第90回輸送計画委員会議事の記録

日時

令和2年10月23日(金曜日)14時00分-15時30分

場所

オンライン開催(※文部科学省16階 16F1会議室)

出席者

(委員)
青山 剛史  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構航空技術部門 数値解析技術研究ユニット長
飯島 朋子  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 主任研究開発員
宇都 正太郎 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 顧問
梅村 行男  独立行政法人航空大学校 特任教授
万谷 小百合  独立行政法人 海技教育機構海技大学校航海科 准教授
庄司 るり   国立大学法人 東京海洋大学学術研究院 教授
塚本 達郎  国立大学法人 東京海洋大学学術研究院 教授
土屋 武司  国立大学法人 東京大学大学院工学系研究科 教授
原田 尚美   国立研究開発法人 海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター センター長
髙橋 直人  防衛省人事教育局人材育成課人材育成班長
         (末富防衛省人事教育局人材育成課長代理)
岡安 史門  防衛装備庁プロジェクト管理部事業監理官付補佐官
         (萩原防衛装備庁プロジェクト管理部事業監理官(艦船担当)代理)
横手 裕之  防衛省海上幕僚監部装備計画部艦船・武器課水中武器班長
         (木下防衛省海上幕僚監部装備計画部艦船・武器課長代理)
日田 豊久  防衛省海上幕僚監部装備計画部航空機課回転翼班長
         (松岡防衛省海上幕僚監部装備計画部航空機課長代理)
佐藤 信一  防衛省海上幕僚監部防衛部装備体系課艦船体系班員
         (佐藤防衛省海上幕僚監部防衛部装備体系課長代理)
白方 将司  防衛省 海上幕僚監部 防衛部 運用支援課 南極観測支援班長
楠 勝浩   海上保安庁 海洋情報部 海洋調査課長
         (石塚海上保安庁総務部政務課長代理)
田村 安正  海上保安庁装備技術部航空機課長
福井 俊英  文部科学省 研究開発局 海洋地球課長
野木 義史  国立極地研究所 総括副所長 
盛田 謙二  国立極地研究所 南極観測センター 副センター長(事業担当)

(オブザーバー)
中村 卓司  国立極地研究所 所長
伊村 智    国立極地研究所 副所長
橋田 元    国立極地研究所南極観測センター副センター長(観測担当)
         第62次南極地域観測隊隊長(兼夏隊長)
阿保 敏広  第62次南極地域観測隊副隊長(兼越冬隊長)
金子 宗一郎 第62次南極地域観測隊副隊長(兼夏副隊長)

(事務局)
河野 広幸 文部科学省 研究開発局 海洋地球課 極域科学企画官
小野寺 多映子 文部科学省 研究開発局 海洋地球課 課長補佐
 

議事

(1)事務局より、当日の議題・配付資料について確認があった。
(2)以下の議題について、報告及び審議がなされた。

《報告事項》
1.前回議事について
2. 南極観測実施責任者評議会(COMNAP)の状況について
3. 第61次南極地域観測隊越冬隊の現況について
4.令和2年度「しらせ」年次検査について
5.令和3年度南極地域観測事業概算要求の概要について

《審議事項》
6.第62次南極地域観測行動計画(案)等について

主な意見は次のとおり。

(議題2)

【梅村委員】 中村所長がAGM及びAntarctic Aviation Workshopの開催と開催地(富山市)の紹介を行ったとのことだが、どのようなワークショップを想定されているのか、参考までにお聞かせいただきたい。
【橋田副センター長】 リレーション・ワークショップについては、本来であれば今年9月に開催を予定していたが、今年の年次総会自体がキャンセルとなったため、来年日本で開催できないかとの打診があり、COMNAPの年次総会に引き続く形での開催を予定している。その内容、目的としては、南極では航空機は極めて機動的、柔軟に隊員、物資の輸送ができるツールである一方、厳しい環境下でリスクがあることを各南極観測実施機関は承知をしているところであり、安全をどのように担保していくか議論し、情報共有することで、今後の安全の向上に努めることとしている。
 

(議題5)

【原田委員】 今回の増額で大きい点として、海上輸送部門の航空機の3か年の保守契約との説明があったが、これは3か年分を一気に支払うものか、それとも3か年分のうちの令和3年度分がこの金額で、この後3年連続してこの増額が続くのか。
【河野企画官】 航空機の保守契約については令和2年度からスタートした3か年の包括契約ということで、総額40億円を3か年で分け、今年は対前年度比5億円増の約13億円の経費がかかっており、来年度もトータル40億円のうちの13億2000万円程度、その来年度も13億2000万円程度という推移となっている。この航空機の保守等経費については、海上輸送部門全体として構成しているため、関係機関と調整のうえ、今後の要求等を進めて参りたい。
 

