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4.5.4 資料4 授業展開例

 二つのタイプのアプローチによる授業の展開例を数例示す。授業作りの発想やアイディアの参考になれば嬉しい。示した内容は、各事例について、対象学年、時間、学習内容/学習スキル、目標、活動展開(活動と対応するAU)である。
 尚、枠外に※印は、その授業に組み込むことが可能だと考えられる母国での体験や学びを活かすための活動である。当然、対象となる児童によって活かせる経験や知識も、活かし方も異なると思われるが、生活経験と結びつけて社会科の学習が進められるように、可能な限り、母国や母文化の要素を盛り込んでほしいと考える。

流れを重視するアプローチによる授業展開例

タイプ1 NO.1

対象学年:3、4学年 時間:3時間
学習内容:交通の仕組み
目標:目的地までの交通手段を調べ、計画を立てて実際に行くことができる。そこで、電車やバス等の交通機関の路線、料金、運行頻度、サービス等について観察して知る。
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
1時間
  1. 日ごろ、どんな交通機関を利用しているか話し合う
  2. 交通機関利用実習の「目的地」を決め、行き方をインターネットや時刻表、パンフレット等で調べ、計画を立てる
トA‐4 「経験を確認する1」
トE‐2 「情報を収集する1」
調べる
1時間
実際に、交通機関を使って目的地に行く
料金、支払い方、運行頻度、客相等を観察する
社E‐5 「施設や交通機関を利用する」
まとめる
1時間
実際に利用してみて気付いたことや分かったことを絵と文で表し、発表する 社M‐2 「絵やポスターを作る」

※ 「つかむ」局面で、子どもの母国での交通機関利用の体験から話し合いを始める
 「まとめる」局面で、母国の交通事情と対比させながら、体験から学んだことをまとめさせる

タイプ1 NO.2

対象学年:3、4学年 時間:2時間
学習内容:校区にある川について調べる
目標:身近にある川について、どこからどこに流れるのか、流域に何があるのかについて、実際に観察したり、地図を見たり、関連する絵や写真資料をもとに調べ、ポスターを作る
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
15分
身近にある川について、話し合う
川流域はどうなっているのか、どこから来てどこに行くのかを話し合う
トA‐2 「知識を確認する2」
トH‐1 「条件的に考える1」
調べる
20分
20分
  1. 実際に川に行って、川の大きさや流れ、河岸の様子を観察する
  2. 地域の地図や資料を利用して、川がどこからどこに流れているのか、流域にどんなものがあるのかを調べる
社D‐1 「地域の様子を調べる」
社G‐1 「地図を読み取る」
まとめる
20分
調べてわかったことを、資料の写真や絵を利用し、図を描いて、ポスターにまとめる。 トK‐5 「わかったことを表現する」
社M‐2 「絵やポスターを作る」

※ 「つかむ」局面で、母国の川の思い出や日本の川を見た時の感想を語る
 授業後の発展活動として、自分の母国の川について調べ、この時間に調べた川と対比しながらまとめる。

タイプ1 NO.3

想定する学年:3、4学年 時間:3時間
学習内容:商店
目標:商店見学をして、商店にはそれぞれ異なった特色があることや、目的によって商店を選んで利用していることに気付く。
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
1時間
どんなお店でどんな物を買うかを話し合い、何を買う時にどのお店に行くのか考える
商店見学で調べることを決める
トA‐4 「経験を確認する1」
トE‐2 「情報を収集する2」
調べる
1時間
商店見学をし、商品、お客さん、売り場の工夫を調べ、様子をデジカメで撮ったり、メモしたりする 社D‐2 「農家、商店などを訪問する」
社A‐6 「実物の写真を撮る」
まとめる
1時間
商店見学をして調べたことをもとに、商店カードカルタを作って、カルタ取りゲームをする 社I‐1 「気付いたことを挙げる」
社M‐8 「ゲームを作る」
社P‐4 「ゲーム大会をする」

※ 「つかむ」局面で、母国での買い物経験や商店の様子について話す
 「調べる」局面で、母国の商店についても写真等を基に調べる
 「まとめる」活動では、二つの国の商店の工夫の違いに付いて話し合い、二つの国の商店の写真でカルタを作ってゲームをする。

タイプ1 NO.4

対象学年:5学年 時間:2時間
学習内容:日本の地形と気候
目標:地図と雨温図を基に、白地図作業やクイズを行い、日本の山、川、平野等の地形と気候について知り、降水量や気温と日本の地形との関連性について考える
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
15分
  1. 母国と、日本の気候の違いとそのわけについて話し合う
  2. 日本国内の地域による気候の違いについて知っていることを話す
トG‐6 「比較して考える6」
トA‐2 「知識を確認する2」
調べる
30分
20分
  1. 日本の雨温度図を基に降水量と気候について白地図作業を行い、地域による気候の違いを読み取みとる
  2. 日本地図を見ながら、地形についてのクイズを行い、日本の山、平野、川について知る
社G‐4 「絵、写真・映像を読み取る」
社L‐2 「図にあらわす」
社G‐1 「地図を読み取る」
まとめる
25分
  1. 季節風について知り、気候と日本の地形との関係を考える
  2. 調べたことをワークシートでまとめる
社J‐4 「関連付けて結論付ける」
社K‐4 「わかったことを文章でまとめる」

