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資料1「トピック型」JSLカリキュラム開発の経緯

1.開発の流れ

 「トピック型」JSLカリキュラム開発の経緯を簡単に紹介する。本文と併せて参照することで、「トピック型」JSLカリキュラムについてよりよく理解することができる。
 まず、日本語を母語としない子どもたちの教育に携わっている教師・指導者からの報告をもとに、問題の所在を確認し、本カリキュラム作成の方針を明確にした。「学校での学びに参加するための日本語の力」の育成を目指すことになった。また、対象とする子どもたちの背景の多様さ、それぞれの学校の条件の違いに対応できるカリキュラムを開発することにした。そして、教師・指導者の経験にもとづいた柔軟で即応性のある対応の重要性が共通に認識された。
 その後、「学校での学びに参加するための日本語の力」はどのように育成できるかが議論された。議論の中で「活動を通した学びの場づくり」とそうした場を提供する「授業づくりのためのツールの開発」と位置づけたカリキュラムの基本的な考え方が決まった。授業の指導案を作成したり、日本語の表現を例示したりして、具体的なレベルでの話し合いを重ねた結果である。
 その一環として検証授業も数回行った。「活動を通した学びの場づくり」を念頭に作成した指導案に検討を加えた上で、実験的に授業を行ったのである。この検証授業の結果をもとに、基本的枠組みが整えられた。これに並行して、カリキュラム作成のツールが検討され、「活動単位(AU)」と「その日本語表現」を組み合わせたカード形式のものがイメージされた。
 以上が、基本的枠組みづくりの流れだが、その後はワーキンググループに分かれて作成作業を行った。大きく分けて「AUとその日本語表現」の精緻化とAUを利用した授業事例の指導案作成の二つの作業である。カリキュラムの運用を促進するためには、AUカードの利用方法の例示が重要だと指摘され、「授業事例」を用意することにしたのである。「授業事例」は、指導案の形で示し、授業の組み立て方(どのAUを選ぶか、AUを活用した授業づくり、特に活動の展開、主教材の決定等)と、支援方法の工夫(補助教材、タスクシートの作成、指導上の留意点や対応方法の準備等)を盛り込むことにした。ワーキンググループで原案を作成し、本会議で検討して問題点を改善していく手続きにより作成した。この過程においても、継続的に検証授業を行い、その実施校の教師の意見を参考にした。
 一方、JSLカリキュラム作成後の各学校への普及が大きな課題として指摘され、JSLカリキュラムの開発と同時進行で、インターネット等を利用した支援システムのあり方を検討した。
 「トピック型」JSLカリキュラム開発の経過を図示すると次のとおりである。

