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岡山県教育委員会 主体的な授業改善を促進するシステムをつくる‐学校を挙げて授業改善を進めるために‐

はじめに

 岡山県教育委員会では,今日の変化の激しい社会に適切に対応しながら,生涯にわたって心豊かにたくましく生きていく力を持つともに,豊かで活力ある社会を築き,支えていく意欲と実践力を備えた新時代を担う人間の育成が重要であるという基本方針の下,特に「確かな学力の育成」については,「豊かな心の育成」とともに教育改革の重要な柱ととらえ,様々な取組を展開している。
 確かな学力の育成については,全国学力・学習状況調査の結果から,次のような課題が見られた。

教科に関する調査から

○全国の結果と同様に,昨年度に比べて各教科の平均正答率が低くなっており,全国と本県との平均正答率の差が,昨年度より広がっている。

  • 条件に沿って自分の考えをまとめるなどB問題の記述式の設問,A問題でも解答に際し,より深い理解が必要な設問に課題が見られる。
    ○無解答率も,昨年度と同様にほとんどの設問で全国平均より高くなっている。
児童生徒に対する調査から

○昨年度同様に,自尊感情や生活習慣にかかわる項目は,概ね全国平均に比べて肯定的回答が多いものの,学習習慣や家庭学習にかかわる項目に課題が見られる。

  • テストで間違えたところや授業の復習など自主的な学習態度が十分でない。
  • 家庭学習の時間が全国平均に比べて少ない傾向にあり,中学校においては,テレビやビデオ・DVDの視聴時間が増加傾向にある。
学校に対する調査から

○本調査の活用にかかわる項目は,概ね全国平均に比べて肯定的回答が多いものの,昨年度同様に習熟の程度に応じた指導にかかわる項目に課題が見られる。

  • 補充的・発展的な学習指導は,昨年度より改善されたものの,全国平均に比べると十分とは言えない状況にある。
  • 家庭学習については,課題は与えているものの,授業内容と関連させて調べさせたり,発展的に考えさせたりする課題の与え方や,保護者への働きかけが十分とは言えない状況にある。

 これらの課題解決に向け,児童・生徒に対しては学習習慣の確立,学校に対しては児童生徒の学習状況に応じたきめ細かな指導の充実,家庭・地域に対しては生活基盤の重要性の啓発等について,市町村,学校,家庭・地域と一体となって取り組むことができるよう様々な施策を推進することとした。

1.岡山県教育委員会における取組

1.事業内容について

(1)事業概要

 学力向上にかかわる課題は,各学校・地域によって異なることから,その改善に向けた取組が学校・地域ごとで主体的に展開できるよう,主に次のような施策を実施した。

1.授業改革協力員の委嘱

 国語,算数・数学,英語教育に関して豊かな専門知識と経験を有する教諭等100名を委嘱し,所属校や近隣の学校で行う授業改革研究会において授業公開や授業研究への協力,学習指導案をはじめ授業展開の好事例などの素材提供等を行う。

2.研究指定

 全国学力・学習状況調査の結果を踏まえて作成した授業改善プランに基づき,学校の課題改善に向けた取組を推進するため,小・中学校18校を指定する。

3.授業改革モデル研究会

 県下3会場において,大学教官及び授業改革協力員等による授業公開及び研究協議を行い,各地域で実施する授業改革研究会のモデルを示す。

4.学校・地域で実施する授業改革研究会の支援

 研究指定校以外にも市町村教委を通じて要請を受け,授業改革協力員や指導主事が研修を支援する。

5.到達度確認テストシステムの実施

 算数・数学の単元ごとの問題を県教育委員会のホームページから配信し,結果を全県と比較できるシステムを構築し,学習状況を把握し,個への指導や授業改善に役立てる。

6.学習支援のための素材集(データベース)の作成

 小・中学校における,各教科・領域の授業展開の好事例や学習習慣の定着のための工夫例等を広く募集してデータベースとし,Web上に掲載することで,教員の授業作り等を支援する。

