学校等の防災体制の充実について 参考資料4

4 第一次報告の概要

  1  はじめに
     阪神・淡路大震災における経験を生かし、主として小学校・中学校・高等学校等における、地震対策を中心とした防災体制の充実について審議。
 なお、学校が防災に関する計画を作成するための指針や児童等の安全確保のための教職員の対応策についての指針等については、引き続きさらに詳細に検討。

  2  学校等の防災体制の現状と課題
   
(1)  学校等の防災体制の現状
   学校は、市町村の地域防災計画において避難所として指定されているものが多いが、備蓄倉庫等特別の設備・機能を備えているものはほとんどない。また、避難所運営の方法、職員の役割分担等についても、必ずしも十分な実践的検討、事前の準備がなされていないのが現状。
(2)  阪神・淡路大震災で投げ掛けられた課題
   阪神・淡路大震災では、被災者の多くが学校に避難したが、学校は避難所として必ずしも万全であったわけではなく、また、避難所となった多くの学校では、教育機関としての機能が大きく制約を受けたことも事実であり、このことは、今後の学校の防災体制の在り方について以下のような課題を投げ掛けることとなった。
   都市部はもちろん、いずれの地域の学校等においても、大地震を想定し、地震防災対策を充実強化することが必要。
   発災時別(在校時、登下校時、休日等)の児童等の安全確保方策や防災教育の充実の検討が必要。
   学校施設の耐震性の強化、学校設備・備品等の安全対策、情報連絡体制の整備が必要。
   避難所としての学校の役割と備えるべき防災機能、教職員の役割の明確化と人的支援体制の整備、学校教育活動再開に向けての対応等の検討が必要。

  3  学校等の防災体制の充実
   
(1)  学校及び教育委員会等の基本的役割
1  学校等の基本的役割
   災害時に児童等の安全を確保するため、日ごろから教職員の対応についての検討や、児童等に対する防災教育の充実が必要。それとともに、災害が発生した場合の学校教育活動の早期再開に向けて事前の対応を図ることが必要。
   今後はいざという場合の避難所としての機能も念頭に置きながら学校の防災体制の充実強化を図ることも重要。
   災害時における避難所としての設備、機能、体制を備えている学校は少ないことから、児童等の安全確保、学校教育活動の早期再開の必要性と一時的な避難所としての役割に応じ、ハード・ソフトの両面にわたり学校の防災機能を強化する方策の検討が必要。
   学校施設・設備については、耐震性の強化を図るとともに、応急避難所としての役割に応じ、学校教育施設としての機能向上を図りつつ、必要な防災機能の整備を図っていくことが求められる。
   学校が避難所となった場合、原則的には、災害対策担当部局の管理下に置かれることとなるが、校長をはじめ教職員は、避難所の運営システムが確立するまでの間、避難所の運営について協力することを期待されている。

2  教育委員会等の基本的役割
   災害時における児童等の安全確保方策や防災教育の充実について日ごろから学校に対し適切な指導・助言を行うことが必要。
   地域防災計画等において、教育委員会等が行うべき業務の内容を明確にするとともに、避難所としての学校の在り方について、災害対策担当部局との連携を密にして十分な協議を行うことが求められる。
   災害時における学校教育活動の早期再開に向けての対応について十分な対策を講じなければならず、災害時に必要とされる業務内容を具体的に整理しておくことが必要。
   学校に対する避難所の指定については、地域防災計画策定段階において、あらかじめ教育委員会等と災害対策担当部局は十分な協議を行うことが必要。
   災害発生後においては、避難所となった学校について、本来の教育機能を早期に回復させるため、災害対策担当部局と常に連絡調整を図ることが重要。

