平成29年度の第59次南極地域観測隊の観測計画(以下「第59次計画」という)は、平成27年11月の南極地域観測統合推進本部総会で決定された「南極地域観測第9期6か年計画(以下「第9期計画」という)の第二年次の計画である。第9期計画では、地球システムにおける現在と過去の南極サブシステムの変動、サブシステム内の相互作用の解明及び南極域の変動と地球システム変動との関係を明らかにすることを目的に、第9期重点研究観測メインテーマ「南極から迫る地球システム変動」が決定され、本メインテーマを推進するため、サブテーマ1「南極大気精密観測から探る全球大気システム」、サブテーマ2「氷床・海氷縁辺域の総合観測から迫る大気‐氷床‐海洋の相互作用」、サブテーマ3「地球システム変動の解明を目指す南極古環境復元」の3つのサブテーマが設定された。これらのサブテーマのもとに、分野横断的な研究観測を展開する。特に、サブテーマ3においては、内陸域での調査を実施する。また基本観測については、極域を観測の場とした地球環境観測の推進、データの取得・公開・利用などを通じて、「GEOSS新10年実施計画」に貢献する。
第59次では、南極観測船「しらせ」による往路・復路での海洋観測に加え、別働隊として東京海洋大学練習船「海鷹丸」も加えた船上観測を実施する。また、南極航空網を利用し、観測船の昭和基地到着以前の野外調査及び設営作業の早期開始を計画する。
○基本観測は、第9期計画のとおり定常観測とモニタリング観測に区分して実施する。定常観測については、担当機関による観測計画を継続して実施する。
モニタリング観測は、第9期計画を機に再編した以下の五つの分野の観測を実施する。
(1)宙空圏変動のモニタリング、(2)気水圏変動のモニタリング、(3)地圏変動のモニタリング、(4)生態系変動のモニタリング、(5)地球観測衛星データによる環境変動のモニタリング
○研究観測は、重点研究観測、一般研究観測及び萌芽研究観測の三つのカテゴリーに区分した観測から構成される。
・重点研究観測は、「南極から迫る地球システム変動」の第二年次の計画として、全球的視野を有し、社会的要請に応える総合的な研究観測を実施する。本メインテーマを推進するため設定された、サブテーマ1「南極大気精密観測から探る全球大気システム」、サブテーマ2「氷床・海氷縁辺域の総合観測から迫る大気‐氷床‐海洋の相互作用」、サブテーマ3「地球システム変動の解明を目指す南極古環境復元」のもと計画を立案した。サブテーマ1においては、南極昭和基地大型大気レーダーのフルシステムでの観測を中心に、電波・光学観測等の観測を継続し、極域大気が地球システムに与える影響の解明を目指す。サブテーマ2では、リュツォ・ホルム湾及びケープダンレー沖での海氷域での海洋観測や、リュツォ・ホルム湾沿岸域での測地観測の継続実施に加えて、新たな観測機器等の導入とともに、リュツォ・ホルム湾沿岸域氷河上の掘削観測等を実施し、棚氷融解、海氷や氷河・氷床変動の実態等に関して生態系も含めた解明を目指す。サブテーマ3では、過去80万年を越える古いアイスコア採取を見据え、ドームふじ基地周辺の内陸域において、深層掘削点を探るための雪氷学的調査を実施する。加えて、リュツォ・ホルム湾沿岸域の湖沼での堆積物採取等を実施する。内陸域での十分な調査期間の確保や、凍結湖沼からの掘削物採取等を実現するため、航空機による先遣隊の派遣を計画する。また、深層ドリルの開発準備等も継続して実施する。
・一般及び萌芽研究観測は、公募によってすでに採択された計画のなかから、実行可能な計画を選択して実施する。特に、重点研究観測メインテーマ及びサブテーマと関連の深い観測項目については、積極的に連携し重点研究観測メインテーマの推進を強化する。
○公開利用研究については、公募のうえ、実行可能性の高い計画を実施する。継続的国内外共同観測については、関係機関と国立極地研究所との協定等に基づき、委託課題として実施する。
第59次計画においては、昭和基地整備計画に基づいた基本観測棟の建設を継続するとともに、発電機の更新を見据えた電気設備の点検・更新、発電棟建設候補地の調査を実施する。建設の最終年度となる基本観測棟本体の建設を、確実に完了させるため、「しらせ」の昭和基地到着以前に、航空機による数名の先遣隊の派遣を行う。観測活動に起因する環境負荷の軽減に向けた取り組みとして、翌年建設する20kw風力発電機の搬入、太陽光発電パネルの更新、埋立廃棄物の対策検討などを実施する。また、今後の内陸での観測・調査活動に備えて、内陸用燃料・車両・重機等の大型物資、観測機材、設備資材等を可能な限り輸送する。
区分 |
部門 |
担当機関 |
観測項目名 |
定常観測 |
電離層 |
情報通信研究機構 |
(1)電離層の観測 (2)宇宙天気予報に必要なデータ収集 |
気象 |
気象庁 |
(1)地上気象観測 (2)高層気象観測 (3)オゾン観測 |
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海底地形調査 |
海上保安庁 |
海底地形測量 |
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潮汐 |
海上保安庁 |
潮汐観測 |
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海洋物理・化学 |
文部科学省 |
(1)海況調査 (2)南極周極流及び海洋深層の観測 |
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測地 |
国土地理院 |
(1)測地観測 (2)地形測量 |
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モニタリング観測 |
宙空圏 |
国立極地研究所 |
宙空圏変動のモニタリング |
気水圏 |
気水圏変動のモニタリング |
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地圏 |
地圏変動のモニタリング |
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生物圏 |
生態系変動のモニタリング |
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学際領域(共通) |
地球観測衛星モニタリング |
区分 |
観測計画名 |
研究領域 |
重点研究 |
◎南極から迫る地球システム変動 |
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サブテーマ1:南極大気精密観測から探る全球大気システム |
宙空圏・気水圏 |
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サブテーマ2:氷床・海氷縁辺域の総合観測から迫る大気-氷床-海洋の相互作用 |
気水圏・生物圏・地圏 |
