学校等の防災体制の充実について 第二次報告3

平成8年9月2日

3  防災教育の充実のための指針
  1  防災教育の推進体制
     防災教育を充実するに当たっては、家庭・地域社会と連携しながら取り組むことが極めて重要である。
 阪神・淡路大震災は、地震等の災害が地域全体にふりかかってくることであり、防災が個人の課題であるととともに、地域社会全体の課題でもあることを痛感させた。とりわけ被害を軽減し、復興を円滑に進めるためには、地域ぐるみで備え、一致団結して危機に当たるという意識が大切である。
 また、阪神・淡路大震災の際に避難所となった学校のうち、安定と秩序を早期に回復し、復興に速やかに取りかかれた学校を見ると、学校や教員が地域社会の主体的取組に積極的な支援を果たせたところであった。
 このように防災活動の内容には、家庭や地域と深くかかわっているものが多い。それだけに防災教育を効果的に進めるためには、学校が家庭や地域社会との密接な連携協力体制を整え、地域社会の主体的取組を積極的に支援していくことが大切である。
 したがって、学校においては、日ごろから家庭や地域社会と密接な連携協力を図りつつ、児童等に対する防災教育を推進することが必要である。

  2  各学校における防災教育に関する指導の在り方
     現行学習指導要領の各教科等の目標や内容などには、防災教育にかかわるものが多く含まれている。したがって、各学校において、学校、家庭、地域社会の連携協力を図り、防災教育を効果的に進めるためには、各学校における防災教育のねらいや重点などを明確にし、それらを学校の教育課程に位置付け、教育活動全体を通じて、体系的、計画的に指導することが必要である。
   
(1) 防災教育のねらい
   防災教育は、様々な危険から児童等の安全を確保するために行われる安全教育の一部をなすものであり、そのねらいも小学校、中学校安全指導の手引に示した安全指導の目標に準じて考えることができる。そこで、災害時における児童等の安全を確保するためには、次のようなねらいが考えられるが、各学校段階や児童等の発達段階に応じて重点的な防災教育を行う必要がある。
 
1  災害時における危険を認識し、日常的な備えを行うとともに、状況に応じて、的確な判断の下に、自らの安全を確保するための行動ができるようにする。
2  災害発生時及び事後に、進んで他の人々や集団、地域の安全に役立っことができるようにする。
3  自然災害の発生メカニズムをはじめとして、地域の自然環境、災害や防災についての基礎的・基本的事項を理解できるようにする。

   災害時における的確な判断と行動としては、災害時特有の集団心理によって生じる流言飛語などに惑わされず、落ち着いて、静かに、安全に行動することが大切である。また、今回の阪神・淡路大震災では、多数の被災者が、ライフラインの途絶えた状況下で長期間の生活を強いられたことを考えると、いわゆる非常事態の下で生き抜くための知恵などを身に付けておくことも望まれる。
 また、阪神・淡路大震災は、災害時におけるボランティア活動の大切さや災害との密接な関係を改めて認識させられた出来事でもあった。災害時には、ボランティアの活動が社会機能の回復に重要な役割を果たし得るものであり、このことを踏まえ、防災教育の柱の一つとして、ボランティア教育に取り組むことが必要である。

(2) 防災教育の重点
   上記の防災教育のねらいを達成するために、重点を置いて指導すべき内容には、各地域に共通するものと地域の特性や実態に応じて指導するものとが考えられる。特に地震等の自然災害に関しては地域の自然や歴史などと深く関わる内容が多いので、各学校や地域の特性、実態を十分踏まえて防災教育の観点から重点を置くべき内容を検討する必要がある。
 このような考え方に立って検討した防災教育を効果的に推進するために、各学校において、児童等の発達段階などに応じて、各教科、道徳、特別活動のそれぞれに応じた指導を行うとともに、それらの関連を図り、児童等一人一人の災害に適切に対応する能力が確実に身に付けられるように配慮する必要がある。
 また、学校や地域の実情を踏まえ、課外活動等においても指導の充実を図ることが考えられる。
 例えば、学校種別には、概ね以下の点に重点を置いて指導することが考えられる。