(2)  学校等の防災体制の充実方策
1  児童等の安全確保のための方策
【基本的考え方】
   学校は、災害時における児童等や教職員の安全確保に万全を期すということがまず第一の役割であり、学校防災計画や教職員のマニュアルの整備、危険物管理の徹底が重要。
   教育委員会は、児童等の避難方法、教職員の役割分担等について、学校が避難所になった場合を含め、計画・マニュアルの作成・見直しを行うとともに、学校が震災等に適切に対応できるよう指導や研修を行うことが必要。
【当面講ずべき措置】
   学校は、学校防災に関する計画を作成し、災害時の安全確保方策、安全指導体制、教職員の役割分担、情報連絡体制等について事前の備えを十分に行っていくことが必要。
   学校は、学校防災に関する計画に基づく対応マニュアル(災害時に教職員が具体的にどのような行動をとるべきかについての手順)を作成することが必要。その際、発災時別の安全確保方策、保護者への引渡し方法等について、具体的検討が必要。
   学校防災に関する計画や対応マニュアルは、教育委員会等の指導の下、学校ごとに地域の実情を踏まえ、校長を責任者とする防災に関する委員会を設置して作成、理解を図ることが必要。
   地域の自然的・社会的条件の特性を踏まえた学校、教育委員会等の防災体制の充実方策の実施が求められる。また、学校防災の在り方についての普及啓発用パンフレット等の作成により周知することが必要。
   社会教育施設についても、施設の実態等を踏まえたマニュアルを作成することが必要。
【留意すべき事項】
   災害による児童等の負傷に適切に対応できるよう、学校は保健室における救急処置体制の整備に努めることが必要。また、教育委員会等と連携を図りながら医療機関との連絡体制を整備しておくことが望ましい。

2  防災教育等の充実
【基本的考え方】
   学校は、日ごろから防災上必要な安全教育及び避難訓練等の徹底を図ることが必要。
   教育委員会等は、教職員の防災教育に関する指導力等その資質向上に資する施策を実施していくことが必要。
【当面講ずべき方策】
   家庭、地域の関係機関等とも連携した防災教育、避難訓練の在り方について実践的な調査研究を進めることが必要。
   児童等の防災に関する知識等を深め、災害時の対応力を高める副読本等の教材、資料の作成が必要。
   教職員の災害時における防災対応能力等を高めるため、教職員用指導資料の作成や研修の充実を図ることが必要。
【留意すべき事項】
   児童等の発達段階に応じた防災教育のカリキュラム化、体系化を図ることが望ましい。
   避難訓練に際して評価を行い、今後の訓練に生かしていくことも一つの方策。

3  災害時における学校等の役割に対応した学校施設等の整備
【基本的考え方】
   児童等の安全の確保と地域住民の一時的な避難所としての役割に応じ、学校の防災機能の強化のため、学校施設について整備を積極的に図っていくことが重要。
   学校施設の整備については、校舎等の安全性の向上のために必要な耐震性を確保し、地震に強い学校づくりをすることが緊急の課題。また、災害時における地域住民の避難所として使用されることも考慮し、防災機能の整備を図っていくことも必要。
   災害対策担当部局において、地域の実情に応じ、学校施設を活用して地域の防災施設を整備するに当たっては、教育委員会等と事前に十分な協議を行い、学校教育活動に支障のないよう配慮するとともに、適切な管理体制を整えることが必要。
【当面講ずべき措置】
   新耐震設計基準前の既存の建築物については、計画的に耐震診断・耐力度調査を実施し、必要に応じて耐震補強・改築を行うことが重要であり、そのための財政的支援措置を講ずることが必要。
   学校施設は、地域住民の避難所としての重要な役割にかんがみ、例えばシャワー室、和室の整備、通信機能の充実等必要に応じ防災機能の整備を図ることも重要。また、小中クラブハウスヘの備蓄倉庫の併設や、校内に防災緑地やスプリンクラー等を備えた防災広場の整備を図ることも必要。
   給食施設について、耐震性強化やガス供給方式の併用化等防災機能の整備を図るほか、水泳プールについて、耐震性強化や浄水機能の整備を図る必要。
   公民館等の社会教育施設についても、耐震性、防災機能の強化が必要。

4  災害時における情報連絡体制の充実
【基本的考え方】
   災害時には学校が避難所となることが想定されることから、教育機能の回復等に必要な情報のほか、地域の被災状況、被災者の安否情報等にも対応できる、災害対策本部、教育委員会等との多チャンネルの情報ネットワークが不可欠。
【当面講ずべき方策】
   災害時には、情報連絡が的確かつ円滑になされることが最も重要であり、日ごろから教職員間、学校と教育委員会等の間の情報連絡体制の整備が不可欠であり、また、学校と災害対策担当部局との災害時における情報連絡体制の整備も必要。
   学校等への情報連絡手段については、多様な情報連絡体制を整備することが必要。
【留意すべき事項】
   教育委員会等は、災害時における対応が円滑に行われるよう、必要な情報伝達の協力について日ごろからマスメディアとの連携を深めておくことが望ましい。

