市町村教育委員会の皆様へ-新たな学校選択制への取組みに向けて-

 市町村教育委員会は、就学予定者の保護者に入学期日を通知する際、それぞれの市町村の設置する小学校又は中学校が2校以上ある場合、就学予定者が就学すべき小学校又は中学校を指定することとされています。これは、複数ある学校から特定の学校を予め指定、通知することにより、保護者の就学義務を円滑に履行させるためのものです。
 また、この市町村教育委員会による学校の指定に関しては、その指定が恣意的に行われたり、いたずらに不公平感を与えたりすることのないよう、従来から、市町村教育委員会があらかじめ各学校ごとに通学区域を設定し、これに基づいて就学すべき学校を指定するという運用が多く行われているところです。

 一方で、この就学校指定に係る制度の運用に際しては、地域の実情や保護者の意向に十分配慮し、児童生徒の具体的な事情に応じた対応を行うことが大切です。
 このため、文部省(当時)では、各市町村教育委員会において、地域の実情に応じ、保護者の意向に十分配慮した多様な工夫を行うことができるよう、平成9年1月27日に「通学区域制度の弾力的運用について」を通知しました。
 また、「通学区域制度の運用に関する事例集」を作成し、同年9月に第1集として全国の市町村教育委員会に送付いたしました。その後、平成12年7月には第2集、平成14年3月には第3集を送付するなど、就学校指定に係る制度の運用に当たっての創意工夫をお願いしてきたところです。
 さらに、平成15年3月31日に学校教育法施行規則の一部改正を行い、1市町村教育委員会が就学すべき小学校又は中学校を指定するに当たって、あらかじめ保護者の意見を聴取することができることを明確化し、その場合、意見の聴取の手続きに関し必要な事項を市町村教育委員会が定め、公表するものとしました。また、2市町村教育委員会が指定した就学校に対する保護者の申立に基づき、市町村教育委員会が就学校指定校を変更する際の要件及び手続に関し、必要な事項を定め、公表するものとしたところです。

 このような取組の結果、学校選択制について、平成16年11月現在、小学校8.8パーセント、中学校11.1パーセントの自治体で導入されるなど、各市町村教育委員会での創意工夫が見られるようになってきています。
 このたび、文部科学省においては、全国の教育委員会関係者の協力を得て、新たに「公立小学校・中学校における学校選択制等についての事例集」を発刊する運びとなりました。本事例集に収録された事例は、いずれも各々の地域の個別事情に即したものであり、必ずしも全国どこの地域でも画一的に導入できるというものではありません。しかし、市町村教育委員会の皆様が、今後、学校選択制をはじめとする就学校指定に係る制度の運用方策を検討する上で、貴重な資料となるものと考えます。
  学校選択制の導入については、本事例集に収録された事例を参考に、市町村教育委員会においてその方法や効果等について認識し、その是非について児童生徒や保護者を含む地域住民の意向を十分に踏まえた検討を行うようお願いいたします。

  就学すべき学校の指定については、学校教育法施行令第8条により、市町村教育委員会で相当と認める場合には、保護者の申立により、変更することができることとされていますが、この制度が保護者に対し確実に周知され、その適切な活用が一層進むよう、学校教育法施行規則を本年3月に改正し、市町村教育委員会が就学校を指定する通知において、その指定の変更についての保護者の申立ができる旨を示すことといたしましたのでご留意願います。
  また、就学校を変更する場合としては、例えば、いじめへの対応、通学の利便性、部活動等学校独自の活動等を理由とする場合が考えられますが、変更を相当と認める具体的な事由については、本事例集に収録された事例も参考にしつつ、各市町村教育委員会において、地域の実情等に応じ適切にご判断の上、予め明確にして公表するようお願いいたします。

 最後に、本事例集の編纂に当たってご協力いただいた市町村教育委員会をはじめとする関係者の皆様に御礼申し上げます。

平成18年3月
文部科学省初等中等教育局 初等中等教育企画課長
前川 喜平

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