【幼稚園】
 幼稚園では、日ごろから様々な機会をとらえて、安全に関する理解を深めるよう指導し、災害時には教員や保護者の指示に従い行動できるようにするとともに、火災など危険な状態を発見したときには教員や保護者など近くの大人に速やかに伝えることができるようにする。
<各領域での主な関連内容>
領域 教育要領の内容 取扱いの一例
○健康  危険な場所、危険な遊び方、災害時なの行動の仕方  避難訓練などを通じて、災害時などの仕方がわかるようにする。
 また、生活の中で、安全に気を付けて行動ができるよう幼児期の発達の特性を十分に理解して日常的な指導を積み重ねる
○人問関係  決まりの大切さ、喜びや悲しみを共感しあう心の育成  生活の中には決まりがあり、それを互いに守ることで生活がスムーズに送れることに気付くようにする。
○環境  身近な動植物へのいたわり  生き物と接する中で生命の大切さに気付くよう、これらと十分に触れあう直接的な体験を積み重ねるようにする。
○言葉  人の話を注意して聞き、分かるように話す  先生の話を注意して聞き、先生と一緒に行動できるようにする。

     また、家庭及び地域の関係機関と連携した避難訓練や消防署、防災センター見学などを実施し、教員や保護者が災害の危険について理解し、幼児の安全確保、指示や行動の仕方を身に付ける。

    【小学校】
   
1  小学校の低学年では、災害が発生したときに、教員や保護者など近くの大人の指示に従うなどして適切な行動ができるようにする。
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域 学習指導要領の内容 取扱いの一例
○生活科  安全な登下校
 公共物の利用
 登下校、乗り物や駅などの公共物の利用において、安全な行動ができるようにする
○道徳  健康や安全に気を付けて生活する
 生命を大切にする心をもつ
 日常生活とかかわって、健康や安全に気を付けて生活する態度や生命を大切にする心を育てる。
○特別活動 ・学級活動
 健康や安全に関すること
・学校行事
 健康安全・体育的行事
 学級活動において、種々の災害の際の危険について、具体的な場面を取り上げる。また、学校行事の避難訓練において、災害に応じた行動の仕方を身に付け、安全に避難できるようにする。

   
2  中学年では、災害のときに起こる様々な危険について知り、目ら安全な行動ができるようにする。
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域  学習指導要領の内容 取扱いの一例
○社会科  災害から人々の安全を守る体制とそこに従事している人々の工夫や努力  火災などの災害を取り上げ、消防署等を見学したり、話を聞いたりして、その働きと消防士などの工夫や努力について理解できるようにする。
○理科  流水の土地を変化させる働き  流れる水が土地を変化させる働きを調べる過程において、洪水の危険性について、理解できるようにする。
○道徳  生活を支えている人々や高齢者への尊敬と感謝の気持ち
 生命の尊さを知り、生命あるものを大切にする
 具体的な資料を活用して、生活を支えている人々や高齢者への尊敬と感謝の気持ちを持つとともに、生命の尊さを知り、生命あるものを大切にする心を育てる。
○特別活動 ・学級活動
 健康や安全に関すること
・学校行事
 健康安全・体育的行事
 学級活動において、種々の災害の際の危険について、学校周辺や地域の特性や実態を踏まえて取り上げる。
 また、学校行事の避難訓練において、具体的な行動場面に潜む危険を考慮して、安全に行動できるようにする。

   
3  高学年では、日常生活の様々な場面で発生する災害の危険を理解し、安全な行動ができるようにするとともに、自分の安全だけでなく他の人々の安全にも気配りができるようにする。
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域  学習指導要領の内容 取扱いの一例
○社会科  災害復旧にみる治方公共団体や国の政治の働き  災害が起こったときの市役所や県庁の救援活動、災害復旧の様子などを具体的に調べ、そこには、地方公共団体や国の政治の働きが反映していることを理解できるようにする。
○理科  土地をつくっているもの、土地のでき方  火山の噴火によってできた岩石や土地のでき方を調べる過程において、火山の噴火の危険性等について、理解できるようにする。
○家庭科  簡単な調理  米飯や野菜などの簡単な調理ができるようにする。
 安全に留意して、用具、燃料やこんろなどを取り扱うことができるようにする。
○体育科  けがの防止  生活安全、交通安全、災害での事故防止について理解できるようにする。
○道徳  自他の生命の尊重
 社会に奉仕する喜び
 具体的な資料を活用して、生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重する心や社会に奉仕する心を育てる。
○特別活動 ・学級活動
 健康や安全に関すること・学校行事
 健康安全・体育的行事
 遠足・集団宿泊的行事
 学級活動において、災害時に自分自身が安全に避難するとともに、下級生の安全に気を配ったり、大人への通報の仕方など、二次災害を防ぐ態度や行動の仕方について取り上げる。
 学校行事の避難訓練において、災害の種類程度等に応じた安全な避難行動ができるとともに、通報など二次災害の防止等についても体験的に理解できるようにする。
 自然教室、キャンプ等の活動の際に野外炊事、火おこし、飲料水の確保、止血などの簡単な応急手当などを体験する機会を設けることも考えられる。

