第3次国立大学法人等施設整備5か年計画

平成23年8月26日
文部科学大臣決定

 国立大学法人等(大学共同利用機関法人、独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。)の施設は、高度化・多様化する教育研究活動の展開に不可欠な基盤であり、創造性豊かな人材養成、独創的で多様な学術研究の推進、高度先進医療の提供等を推進するための礎である。

 これまで、国立大学法人等の施設については、第2期及び第3期の科学技術基本計画を受けて、それぞれ「国立大学等施設緊急整備5か年計画」(平成13~17年度)及び「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(平成18~22年度)を策定し、これらの計画に基づき施設整備を実施することにより、耐震化や老朽・狭隘解消に一定の進展が図られてきた。
 しかしながら、国立大学法人等の施設は、依然として安全性・機能性の不足や老朽化の更なる進行などの課題を有しており、特に近年は教育研究活動の高度化・多様化、国際競争力の強化、産学官連携の推進等に必要な施設面での対応も求められている。
 また、平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、東北や関東地方の国立大学法人等において、施設及び設備等の損壊やライフラインの途絶、電力供給力の減少等による教育研究活動への影響など、広範かつ深刻な被害が生じたところであり、総合的な防災機能強化の重要性が再認識されたところである。
 厳しい財政状況の中、これらの課題等に適切に対応していくためには、国立大学法人等の施設に求められる機能が効果的・効率的に実現されるよう、長期的な視点に立って、その充実に向けて計画的かつ重点的な施設整備を行うことが不可欠である。
 このような状況の下、平成23年8月に閣議決定された第4期の科学技術基本計画において、国は、重点的に整備すべき施設等に関する国立大学法人等全体の施設整備計画を策定し、十分な機能をもった、質の高い、安全な教育研究環境の確保とその一層の高度化に向けて、安定的、継続的な整備が可能となるよう支援の充実を図ることとされたところである。
 このため、文部科学省では、「第3次国立大学法人等施設整備5か年計画」を策定し、以下のとおり国立大学法人等の施設の計画的かつ重点的な整備を推進することとする。

1.計画期間

 本計画の期間は、第4期の科学技術基本計画期間(平成23~27年度)とする。

2.基本的考え方

(1)国立大学法人等が、我が国の成長・発展に向けて、人材養成や学術・文化の継承と発展、地域社会・産業への貢献等の役割を十分に果たしていくためには、その施設の現状や課題を十分に踏まえた上で、計画的かつ重点的な施設整備を推進していく必要がある。
 このため、以下の<1>から<3>までの視点からの施設整備を一体的に実現することを通じて、我が国の未来を拓く教育研究基盤の形成の一層の促進を図る。

 <1>質的向上への戦略的整備(Strategy)
 高度化・多様化する教育研究活動を活性化し、各国立大学法人等の有する個性や特色を最大限に引き出していくためには、その基盤となる教育研究環境が十分な機能を備えたものとなることが不可欠である。
 このため、国立大学法人等が機能別分化を推進し、その個性や特色を一層発揮できることを目指して、以下の視点から戦略的に施設整備を推進する。

 1)卓越した教育研究拠点の形成
 我が国の国際競争力の強化等を目指して、国内外を問わず広く優秀な人材を惹きつけるとともに、世界を牽引するリーダーや研究者等を養成し、世界水準の優れた教育研究成果を生み出す拠点の形成を図る。

 2)個性や特色を発揮して教育研究を活性化する環境の整備
 各国立大学法人等の個性や特色が最大限に発揮されるよう、創造性豊かな人材養成や独創的で多様な学術研究の推進、社会貢献(地域貢献、産学官連携、国際交流等)など教育研究活動の活性化等に繋がる施設の機能の向上を図る。 

 3)先端医療・地域医療に対応した大学附属病院の計画的な整備
 大学附属病院は、医療人材を養成する教育機能や高度先進医療等を開発する研究機能、地域医療や災害時における救命救急医療の中核的役割を担う診療機能を有している。このため、卒前・卒後教育の一体的で魅力ある教育プログラムや医療の専門化・高度化に対応した最先端の医療、地域との連携の推進等への対応に必要となる大学附属病院施設の機能の向上を図る。

 <2>地球環境に配慮した教育研究環境の実現(Sustainability)
 地球温暖化は喫緊の課題であり、国立大学法人等においても、地球環境への負荷が少なく持続的な発展を可能とするため、温室効果ガスの排出削減に向けた取組を進める必要がある。
 加えて、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故等に伴い電力需給が逼迫しており、今後更に、省資源、省エネルギーの取組を進める必要がある。
 このため、施設整備に当たっては老朽施設のエコ再生や再生可能エネルギーの導入等を推進するなど、必要な環境対策を講じる。

