調査結果の自律的な活用促進のために-「愛知県版分析プログラム」を用いた指導の充実のための支援-

愛知県検証改善委員会

はじめに

 本県では、これまで義務教育段階における独自の調査を行っておらず、今回が県全体の結果を得る初めての機会となる。
 全ての市町村教育委員会と学校に、自らの教育の結果を示す客観的な資料が提供される意義は大きい。
 この機会を最大限に生かすためには、各教育委員会や学校が、自らの結果を主体的に分析し、指導に生かすことが大切である。
 このような考えのもと、愛知県検証改善委員会では、各教育委員会や学校が、全国学力・学習状況調査の結果を分析・考察し、指導に生かす取組を支援することに重点を置いた。
 具体的には『愛知県版分析プログラム』の開発と、それを活用するための『学力学習状況充実プラン』の作成に取り組み、調査結果の有効活用を促進した。

1 検証改善委員会の体制について

 愛知県検証改善委員会は、愛知教育大学教授である中野靖彦氏を委員長として、同大学教授2名、市町教育委員会教育長2名、県内の公立小中学校の校長2名、愛知県教育委員会義務教育課長はじめ行政関係者4名の計11名の検証改善委員から構成される委員会である。
 本委員会内に、大学関係者等で構成する専門部会を設置し、調査結果の分析方針や分析プログラムの作成方法等を検討し、『学力学習状況充実プラン』の原案を作成するとともに、愛知県総合教育センター内にワーキンググループを開設し、データ解析の方法・手順等を話し合い、解析を行った。
 7月に検証改善委員会の第1回会合を行い、11月に分析プログラムの原案審議、2月に充実プランの原案審議と、計3回の会合を行った。また、それに向けて専門部会やワーキンググループを開催し、分析プログラムや充実プランの原案作成を行った。
 12月には、説明会を開いて分析プログラムを、3月には充実プランを、各々市町村教育委員会及び学校に配付した。

2 学校改善支援プランの概要

 本県における学校改善支援プランの考え方は、各学校の自律的な改善への取組を支援することである。
 そのために『愛知県版分析プログラム』は、各教育委員会や学校が、国から提供される児童生徒の電子データを、短時間で集計・分析できるように専門業者に委託して開発した。
 また、『学力学習状況充実プラン』は、調査結果を指導に生かすための参考資料であり、分析プログラムで得た結果をどのように指導の改善に生かすかといった活用例や、県全体の学力・学習状況の傾向や特徴及びそれを基にした学力向上に向けての方策例を示した。

3 全国学力・学習状況調査の結果分析について

 本県の全国学力・学習状況調査の結果について、検証改善委員会で分析を行ったところ、以下の点が明らかになった。

(1)教科全体の傾向

  •  すべての調査において、全国とほぼ同様の平均正答率である。
  •  全国の平均正答率との比較においては、国語よりも算数・数学、小学校よりも中学校の結果が高い。また、A調査「知識」よりもB調査「活用」が高い傾向にある。
  •  国語、算数・数学ともに、ほとんどの記述式の問題において、無解答率が全国値よりも低く、小学生・中学生ともに、積極的に解答しようとする姿勢がうかがえる。

(2)国語の傾向

  •  小中学校ともに「言語事項(言語に関する知識・理解・技能)」に課題がある。
  •  小学校において「話すこと・聞くこと(話す・聞く能力)」に課題がある。

(3)算数・数学の傾向

  •  小中学校ともに「数と計算(数と式)」「数量関係」の正答率が高い。
  •  中学校において「数量や図形についての表現・処理」「数学的な考え方」が高い。
  •  小学校の「図形」に課題がある。

(4)児童生徒質問紙の傾向

全国を基準とした比較(違いが大きいものから抜粋)

  •  質問紙調査の回答傾向は全国とほぼ同様である。
  •  小中学生ともに「学校の宿題をしている」「学校のきまりを守っている」「学校で楽しみな活動がある」などが全国値よりも高く、学校を肯定的に受け止めている様子がうかがえる。
  •  中学生は、勉強時間が全国値よりも多く、「地域行事への参加」などの体験が小学生に比べて少ない。

4 学校改善支援プランについて

 本県における学校改善支援プランは、『愛知県版分析プログラム』と、それを活用するための『学力学習状況充実プラン』で構成される。
 以下、その概要について記述する。

(1)愛知県版分析プログラムの開発

 分析プログラムは、国から提供された電子データを自動的に読み取って集計するシステムで、小学校用と中学校用の2種類がある。
 主な機能は次のとおりである。

(特徴リサーチ機能・グラフ化機能)

 市町村、学校の教科に関する調査の正答率や、質問紙調査の回答傾向などの特徴を、表やグラフで分かりやすく示す。
特徴リサーチ機能・グラフ化機能

 また、設問ごとのメニューでは、問題番号の上にカーソルをあわせるとその内容を表示したり、問題番号をクリックすると文部科学省がまとめた「調査結果の概要」を参照したりすることができる。

(カテゴリー機能)

 「知識と活用」「国語と算数」など、クロス集計した結果を、県と比較して見ることができる。質問紙調査の各質問に対する回答ごとに児童生徒を絞り込むこともでき、学力との関係を見ることができる。
カテゴリー機能

(リストアップ機能)

 個々の児童生徒の教科に関する調査への解答傾向や、質問紙調査への回答傾向を見ることができる。
リストアップ機能

(2)学力学習状況充実プランの作成

 本プランは分析プログラムと合わせて、調査結果の活用を支援するために作成したものである。主な内容を以下に示す。

(分析プログラム活用の手引)

 分析プログラムの操作方法や活用上の留意事項を掲載した。

(分析プログラムの活用例)

 分析プログラムの機能に合わせた指導の改善例を、12例示した。

(改善例…グラフ化機能)

(学力・学習状況の傾向)

 愛知県全体の学力・学習状況の傾向や特徴と、それに対する改善の方策などを記載した。

(改善の方策…算数・数学の例)

5 学校改善支援プランを受けた取組について

 分析プログラムについて周知するため、12月7日に市町村教育委員会の指導主事等を集めて説明会を行った。その後、市町村教育委員会から各学校に配付され、主に冬季休業中に活用された。
 各学校からは、分析プログラムを用いて把握した特徴を保護者に説明したり、課題があった領域について復習したりするなどの事例が報告されている。
 領域や設問ごとに把握した課題を、次年度の教育課程に生かすよう、充実プランで呼びかけている。

6 おわりに

 調査結果から見る各校の課題は様々であり、各校の実態に即した改善への取組を支援することは重要である。
 文部科学省が平成20年度から実施する「全国学力・学習状況調査を活用した学校改善の推進に係る実践研究」においても、分析プログラムの機能の拡充を図っていく予定である。

(参考)

学力学習状況充実プラン
(※愛知県教育委員会義務教育課ホームページへリンク)

-- 登録:平成21年以前 --