    【中学校】
     中学校では、小学校での理解をさらに深め、応急処置の技能を身に付けたり、防災への日常の備えや的確な避難行動ができるようにするとともに、学校、地域の防災や災害時のボランティア活動の大切さについて理解を深める。
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域 学習指導要領の内容 取扱いの一例
○理科  火山と地震  地震の発生のメカニズムや地震が発生したときの地面の揺れ方を理解する。
 火山の噴火の様式及び噴出するマグマの性質について理解する。
 住んでいる町の土地の成立ちや地盤の地質について理解する。
○保健体育  傷害の防止  災害時の傷害の防止について理解できるようにする。
止血法、包帯法、人工 呼吸法など応急手当について、実習を通して理解を深め、できるようにする。
○技術・家庭科  日常食の調理等  災害時でも困らないよう、日常食の調理や簡単な木製品の製作ができるようにする。
○道徳  自他の生命尊重
 社会への奉仕等
 小学校での指導を基盤に、自他の生命尊重や社会への奉仕、公共の福祉と社会の発展に尽くすように努める心を育てる。
○特別活動 ・学級活動
 健康や安全に関すること
・学校行事
  健康・安全に関する行事
 学級活動において、災害からの安全などに関する題材を取り上げ、生徒自らの心身の健康状態についての理解と関心を深め、望ましい態度や習慣の形成を図る。
 健康・安全に関する行事の事後指導において、例えば、災害から自他の安全を守ることの意義などについての指導が大切である。

    【高等学校】
     高等学校では、自らの安全の確保はもとより、友人や家族、地域社会の人々の安全にも貢献しようとする態度や応急処置の技能等を身に付け、地域の防災活動や災害時のボランティア活動にも積極的に参加できるようにすることが求められる。
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域 学習指導要領の内容 取扱いの一例
○理科
(地学1A)
 地球の活動と災害  災害にかかわる気象、火山及び地震について、それぞれの事象の概要、災害の事例、予知・予測及び防災などについて理解できるようにする。
○保健体育科  応急処置  心肺蘇生法等の応急処置の意義と方法について、実習を通して身に付けることができるようにする。
○家庭科  高齢者の生活と福祉

 学校家庭クラブ活動

 食生活の展望と健康増進
 地域の高齢者の生活と福祉に関する理解を通して、災害弱者としての高齢者への支援の必要性が認識できるようにする。
学校家庭クラブ活動において、生徒が奉仕活動に参加できるように配慮する。
 健康の保持増進のために必要な栄養食品等について理解させる。
○特別活動 ・ホームルーム活動健康や安全な生活態度や習慣の確立
・学校行事
健康安全・体育的行事
旅行・集団宿泊的行事
 ホームルーム活動において、生命の尊重を基盤にした、種々の災害時の安全などについて取り上げる。
 学校行事において、非常災害に備えての避難訓練の実施が考えられ、それにより、自他の生命の尊重を自覚し、心身の健康や安全を確保するための適正な判断や能力を培う。

    【盲・聾・養護学校】
     盲・聾・養護学校においては、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校における指導内容を参考にするとともに、児童等の障害の状態、発達段階、特性等及び地域の実態等に応じて、次の例を参考にして指導することが考えられる。
   
1  小学部
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域 学習指導要領の内容 取扱いの一例
○生活科  健康・安全
 社会の仕組み
 (1段階)交通信号に注意しながら、教師と一緒に行動する。避難訓練のときは教師と一緒に行動する。
 (2段階)ガスの栓、マッチ、刃物などの危険なものにむやみに触れない。道路を歩くときは自動車に気を付ける。
避難訓練のときは教師の指示に従う。
 (3段階)電気器具、ガス栓、マッチ、刃物などを安全に取り扱うことに慣れる。火災報知器や消火器にむやみに触れない。交通信号の見方が分かり、信号に従う。避難訓練のときは教師の指示に進んで従う。
 (1段階)「お巡りさん」「郵便やさん」に関心を持つ。救急車や消防車の名前が言える。
 (2段階)学校や家の近くの交番や駅のあるところが言える。救急車や消防車の仕事が言える。
 (3段階)警察署、消防署、病院などのおよその仕事の様子が話せる。火事や事故のとき、119番や11O番に連絡する。

