前年度,本県検証改善委員会において,学力調査結果の分析・考察をし,その内容を報告書としてまとめ,また,課題解決のための指導資料を作成し,各学校へ配付した。さらに,各学校の課題解決を組織的,計画的に行うための「学力向上プランの手引き」を作成・提示した。
全ての学校は,その手引きを参考に「学力向上プラン」を作成し,今年度,それに基づく取組を実施したきた。
本県では,学校訪問等で「学力向上プラン」に基づく取組の実施状況を把握し,指導・助言を行ってきた。
ア 本県の課題
本県独自の学力調査の結果から,次のような課題が見られた。
イ 課題の明確化
平成17年1月に示された中教審の答申において,次のようにまとめられていた。
ウ 本県の取組
右上の図のような実施体制のもと,本事業を進めてきたが,調査活用協力校の選定の基準は次のとおりである。
本県には,4つの教育事務所があり,それぞれの地区の指導主事が各学校への指導・助言にあたっている。そのため,各地区で少なくとも1校を調査活用協力校として指定することが,指導・助言等の支援を行うことや成果等の普及を効果的に行うことができると考えた。また,教育事務所の一つは,中核市である金沢市を含み,学校数も多いため,金沢市から1校を指定することとした。
さらに,指定された調査活用協力校は,本県において実施する全市町への補助事業である「児童生徒の『活用力』向上モデル事業」の推進モデル校としての役割を持ち,域内にも成果等を普及していくことが求められている。
以上のことから,本県では,次の5校を選定した。
○県内全域に「活用力」が本県の課題であるということを伝えることができ,全ての学校で,課題解決のための実践がなされた。特に,調査活用協力校をはじめ,県事業である「児童生徒の『活用力』向上モデル事業」の推進モデル校において,「活用力」を高めるための校内研修体制が整い,研究実践の充実が図られた。
○石川県「活用力」向上連絡協議会における発表や情報交換により,実践が深まった。
○指導資料(学力調査報告書)については,学力調査の結果を9月中に配付したことで,各学校の分析に役立つことができた。
○指導資料(学力調査報告書)等の活用状況アンケート結果によると,小中学校とも99%が参考となったと回答し,特に,小学校では約25%,中学校では約20%が大いに参考となったと回答していた。
○指導資料(学力調査報告書)の中に記載した項目のうち,「領域等別分析・考察」「指導改善のポイント」「改善に向けた指導事例」について,参考になったと回答した学校が多かった。
○各市町教育委員会が自ら実施する研究会等において,モデル校の取組が報告されたり,公開授業が行われたりするなど,域内の学校に対し,成果の普及がなされた。
△「活用力」を育成するための指導法や指導事例について,各学校に配付する冊子の内容の工夫や配付時期など,より具体的・効果的な提示をしていかなければならない。
△各学校の実践研究の成果を効果的に普及する手立てを検討していかなければならない。
ア 県主催の会合における調査活用協力校の報告
イ 指導資料による実践研究等の紹介
ア 「児童生徒の「活用力」向上モデル事業(県)」における実践研究の成果の普及
本県の調査活用協力校を含む推進モデル校の実践研究の成果を,各学校の研究発表会や県主催の会合において,実践を報告する。(県内全市町38校)
イ より専門的・多面的な分析・考察と各学校の課題解決のための具体的,計画的な指導法や指導事例の作成・提示より専門的・多面的な分析・考察を行い,課題解決を図る授業改善策を検討する専門チームを設置し,これまで以上に役立つ指導資料を作成する。
本校の児童は,明るく素直であり,課題にも熱心に取り組むことができる。反面,意見を出し合い,話し合いながら考えることに苦手意識を持っている子が多い。また,自分たちで考え,話し合って進めるという主体的な態度についても十分に育っているとはいえない面が見られる。昨年度の全国学力・学習状況調査の結果を見ると,知識・技能を「活用して考える」問題をやや苦手とし,「考えたことを表現する」記述式の問題もやや弱いと言える。
授業の中では,学んだ知識や技能を活用して,追求する子も一部には見られるが,学びのつながりが意識できなかったり,学びの活かし方が分からなかったりして,その場だけの学習で終わってしまう子もいる。また,表現する場においても学んだことを活かした表現ができる子は限られる。
このような本校の実態をふまえ,知識・技能を活用して課題解決するために必要な思考力・判断力・表現力を「活用力」と捉え,これらの力を育成していくことを研究のねらいとした。このねらいを達成するためには,教育活動全体からのアプローチが不可欠であるが,活用して考えるという学びを,授業の中で積み上げていくことを大切にして研究を推進していく必要がある。そこで,活用力を育成する「授業づくり」を切り口として,副題に「活用力を育む授業づくりを通して」を掲げ,研究に取り組むことにした。
活用力(思考力・判断力・表現力)を育成する課題解決型の授業づくりの推進
