠した副教材や補助教材の使用理由(複数回答)については、「教科書の練習問題の分量が少ないから(59.6パーセント)」、「教科書の練習問題が多様性に欠けるから(27.6パーセント)」の順になっている。
また、その他の回答の内容では、「学力の定着をはかるため」や「漢字学習を反復的に行ないたいため(漢字ドリル使用)」等の回答が寄せられた。
図表1-14 取り扱われている教材の選択について
取り扱われている教材の選択が適切かについては、「まあ適している(53.5パーセント)」が最も多い結果となっている。「適している(13.8パーセント)」と合わせると、約7割(67.3パーセント)の教員が適していると回答している。
図表1-15 自習への配慮
自習しやすいように配慮された構成になっているかについては、「あまり自習に適していない(46.7パーセント)」が最も多い結果になっている。「自習に適していない(14.7パーセント)」と合わせると、約6割(61.4パーセント)の教員が自習に適していないと回答している。
図表1-16 教科書の内容の工夫や配慮の度合いについて
現在の教科書がどの程度工夫されているか、8つの項目について調査を行った。
なお、「十分に工夫されている」を5点、「やや工夫されている」を4点、「どちらともいえない」を3点、「やや工夫が足りない」を2点、「工夫が足りない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると「自分の考えを述べることを意識させる工夫(3.69)」が最も高く、「複雑な字形の定着(2.83)」が最も低い結果になった。
「使用頻度・範囲が少ない漢字の定着(2.87)」、「複雑な字形の定着(2.83)」については平均の3ポイントを下回っている。
図表1-17 教科書の分量について
教材の分量について、「文章の量」、「教材の数」の2つの観点で調査を行った。
なお、「多い」を5点、「やや多い」を4点、「適している」を3点、「やや少ない」を2点、「少ない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。「文章の量」と「教材の数」を評点別に見た結果は以下のとおり。
文章の量については、「話すこと、聞くこと(3.18)」が最も高く、「読むこと(文学的文章)(2.73)」が最も低い結果になった。「話すこと、聞くこと」以外は平均の3ポイントを下回っている。
教材の数については、「話すこと、聞くこと(3.31)」が最も高く、「読むこと(文学的文章)(2.38)」が最も低い結果になった。「話すこと、聞くこと」以外は平均の3ポイントを下回っている。
「話すこと、聞くこと」、「書くこと」及び「言語事項」に比べ、「読むこと」について、文章の量及び教材の数(特に文学的文章)が少ないと感じている教員が多い結果になっている。
主に、学習活動の取り扱いや教科書の構成についての意見が多くなっている。代表的な意見を列挙すれば以下のとおり。
図表1-18 学習内容を理解させることについて
児童に学習内容を理解させる上で適しているかについては、「やや適している(49.8パーセント)」が最も多い結果になっている。「適している(12.3パーセント)」と合わせると、約6割(62.1パーセント)の教員が適していると回答している。
図表1-19 教科書への満足度
国語の教科書全般に関する満足度は、「まあ満足している(43.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「満足している(5.3パーセント)」と合わせると、約半数(48.9パーセント)の教員が満足と回答している。他方、「やや不満(27.4パーセント)」と「不満(3.3パーセント)」を合わせると、約3割(30.7パーセント)の教員が不満と回答している。
自由意見につき、三領域一事項及び全体という観点で代表的な意見などを列挙すれば以下のとおり。
主に、レイアウト、学習活動、言語事項、単元構成といった点での意見が多くなっている。代表的な意見を列挙すれば以下のとおり。
「優れている点」、「劣っている点」についての意見の代表的なものは以下のとおり。
意見について大別すると、「三領域一事項のバランス」に関するもの及び「教材選定」に関するものがある。
回答者の居住地は省略。206件の回答を得ることができた。
図表2-1 子供の学年
回答した保護者の子供の学年(複数回答)は、「5年生(32.5パーセント)」が最も多く、次いで「6年生(29.1パーセント)」、「4年生(28.6パーセント)」の順になっている。
図表2-2 教科書会社名
回答した保護者の子供の使用している教科書は、「A社(49.0パーセント)」が最も多く、次いで「B社(34.5パーセント)」、「C社(16.0パーセント)」の順になっている。
図表2-3 教科書の適切度
教科書の内容について、「適している」を5点、「まあ適している」を4点、「普通」を3点、「あまり適していない」を2点、「適していない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると個別の教科書内容については、「児童の興味・関心を引く教科書の内容(3.84)」が最も高く、「自宅で自習するための学習課題(2.59)」が最も低い結果になった。
「練習問題等の量(2.76)」、「つまずいた時にわかりやすく理解させる構成(2.71)」、「自宅で自習するための学習課題(2.59)」では平均の3ポイントを下回っている。
図表2-4 保護者の教科書に対する満足度
国語の教科書全般に関する満足度は、「まあ満足している(53.4パーセント)」が最も多い結果になっている。「満足している10.2パーセント」と合わせると、63.6パーセントの保護者が満足と回答している。他方、「やや不満(12.1パーセント)」、「不満(2.9パーセント)」を合わせると、15.0パーセントの保護者が不満と回答している。
児童の学年別に保護者の代表的な意見(キーワード)を列挙すれば、以下のとおり。
全体的に、写真などが豊富であり子供にやさしいという意見の一方で、分量、特に読む量が少ないのでは、といった意見が多い。
図表2-5 児童の教科書に対する満足度
親から子供に聞く形態での児童の教科書に対する満足度を調査した。なお、「満足していると答えた」を5点、「まあ満足していると答えた」を4点、「どちらともいえないと答えた」を3点、「やや不満と答えた」を2点、「不満と答えた」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると、どの学年も平均の3ポイントを上回っているが、「3年生(4.20)」が最も高く、「6年生(3.49)」が最も低い結果になった。
-- 登録:平成21年以前 --