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トピック型JSLカリキュラム 授業例 3 レベル3 テーマ:水

「水道」(3時間)

1.ねらい

  1. 絵や写真を見ながら、気づいたこと、思ったことを相手に伝えられる。
  2. 水道について調べたことを話し合い、課題を見つけられる。
  3. 調べたことや自分の考えを相手に伝えることができる。
  4. 学習の結果や感想等を簡単な文にまとめられる。

2.利用するAUカード(次のAUに、示されている日本語の表現を使って参加させる)

1.AU:A‐1 知識を確認する1.「知識を確認する」

表現:
 T「~はなんだと思いますか。」
 S「~です。」

2.AU:D‐1 操作する1.「数(量)を数える」

表現:
 T「~がいくつあるか、数えましょう。」
 S「一つ…○つあります。」

3.AU:D‐3 操作する3.「大きさや量を調べる」

表現:
 T「~の量がどのぐらいか、調べましょう」
 S「~は、~で~杯分ぐらいです。」

4.AU:J‐2 関連付ける2.「関連を把握する―1」

表現:
 T「~と~はどんなつながりがありますか。」
 S「~のつながりがあります。」

5.AU:J‐1 関連付ける1.「情報を整理する」

表現:
 T「わかりやすく整理しましょう。どう整理すればいいですか。」
 S「~と~とに分けて、整理します。」

6.AU:K‐5 わかったことを表現する1.「わかったことを表現する」

表現:
 T「わかったことを言ってください。」
 S「わかったことは~です。」

 ※ 示した表現は一例であり、実施に当たってはAUカードの日本語表現を参考に子どもの実態に合わせて調整する必要がある。

3.教材・教具等

  • 水道(蛇口)の絵
  • 学校の平面図
  • 1,000ミリリットルの計量カップ
  • 水道施設の絵
  • タスクシート
  • 関連資料
  • 語彙カード

4.授業の流れ

○:教材・教具

活動 AU・表現
体験

一単位時間
絵や写真を見ながら、生活の中でどんな時に水を使っているのか話し合う
  • 水道の蛇口の絵
知識を確認する1.「知識を確認する」
T:この絵(写真)はなんですか。
S:水/水道/蛇口です。
T:学校や家で、どんな時に水を使っていますか。
S:手を洗う/水を飲む/プール…時に使います。
学校にある水道の蛇口の数を調べて、学校の平面図に記入する
目隠しをして木に触り、五官を使って得られた情報(手触り、抱えた感じ、におい、たたいた音等)を表現する。
  • 目隠し用の手ぬぐい等
操作する1.「数量を数える」
T:学校には、水道の蛇口がたくさんありますね。全部でいくつあるかなあ。数えてみよう。
S:はい。(調べに行く)
 ここに、一つ、二つ、三つあります。
 (平面図に書き込む)
 全部で、○こありました。
探求

一単位時間
手洗いをする時、どのぐらい水を使うか調べる
  • 計量カップ、バケツ
操作する3.「大きさや量を調べる」
T:手を洗う時、どのぐらい水を使っているか調べましょう。使った水をカップで何杯か計りましょう。
S:~杯、~杯…~杯でした。
 とてもたくさん使います。
学校の水道の水がどこから来て、どこに行くのかを考える(水道施設の絵や、水道の水の流れを描いた絵等をヒントに)
  • 水道の水の流れがわかる絵(水道施設ははいっていない)
    上の絵に貼り付ける水道施設の絵
関連付ける2.「関連を把握する‐1」
T:みんなでたくさん水を使っていますね。では、この水は、どこから来て、どこに行くのでしょうか。
S:川から来ます。川に行くと思います。
T:この絵を見てください。水道の水はどこから来ますか。それから、どこに行きますか?
S:(水道の施設を水道の流れ図に貼り付けながら)川から、ここに来てきれいにします。それから…
発信