(議題6)

【万谷委員】 行動計画では南極行動日数が49日間という記載がある一方、昭和基地沖での行動日数というのはどこか海上で行動している日数が33日という意味か。
【河野企画官】 昭和基地沖に停泊したときからの日数が33日間で、南極行動日数49日間というのは、地図上で南緯55度を超える期間ということであり、そういった意味合いでの差となっている。
【万谷委員】 専門家を交えているため、COVID対策は乗船前に十分にしているとの印象を受けているが、やはり船舶に対するCOVID対策は非常にシビアとの感想を持った。質問は、他国の方との南極基地での接触機会はどのようなことを想定されているかが1つめ。もう1つは、出発前については記載があるが、帰国後の対応についてはどういうふうに考えているのか。また、通常は無い14日間の隔離措置等があって長い航海に出なければならないということで、しらせ乗組員をはじめ、観測隊員のメンタル面でどういうふうに考えているか。この3点をお聞かせ願いたい。
【河野企画官】 南極での活動については、今回、他国を経由せず、昭和基地までそのまま行き、基地での活動においては、今のところ他の観測隊、他国との接触は想定していない。そのため、日本で隔離措置をした後、帰国までは感染の可能性は低いと考えている。帰国後の対応については、日本での通常のコロナ対策等に準じて行うものと考えるが、詳細については極地研の方からお答えさせていただく。
【野木総括副所長】 帰国後に関しては、日本から日本へ戻ってくるということで、特別に何か措置をするということはない。メンタル面については、おっしゃるとおり厳しい状況のため、観測隊でもその辺りのケアは考えており、うまくリフレッシュできるようなことを行うほか、医療隊員にはその辺りのポイントもチェックしながら航海に臨んでいいただくようにお願いしている。
【万谷委員】 2つ目の質問について、帰国後2週間の待機等はなく、そのままご自宅へ帰れるという理解でよろしいのか。
【河野企画官】 基本的に帰国した後の2週間の隔離はない予定で、これは厚生労働省の方の検疫のルールに準じた行動予定である。
【万谷委員】 練習船では、非常にシビアに動いており、例えば学生に対して目安箱を設置したり、一人一人の面談をしたりしている。きめ細かいケアが必要と思われるので、よろしくお願いしたい。
【宇都委員】 往路の行動計画に大幅な変更が生じ、隊員交代が不可能な見込みとなった場合は、61次越冬隊の収容のみを行うとあるが、全員を収容し、基地を完全にクローズしてしまうということまで考えているのか。
【河野企画官】 隊員交代が不可能な場合は、ご指摘のとおり、61次越冬隊をしらせに収容し、そのまま日本に帰国することになる。
【宇都委員】 出港前に非常に色々な検疫対策をしていることは理解したが、しらせに物資を搭載するときに色々な人が乗船し、船内で作業するわけだが、その対策は何か取っているのか。
【白方南極観測支援班長】 現在、しらせは大井において荷物の搭載等を行っており、この作業については11月上旬まで実施する。作業がすべて終わり、業者等の人の出入りがなくなったところでPCR検査を実施し、2週間の停留を行う。現在は業者等が船内に出入りしているが、作業員については入り口等での消毒、検温を行い、熱がある者については作業に参加しないということを業者等と調整したうえで作業を行っている。
【梅村委員】 オーストラリア次第ではあるが、隊員の下船が可能な場合、メンタル面や体力面で心配な部分はあろうかと思うので、下船することもまた大切ではないかと思うがいかがか。
【河野企画官】 オーストラリアには寄港せず、燃料補給も隊員の下船も行わない。日本-昭和基地-日本の単純往復ということで、今回の行動計画(案)を提示させていただいたところ。
【梅村委員】 ヘリコプターをチャーターしないことによる不都合は生じないものなのか。
【河野企画官】 しらせに搭載しているヘリコプターの他に、例年、観測隊用に小さいヘリコプターをチャーターしているが、それを今回はチャーターしない。そのため、輸送や越冬隊交代は基本的に可能と考えているが、観測については多少影響があり、実施できない部分が出てくる。
【梅村委員】 しらせによる収容ができない場合には、他国船、または航空機による収容を行うとあるが、これはDROMLAN以外にも何か航空機を使用することを想定しているのか。