   
2  中等部
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域 学習指導要領の内容 取扱いの一例
○社会科  公共施設などの働きの理解とその利用  警察署、消防署、保健所、病院などの働きと自分たちの生活との関係を知る。
○理科  人の体の仕組みや働き
身近な事物や機械
・器具の構造や扱い
 自然の事物・現象の理解
 主な病気やけがなどの原因やおよその症状を知る。
よく使う道具や機械、電気器具などの働き・主な仕組みに関心をもち、使用する。アルコールや灯油の性質や使い方に関心をもつ。ガスの性質や器具の仕組みに関心をもち、使用する。地震や火山活動などに関心をもつ。
○職業・家庭科 道具や機械の使い方・安全な作業

家庭生活に必要な基礎的な知識と技能の習得
 道具や機械などの簡単な手入れをする。危険な場所や物に注意して作業をする。機械の故障や危険な状態に気付いたらすぐに知らせる。
 地震、台風、洪水などのときには指示に従って行動する。

   
3  高等部
    <各教科等における主な関連内容>
   
領域 学習指導要領の内容 取扱いの一例
○社会科  公共施設などの働きの理解とその適切な利用  警察署、消防署、保健所、病院などの働きを知り、利用する。
○理科  人の体の仕組みや働き
 身近な事物や機械
・器具の構造や働き
 自然の事物・現象の理解
 主な病気やけがなどの原因、症状を知り、予防に関心を持つ。
 よく使う道具や機械、電気器具などの働き・主な仕組みを知り、正しく安全に使用する。アルコールや灯油の性質や使い方を知り、安全に取り扱う。ガスの性質や器具の仕組みを知り、安全に取り扱う。地震や火山活動などに関する初歩的な知識をもつ。
○職業科  道具や機械を合理的に使った安全な作業  道具や機械などの操作に慣れ、正しく使う。危険な場所や物に注意して作業をする。機械の故障や危険な状態に気付いたら適切な処置をする。現場実習中の健康と安全に注意する。
○家庭科  家庭生活に必要な基礎的な知識と技能の習得  地震、台風、洪水などのときには適切に行動する。

  3  避難(防災)訓練の充実の視点
     学校における防災教育を考えるとき、学校は、児童等が集団で学習し生活を営んでいる場であるという特質にかんがみ、災害時に児童等の集団が安全に避難できるよう、日ごろからの避難訓練が重要である。このために以下の点に十分留意し、避難訓練を改善充実していく必要がある。
   
(1) 学校での避難訓練の改善
   学校での避難訓練は、災害時に安全に避難できる態度や能力を体得し、防災教育の指導内容について実践的に理解を深める場として極めて有効である。このため、地域や学校の実態に応じて、避難訓練の時期、災害の種類、対象、実施回数、実施の方法等について計画を立て、年間を通じて計画的に実施することが必要である。
 その際、あらゆる場面を想定して行うことが必要である。特に、学校の立地条件を考慮に入れることは、避難訓練を実施する上で、重要なことである。
 また、訓練が形式的に済まされることのないように地域の消防署等との連携を図って緊迫感や臨場感を持たせたり、あらゆる可能性を想定して、教職員や児童等の負傷や学級担任の不在の場合などにおける対応なども含めて実践的な訓練を行う工夫も望まれる。
 教職員は、役割を分担し、協力して防災訓練を実施することが必要である。そして、訓練を一層効果的にしていくために、人員把握・安全確認や指示の方法、避難に必要な時間、避難場所・経路の選定、児童等の避難行動時の状況等について専門家の協力を得て適切に評価を行い、その後の訓練に生かすことが必要である。

(2) 家庭等、地域社会と連携した学校での防災(避難)訓練の改善
   児童等の登下校時における避難訓練の効果を高めるため、家庭や地域の防災システムと連携しながら実施することが必要である。
 また、阪神・淡路大震災では、学校が地域の避難所となったことや電話回線の寸断により学校と家庭の連絡が困難になったことなどにかんがみ、地域ぐるみの防災(避難)訓練を実施し、避難所運営に対する協力の在り方等災害時の対応について訓練を積んでおくことが必要である。
 さらに、地域の消防署などの防災施設の見学や体験をすることも、広い意味での防災教育を充実する上で有効である。

  4  教職員の防災教育に関する指導力及び災害時における対応力の向上策
     前述の1~3の内容を具体化し、防災教育を充実する丸めには、教職員の研修等の充実改善、指導資料の作成や対応力の向上策等を検討しておく必要がある。
   