一単位時間
水道の水がどのようにして学校や家に来るのか、使った水はどうなっているのかについて、調べたことをわかりやすく整理する。
  • タスクシート、社会科の資料
関連付ける1.「情報を整理する」
T:水道の水について、わかりやすく整理しましょう。どう整理すればいいですか。
S:川の水が学校に来るまでと、使った水が川に戻るまでとに分けて、整理します。
わかったことを発表する
 → ビデオで確認する
  • タスクシート
  • 水のサイクルについてのビデオ
わかったことを表現する1.「わかったことを表現する」
T:調べてわかったことを発表してください。
S:川の水が水道の水になります。まず。浄水場で水がきれいになります。そして給水場からきれいな水が学校に来ます。使った水は、処理場に行ってきれいになります。それから、川にもどります。

5.語彙と文字

 活動中に自然な形で聞かせたり使わせたりして、次の語彙・文字の力を強化することができる。

<語彙>日本語能力及びトピックに関する知識を考慮して、語彙(数も)を選択する。

  • 水道に関連する言葉:水道、蛇口、洗面所、浄水場、給水場、下水 下水処理場 ダム
  • 水の流れを表現する言葉:流れる 戻る 出る ~から ~に 止める
  • 水の状態を表現する言葉:きれい、汚い、使った(水曜日)
  • 数量を調べることば:カップで○杯、○つ

<文字>対象児童の文字の読み書きの力に応じて、意識化させる文字を決める

  • 漢字:水 水道 下水 川 流れる 止める
  • カタカナ:リットル プール ダム

6.教師の支援

 学習内容の理解と表現を補助するための手立てと、予測される困難とそれへの対応例を各活動毎に示す。教師は、理解を求める表現・語彙と使用まで求める表現・語彙とを区別して聞かせたり使わせたりすることが大事である。また、子どもが言いたいことを表現できずにいる場合は、教師が適切な言葉を伝える、或いは、いくつかの表現を示して子どもが選んで使用できるようにする等の補助が必要である。

体験 絵や写真を見ながら、生活の中でどんな時に水を使っているのか話し合う
  • ☆ 水がどのような時に使われているのかについて、学校や家庭の生活場面をイメージさせて問いかける。
  • ☆ 日本語ではなかなか表現できない場合には、絵や写真を手がかりに、ジェスチャーや、簡単な単語などで表現させ、その後適切なことばを示す。
  • ☆ 問いかける時にも、具体的に場面を提示して問いかけたり、いくつか例を示してから問いかけると、質問の意味が理解できたり、答え方がわかる。
     「いつ、水を使いますか。家では?手を洗う、水を飲む、それから…?」
体験 学校にある水道の蛇口の数を調べて、学校の平面図に記入する
  • ☆ 水道に関心を持たせるために、学校にある水道の蛇口を調べさせる。また活動中のやり取りを通して、場所によって用途が違うということにも気付かせる。
     T:ここでは、水を使って何をしますか S:足を洗います。花に水をやります。水を飲みます…。
  • ☆ 水道を数える活動時にも、次の学習活動に結びつくように、水がどこから来るのか、使った水はどこに行くのかについて簡単に問いかけておく。
  • ☆ 平面図の見方や書き込み方がわからない子どもには、平面図の部屋を一つ一つ確認しながら、見方を教える。
探求 手洗いをする時、どのぐらい水を使うか調べる
  • ☆ 実際に手を洗ってみて、どのぐらい水を使っているかを調べる活動を通して、私達の生活にとって水道が便利でそして大事なものであることを感じさせたい。
    • ☆ 量の単位を知っていればカップで何杯というだけではなく、何リットルというかさの単位を利用して表現しても良い。
      T:どのぐらい使いましたか。カップで何杯? 何リットル? S:カップで○杯/○リットル使いました。
探求 学校の水道の水がどこから来てどこに行くのかを考える
  • ☆ ダム、川、海、学校、児童の家が書いてある絵に、水道施設(浄水場、給水場、下水処理場)の絵を貼り付ける活動を通して、川の水を水道水として利用する仕組みを考える。
    • 絵を確認するやりとりをし、その中で、それぞれの名称や役割について理解させていく
    • 「川の水はそのまま飲めるのか」「使った水をそのまま川に戻していいのか」等、水道の仕組みを理解する為のヒントを与えながら、水道施設の絵を貼り付けさせる。
  • ☆ ここでは、水道の仕組みを大まかに理解することをねらいとする。そのため、子どもの日本語や漢字の力を考慮し、難しいようであれば、水道施設名を覚えさせる必要はない。その場合、常に施設の絵と施設名を示しておき、教師は絵を示しながら発話し、子ども達には絵を指し示させるような配慮が必要となる。
発信 わかったことを発表する
  • ☆ 2時間目の授業のタスクシートや、資料の水道システムの写真や絵を参考にしながらやりとりする。このやりとりの中で、まとめの文の雛型を板書したり、日本語の表現を語彙カード等で黒板に示したりする。
     例:( )について調べました。水道の水は、( )から来ます。まず、浄水場で( )します。そして、給水場から( )。使った水は、処理場に行って( )。それから、川に( )。
  • ☆ まとめの文章を書くのが困難な場合は、学習した内容をまとめた文章を読んだり、モデル文を写して読んだりしても良い。