「トピック型」JSLカリキュラム開発の経過

 「トピック型」JSLカリキュラム開発の経過の図

2.検証授業

 学習の3つの局面「体験」「探求」「発信」については、本文の2.1でその考え方を詳しく述べたが、ここではこの枠組み作りに大きく貢献した検証授業について振り返る。
 開発過程の議論で、学習に参加するための日本語の力が付かない理由として、日本語指導が、日本語を学習から切り離して語彙や文型についての知識の獲得を目標として行われていることが指摘された。
 そこで、日本語を使って学習活動に参加する経験を通した学び、すなわち「活動を通した学び」を生み出す授業とはどのようなものか、との観点から授業を構想した。そこから導き出されたのが「体験」「探求」「発信」の3つの学習局面からなる授業の構造である。この構造に従って授業の指導案を作成し、実験的に授業を実施した。カリキュラム開発の各段階において検証授業を実施したが、検証内容は主に、1.3つの学習局面からなる授業は本当に活動を通したトピック追究の学習となるのか、2.AUにより授業が構成できるのか、3.AUの日本語表現が授業中の日本語使用の目安となるのか、4.活動を通した学びによって日本語の力も伸びるのか、の4点であった。
 検証授業の結果、3つの局面から構成され授業の妥当性及び実効性を検証することができた。同時に、AUをもとにした授業の組み立て方、AUの日本語表現の利用方法、また、具体的な支援方法や教材の質などについても多くの示唆が得られた。
 ここで、特に重要な意味をもった検証授業の結果を示す。この授業は、枠組みづくりの段階で実施したものだが、3つの局面で組み立てられた授業が「活動を通した学び」を生むのか、を検証することが目的であった。
 この検証授業によって検証された内容と示唆を、局面ごとに示す。
 「体験」の局面では、その学習を理解するために必要な子どもたちの経験や体験を引き出し、「言葉」で具体的に表す活動が重要だということを確認した。学びは、自己の経験や学習によって獲得してきた概念、既有知識の体系に結びついて生じる。日本語が不十分な子どもたちが自分の既有知識を呼びさますためには、日本語を母語とする子どもたちとは異なり、日本語による一般的な問いかけでは不十分である。具体物を見せる、操作させる、日常的な体験を思い出させるなど、子どもたちの生活実態に合った具体的・個別的な働きかけが重要であることが示された。
 「探求」の局面に関しては、子どもたちがそれまでに培ってきた「学ぶ力」を活用できるようにすることが重要である。具体物やその操作などをふんだんに盛り込めば、学ぶ力が活性化され、新しい情報を認識し、理解し、思考し、判断しながらトピックについて追究することが可能になることが分かった。そのためには、実物、写真、絵、図などの具体物や半具体物を提示し、理解を助けることが不可欠であった。さらに、内容の理解と同時に、その概念や知識を表現するための「日本語表現」を適切なタイミングで提示すれば、理解した内容を日本語で表現できることも確認できた。また、子どもたちの知的好奇心を喚起する内容であれば、「なんだろう」「どうしてだろう」「知りたい」との学習への参加意欲が、「学習の中身を理解したい」「分かったことを伝えたい」という日本語を媒介にしたやり取りへの積極性にもつながることが分かった。
 「発信」の局面では、相手を想定して発信する活動が日本語の力の伸長、特に学習を支える読み書きの力を強化することが確認できた。計画段階でも、日本語で表現するための支援がポイントとなることが予測できたが、その支援が不十分であったため口頭での「やり取り」と「文章化すること」との間にギャップが生じた。文章化には当初の予想以上に日本語の支援が必要であったということである。この点は、日本語を母語としない子どもたちが共通して克服しなければならない課題であり、文字を媒介にして理解・表現する活動を学習の中に繰り返し組み込むことの重要性が再認識された。また、表現の仕方は、学習内容によってさまざまな方法が考えられる。たとえば、絵で表す、絵日記を書く、表、図、グラフで表す、あるいは身体で表現するなどである。日本語の力が十分でなくても、これらの表現方法を利用して日本語を使って発信すれば相手に伝えられるということは、子どもたちの授業中の様子から明らかであった。日本語で表現する部分の割合を調整しながら成果の発信を繰り返し行うことが、日本語で「文章化」する力を育成するための有効な方法だろうと考えられた。

3.活動単位の特定

 AUカードの構成要素「AU」と「AUの日本語表現」をどのように特定化したかを説明する。まず、「AU」をどのように決定したかについて示す。学習に参加するための日本語の力とは、教室の学習活動に参加するために必要な日本語の理解力であり、日本語による表現・伝達力である。そこで、教室で行われる活動を単位化し、その活動に参加するために必要な日本語の表現とセットにして示すことが有効であると考えた。
 まず、各教科の学習を構成する活動を洗い出した。教科教育を専門とする委員によって、「国語」「算数」「社会」「理科」の4教科に関して、授業を構成する活動を抽出した。その抽出の方法は、教科の到達目標である知識・概念・技能から出発して演繹的、観念的に活動をイメージするのではなく、実際に教室で日々行われている授業の中から活動を拾い上げる方法をとった。実際の教室で繰り広げられる活動からAUを構成することが、ツールとしての実効性、現実性をもつと考えたためである。この作業によって、教科内容や教科固有の考え方・情報処理の仕方などが反映された活動がそろった。
 次に、抽出した活動から「トピック型」JSLカリキュラムのためのAUの特定化を行った。「トピック型」は、教科学習の基礎となる「学習に参加するための学ぶ力」の育成を目指すものである。AUも、教科学習全般に共通する基本的なもので構成する必要がある。そこで、共通する活動を洗い出し、それを抽象化・一般化してAUを特定化した。また、AUは学習の3つの局面「体験」「探求」「発信」を組織するものであるため、それぞれの局面にグループ分けした。たとえば、「知識の確認」「体験の確認」というAUは、既有知識を活性化するための活動であり、「体験」の局面を組織化するAUグループに該当する。こうして作成された原案を本会議で検討し、AUを編成した。
 また、授業事例を考える段階でも、AUの過不足分について補充、調整が進められ、本報告書のAU一覧で示すものになった。以上の流れを図示すると次のようになる。