(1) 研修の充実、指導資料の作成等
   防災教育を充実するためには、なによりも教職員の防災教育に関する指導力を向上させることが必要である。また、指導の効果を高めるためには、日ごろから情報交換を行うなど教職員の共通理解を深め、校長の指導の下、同一方針で指導を行うことが重要である。
このため、例えば、初任者研修や経験者研修などの内容に防災教育を含めたり、防災機関主催の研修等に参加した教員の研修成果を校内研修で取り上げるなど教員の研修を計画的に行う必要がある。また、適切な指導資料の作成も望まれる。
 なお、研修内容を考える上で、災害時の児童等の心の健康及びボランティアへの教職員の対応力について留意する必要がある。
 心の健康に関しては、教育相談方法や精神保健などについての研修が求められる。
 ボランティアに関しては、その本質が自分にできることを自発的に行うということにあるから、現実のボランティア活動には、その担い手、個人の事情によって、内容、活動時間・時期等で様々な場合がありうる。したがって、その受入れ方策等についての研修が重要である。
(2) 応急処置の技能の習得など災害発生時の対応力の向上
   災害時における児童等の安全を守り、被害を最小限にとどめるため、教職員の応急処置の技能の習得など災害発生時の対応力を向上することが求められる。
 また、災害発生時及び発生後の対応力としては、ボランティアの受入れに対する協力や支援の在り方についても検討していく必要がある。

  5  防災教育の具体的な進め方
     計画的に防災教育を進めるため、次のような手順で検討を加え、休業土曜日や日曜日などを活用した家庭等や地域が主体となる地域の防災活動の展開なども十分考慮して、効果的で継続的な防災教育を行う必要がある。
   
(1) 防災教育の指導内容の整理
    1学習指導要領・教科書等に示している災害安全の内容、2密接に関連する内容及び3創意工夫することにより災害時に役立つものとなりうる内容などに分けて、各教科、道徳、特別活動等学校教育活動全体における防災教育の指導内容を整理する。
 また、学校裁量の時間、課外での指導が可能な内容についても検討する。
(2) 指導計画の作成
   学校教育活動全体を通じて防災教育を行うため、各教科、道徳、特別活動等の指導内容、指導時数等について整理し、「防災教育に関する指導計画」を作成する。
 その際、各学校では、別個に独立して作成するか、「生活安全」、「交通安全」の内容とともに、「学校安全計画」の内容に含めて作成するかどうか検討することも必要である。
(3) 副読本、視聴覚教材等の作成・活用
   児童等が興味・関心をもって積極的に学習に取り組めるよう、文部省、都道府県教育委員会及び消防部局等で作成した指導資料や副読本、視聴覚教材等を活用する。その際、コンピュータを活用するなど指導方法の多様化にも努める。
(4) 開かれた学校づくり-地域ぐるみの防災教育の推進
   地域ぐるみの運動会の開催、地域行事への児童等の参加などを通じて、日ごろから「開かれた学校づくり」に努め、非常時の場合も地域との絆が生かされるような基礎づくりを進める。学校参観の際には、備蓄倉庫等の防災施設設備の確認なども行うなど、学校が避難所になった場合にも円滑に対応できるように配慮しておく必要がある。
 また、地域の消防署や公民館なくの主催の防災をテーマとする公開講座への参加、防災センターでの体験学習などの機会を通して、日ごろから消防署、自主防災組織など関係機関・団体との密接な連携を図るように努める。
 さらに、災害ボランティアに関する体験学習の場や地域のお年寄りから過去の災害の話を聞く機会の設定、避難訓練の実施等、学校、家庭、地域ぐるみの防災教育の内容や進め方については、保護者や地域の防災関係機関・団体等の参加を得て「防災委員会」を校内に設置したり、「学校安全委員会」に地域の防災機関などから必要な委員を加えて原案について協議し、計画の作成及び実践が円滑に行われるようにすることが重要である。
(5) 教職員研修の実施
   教職員の防災に関する意識を高揚し、防災教育に関する指導力の向上を図るため、4に述べた点に留意し、防災教育・管理に関する教職員の研修を計画し、実施する。
(6) 防災教育改善のための評価と改善
   指導計画(目標、指導内容、指導時間数)、指導方法、指導の成果及び家庭、地域社会との連携について評価し、改善しながら指導を進める。
 その際、地域の実態等に応じた学校の防災教育を進めるため、地域防災計画との関連に十分考慮する必要がある。

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