多様な学習を支援する高等学校の推進事業(平成29年度)(1)

青森県

【調査研究課題名】
ICTを活用した高等学校における遠隔教育の普及・推進

【調査研究成果】
 [調査研究校:青森県立木造高等学校,青森県立木造高等学校深浦校舎]
これまでに,外国語,芸術(音楽),商業,国語,数学,家庭科の遠隔授業を行い,座学の一斉授業は,概ね支障なく授業をすることができた。
授業に適した人数については,カメラを通して生徒を掌握する視点から,多くとも20名程度が適当である。
映像,音声の遅延については,教師,生徒ともに授業を重ねるうちに慣れていき,苦にならなくなった。ただし,マイクが無指向性であることが要因となり「ハウリングエコー」が頻発することや,機材の調整・工夫に多くの時間を要することが課題となった。
ICTを活用した遠隔授業は,教員数の少ない小規模校では,潜在的なニーズがあり,今後,日常的に遠隔システムを活用した授業を行う場合,機材の操作を極力簡単にし,担当者が単独で授業実施ができるよう,機材の選定,セッティング及び教員研修を行う必要がある。

岩手県

【調査研究課題名】
教育の質保障を目指し小規模校が連携する遠隔授業の実証的調査研究

【調査研究成果】
 [調査研究校:岩手県立西和賀高等学校,岩手県立岩泉高等学校]
前年度に引き続き,総合教育センター研修指導主事が,研究協力校の教員に対して遠隔機器操作の習熟,授業展開案の提示並びに評価方法の確立のための支援を行いながら,遠隔システムを用いた研修指導主事による模擬授業及び研究協力校の教員による課外授業を実施した。実施後の遠隔システムを用いた授業検討会では,受信側の生徒が,より専門性の高い授業を受けられること,配信側と受信側の生徒間で対話的な授業が展開できること,地域の特性を生かした授業が展開できることなどを確認した。一方で,配信側(教員,生徒)と受信側(サポート教員,生徒)との事前打ち合わせやシステムの設置・調整などの事前準備に相当な時間を要するなどの課題も明らかになった。
今後,これまでの課題に加え,遠隔システムの構成についても検討しながら,効率的かつ効果的な遠隔教育に向けた研究を継続したい。

長野県

【調査研究課題名】
遠隔教育による多様な学習の支援とICTによる確かな学力の育成

【調査研究成果】
 [調査研究校:長野県佐久平総合技術高等学校(浅間キャンパス・臼田キャンパス),長野県塩尻志学館高等学校,長野県蘇南高等学校]
少子化に伴う高校規模の縮小化に対応するための「教育の質の保障」と,ICTを活用した教育的価値の提供による「新しい教育の創造」のため,平成27年度に2キャンパスをもつ佐久平総合技術高等学校に遠隔教育システムを導入し,平成28年度からは,ともに総合学科を設置する塩尻志学館高等学校,蘇南高等学校を追加指定して調査研究を進めてきた。
3年間の調査研究をとおして,技術面及び学習面で多くのノウハウを蓄積することができた。また,遠隔教育の導入により,専門性を持つ教員による授業や高校間をつないだ生徒間の協働的な学習の実施,合同授業の実施による教員の指導力向上の機会などの点で教育的効果が確認できた。

静岡県

【調査研究課題名】
中山間地域の小規模校におけるICT活用推進事業

【調査研究成果】
 [調査研究校:静岡県立伊豆総合高等学校,静岡県立伊豆総合高等学校土肥分校,静岡県立浜松湖北高等学校,静岡県立浜松湖北高等学校佐久間分校]
研究2年目は,28年度に導入したテレビ会議システムを活用し,本校・分校間における遠隔授業や会議,研修,生徒交流等を実施した。
遠隔授業については,座学や実技を伴う複数の科目において試行実施し,遠隔授業の適不適や授業スタイルについて検証した。その結果,実技を伴わない教科や受信側のみに生徒がいるスタジオ式の授業では実施が可能ではないかという意見が多かった。また,機器のトラブルや通信の不具合等が発生した場合の対処など対応すべき内容も明らかとなったが,先進的な取組をしている学校への視察を通して,ICT機器等の効果的な使い方などを把握することができた。
授業に参加した生徒については,ICTを駆使した授業展開で「分かりやすかった」など満足度は比較的高かったので,今後は,単位認定に向けて,遠隔授業における指導方法を向上させるとともに,課題を整理し,対応策を検討する。

徳島県

【調査研究課題名】
過疎地の高校における遠隔授業の導入に関する調査研究~総合教育センターを配信拠点とする体制の構築について~

【調査研究成果】
 [調査研究校:徳島県立海部高等学校]
本県では,機器・通信環境の整備,生徒アンケートや教職員の意見を踏まえた改善により,通年の遠隔授業であっても生徒に負担を感じさせることがない対面授業と同等の学習環境を構築することができた。
指導方法については,授業者が書画カメラを使用することで,板書の見え方やワークシートの提示の仕方を工夫し,効果的に教材を提示することができた。さらに,タブレットと授業支援アプリを導入することで,リアルタイムで生徒の学習状況のモニタリングが可能となり,生徒の理解度に応じた適切な指導を行うことができた。また,それらを用いたグループワークの試行など,様々な授業形態の可能性も確認できた。
今後,資料提示の工夫など効果的な指導方法,補助者の役割,適切な学習評価の方法等について研究を継続する。

高知県

【調査研究課題名】
遠隔教育における学校体制の構築と生徒の能動的な学習を支援する汎用的な学習指導方法の研究

【調査研究成果】
 [調査研究校:高知県立高知追手前高等学校,高知県立高知追手前高等学校吾北分校,高知県立窪川高等学校,高知県立四万十高等学校,高知県立岡豊高等学校,高知県立嶺北高等学校]
平成27年度からの本校・分校間での取組,平成28年度からの中山間小規模校間での取組に加えて,平成29年度から大規模校・小規模校間での実践を通じて,遠隔教育の推進に係る課題の把握が進んだ。
3年間の調査研究により,単独授業において単位認定ができ,また,合同授業においても,平成30年度からの単位認定につなげる準備ができた。遠隔教育を導入することで,中山間小規模校の生徒に対する教育機会の確保や多様かつ高度な教育に触れる機会を提供することができ,高等学校教育の可能性を広げる事ができることが分かった。また,配信側・受信側で,事前・事後を含め,十分に連携を図りながら進めるなどの工夫をすることにより,対面による授業と同程度の教育効果を得られることも確認できた。さらに,教員研修としても有効であり,遠隔授業を通じて,教員の指導力向上にもつながっている。
また,南海トラフ地震による震災後の高校教育早期再開を目指した報告書を作成した。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(高等学校担当)付

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(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)