7.算数・数学アドバイザーの派遣

 20校の小規模校等に教員OB等を非常勤(週1回1日4時間35週)として配置し,授業改革の支援を行う。

(2)実施体制

 本県では,岡山大学教育学部の淵上克義教授を委員長とし,県内の大学教官3名,市町村教育委員会の教育長代表1名,公立小中学校の校長各1名,県PTA関係者1名,県総合教育センターと県教育庁を中心とした県教育委員会関係者10名で構成する岡山県学力向上検討委員会を組織している。
 委員会の下には,県内大学教官,県総合教育センター及び市教育委員会指導主事等による作業部会として教科指導推進部会とデータ分析部会を設置した。
 また,県教育委員会を挙げて,学力向上にかかわる施策を推進するため,教育次長を座長に,庁内各課室長,教育事務所長,県総合教育センター所長の計13名による学力向上プロジェクト会議を組織するとともに,その下に庁内各課室,教育事務所,県総合教育センターの実務担当者15名によるワーキング・グループを設置した。

実施体制

(3)研究成果

 1~7の施策の取組状況について調べたところ,次のような結果だった。

1.授業改革協力員

 授業改革協力員

  • 他校の教員と授業について協議する機会が増え,互いに刺激となった。
  • 校種の異なる学校の授業参観により,系統的な指導等,小中連携の取組を考える機会となった。
  • 校内の中核なので他校に出にくい。
  • 県全体の人材育成の視点が必要。
2.研究指定

研究授業の実施153回,平均8.5回
外部講師(他校教員)の招聘89回,58.2%
外部からの参加者のべ940名

  • 学年や教科を超えて協働的な授業研究が進んだ。
  • 授業研究に対する教員の意識が高まった。
  • 校長のリーダーシップと核となる教員のコーディネートが大切。
  • 実践を深めるには2年は必要。
3.授業改革モデル研究会

参加者のべ376名(会場校を除く)
公開授業が参考になった94.7%
参加型協議が参考になった92.0%

授業改革モデル研究会

  • 今までにないやり方で,会場校の負担を減らし,参加者の参加意識を増大させており,改革の意欲を感じる。
  • 「○○の授業のあり方」の研究会は多いが,授業そのものが主体の研究会は初めてで新鮮だった。
  • 全員が何らかの役割をもてたのがよかった。課題や学ぶものが出やすい,アクションが起こしやすい内容だった。
  • 授業改善には様々な要素があるので,もう少し整理できるとより分かりやすい。
4.学校・地域で実施する授業改革研究

会の支援

指導主事の学校訪問のべ75回

学校・地域で実施する授業改革研究

  • 教材研究や指導案検討の段階から一貫して指導を受けることで,系統性のある研究推進ができた。
  • 公開授業だけでなく,授業後の研究協議の持ち方にも提案があり,他校の先生方から貴重な意見をもらうことができ,刺激を受けた。
5.到達度確認テストシステムの実施

H20.9.1から稼働
ダウンロード22,590件,入力1,290件

  • 今求められている学力観に対応したよい問題。
  • どの程度まで理解しておく必要があるかを具体的に生徒に示すことができ,ワーク等を使って復習させるときの意欲の喚起が図れた。
  • 個々の児童の克服すべき点が明らかとなり,つまずきに合った対応ができた。
  • 従来行っていた市販テストでは評価できない活用力が評価できてよかった。
  • 入力にかかる手間を子どもの指導に振り向けたいという声がある。
  • 全県的な比較をするなら実施時期をそろえるなど条件整備が必要。
  • 活用の仕方を研修で紹介する必要がある。
6.算数・数学アドバイザーの派遣
  • 継続した指導により,教員の変容を確認しながら助言をもらえた。
  • 授業直後に助言を受けるので,すぐに改善できる。
  • 参観が励みとなり,教員の自己研修が進み,教材研究の充実につながっている。
  • 小中学校の両方に配置されているので,アドバイザーを通して教材や指導法等の小中連携ができる。
  • 複式教育の配慮事項や効果的な教材等の助言がありがたかった。
  • 好評なので単市事業で立ち上げた。
  • アドバイザー間のネットワークが必要。

2.普及啓発と今後の取組について

(1)成果の普及啓発に関する取組

 平成20年度全国学力・学習状況調査から,本県の児童生徒の課題として,基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着,根拠を明らかにして自分の考えを説明する力や必要な情報を整理して筋道を立てて考える力の育成が十分実現されていないことが明らかとなった。また,学習習慣や家庭学習,習熟の程度に応じた指導にかかわる項目に課題が見られた。
 こうした結果を受けて,市町村教育委員会・学校を対象に調査結果及び今後の授業改善,「学習の手引き」の活用方法等について説明会を実施した。
 また,指導資料等を作成し,県教育庁指導課のホームページに掲載している。

