2.南極観測実施責任者評議会(COMNAP)の状況について

第32回 南極観測実施責任者評議会(COMNAP)年次総会の概要

■概要
・ COMNAPは、南極条約体制のもとで、国家事業として南極観測を実施する機関の責任者の合同会議として1988年に結成され、現在30か国で構成されている。2020年のAAD(豪州南極局)がホストとなり、8月2日~6日にホバートで開催する予定で準備を進めていたところ、COVID-19の世界的な感染拡大のために、オンライン開催とすることが決定された。地域別分科会など20回のセッションを実施した。
・ これらのセッションには30のCOMNAPメンバー組織の代表者に加え、マレーシア、ポルトガル、スイス、トルコからのオブザーバーも出席した。さらに、南極条約(ACTM)事務局、環境保護委員会(CEP)、国際南極ツアーオペレーター協会(IAATO)の代表者を含む専門家が参加した。日本からは、代表(MNAP)の中村卓司(国立極地研究所所長)、副代表(DNAP)の橋田元(同研究所・南極観測センター・副センター長)、牛尾収輝(同センター・オペレーション支援室長)、樋口和生(同センター・設営グループマネージャー)、宮本仁美(同センター・企画グループマネージャー)大野義一郎(同研究所客員教授、SCAR/COMNAP連合医学医療専門家グループ副議長)が適宜参加した。
・ 地域別分科会では、2020/2021南極夏期シーズンに向けた情報を交換し、特に世界的なCOVID-19感染拡大影響下における活動のリスク管理について議論した。COMNAPの目標として、南極にCOVID-19の感染を拡大させない状態を維持することに変わりはない。地域別分科会は、南極半島、ロス海、東南極、ラルスマンヒルズ、ドロンイング・モードランド、そして初開催となった内陸の6つである。すべての国の南極観測計画は、当初予定から縮小される見込みで、隊員の安全と健康を維持しながら、研究観測を継続的に支援する準備をしている。その他にも、医学医療専門家グループ(JEGHBM)からCOVID-19対応に関する医学的助言もセッションも実施された。
・ COMNAPで編集してきた”COVID-19 Outbreak Prevention and Management Guidelines”の草案が発表された。このガイドラインは、各国が独自に準備するガイダンスや方針を作成する際の、および、南極へのゲートウェイ都市において、観測隊がその都市を使用する際に対応策を支援することを目的としている。
・ 議長(米国MNAP:Dr Kelly K. Falkner)、および副議長3名(ドイツMNAP:Uwe Nixdorf、ノルウェーDNAP:John Guldahl、ポーランドMNAP:Agnieszka Kruszewska)は、3年の任期を終えたが1年延長することとなった。2名の副議長の選出を行うこととし、その結果、ウルグアイMNAPのManuel Burgosと日本DNAPの橋田が副議長として選出された。任期は3年。
・ 2021年次総会をホストである日本から、中村所長がAGM(2021年7月11日~14日)およびAntarctic Aviation Workshop(2021年7月15日~16日)の開催と開催地(富山市)の紹介を行った。
・ 昨年、2022年はSCAR/OSCのホストであるインドが同年のCOMNAP/AGMもホストすることが決まり、インドからSCAR/OCSをハイデラバードで2022年8月19日~26日に開催するというアナウンスがあった。しかし、例年よりもかなり遅く、各国のシーズン前の準備スケジュールに影響がでるとの懸念が事務局から示された。これを受けて、新たに、ポーランドと豪州が2022年のAGM招致の意向を表面し、この3か国を候補として、今後選出することとなった。2023年はすでに、ベラルーシ(ミンスク)に決定済み。2024年は、チリがその他の南米の国と協力して、SCAR/OSCならびにCOMNAP/AGMを招聘する意向を表明した。2025年AGMにはスペインが名乗りを上げた。

■オンラインセッションの概要
1)ラウンド1 “Townhall Meetings”
・ 時差を考慮して、4月7日、4月8日、4月15日(2回)、全4回開催。メンバーは、いずれのセッションにも参加可能。
・ 現在の南極観測計画の状況や現在の国の政策について全体的に俯瞰的な意見交換と、ゲートウェイ都市の現状や南極観測隊の準備状況を議論した。
2)COVID-19に関わる医療面での検討 ”Medical focus in preparation for Antarctic season 2020/21 in the context of COVID-19”
・ 6月9日開催
・ COMNAPでは医療専門家による小委員会を立ち上げて、3月に南極におけるCOVID-19対応ガイドラインを取りまとめた。編集をリードしたAWI所属のTim Heitland医師が、ガイドラインを紹介した。AWIはMOZAiC航海(北極海でPolarsternをビセット越冬させてプラットフォーム利用する観測)におけるクルー交代の経験有しており、それがベースとなっている。
3)第2ラウンド Round 2 “Advanced Planning Forums”
・ 時差を考慮して、6月9日、10日(2回)、11日、12日(2日)の6回開催。いずれのセッションにも参加可能。
・ 主なトピックは、南極研究シーズン2020/21シーズンの課題、予算への影響、プログラム/プロジェクトへの影響、設営への影響、各国の2020/21シーズンの具体的な修正プラン。
4)各国の観測以外の活動 "Other operators"
・ 6月30日開催
・ 観光業を行う主要NGO(IAATO, Kenn Borek Air, ALCI/TAC, ALE, DAP, Arctic Trucks, White Desert)、およびCOMNAP加盟国から約40名が参加し、2020/21の観光のプランについての説明と質疑応答を行った。極限られたツアーが計画されているのみ。
5)地域別セッション “Regional Break‐out Groups Meeting”
・ 南極半島(8月3日)、ロス海(8月3日)、ドロンイング・モードランド(8月4日)、ラルスマンヒルズ(8月4日)、内陸(8月4日)、東南極(8月5日)の6つの地域別の会合
6)全体会合 ”Plenary Session”
・ 8月5日開催
7)COVID-19に関わる医療面の検討 ”COVID-19 Medical discussion: Update in advance of start of Antarctic summer season”
・ 9月23日開催
・ COMNAPでは医療専門家による小委員会を立ち上げて、3月に南極におけるCOVID-19対応ガイドラインを取りまとめた。その改訂版の編集が終了し、その紹介を兼ねて、編集をリードしたAWI所属のTim Heitland医師が、参加者からの質問に回答した。

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