「全国学力・学習状況調査の結果分析指導改善の在り方」について

岐阜県検証改善委員会

はじめに

 全国学力・学習状況調査の実施を受け、本県ではその結果分析を行うとともに、学校、家庭、市町村教育委員会、県教育委員会が連携を図り、指導の改善を具体的に推進できるよう、次の3つに取り組んだ。

  • 岐阜県全体の結果分析と指導改善
  • 市町村教育委員会の結果分析と指導改善
  • 各学校の結果分析指導改善

1 岐阜県の調査結果の概要

 下記は、本年度の全国学力・学習状況調査の結果をまとめた表である。
全国学力・学習状況調査の結果

 ここから、岐阜県の調査結果の概要を次のようにとらえた。

  • 「国語A(知識)」「算数・数学A(知識)」について、本県の児童生徒の平均正答率は80パーセント前後であり、相当数の児童生徒が今回出題されている学習内容を概ね理解していると考えられる。
  • 「国語B(活用)」「算数・数学B(活用)」について、本県の児童生徒の平均正答率は、中3国語を除けば65パーセント前後であり、身に付けた知識・技能を様々な場面で活用する力を、今後さらに身に付けさせていく必要がある。

 この結果は本県独自に実施している「岐阜県における児童生徒の学習状況調査」により把握してきた結果とほぼ同様の傾向であり、課題として指摘されている「文章や資料を深く読み取る力」や、「学んだことを活用して論理的に考え、自分の考えを適切に表現する力」について一層充実させていく必要があると考えた。

2 岐阜県の結果分析、指導改善

(1)岐阜県全体の結果分析について

 上記の調査結果の概要をとらえた後、さらに県教育委員会として以下の4点について、結果分析を進めた。

1教科の分析

 教科について、設問別の正答率の状況から学習成果とつまずきのある問題を把握し、特に課題と考えられる力について今後の指導の在り方を具体的に提示した。

2教科の質問紙調査の分析

 児童生徒の質問紙調査の中から、教科の学習に対する関心・意欲・態度、授業に対する意識、学力との相関関係を分析した。その結果、各教科について、次のような姿が明らかになった。

【国語】
  • 小6、中3とも、「国語の学習が好き」という児童生徒は全国に比してやや少ないが「国語の授業の内容がよく分かる」という児童生徒は多い。
  • 小6、中3とも、学力との相関では「読書が好き」「学習したことを生活の中で活用する」「主体的に書いたり話し合ったりする」児童生徒ほど正答率が高い傾向が見られる。
【算数・数学】
  • 小6は「算数の学習が好き」という児童は全国に比してやや少ないが、中3ではやや多い。
  • 小6、中3とも、「算数・数学の授業の内容がよく分かる」という児童生徒が多い。
  • 小6、中3とも、学力との相関では「学習したことを生活の中で活用する」「解き方をあきらめずに考える」児童生徒ほど正答率が高い傾向が見られる。

3質問紙調査結果の分析

 質問紙調査結果分析を行い、児童生徒の生活習慣、学習習慣及び生活体験等の顕著な姿を調べた。その結果、次の5つの姿が明らかになった。

  • 岐阜県の児童生徒は、概ね基本的生活習慣が身に付いている。
  • 岐阜県の児童生徒は、概ね学習習慣が身に付いている。
  • 岐阜県の児童生徒は、概ね規範意識が高い。
  • 岐阜県の児童生徒は、手伝い、自然体験などがやや少ない。
  • 岐阜県の児童生徒は、普段、運動・スポーツをすることがやや少ない。

4質問紙クロス分析

 質問紙クロス分析を行い、児童生徒の学力と意識面・生活面の相関関係を調べた。その結果、次の4つの相関関係が明らかになった。
質問紙クロス分析結果

(2)指導改善の推進について

 前述までの結果分析を踏まえ、以下のように指導改善を進めた。

1指導改善資料の作成と配付

 前述14を「平成19年度全国学力・学習状況調査結果・指導改善資料」として冊子にまとめ、全市町村教育委員会及び全学校に送付するとともに、学校間総合ネットワークに電子データとしても掲載し、自校データを加えるなどの活用に資するようにした。

2保護者啓発資料の作成と配付

 県内の保護者に調査結果を知らせ、学力向上のために家庭での協力を依頼する保護者用啓発資料を、以下のように各学校を通して配付した。
全国学力・学習状況調整の結果
保護者用啓発資料