5  災害時における教職員の役割、人的支援体制の整備
【基本的考え方】
   災害時における教職員の第一義的役割は、児童等の安全確保、校長を中心とした学校教育活動の早期正常化に向けての取組みであるが、学校が避難所となる場合、教職員は避難所の運営について必要に応じ協力すべき立場となる。
   しかし、避難所の運営は、本来、災害対策担当職員が管理責任を負うものであり、教職員については、避難所運営に係る負担が速やかに解消され、教育活動の早期再開のための業務に専念できるよう、体制整備を図ることが重要。
   避難所運営に当たっては、地域の自主防災組織の役割に期待するところが大きく、また、ボランティアの役割も重要。
【当面講ずべき方策】
   災害発生時における教職員の参集体制について、教育委員会がガイドラインを示すことが必要。
   教育委員会は、県内教職員についての人的支援体制を検討しておくことが必要。この場合、災害の規模、発生地域等によっては、校長をはじめ教職員が相当程度、避難所運営業務に携わることを前提にすることが必要。また、他県からの教職員の人的支援体制について、自治体間の相互援助協定等に教職員の援助派遣を規定するなど、体制整備を図ることが必要。
   災害発生後、早急に学校施設等の被災度を判定するため、建築専門家の支援を含め体制の整備を図ることが必要。
   救援業務等に従事した教職員の給与の取扱いについては、その内容に応じた支援措置を講ずるべきであり、教員特殊業務手当の単価の改定等について検討することが必要。
   災害時における避難所運営の方法、役割分担について、あらかじめ、学校、教育委員会等、災害対策担当部局等で十分な協議・検討を行っておくことが必要。このため、地域の自主防災組織、学校医等を含め、定期的に協議を行う場を設定するなど学校側との連携を密にする方策の実施が求められる。
【留意すべき事項】
   災害発生直後は、避難所運営に当たるべき担当職員の学校への派遣が困難になることも予想されるため、地域防災計画等において、緊急避難的に校長に避難所運営に係る一定の権限を付与することも一つの方策。
   学校が避難所となる場合、学校として、当該市町村の災害応急対策に協力しているとの位置付けが可能であり、避難所となっている学校の教職員が災害時に救援業務に従事することは、当該学校の管理業務の一環を担っているものと考えられ、服務上、職務として取り扱って差し支えなく、通常、公務災害補償等の対象となるものと考えられる。
   阪神・淡路大震災のような広域的な人的支援を必要とする災害において、当該学校の教職員以外の教職員が救援業務に従事する場合の服務については、公務出張扱いが可能。また、自発的意思により救援活動を支援する場合は、校務全体の運営上の支障等を勘案した上で、服務上の配慮を行うことも考えられる。
   学校教育活動の早期再開に向け、PTA等の協力を得ることも重要。

6  学校教育活動再開に向けての対応
【基本的考え方】
   教育委員会等は、学校教育活動の早期再開のため、災害時の業務計画の点検・見直しを行うことが求められる。
   学校が避難所になった場合において、学校本来の機能との調整を常に念頭に置き、教育委員会等は、学校教育活動早期再開の観点から、事前の備えや災害後の対応を適切に行うことが必要。
【当面講ずべき方策】
   教育委員会は、学校教育活動再開のため、阪神・淡路大震災の対応を参考、教訓とした業務計画の点検・見直しが求められる。
   阪神・淡路大震災で被災した児童等や教職員に心的外傷後ストレス障害(PTSD)等心の健康上の問題が生じていることが指摘されていることから、今後は児童等や教職貫の状態の把握に努めるとともに、心の健康相談活動を推進する等の支援体制を整備することが必要。
【留意すべき事項】
   学校への避難所指定は、立地条件や施設の耐震性を十分考慮した上でなされる必要があり、指定がなされる場合には、災害対策のための管理機能維持や学校の教育機能維持等の観点から、使用場所についての一応の優先順位を、教育委員会等と災害対策担当部局とで十分協議しておくことが求められる。
   校庭等への仮設住宅建設は、学校教育に大きな影響を及ぼすことから、可能な限り避けるべき。

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-- 登録:平成21年以前 --