1.児童生徒用の「学習の手引き」の活用

 全国学力調査問題の解説や家庭学習の仕方等を収めたデータを県教育委員会のホームページからダウンロードし,児童生徒の学習改善や個への指導に役立てる。

家庭学習:はじめの一歩

2.習熟度別指導実践事例集の作成

 習熟度別指導の手順や留意事項,事例等を示し,その充実を図る事例を紹介する。

習熟度別指導についてQ&A

3.家庭教育サポートブックの作成

 幼児児童生徒の望ましい生活習慣・学習習慣の確立や健全育成を図るための取組例等を具体的に示し,家庭の実践に役立てる。

家族であいさつを交わそう

4.「『自分の考えを持ち,それを表現する力』の向上に向けて」の作成

 本県の児童生徒の課題となっている力の向上を図るための授業改革の視点と改善例を示す。

改善の具体例 1.基礎・基本の確実な定着を目指して<小学校>

5.ハンドブック「自信を持って取り組み,信頼される教師を目指して」の作成

 児童生徒や保護者への接し方,教科指導等の基本を分かりやすく示すことで,教員の指導力の向上,教育活動の充実を図る。

コラム ~教師100人に聞きました~

6.「落ち着いた学校環境をつくるために」の作成

 学校の荒れの状態を立て直すポイント,未然防止のためのチェックポイントを示すことで,各学校の落ち着いた生活環境の実現に役立てる。

「落ち着いた学校環境をつくるために」の作成

(2)来年度以降の取組

 本年度の取組状況や学力向上検討委員会の協議を踏まえ,来年度は,既存の施策を次のように改善することとした。

1.授業改革協力員の委嘱

 国語,算数・数学,英語教育に関して豊かな専門知識と経験を有する教諭の委嘱を133名に増員するとともに,授業改革協力員のさらなる指導力の向上に向け,協議会を年2回開催する。

2.授業改革推進校研究発表会の開催

 大学教官や授業改革協力員による授業公開から,熱心に授業研究に取り組んでいる学校による授業公開及び研究協議会(県下3会場)に切り替え,県内の授業研究の機運を高め,各学校での授業改善の推進・充実を図る。

3.学力向上実践校の指定

 地域の学力向上の拠点として,意欲のある学校を公募し,応募のあった学校の事業計画を審査の上,10中学校区を指定する。
 指定期間は2年間で,学校・地域の実情に応じて本県の課題である「効果的な習熟度別指導の在り方」「学び合う集団づくりための指導の在り方」「放課後学習サポートの充実」「言語活動の充実を図る指導の在り方」「学習習慣の定着や学習意欲の向上のための指導の在り方」の中から研究課題を選択して,研究に取り組む。
 授業展開の好事例や指導の工夫例等を県教育庁指導課に提供する。

4.授業改革研究会の支援

 各地域・各学校で実施する授業公開及び研究協議会等に対し,所管の教育委員会の要請に基づき,指導主事を継続的に派遣する。

5.算数・数学アドバイザーの派遣

17校の小規模校等に教員OBを,週1回,1日4時間,35週,非常勤として配置し,授業改善の指導を行う。

6.学校力向上支援スタッフ等の配置

 学校運営や学級経営,授業改善等について豊富な知識と経験を有する教員OB5名を,学校力向上支援スタッフとして県内の学校に派遣し,継続的に指導・助言を行う。(1校あたり年3回,1日4時間,5名で延べ120校を巡回)
 また,学校・スタッフ間の調整や情報収集等を行う学校力向上支援スタッフコーディーネーター1名を指導課に配置する。

7.学習支援のための素材集(データベース)の作成

 小・中学校における,各教科・領域の授業展開の好事例や学習習慣の定着のための工夫例等を広く募集し,データベース化する。それをWeb上に掲載することで,教員の授業作り等を支援する。
 授業改善協力員,学力向上実践校からも事例の収集をする。

8.到達度確認テストシステムの実施

 算数・数学の単元ごとの問題を県教育委員会のホームページから配信し,結果を全県と比較できるシステムを構築し,学習状況を把握し,個への指導や授業改善に役立てる。
 算数・数学のテストについては,平成20年度に作成した小学校1年~中学校3年の算数・数学の各単元及び年度末の問題を,新学習指導要領の移行措置に対応して改良する。
 今年度は,読解力育成のテストについて,小学校1年~中学校3年を対象に各学年6枚程度の問題を作成する。
 また,成果の普及啓発に資するために作成した資料を活用した研修等の実施を市町村教育委員会や学校に対して働きかけるとともに,資料の活用の在り方等について県教育委員会の実施する研修で取り上げることとしている。