(3)授業改善推進プランの実施

 国語と算数・数学について「全国学力・学習状況調査」の結果を活用し、各学校の学習状況に合わせて指導の改善に生かす実践事例を作成した。これは、県独自の学力向上施策である「授業改善推進プラン」の中で作成したもので、現在、岐阜県総合教育センターのホームページに掲載している。
 国語と算数・数学でそれぞれ6事例、文章、資料、図表等を深く読み取る力や学んだことを活用して自分の考えを適切に表現する力の育成に取り組んだ実践事例を作成した。

【国語の実践事例】

  • 「読むこと」「書くこと」の関連を図った読解力を育成するための指導方法の工夫改善

【算数・数学の実践事例】

  • 計算の工夫をよみとり、数学的に表現する力を育てる指導方法の工夫改善

3 市町村教育委員会の結果分析、指導改善

 市町村教育委員会においては、市町村独自で、あるいは県の取組を参考にして、結果分析及び指導改善に取り組むことができた。

  • 市町村内の既存の委員会を活用したり、新たに組織したりして、独自に指導改善の委員会を開催し、結果分析・指導改善を進めた。
  • 市町村の結果の全体概要をまとめ、学校が指導の改善に生かすことができる資料を作成・配付した。
  • 独自の保護者用啓発資料をまとめ、家庭に学力向上の協力を求める資料を作成・配付した。

4 学校の結果分析、指導改善

 各学校においては、「平成19年度 全国学力・学習状況調査結果・指導改善資料」にある「結果分析の手引き」を参考に、現在、以下の5点に取り組んでいる。

(1)学習成果とつまずきのある問題の把握

  • 自校の「全国学力・学習状況調査」設問別の正答率を、「岐阜県」及び「全国」の設問別の正答率と比較し、自校の学習成果と児童生徒のつまずきのある問題を把握する。
  • 「岐阜県」及び「全国」の設問別の正答率との比較だけでなく、正答率そのものが顕著に高い問題・低い問題も把握し、学習成果と課題を把握する。

(2)つまずきのある問題の分析

  • 自校のつまずきのある問題について、「平成19年度全国学力・学習状況調査解説資料(平成19年5月国立教育政策研究所教育課程研究センタ-刊)などをもとにして、「課題となる点」を分析する。
  • 岐阜県全体を分析した「平成19年度全国学力・学習状況調査結果分析・指導改善資料」(平成19年11月岐阜県教育委員会刊)も参考にし、授業改善の観点について今後の具体的な方向を把握する。

(3)校内の共通理解

  • 自校のつまずきのある問題について分析した結果をもとに、今後の指導の改善について校内で検討する。職員会、全校研究会、臨時研究会、現職研修会研究部会等場を活用して、当該学年や一部の職員のみならず全教職員の共通理解を図り、指導改善に取り組んでいくことを確認する。

(4)指導の改善と徹底

  • 児童生徒一人一人への個に応じた指導の徹底を図る。送付された「個票」を活用し、つまずきの克服のための指導を一人一人に徹底する。
  • 自校の課題に応じた指導内容・指導方法の改善を推進する。つまずきの克服のための指導内容の重点化と教材の精選を図った指導計画の改善を行う。また、個に応じた指導形態の工夫を図り、きめ細かな指導を施するとともに、学校の課題に応じた指導の重点化を図り、児童生徒の学習意欲や主体性を大切にしながら授業改善に努める。

(5)保護者等への説明と協力依頼

  • 個人懇談や保護者集会、学校通信等を通して、今回の調査結果について保護者に説明する。その際、本調査により測定できるのは、学力の特定の一部であることや、学校における教育活動の一側面に過ぎないことを踏まえ、調査結果に一喜一憂することなく、引き続き児童生徒一人一人に力を付けていくことを説明する。
  • 保護者啓発資料(平成19年11月岐阜県教育委員会刊)を配付し、保護者や地域等の理解と協力のもとに十分に連携をとりながら、家庭における学習習慣や生活習慣等の改善に向けた取組を行う。

5 おわりに

 今後も全国学力・学習状況調査の結果を踏まえ、課題となった内容について、指導の改善を推進する。
 具体的には、各学校がより一層きめ細かな分析を進めていくことができるよう、分析ソフトを配付したり、保護者啓発リーフレットを改善したりして、家庭との連携で学力向上を推進していきたい。

(参考)

-- 登録:平成21年以前 --