長崎県検証改善委員会
はじめに
長崎県教育委員会は、これまで、子どもたちの学力向上を目的として、学力の土台となる学習習慣・生活習慣の確立を目指した「子どもの学びの習慣化」、校内研修や授業づくりの充実を目指した「授業を磨く教師」、全教育活動の中で国語力の向上を目指した「国語力向上プラン」の3つのリーフレットを発行している。
今回、長崎県検証改善委員会が作成した改善支援プラン「伸びる子どもに!!」は、全国学力・学習状況調査の結果を踏まえ、授業改善に絞って具体的な方策や視点を示した。これまで県教育委員会が示したリーフレットと共に、本改善支援プランを活用することにより、各学校の授業改善が活性化され、子どもたちの学力向上へとつながることを期待している。
1 検証改善委員会の体制について
長崎県検証改善委員会は、長崎県教育会の小田恒治主事を代表として、全体会と分科会により構成した。全体会は、小田代表を初め、長崎大学教育学部教授1名、小学校、中学校、高等学校の校長5名、小・中学校の保護者の立場から2名、市町教育委員会の立場から1名、県教育センター1名及び県教育委員会から3名の14名で構成し、分科会は、市町教育委員会の指導主事等4名、県教育センター指導主事4名、県教育庁義務教育課指導主事等4名、計12名で構成した。
11月に第1回の検証改善委員会を開催し、1月まで延べ5回の委員会を開催し、学校改善支援プラン(「伸びる子どもに!!」)を作成した。
2 学校改善支援プランの概要
改善支援プランは、授業改善にあたって次の4点を提言している。
全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた課題の把握と改善を
今後求められる学力の要素の理解を
- 「知識や技能の習得」「活用する力」「学ぶ意欲」の要素別に示した。
子どもの9年間の学びの系統性を大切にした授業改善を
3 全国学力・学習状況調査の結果から見られた課題について
【小学校 国語】
<主として「知識」に関する問題>
- 叙述内容を分析し、内容を把握することができる。
- 話の要点を聞き取り、効率よくメモをとることができる。
- 物語文の登場人物の心情について、表現や叙述に即して読むことができる。
<主として「活用」に関する問題>
- 書かれている内容について事実と感想、意見の関係を押さえ、事実を裏付ける理由や根拠を正しく読むことができる。
- 情報の中から必要な事柄を取り出し、表現様式に即してまとめることができる。
- 相手の立場や目的を考えて、敬意表現を適切に用いることができる。
- 課題となる顕著な項目を示したが、主として「活用」に関する問題は、全問(9問)とも国の平均を下回っている。特に、様々な文章や資料等をもとに自分の意見を述べたり、書いたりすることに課題がある。
【中学校 国語】
<主として「知識」に関する問題>
- 手紙をはじめとする、様々な形態に必要な知識を理解し、効果的に書くことができる。
- 文脈に即して漢字を正しく書いたり、読んだりすることができる。
- 語句の文脈上の意味を読み取ることができる。
<主として「活用」に関する問題>
- 様々な資料の表現の特徴を読み取ることができる。
- 様々な資料の文章から必要な情報を読み取ることができる。
- 資料に表れているものの見方や考え方をとらえ、伝えたい事柄や考えを明確にして書くことができる。
- 主として「活用」に関する問題は、概ね良好であるが、複数の資料から得た情報から自分の考えを明確にし表現するような問題に課題がある。
【小学校 算数】
<主として「知識」に関する問題>
- 分数と整数、小数の関係を理解し、異分母の分数を同じ数直線上に表すことができる。
- 乗法、除法の意味を確実に理解し、小数の乗法、除法の判断ができる。
- 円の面積を求めることができる。
<主として「活用」に関する問題>
- 百分率を用いて、それぞれの代金を求め、比較することができる。
- 与えられた条件を基に地図を観察して図形を見出し、面積を比較して説明することができる。
- 式の形に着目して計算結果の大小を判断し、根拠となる考えを説明することができる。
- 課題となる顕著な項目を示したが、主として「活用」に関する問題は、14問中12問が国の平均を下回っている。特に複数の情報から必要な情報を選択して処理することや、思考の過程を説明することに課題がある。
【中学校 数学】
<主として「知識」に関する問題>
- 方程式を解くにあたって、移項と等式の性質の関係を理解している。
- 関係を表す文字式を、等式の性質を用いて目的に合うように変形することができる。
- 円錐の体積と、底面が合同で高さが等しい円柱の体積との関係を理解している。
- 反比例を表す表の特徴から、xの値に対応するyの値を求めることができる。
- 1の目が出る確率が1/6であることの意味について理解している。
<主として「活用」に関する問題>
- 与えられた情報を分類整理して、起こり得る場合の総数を求めることができる。
- 連続する3つの自然数の和が3の倍数になる説明をもとに、連続する5つの自然数の和が5の倍数になることを説明することができる。
- xとyの関係を表すグラフの点の並び方から一次関数である理由を説明することができる。
- 主として「活用」に関する問題では、17問中16問で国の平均を上回っているが、根拠を示しながら結論を説明する問題では、ほとんどが正答率50パーセントを下回っている。
【生活習慣等について】
早寝・早起き・朝ご飯などの基本的な生活習慣については、全国の平均値より良好な結果であり、平成17年度から実践している「子どもの学びの習慣化」の成果と考えている。しかしながら、テレビやゲームの視聴時間や家庭での読書時間については、全国の平均値を下回っており、今後も継続した指導と啓発が必要である。
4 学校改善支援プランについて
【小学校 国語】
<改善のポイント>
- (1)叙述内容を分析して内容を把握する。
- (2)話の要点を聴き取り効率よくメモをとる。
- (3)複数の資料から筆者の主張の根拠を読み取る。
- (4)目標を絞り、達成への意欲を高める。
- (5)国語科で身に付けたことは様々な場面で生きることが実感できるように指導する。
【中学校 国語】
- (1)手紙をはじめとする様々な形態に必要な知識を理解し、効果的に書く。
- (2)様々な資料の文章から必要な情報を読み取り、伝えたい事柄や根拠を明確にして書く。
- (3)「書くこと」を通して表現の喜びを実感できる授業をつくる。
【小学校 算数】
- (1)整数、小数、分数の意味を実感して理解できる。
- (2)複数の情報から必要な情報を選択して問題を解決できる。
- (3)思考の過程を筋道を立てて説明できる。
- (4)「わかった」「できた」「算数が好き」と実感できる。
【中学校 数学】
- (1)数量や図形の意味を実感的に理解できる。
- (2)問題の条件を変えるなどして、発展的に考えることができる。
- (3)数学を学ぶことの楽しさや有用性を実感できる。
【生活習慣等について】
「テレビやゲームを消して家庭で読書」を合言葉に啓発を図っている。
プランの最終ページには、そのままコピーして保護者等に配付できる啓発資料を掲載した。
5 学校改善支援プランを受けた取組について
改善支援プラン(「伸びる子どもに!!」)は11,000部作成し、小学校の全教員と中学校の国語科・数学科担当の教員に配付した。
配付にあたっては、本冊子だけでなく、その活用例(別添)をまとめたものを付けるとともに、長崎県校長会、長崎県教育研究会等の協力も得た。また、本プランの活用の方法等について理解を深めるために県内10会場で研修会を開催したところである。
各学校に対しては、本プランを基に、自校の実態に応じた改善プラン等を作成し、指導計画の改善、日課の工夫など教育課程の工夫に資するようにお願いしているところである。