AUの特定化のプロセス

活動単位の枠組み、及び活動単位の特定化の方法を検討
 ↓
4教科(国語、算数、社会、理科)の主要な活動を抽出
 ↓
抽出された活動を元に、教科横断的・基本的学習活動を構成するためのAUを特定化
(「トピック型」JSLカリキュラムでは、特定教科の学習項目を取り上げてその知識・技能を高めることではなく、教科全般に必要な「学習参加の基礎的な力=(イコール)学ぶ力」の伸長を目的としている。)
 ↓
授業事例を作成する過程で必要性が認められたAUを加え、調整、整備

 なお、ここで示したAUは基本的なものであり、各学校で教師・指導者がそれぞれ個々の子どもを対象に授業を行う場合に、その多様性に完全に応じられるものではない。今後、カリキュラムが運用され、支援システムを介して各地で実践が蓄積される中で、新しいAUを随時付け加え充実させていくことを期待している。

4.活動単位の日本語表現

 AUを特定化した後で、その活動に参加するための日本語の表現を決定する作業を行った。普通教室でAUによって構成された学習を行う際、教師・指導者は日本語でどのような働きかけをし、子どもたちはどのように応答するのかという観点から、AUに対応する日本語の表現を選ぶことにした。そのため、語彙や文型を易しいものから難しいものへと網羅的に並べた従来のシラバスとは全く異なるものとなった。特定化の作業は、次のように進められた。

AUの日本語表現選定のプロセス

一般の教室で、AUの活動を行う時に見られる教師・指導者の発問・指示とそれに対する子どもの反応を洗い出す
 ↓
各AUに該当する日本語表現を数種類に絞り込む
 ↓
各日本語表現のバリエーションを作成する

 まず、小学校などで日本語を母語としない子どもたちの教育を担当している委員を中心に、それぞれのAUに対応する日本語表現を洗い出した。日本語表現の洗い出しは、実際に教室で見られる「教師・指導者の指示、質問、説明等」と「子どもの応答」のやり取りを拾い上げると方法で行った。この段階では、教室一般でよく使用される表現から、特定の教科の具体的活動に特化した表現まで、さまざまな表現が集められた。
 たとえば、「観察する」というAUに対応する日本語表現として集められた表現には次のようなものが挙がった。教師からの働きかけとして「観察してみよう」「注意して調べること」「どう伸びる」などがあった。子どもたちの応答は「大きいです、小さいです」「めだかのお腹に卵があるよ」「ぐんぐん芽が伸びている」などである。そこで、「AUからイメージした具体的活動を行う時に、応用可能な表現」という基準で、特定の教科内容が想定されている表現を省き、共通する表現をまとめ、個別性や具体性のレベルの調整を行った。その結果、AU「観察する」の日本語表現として、教師・指導者「観察してみよう」-子ども「はい(観察する)」や、教師・指導者「大きさや色や形はどうですか」-子ども「大きさはこのくらいで、色はこんな色で、形はこういう形です」という表現がそろった。これを基本形と呼ぶことにした。
 授業を構想する時には、子どもたちの学ぶ力に合わせて目標とするAU(学習活動)を選択し、具体的な学習活動をイメージしていくことになるが、活動に参加するための日本語の表現に関しては、「日本語の力」に配慮して決定する必要がある。そこで、子どもたちの多様な言語能力に応じられるように、AUの基本形をもとにバリエーション表現を作成した。バリエーションの作成時には、主に語彙、文型(文の構造)、談話のまとまりといった言語的要素を考慮したが、各要素についてどのように考えて作ったのか、その一部を示す。

1 語彙
  • 日常的に使わない語彙であれば馴染みのありそうな語彙にかえる。
  • 抽象的過ぎれば具体的な言葉で言いかえる。
  • 教科特有の用語であれば教科のより基本的な語彙にかえる。
  • 難しい漢字語彙であれば、日常的に使う語彙に言いかえる。
2 文型(文構造)
  • 複雑すぎれば単純な構造の文型に言いかえる。
  • 長すぎれば短い文に分ける。
  • 聞き慣れない文型であればよく使っている文型で言い直す。
3 談話のまとまり
  • 一回の発話で扱う内容が多すぎれば小さく分けてやり取りにする。
  • 文と文の関係が複雑であれば分かりやすく並べ替える。

