学校図書館

小林 路子さん(元市川市教育センター指導主事・中学校教諭)

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『エリカ 奇跡のいのち』(絵本)
 ルース・バンダー・ジー/文
 ロベルト・インノチェンティ/絵
 柳田邦男/訳
小林 路子さん
(元市川市教育センター指導主事・中学校教諭)

 絵本は小さな子どもたちだけのものではありません。
 小学生はもちろん、中学生も、高校生も、年をとっても、年齢に関係なく、心にずっしりと響く宝ものです。私がこう気づかされたのは、いくつかの出会いがあったからです。
 3人の子の母になった時、毎晩、眠る前の約束は、布団の中で子どもたちに本を読んであげることでした。たくさんの絵本を読みました。それは、共働きで子どもたちと接する時間が極端に短かった毎日の生活の、ほんのわずかなゆとりのひとときでした。やがて、幼い子どもたちはまだ文字も読めないうちから、お気に入りの絵本の文章をすっかり覚えてしまい、絵を見ただけで楽しそうに暗誦するのです。「絵本ってすごい!」でも、おかげでなかなか寝付いてくれませんでした。
 教育委員会で学校図書館に関わる仕事をするようになって、あらためて読み聞かせの持つ力を肌で感じるようになりました。子どもたちの吸い寄せられるような瞳に幾度出会ったことでしょう。そこには、優れた絵本と、読み聞かせてくれる大人の姿がありました。
 絵本が子どもだけのものではなく、大人の生き方にも深く影響を与えるメディアなのだと感じ始めた頃、『絵本の力』(河合隼雄・松居直・柳田邦男)に出会いました。この本は私にとっては衝撃的でしたが、同時にすとんと理解できました。絵本の持つ力を再確認させてくれたのです。
 前置きがずいぶん長くなりました。絵本『エリカ 奇跡のいのち』はかわいい絵本ではありません。ユダヤ人大量虐殺から、母親の我が子を想う一瞬の決断によって、奇跡的に生き延びた一人の赤ちゃんの実話を基に書かれた、写真のような精密な絵の絵本です。心揺さぶられる「いのちの絵本」です。子どもにも大人にも読んで欲しい、家庭でも図書館でも読み聞かせて欲しい大切な1冊です。


──子どもたちに対する読書メッセージ
 すてきな絵本は、まだまだたくさんあります。図書館で、学校図書館で、本屋さんで探してみてください。あなたの心にずしんと響く1冊の絵本にきっと出会えますよ。
 
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-- 登録:平成21年以前 --