到達度確認テストシステムの実施

2.研究指定校における取組事例

取組事例1.協働的な算数の授業改善の取組 浅口市立金光小学校

(1)学校の状況について

 本校は,岡山県の南西部に位置し,全校児童364名,14学級の学校である。学区は,霊峰遙照山の南,山陽線に沿って東西にのび,学校はその東部に位置している。金光町は金光教本部にある文化の町,宗教の町として栄えてきた。農業では植木,果物の産地として有名であるが,近年兼業農家が増えている。全般的に教育に対する関心が高い。
 こうした恵まれた環境の下,本校では「心身ともにたくましく生きる児童の育成~考える子・助け合う子・やりぬく子~」を教育目標に掲げ,教育活動に取り組んでいる。

(2)全国学力・学習状況調査の結果等を活用した取組について

 平成19年度全国学力・学習状況調査の結果から,国語に比べて算数に課題が見られ,計算能力などの基本的な技能をより確実に定着させるとともに,数学的な思考力を育んだ上で,知識や技能を生活の中で活用していく力を育てることが必要であることが分かった。
 そこで,平成20年度の研究指定を期に,研究主題を「生き生きと学び,分かる喜びを実感する子どもをめざして~考える方向に導く算数的コミュニケーション活動の工夫を通して~」とし,教師の適切な指導を前提として,コミュニケーション活動の工夫と算数的技能の習得とを両輪とした授業改善により,児童の学習意欲と学力の向上を目指すこととした。

1.授業改革協力員の活動

 本校では,授業改革協力員が研究主任となり,研究推進に深くかかわることとした。こうすることで,授業改革のための校内研修(授業改革研究会)を組織的,効果的に企画・運営できると考えたからである。
 そして,授業改革協力員をはじめ,本校の教員の授業を積極的に校外に向けて公開し,他校の教員とも連携しながら授業研究を推進するよう心がけた。

2.研究の実際

 授業改革研究会は,基本的には本校教員による授業公開とその研究協議とをセットにして,午後半日をかけて行った。
 本校では,この研究会を年間を通して8回実施し,校外からのべ約100名の参加者があった。
 8回のうち3回は,大学教官を講師に招聘したものであり,8回全てに渡り県教育庁指導課の指導を受けた。
 また,授業改革協力員の授業公開は2回であったが,その他全ての公開授業に対してかかわりながら,研究を推進した。
 授業改革研究会の一連の流れは,次のようになる。
 まず,授業改革協力員が参加して,低・中・高学年の学年部で児童の学力状況やレディネステストの結果を分析する。そして,教材研究行い,指導案を立案した上で,それを全教員で検討する。
 さらに,授業者と授業改革協力員が県教育委員会に赴き,指導主事に指導を受ける。その後,校内で指導案の再検討と模擬授業を行う。
 こうして,授業改革研究会当日に公開授業を行う。そして,本校の全教員,他校からの参加者,県教育委員会の指導主事らとともに研究協議を行うことで,成果と課題を明らかにする。
 本校では,この一連の取組を全学年が行うことで,児童の学力と教員の指導力の向上を図ってきた。

(3)成果について

 年度当初は暗中模索の内に研究を進めてきたが,研究・実践・協議・改善のサイクルを繰り返す内に,教員の前向きな課題意識が生まれた。
 授業改革研究会では,県教育委員会の指導主事から一貫した指導を受けることで,系統性のある研究推進ができ,他校の教員と研究協議を行うことで,自らの指導力の向上に対し,刺激を受けることができた。
 そして,「算数が好きになってきた」とうれしそうに話す児童が増えてきたことは,何よりうれしい成果であった。

(4)来年度以降の課題について

 公開授業後の研究協議は,終始熱心に意見交換があったものの,提案から外れる場合があり,授業参観シートや付箋紙等の効果的な活用を工夫する必要がある。
 また,児童一人一人の学力については,昨年度は,到達度確認テストが9月から稼働したため十分な活用ができなかったが,このテストを活用することで,研究の取組が児童に,どのように作用したかを客観的に把握する必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年03月 --