 この他にも、表記の問題や、母語からの転移など考慮しなければならない要素は多い。しかし、どの表現が子どもたちにとって難しいのか、あるいは易しいのかということは、授業中の子どもたちの反応を見て判断しなければならない。言語の形式に関する固定的な見方で文型や言語の難易度にとらわれ過ぎることなく、子どもたちの活動への参加状況から、その時のその子どもにとって相応しい表現を選ぶ、あるいは教師・指導者自身で考えることが望ましい。そうした時のヒントとしてバリエーションを提供する。

5.AUを利用した授業事例

 AU(学習単位)を利用した授業とはどのような授業か、またどのように作りあげるかについては、具体的に示すことが重要であると考え、授業事例を作成することにした。
 「トピック型」JSLカリキュラムは、教科学習の基本となる学びの場を提供することを目指している。そこで、教科内容からトピックを設定するという方法ではなく、テーマを設定し、そのテーマをめぐってトピックを決定した。テーマとは、授業を構想するときのアイディアづくりのきっかけといったものである。このカリキュラムで例示する授業では、「月」「火」「水」「木」「金」という5つのテーマをめぐるトピックを扱うことにした。
 それぞれのテーマに関して、小学校の低・中・高学年向けのトピックと授業のアウトラインを作成した。低・中・高学年向けとは、学ぶ力がその学年レベルである子どもたちに対する、そのレベルに相応しい内容という意味である。低・中・高学年の違いは明確に線引きされたものではないため、対象とする子どもたちの学ぶ力に合わせて柔軟に利用することが前提となっている。低・中・高学年レベルとの言い方ではなく、レベル1、2、3という言い方にしたのもそうした理由からである。
 たとえば、テーマ「月」のレベル1のトピックは「カレンダー作り」、レベル2のトピックは「月には何が住んでいる」、レベル3のトピックは「月」である。それぞれ、低学年、中学年、高学年の子どもたちをイメージして作成された事例だが、実際に利用する場合には、対象とする子どもにとってどれが適当かを授業の中身から判断して選択することが望ましい。こうして決定したトピックに関して、授業を3つの局面「体験」「探求」「発信」によって構成し、それぞれの局面がAUによって組織化されるようにアウトラインを作成した。「学び方」を学ぶという視点からトピックを選択したが、生活科、社会科、理科の教科内容に関連しているものが多くなっており、学習の結果としてそうした教科の知識や技能を身に付けることができるようにもなっている。
 その後、授業のアウトラインをもとに、活動を具体化し、必要な教材を考え、授業の指導案を作成した。この作業は、日本語を母語としない子どもたちへの教育経験がある委員が当たった。
 指導案の特徴として次の3点を指摘できる。第1に、活動に参加するために必要な日本語表現が示してあることである。日本語表現は、AUカードから選んだ表現をトピックが反映する形に変えたものである。第2に、子どもたちが遭遇する困難を想定して、学習参加を促すための教師・指導者の支援と、日本語の理解と産出を促すための支援を示してあることである。日本語を母語としない子どもたちへの教育経験のない教師・指導者にも分かりやすいように具体的に示した。第3に、対象となる子どもに応じてさまざまな工夫を施すためのヒントを、「活動のバリエーション」「リソース」という項目を立てて示したことである。
 本会議で再度検討を加えたものが、本報告書で授業事例として示されている指導案である。以上の流れを図示すると次のようになる。

授業事例の指導案作成のプロセス

 テーマの選択→「月」「火」「水」「木」「金」に決定
 ↓
 低・中・高学年向けのトピックを決定し、授業のアウトラインを考案
 ↓
 上記アウトラインをもとに、活動や日本語表現を具体化し、授業指導案を作成

