3.区域外就学

〔居所と住民登録が異なる場合の居所の学校への区域外就学〕
(18)  母親の特別な事情(DV)による区域外就学



居所と住民登録が異なる場合の居所の学校への区域外就学

(18)特別な事情(DV)による区域外就学

1   区域外就学の内容と許可理由
 
(1)   内容
   当市町村に住民登録されていない児童を、保護命令及び居住証明をもって当市町村の小学校へ就学することを許可した。
 本来このような就学については、区域外就学として住民票登録地との協議が必要となるが、当市町村では保護者の置かれた実状を十分に検討した上で、情報の制限を設け、相手先教育委員会との協議を行っている。

(2)   許可理由
 
 児童は当市町村に居住して以来どこの学校にも通学しておらず、母親には学校に通わせたいという強い希望があった。
 実際に当市町村に居住しているが、異動先が加害者に知られることから、住民票の異動が行えない状況である。
 教育委員会として、児童の教育を受ける権利を保障するため、就学を最優先に考えた。

(3)   許可の前提となる条件
   実際に当市町村に居住していること。また、この事例では、保護命令といった他の機関からの明確な判断があった。(他の相談においても、教育委員会が母子にとって初めての相談である場合、まずは市町村や都道府県の担当部署への案内を行っている。)

(4)   許可へ向けた処理について
   行政区域をまたがる区域外就学許可は、本来、住民票登録地への報告を兼ねた協議を経た上での許可であるが、今回の保護者が置かれた状況は、相手先教育委員会及び学校への情報制限が母子の生活を守る上で必要であった。
 この母子を取り巻く状況を十分に当市町村側で検討した結果、相手先教育委員会への協議の際、学校に対する情報の制限を説明し協力を依頼した。

2   区域外就学を許可した事情及び経緯
 
(1)   申請事情
   保護者である母親は、夫の度重なる暴力に耐え兼ね、B市町村より子供を連れて家を出た(住所地同都道府県内)。都道府県の福祉相談所に駆込み、一時保護を受けた後、裁判所より保護命令が下る。
 このことを受けて、一時避難として当市町村内の知人宅に、しばらく世話になることが決定したが、夫に居住地を知られたくないがため、当市町村への住民登録はできない状況である。
 子供の当市町村小学校への通学を希望されたため、当課への相談となった。

(2)   就学への流れ
 
  状況の確認
   都道府県福祉相談所より、裁判所の保護命令及び、居住地情報の写しをいただき、これを状況確認のための資料とした。

  申請書の提出
   教育委員会窓口にて、母親に今回の事情を確認し、就学希望の申請書を記入していただいた。その際、福祉相談所担当相談員に同行を依頼し、現在の状況を母親・相談員の両方の立場から聞き取り確認を行った。

  受入れ学校への状況報告
   同時に、受入れ先小学校へ状況報告を行い、児童相談所担当者が同行の上、学校と保護者との面談の場を設けるよう学校へ依頼した。
 
 学校側には、現状を十分に理解できるよう、保護者・相談員、学校側との面談を必ず依頼している。また、学校側に就学拒否権がないため、あえて所見等の提出は求めていない。

  住民票登録地との協議
   本来、区域外就学は、住民票登録地への協議をもって就学許可を行なわなければならない。転出先学校や教育委員会の心情を考えても、また、子供の教育指導上重要な指導要録等のやり取りを行うためにも、協議は必要である。
 しかし、今回の事例では、保護者・相談員との状況確認の折、転出先の地域性や、周囲の人間関係上、情報漏洩の可能性が非常に高い状況にあった。別の案件ではあるが、他市にて区域外就学中に居住地情報が加害者に漏洩し、居場所を突き止められたがため当市町村へ逃亡してきたといった事例も実際生じている。
 よって、この相談についてはDV被害者救済のため、相手先教育委員会に、学校に対する情報の制限を行った上で協議を行うこととした。
 
 丸数字は手続きの順番を示す。
 
A; 協議を行う… 協議を行うが、転出学校へは転出のみを知らせるよう依頼。指導要録等児童の情報は、教育委員会間でやり取りを行なう。
B; 協議を行う… 通常通りの協議、情報のやり取りを行う。

前のページへ 次のページへ


 

-- 登録:平成21年以前 --