※ 「つかむ」局面だけではなく、「調べる」「まとめる」局面でも、それぞれの母国の地形や降水量や気候について調べ、日本とそれぞれの国の違いについてまとめる。

タイプ1 NO.5

対象学年:5学年 時間:3時間
学習内容:米作りこよみを作る
目標:米作りの写真や絵の資料を収集し、その資料から米作りに欠かせない作業やその理由を考え、米作りの工程を稲作りごよみを作る活動を通して理解する。
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
1時間
米の作り方について知っていることや予想したことを話し合い、米作りの作業が分かる絵や写真を、教科書や資料集から探して集める トA‐1 「知識を確認する1」
社A‐1 「写真や絵を集める」
調べる
1時間
集めた絵や写真を、米作りの工程順に並べ、米の作り方を知り、重要な作業を短い文で表す(作業名でも可) 社J‐3 「比較して結論を出す」
社K‐4 「わかったことを文章でまとめる」
まとめる
1時間
絵、写真、作業の説明の文を、米作りの工程に合わせて模造紙に貼り、米作りごよみを作る
作成した米づくりごよみを利用して、米作りについて発表する
社L‐5 「テーマにあわせて年表や暦をつくる」
社O‐1 「ポスター発表をする」

※ 「つかむ」局面で、日本では主食が米と麦であるが、母国では同であったか話し合う。
 もし、母国でも稲作をしているのであれば、この授業の発展活動として、母国の米作りごよみを作って日本と比較し、その違いと理由について調べる。

タイプ1 NO.6

対象学年:6学年 時間:3時間
学習内容:織田・豊臣の天下統一
目標:戦国時代の時代背景を知り、それぞれの政策の特徴を理解し、織田・豊臣が天下統一できた理由を考える
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
1時間
桶狭間の合戦の絵を見て、武士の姿や戦いの様子について気付いたことを話し合い、戦国時代の情況を知る(当時の地図も利用) 社G‐4 「絵、写真・映像を読み取る」
社J‐1 「視点を決めて情報を整理する」
調べる
1時間
教科書や資料を調べて、織田信長と豊臣秀吉の政策カード(教師作成)を整理し、可能であれば、カードを追加作成する 社J‐2 「分類して整理する」
社J‐5 「関連付けて結論を出す」
まとめる
1時間
信長と秀吉の政策から、二人が天下統一できた理由を考え、文にまとめる
信長と秀吉の天下統一カルタでゲームをする
社J‐6 「総合的に考えて結論をだす」
社P‐4 「ゲーム大会をする」

※ 「つかむ」活動で、母国の歴史について知っていることを話し、これから学習することが、母国のどの時代に当たるのかを知る。
この学習の後に、母国にも戦争の歴史があれば、その時代の戦い方を調べ、日本の戦国時代の戦い方との違いと、その理由を考える。

タイプ1 NO.7

対象学年:6学年 時間:4時間
学習内容:地域の公共施設の役割
目標:公民館や福祉センター等、地域の公共施設に事業内容や来訪者についてインターネットで問い合わせ、その結果を整理し、公共施設が地域でどのような役割を果たしているかを新聞にまとめる
学習展開
活動 対応するAU
つかむ
20分
地域にある公共施設の利用経験について話す トA‐4「経験を確認する1」
調べる
1時間

30分
インターネットで各公共施設に問い合わせることを決め、問い合わせる
回答を表にして整理する
社C‐3 「インターネット・電子メールで問い合わせる」
社J‐1 「視点を決めて整理する」
社L‐4 「テーマに合わせて表を作る」
まとめる
15分
1時間
わかったことや自分の考えを話し合う。
アンケートの結果と話し合ったことを新聞で表現する
社M‐1 「新聞やパンフレットを作る」

※ 「つかむ」局面で、母国ではどのような公共施設があるか話す
「調べる」局面で、母国の公共施設にもインターネットで同様の質問をする

< スキル運用を重視するアプローチの授業展開例>

タイプ2 NO.1

対象学年:3、4学年(来日直後の児童であれば学年は限定せず) 時間:1時間
学習技能:見取り図を利用する
目標:学校探検をし、教室や施設の位置を見取り図に書き込む
学習展開
活動 対応するAU
1.学校の教室や施設でしっているものを挙げ、見取り図で位置を確認する トA‐2 「知識を確認する2」
2.学校探検をし、探検した場所を見取り図に書き込む 社L‐2 「調べたことを図にまとめる」
3.学校探検で感じたことを発表する トK‐1 「感じたことを表現する1」