6.活動支援のための工夫

 まず、子どもたちの学習参加を促すための教師・指導者の支援方法に関して議論された点を紹介する。
 第1に、現在、子どもたちを対象に行われている日本語教育の問題点として、子どもたちの言語習得の特性に配慮した教育が行われていないのではないかとの指摘があった。簡単に言えば、成人学習者に対する場合と同様の支援方法が行われているケースが多いことである。言語形式に関するルールを教え、そのルールを覚えるためにドリル的な学習をさせ、言語形式についてのルールの定着をテストなどによって評価する方法である。
 第2に、多様な背景をもつ子どもたちへの対応方法に関する議論では、個別のケースへの対応方法をマニュアル化することは不可能であると同時に無意味であり、ケースに応じて柔軟な支援を行うことが教師・指導者に求められるとの指摘があった。子どもたちの多様性に対応するだけでなく、個々の学習場面においても即興的に、しかも臨機応変に対応することが求められる。そこで、支援の工夫を助けるためのヒントやアイディアを、本カリキュラムの重要な要素として具体的に盛り込む必要があるとの考え方で一致した。
 第3に、活動を通した学びについての議論では、大きく二つの支援を考えた。これまで日本語面での支援だけが強調されてきたが、それに加えて活動への参加を促す・助けるための支援という考え方が重要である。日本語面での支援と活動面での支援は、有機的に関連している。
 第4は、本カリキュラムを利用する教師・指導者として、日本語教育の専門家、学校の教師、日本語指導協力者(時間単位で日本語を教えるために学校に来る)、母語支援者(子どもの母語が話せることで通訳や日本語学習支援を行う)等が想定される。中には初めての教師・指導者もいれば、十数年日本語教育に携わっている人もいる。専門性の面でも、経験の面でも、教師・指導者の力量は多様である。そこで、経験の浅い教師・指導者を想定し、支援の工夫をより細かく具体的に示すことにした。
 以上の議論を経て、授業事例の中に教師・指導者が行う支援の例を具体的に盛り込むことにした。
 最後に、授業中に子どもたちが日本語の理解(聞く・読む)や産出(話す、書く)に困難があった場合の支援について説明する。より具体的な支援方法は、授業事例の指導案に示してある。

1.日本語及び内容の理解を促す、助けるための支援

1)伝える情報を理解可能なものにする。
  • 具体物(実物、絵、写真)等により、文脈化して意味を伝える。
  • 子どもたちが日常的に使っているような言葉や知っている言葉で言い換える。
  • 小さいステップで、順を追って、一つずつ情報を提供する。
2)記に残す。
  • ゆっくり、はっきり、表現のまとまりが分かるように話す。
  • 繰り返し聞かせる。
  • 具体物を示すなどして繰り返し意味を確認する。
  • 言葉を音、文字、絵、触感等、多くの感覚を同時に働かせて理解させる。
  • 意味のある活動の中で、言葉を聞かせる。
  • 目に付くところに、常に言葉を示しておく。
3)思い出させる。
  • ゆっくり、はっきり伝える。
  • その言葉や表現が出てきた文脈を再現する。
  • 言い換えて意味を伝えてから、その言葉や表現を聞かせる。
    ※ 注意点:性急に発話を求めない
     理解することと、それを話したり書いたりすることとの間には、大きなギャップがある。そのため、理解できても産出できない期間が相当長い場合を念頭において、適切な支援をしなければならない。また、子どもたちが産出するまでの力が育っていない場合には、産出を強要しないようにしなければならない。

2.学習したことついての産出を促す、助けるための支援

1)適切なタイミングで日本語を示す。
  • 話したいことに適切な語彙、表現型で日本語に置き換える。
  • 日本語で話したことを、適切な日本語に直して聞かせる。
  • 話したことを、適切な日本語の表現の様式(型)を利用して言い換えさせる。
2)常にヒント、助けとなるものを示しておく。
  • 表現の仕方を板書や、語彙・表現カードで提示しておく。
     語彙、表現型、表現の様式等
  • 内容や順序のヒントとなる資料、情報を示す。
     図・表・絵・教材
  • 学習した内容が一目で分かるものを示す。
     学習内容の板書、タスクシート、利用した教材の提示等
3)言語以外の表現方法を利用させる。

 以下の表現方法に日本語を組み合わせて表現させる。

  • 絵・表・グラフ・図・地図・身体表現・歌・ドラマ

※ 注意点:表現することを優先し、日本語はそのためのツールとして考える。子どもたちが学習活動の中で活性化させた経験や知識・概念、新しく習得した知識、感想などを表現することを重視しなければならない。まずは、いろいろな方法で表現できること、次に、日本語でそれをどう表現するかを学ばせる。
 「体験」「探求」段階の活動中のやり取りでは「相手に意味が通じる」ことが目的だが、「発信」段階の表現は「成果を他者に向かってうまく発信する」ことが求められる。そのため、求められる日本語の表現や表現様式が異なる。この点を教師・指導者は強く意識し、細やかで適切に支援することが必要である。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成21年以前 --