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実施報告書【まとめ】神戸市教育委員会

平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【まとめ】

実施団体名【 神戸市教育委員会 】  

2年間の取組内容及び成果と課題

1.具体の取組内容

【1】センター校の取組

 神戸市立神戸生田中学校をセンター校として,授業中および放課後において,JSLカリキュラムを活用した教科指導および日本語指導を実施した。
 目標を教科書の内容が理解できることとし,教科の中では生徒が最も学習に苦労する社会科で取り出し授業を実施した。
 日本語で授業を受けることができる力を身につけさせるために,神戸大学留学生センターと連携し,JSL教室には日本語入門クラス(日常生活に必要な日本語理解の促進=みんなの日本語1,2を終了)と日本語移行期クラス(教科学習に必要な日本語の習得促進)の2つのクラスを設けた。
 指導者1名あたり1名~2名の生徒を担当し,放課後毎日約2時間日本語指導を続けた。センター校方式で運営することで,市立中学校の対象生徒が放課後のJSL教室に参加できた。
 効果的な指導体制を確立するために,外国人児童生徒に対する日本語指導者養成研修にセンター校の教頭と教諭が参加した。その後,校内研修会を開催し,JSL教室の日本語指導者へも社会科の取り出し授業の参観を要請し,様々な意見交換を行った。

【2】JSLカリキュラム研修会の開催

 大学教授を招き,国語科教員に日本語指導者を交えてJSLカリキュラムのより有効な活用について意見交換を実施した。

【3】JSLカリキュラム実践研究授業公開の実施

 社会科では取り出し授業を,国語科では一斉授業を公開し,その後参加者による意見交換を行った。公開授業についての協議や放課後のJSL教室の内容,日本語指導者と教員の連携をすすめるための工夫等が話し合われた。

2.成果

【1】社会科の授業では,在籍学級と同じ進度で取り出し授業を進めた。少人数であり,カードや諸資料を有効に使えた。特にその時間に学習する内容をまとめた学習プリントや重要語句の発音や内容をまとめたフラッシュカードの活用は効果的であった。

【2】神戸大学留学生センター教授の指導を受けた日本語指導員の協力のもと,継続的に日本語学習に取り組ませたため,はやい生徒では約3ヶ月で生活言語を習得し,学習言語の習得・教科学習へと進むことができた。

【3】学校の教室を使って,JSL教室を開催したため,「学校=勉強する場所」というイメージから参加する生徒の意識が高まり,学習効果も高まった。

【4】本市中心部にある交通至便な学校をセンター校とし,放課後もJSL教室を開催したため,市内の市立中学生も通うことができた。

【5】外国人児童生徒に対する日本語指導者養成研修にセンター校の教頭が参加することにより,校内の体制がよりしっかりしたものになった。

【6】研究授業に日本語指導者も参加したため,日本語指導を進めるために教室内での教師の話し方,視覚で捉えて字を書くことの大切さ,反復練習をすることの重要さを学ぶことができた。

【7】国語科の教員がJSLカリキュラムの活用について大学教授と意見交換したり,実践的な指導を受けたこと。さらに,日本語指導者がそれに加わったことは,授業公開の研究を進める上で大きな手助けとなった。

【8】授業公開には全国各地からの参加者があり,授業後の報告会でも活発なやりとりがあった。
特に,指導力と情熱の必要性や,生徒の努力と粘り強く取り組むことの大切さについての日本語指導者からの発言には教えられるものがあった。

【9】校内研修会や授業公開を通して,どの生徒に対しても丁寧に教えること,一人一人の生徒を大切にすることなどの重要性を再認識した。

3.課題

【1】漢字圏以外の生徒が学習言語を習得し教科書が理解できるようになるまでに,どのように効果的な日本語指導を行うか。

【2】教員と日本語指導者の綿密な連携,特に各教科の教員と日本語指導者との指導内容についての十分な打ち合わせをどのようにして行うか。

【3】多人数の生徒を対象とした日本語指導をいかに効果的に進めていくか。

【4】初期の日本語指導が,JSLカリキュラムを実践していく上での前提となるので,初期の日本語指導に十分な時間と回数が必要である。それを,どのように確保していくか。

【5】日本語指導者の育成と資質の向上をどのように図るか。
日本語指導を通して,日本語や教科内容を教えるだけでなく,これから日本で生きていくための力をどのように身につけさせるか。

4.その他(今後の取組等)

【1】教員と日本語指導者との合同研修会を継続的に開催する。

【2】教員と日本語指導者との日常的な情報交換をすすめる。

【3】JSLカリキュラムの実践が全ての生徒にとって「分かる授業」につながっていくことを常に自覚していく。

【4】組織的・計画的な取組の継続。

【5】教員と日本語指導者との信頼関係が重要であり,この信頼関係を維持するために,相互に理解し尊重する姿勢をさらに高めていくことが必要である。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成22年01月 --