ア具体的な取組及び取組上の工夫・留意点
イ 成果等
ア 具体的な取組及び取組上の工夫・留意点
1.各教科の系統性をおさえた学び
〔資料1〕
2.単元計画における一時間ごとの学び
イ 成果等
ア 具体的な取組及び取組上の工夫・留意点
1.単元の終わりに,発展問題や発展課題を位置づける。
・理科や算数科では学んだ知識・技能を活かして応用・発展的な課題を解決する場を新たに位置づけた。
2.学んだことをまとめたり整理したりして表現する場を位置づける。
・社会科では,単元ごとにまとめとして新聞づくりをし,自分の考えを社説として書き表した。
イ 成果等
○学校評価から
児童評価においては,前後期通して80%以上の児童が学んだことを活かして考えたり表現したりしていることが分かる。しかし,教師と児童の評価に差が見られることから,児童が学んだことを活かして考えたり表現したりしている活用力と,教師がねらっている活用力とが一致していないことが考えられる。そこで,今後は,児童と教師の意識が同じ方向に向くように,課題を解決するために何を活かして考えるのかといったことを教師が明確にして授業に望み,ふり返りにおいては何を活かしたから解決できたのかということを押さえ,活かすよさを教師も児童も実感できるようにする。合わせて,活用力の向上を見取るための評価の在り方を検討していく。
○習得・活用の学習を意図的に計画的に行う。
○活用力の向上を評価する
「知・徳・体」のバランスのとれた教育活動を推進することで,確かな力(確かな学力・豊かな心・健やかな体)を邑知中学校の全生徒に身につけさせること,そして,邑知中学校のめざす生徒像(ゴールイメージ)を全生徒が実現することをねらいとする。
なお,「活用力の育成」については,上記の「確かな学力」を育成する取組の中心課題として位置付けた。平成20~21年度はこの部分を焦点化し重点的に取り組んでいく。また全国学力・学習状況調査で得た資料の有効活用のあり方についても合わせて探っていきたい。
ア 生きる力の自校化(生徒と教師間のゴールイメージの共有化の一例)
イ ゴールイメージに迫るための仮説
仮説1(意欲)
生徒の学びを支える環境づくりを行い,自尊感情等が高まれば,内発的な学習意欲が高まり,確かな学力につながる基盤となるだろう。
仮説2(習得)
生徒一人一人の実態を的確にとらえ,効果的な学習形態や指導方法を工夫しながらつけたい力を明確にした指導を行えば,基礎的・基本的な学習内容を習得することができるだろう。
仮説3(習熟)
生徒一人一人に応じた多様な支援と評価を生かした指導を行えば,わかる喜びから更なる学習意欲が高まり,習得した学力がより確かなものとなっていくであろう。
仮説4(活用)
内発的な学習意欲と,基礎的・基本的な知識・技能を身に付けた生徒に対して,適切な教材や指導方法の工夫を行えば,活用力が身に付くであろう。
ウ 本校における「活用力育成のイメージ」の作成
エ 本校における活用力をはぐくむ場面の設定(A・B・C+1~6)
オ R‐PDCAを活かした学力向上策『邑知システム』の取組の充実
カ 各教科における実践(活用をはぐくむ実践の一例)
キ 学習意欲につながることをねらいとした『邑知システムを支える環境づくり』の取組の充実
<仮説の検証について>
○仮説1~4の検証を通して現段階での成果と課題が明確になったこと。
○Actionにつながる成果と課題を得たこと。
1.仮説1(学習意欲の向上について:『邑知システムを支える環境づくり』の取組を中心に)
○いずれの取組においても期待する生徒の姿が多く見られたこと。そして9割に近い生徒が実際に学習意欲が向上していると実感していること。(12月実施「生きる力のアンケート」)
●自尊感情の高まりについて,全国調査の数値を上回ったものの教師と生徒が更なる高まりをめざしてともに意識を高めて取り組まねばならないこと。
2.仮説2・3(基礎・基本の学習内容の習得・習熟について:『邑知システム』の取組を中心に)
○各教科において,効果をあげた実践があり,実際に生徒の数値データが向上していること。
●習得した学力がより確かに定着していくよう,各教科で更に取り組まねばならないこと。
3.仮説4 (活用力の育成に向けて:各教科における「活用力をはぐくむ場面」の実践を中心に)
○各教科担任が学校研究に即し,同一のベクトルのもと活用力育成のための教材開発を行うことができたこと。
○各教科において,中教審より示された6つの活動を取り入れることができたこと。
○活用力の育成のためには,基礎・基本の学習内容の定着が欠かせないことが明らかとなったこと。
○教科によって帰納的な流れと演繹的な流れの双方向を実践できたこと。
○生徒の活用力が大きく伸びたと判断できる実践が各教科であったこと。
○活用力に関わる作問を行うことで,「指導と評価の一体化」に近づいたこと。
今年度の実践を基本としながら,更に精度を高めて取り組んでいく。
初等中等教育局参事官付学力調査室
-- 登録:平成22年03月 --