7.活動のバリエーション

(1)学習形態に応じた工夫
  • 体験段階の「どんな時に水を使うか」話し合う活動と「学校の蛇口の数を調べる」活動は、できれば、グループ活動とする。それぞれのグループで話し合ったことや調べた結果をクラス全体に報告する。
  • 探求段階の「手洗いで使った水の量を計る」活動は、ペアワークとし、洗う係りと計る係りに分かれて、それぞれが使った水の量を計るようにできれば尚良い。それによって、子ども間でいろいろなやりとりが生じ、言葉の学びの面でも、学習活動への参加という点でもプラスになる。
  • 発信段階では、できれば発表の前に、小さいグループ単位で発表の練習を行い、自信を持って発表に望めるようにする。
(2)出身国による違いに着目して
  • 水の使い方が、国によって、或いは地域によって異なるかもしれない。その場合は、それを紹介してもらい、使い方の違いを比べながら学習を進める。
  • 井戸や湧き水、川の水を生活用水としている地域から来た子には、水を確保するためにどのような仕組みや工夫をしているかを調べて発表させる。(※子どもの気持ちへの配慮が必要である。)
  • 気候や地理的条件等の違いから水の価値が異なる国もある。そうした国での水の利用の仕方を調べて、日本の場合と比較する。
(3)学習活動を発展させるために
  • 蛇口調べをする時に、蛇口の形が違うことを水の用途と関連づけて考えさせる。
  • 水道の仕組みをよりよく理解するために、浄水場や下水処理場などに見学に行き、施設のシステムについても調べる。
  • 水道水をどのぐらい使っているかを、水道局等の資料を利用したり、水道局の方から話を聞いたりして、調べる。
  • 断水になったらどんなことで困るかを推測したりして、水がふんだんにある生活の快適さについて考える。
  • 飲料水として売られている水の源を調べ、どういう場所にきれいな水があるのかを考える。
(4)多様な学習の連携に向けて
  • 水道について調べたことを在籍学級で発表する機会を設けてもらう。
  • 学年や学級の社会科や総合的な学習と連携して水道調べを行う。
  • 学校や学年の行事でダムや川に出かける機会があれば、その時に水道水についても触れるような学習を組んでもらう。

8.リソース

(1)教材・教具
  • 水道施設については、社会科の副読本や資料などが利用できる。
  • 蛇口や、手洗いの様子等を写真にとっておくと、教材として利用できる。
  • 水道の仕組みについてのビデオ資料があれば、学習したことの確認のために利用できる。
(2)人的リソース
  • 家族やコミュニティの人に出身国の生活用水や水道事情について話を聞いてくる。
  • 市(区)役所の水道局の方にインタビューをしたり、資料について説明したりしてもらう。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成21年以前 --