※ 始めに、母国で通っていた学校についてその設備について話す
 この学習後に発展として、母国の学校の見取り図を描く

タイプ2 NO.2

対象学年:3、4学年 時間:1時間
学習技能:1.地図を読み取る 2.地図に表す
目標:地図記号の意味を知り、地図を読み取ったり、地図に記号を書き込んだりできる
学習展開
活動 対応するAU
1.地図の記号を見て、何を表すものか話し合う トI‐4 「推測する4」
2.それぞれの記号が何を表すか知り、地図を読み取る 社G‐1 「地図を読み取る」
3.絵地図の絵を地図記号に書き換える 社L‐1 「調べたことを地図にまとめる」

※ 始めに、母国の地図を見たことがあるか、知っていれば、どんな記号か使われているか話す
 発展の活動として、母国の家の周りの様子を地図で表す

タイプ2 NO.3

対象学年:5学年 時間:2時間
学習技能:1カメラで撮って資料を集める 2カードを作る
目標:身の回りの工業製品を探し、写真を撮って資料にする。それをカード化し、ゲームをしながら用途や製造国等によって分類する
学習展開
活動 対応するAU
1.身の回りの工業製品を探し、デジタルカメラで写真を撮る 社A‐6 「実物の写真を撮る」
2.写真をカードにして(厚紙に貼り付け製品名を書き込む)、用途、売っている店、製造国、利用している国等に関して、カードを取りゲームを行う 社M‐3 「カードを作る」
社P‐4 「ゲーム大会をする」
3.カードゲームでわかったことを文にしてまとめる トK‐5 「わかったことを表現する1」

タイプ2 NO.4

対象学年:6学年(ブラジルからの児童を想定) 時間:1時間
学習技能:1.表を読み取る 2.グラフを読み取る
目標:日本に住む外国人数の表やグラフから、在住ブラジル人数の変化を読み取る
学習展開
活動 対応するAU
1.日本に住むブラジル人数と、外国人の中で何番目に多いかを予想する トI‐2 「推測する2」
2.表「日本に住む外国人数(○○年)」を読み取る
  • 国籍・人数・順位
社G‐5 「表やグラフを読み取る」
3.グラフ「日本に住む外国人数の推移」を読み取る
  • 各国籍外国人数の変化・順位の交代
社G‐5 「表やグラフを読み取る」
4.わかったことを文にまとめ、表とグラフを利用しながら発表する 社K‐4 「わかったことを文章でまとめる」
トK‐5 「わかったことを表現する1」

タイプ2 NO.5

対象学年:6学年(ブラジルからの児童を想定) 時間:1時間
学習技能:1.写真や絵を読み取る
目標:ポルトガルからの渡来品が多く描かれている絵(例えば資料集等に載っている南蛮屏風)を読み取り、日本とポルトガルとの歴史的関係や外来語ポルトガルから来ていることを知る
学習展開
活動 対応するAU
1.ひらがなとカタカナの言葉を挙げ、そこから外来語をカタカナで表すことを確認する トI‐2 「推測する2」
2.絵(例えば南蛮屏風)を見て、カタカナで表すものを探す 社G‐4 「絵、写真・映像を読み取る」
3.南蛮貿易の歴史について説明を受け、多くの外来語がポルトガルとの歴史上の交易によってもたらされた物品名であることを文にまとめる 社K‐4 「わかったことを文でまとめる」

タイプ2 NO.6

対象学年:6学年(ブラジルからの児童を想定) 時間:2時間
学習技能:学習の成果をホームページ(HP)で公開する
目標:ブラジルでの自分の生活について、写真や思い出の品等をHPで紹介する
学習展開
活動 対応するAU
1.ブラジルでの生活の思い出の写真や品物について、クラスの友達に紹介する トK‐8 「経験したことを表現する2」
2.思い出の写真や品物の紹介と、ブラジルの生活を思い出して感じたことを文にする(日本語とポルトガル語) トK‐2 「感じたことを表現する2」
3.写真や品物を、スキャナーやデジタルカメラ等で取り込み、紹介文を打ち込む 社N‐3 「映像や音声を取り込んでデジタル図鑑等を作る」
4.学校や教室のHPにアップする 社R‐4 「学習成果をホームページで公開する」

タイプ2 NO.7

対象学年:6学年 時間:1時間
学習技能:1ビデオ等の映像を読み取る 2地域の様子を調べる
目標:学校の近くで障害者のために工夫されているところがないか調べる
学習展開
活動 対応するAU
1.ビデオを見て、目や耳の不自由な人のための工夫を知る 社G‐4 「絵、写真・映像を読み取る」
2.学校の近くに障害者のための工夫がないか調べに行く 社D‐1 「地域の様子を調べる」
3.調べたことをまとめて発表する トK‐7 「経験したことを表現する1」

※ 課題を「つかむ」局面で、母国でのバリアフリーの状況について知っていることを話す
 発展的活動として、母国での障害者のための工夫について、家で家族に話を聞いたり、インターネットで調べたりする

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成21年以前 --