【河野企画官】 しらせに収容できないときは、日本として輸送手段が途絶えるということであり、そういった場合については他国の船、DROMLAN、または他国の航空機による収容を行うということで記載しているが、今のところそこまでの可能性についてはほぼないと考えている。ただし、そのような事態が生じた場合、どのような対応を取るか連絡会で審議・決定を行うことになることから資料には記載したところ。
【梅村委員】 第62次観測隊夏期行動・輸送計画がC案の空輸のみとなった場合、天候の悪化による予備日は考慮されているのか。
【橋田観測隊長】 ある程度の天候の悪化については当然想定して対応できる状況にしている。越冬交代に必須の物資を輸送するため、しらせ側と相談しつつ、必要とあれば行動計画の変更を統合推進本部へお願いする事態が生じるかもしれないが、ある程度の天候の歩留まりは含めている計画であるとご理解いただきたい。
【梅村委員】 基本日程A案の1月15日に計画停電とあるが、これは定期的に行うものか。
【橋田観測隊長】 例年夏の時期に昭和基地の全発電機を止める計画停電を実施している。その目的は、電気を止めないとできない作業があることと、越冬隊にとっては越冬期間中に突発的に停電が起きた場合、迅速に復旧できるように手順の確認を行うこと。
【原田委員】 大変限られた日数のなかで輸送のみならず、観測もできる限り実施しようという計画を立てていただき、感謝する。とはいえ、Aプランになったことにより別動隊の海鷹丸の運行もないことから、6か年計画の5年目に当たる重点研究のうち、特にサブテーマ「氷床と海洋縁辺域の相互作用」の研究計画へのダメージが大きい印象を受けている。このテーマに関して、来年度が最終年度になるが、その後のX期も含めて何かフォローアップの予定を計画しているか伺いたい。また、限られた期間の中で野外観測に関しても計画していると思うが、具体的にはAプランの中でどういった野外観測を実施することになるのか。
【橋田観測隊長】 まず2番目のご質問に回答させていただく。62次隊では観測隊のチャーターヘリがないため、しらせのCH2機で輸送を中心として行うことになるが、62次隊では、特に基本観測、定常観測とモニタリング観測を中心とした野外でのフィールド観測計画を持っており、具体的には国土地理院が実施しているリュツォ・ホルムワン沿岸域での測地学的な調査を例年よりも限られた期間ではあるが計画しているし、モニタリングの中では地球学とか測地学、古代地球に関わる部分での無人観測点の維持管理のためのフライトが組み込まれている。また、数としては非常に少ないが、サブテーマにおいては、白瀬氷河のGNSSの観測点のメンテナンスを行う計画や、その他いくつかの細かいチームを含めたヘリオペということになる。小回りの効く観測隊のチャーターヘリがないためそういったところに着陸が必要となるオペレーションは行わないが、しらせ搭載のヘリコプターの協力を最大限得て、できる限りの実施を目指したい。
【河野企画官】 原田委員の1番のご質問については、現在、観測・設営計画委員会の方で第X期の6か年計画の検討をしているところ。また、第IX期の行動計画がもう1回あり、第X期計画の重点テーマ、サブテーマ等を来年度1年間かけて検討していくことになるので、今年度や来年度の実施計画の進捗を見つつ、第X期の計画を立てていきたいと考えている。
【原田委員】 万が一、輸送計画がC案となった場合に、かなり早い段階でCHが1機体制となってもC案でいけるか。可能性としてはゼロではないため、検討しているのか伺いたい。
【橋田観測隊長】 ヘリが1機体制となった場合、これまでも安全上長い距離のフライトができず、近距離でのフライトに制限されることはあったが、海氷状況からして、しらせが昭和基地の近傍まで到達できないことはないと考えており、1機体制となった場合でも飛行日数の許す限り越冬に必要な物資を輸送できるよう、しらせと調整を図りつつ行いたい。
【宇都委員】 非常にスケジュールがタイトで、臨機応変な対応を必要とすることが多々ありうるため、しらせ乗組員と観測隊員が緊密に連携して柔軟に対応することが重要と考える。
【庄司委員】 タイトなスケジュールで緻密な内容で、人数も絞り込んでいるということで、いつもとだいぶ違うことをやらなくてはいけないことから、精神的なケアや、実際にけがや事故が起こらないような安全対策、注意をすることによりストレスもたまると思うので、その辺のケアも含めてよろしくお願いしたい。
 

(3)事務局から次回の会議日程については、委員の都合を確認の上、連絡する旨の説明があった。

―― 了 ――

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