 <3>安全な教育研究環境の確保(Safety)
 耐震性など安全性に問題のある施設や基幹設備(ライフライン)の解消は、学生等の安全確保だけでなく、災害時における地域住民の応急避難場所、地域の拠点病院としての観点からも、引き続き早急に対応すべき課題である。
 このため、建物の耐震化や非構造部材の耐震対策、基幹設備(ライフライン)の改善など、早急に安全性の確保に必要な対策を講じる。

(2)国立大学法人等は、本計画の趣旨を踏まえ、長期的な視点に立って、より効果的かつ効率的に施設整備を実施するため、基本理念や将来構想などのアカデミックプランや経営戦略等を踏まえたキャンパス全体の整備計画(キャンパスマスタープラン)の策定・充実とその計画に基づく施設整備に努める。
 また、既存施設の有効活用や適切な維持管理等の戦略的な施設マネジメントの推進とそれに必要な人材養成、多様な財源を活用した施設整備などシステム改革への取組を一層推進する。

3.整備内容

 国立大学法人等の施設には、平成22年度末において、改善が必要な老朽施設として約1千万平方メートル、高度化・多様化する教育研究活動の実施に不可欠なスペースとして約200万平方メートルの整備需要が存在する。
 これらの整備需要に対し、2.の基本的考え方の実現を目指すため、以下の施設を優先的に整備すべき対象とし、効果的・効率的に施設整備を推進する。

(1)老朽改善整備
 以下の観点から、老朽化した施設や基幹設備(ライフライン)を改善することにより、防災機能の強化を図るとともに教育研究活動の基盤として相応しい質の確保を図る。

 <1>老朽施設の改善(約400万平方メートル)
 耐震性など安全性に問題のある施設や教育研究活動に機能面で問題のある施設について、以下の要件を総合的に勘案し、施設整備を推進する。
  1)安全性に問題のあるものであること。
  2)機能改善により高い教育研究効果等が見込まれるものであること。
 なお、建物の耐震化については本計画期間内で完了させることとし、そのうち、特に耐震性が著しく劣るIs値0.4以下の建物の耐震化については、原則として、当初2年間で完了させる。

 <2>基幹設備(ライフライン)の改善
 安全性に問題のある基幹設備を早急に改善するとともに、教育研究活動に機能面で問題のある基幹設備について改善を図る。

(2)狭隘解消整備(約80万平方メートル)
 卓越した教育研究拠点の形成や若手研究者の増加、留学生の受入れ等への対応など教育研究活動の活性化や高度化、多様化に伴い必要となるスペースは、施設マネジメントにより既存施設を有効活用すること等による確保を前提とするが、このような対応による確保が困難で、教育研究活動上、真に必要と認められるものについては、新増築等による確保を図る。
 その際、実験機器等の適正な配置が可能となるよう、また、災害時における避難通路の適切な確保ができるよう、安全な教育研究環境の確保に努める。

(3)大学附属病院の再生(約70万平方メートル)
 大学附属病院については、教育・研究・診療機能を果たしており、これまでも計画的かつ着実にその再開発整備を推進してきた。引き続き計画的かつ着実な整備を推進するとともに、最先端医療への対応や安全確保のために不可欠な施設整備、災害時の救命救急医療の拠点としての整備等を行い、安全で質の高い教育・研究・診療環境を確保する。

 (4)上記の整備を行うための所要経費について、具体的な整備対象を特定せず、これまでの実績に基づき試算すると、現時点で最大約1兆1千億円と推計される。

 4.実施方針

 本計画の実施に当たっては、文部科学省による計画的かつ重点的な整備の支援を基本とした上で、以下の方針により行うものとする。

(1)文部科学省は、3.の整備内容を踏まえ、具体的な事業を選定するに当たり、国立大学法人等の施設の現況や教育研究の実施状況に加え、地球環境への配慮やシステム改革の取組状況などについて調査・評価を適切に行い、それらの結果に基づき実施事業を選定する。また、施設整備の実績と併せて施設整備によって得られた成果を把握することにより、本計画の進捗状況を適時確認する。

(2)文部科学省は、質的向上への戦略的整備(Strategy)を推進するため、(1)の事業評価に際して国立大学法人等の個性や特色を踏まえたカテゴリーを設定し、カテゴリー毎に高い教育研究効果が見込まれる事業から優先的に選定を行う。その際、国の政策課題や社会的要請への対応に必要な施設については、特に配慮する。

(3)国立大学法人等は、システム改革への積極的な取組を一層推進し、事業の実施に当たっては、コスト縮減や適正な執行に努める。

(4)文部科学省は、国立大学法人等による多様な財源を活用した施設整備などシステム改革への取組を一層促すため、優先的に支援を行う対象の明確化や必要な情報提供等に努める。

(5)文部科学省は、施設整備に係る投資の効果を最大限発揮させることを前提として、必要な経費の確保に努める。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室

(大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室)

-- 登録:平成23年08月 --