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サブテーマ3:地球システム変動の解明を目指す南極古環境復元 |
気水圏・地圏 |
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一般研究観測 |
1) 南極昭和基地での宇宙線観測による宇宙天気研究の新展開 |
宙空圏 |
2) 無人システムを利用したオーロラ現象の広域ネットワーク観測 |
宙空圏 |
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3) SuperDARNレーダーを中心としたグランドミニマム期における極域超高層大気と内部磁気圏のダイナミクスの研究 |
宙空圏 |
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4)電磁波・大気電場観測が明らかにする全球雷活動と大気変動 |
宙空圏 |
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5)南極底層水昇温・低塩化期における深層循環の変貌解明 |
気水圏 |
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6)南極成層圏水蒸気の長期観測 |
気水圏 |
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7)全球生物地球化学的環境における 東南極域エアロゾルの変動 |
気水圏 |
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8)東南極における氷床表面状態の変化と熱・水循環変動の機構 |
気水圏 |
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9)地震波・インフラサウンド計測による大気-海洋-雪氷-固体地球の物理相互作用解明 |
地圏 |
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10)南極における地球外物質探査 |
地圏 |
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11)絶対重力測定とGNSS観測による南極氷床変動とGIAの研究 -宗谷海岸およびセール・ロンダーネ山地- |
地圏 |
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12)露岩域と生物の変遷から探る生態系のメジャートランジション |
生物圏 |
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13)一年を通した生態計測で探る高次捕食動物の環境応答 |
生物圏 |
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14)南大洋インド洋セクターにおける海洋生態系の統合的研究プログラム- |
生物圏 |
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15)極限環境下における南極観測隊員の医学的研究 |
生物圏 |
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萌芽研究観測 |
南極仕様 SLR 観測システム開発 |
地圏 |
実施計画(案) |
(1)基本観測棟工事(2階、屋上部分) |
部門別 |
主な作業 |
主な搬入物品 |
機械 |
・300kVA発電機オーバーホール |
・大型雪上車 2台 |
燃料 |
・越冬用燃料 |
・W軽油 バルク 600kl |
建築・土木 |
・基本観測棟工事(2階、屋上、外部階段) |
・道路、コンテナヤード補修資材 1式 |
航空 |
・観測隊ヘリコプターの運用 |
・観測隊ヘリコプター 1機 |
通信 |
・無線通信回線運用 |
・更新用無線設備 |
医療 |
・医療業務 |
・医薬品 |
食糧 |
・越冬調理 |
・越冬食糧 |
環境保全 |
・夏期廃棄物処理、夏期用浄化槽の運用 ・組立式焼却炉 設置作業 |
・組立式焼却炉 |
多目的アンテナ |
・アンテナ、レドームおよび受信設備の運用・保守 |
・保守部品 |
LAN・インテルサット |
・インテルサット衛星通信の運用・保守 |
・保守部品 |
野外観測支援 |
・野外調査補助 |
・個人装備 |
輸送 |
・輸送全般 |
・12ftコンテナ×50台 |
庶務 |
・公式文書の管理、各種事務手続き、隊長業務補佐 |
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区分 |
部門 |
隊員数 |
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越冬隊 |
副隊長(越冬隊長) |
1名 |
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基本観測 |
気象定常 |
5名 |
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モニタリング観測 |
3名 |
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研究観測 |
重点研究観測 |
3名 |
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一般研究観測 |
3名 |
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設営 |
機械 |
6名 |
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通信 |
1名 |
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調理 |
2名 |
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医療 |
2名 |
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環境保全 |
1名 |
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多目的アンテナ |
1名 |
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LAN・インテルサット |
1名 |
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建築・土木 |
1名 |
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野外観測支援 |
1名 |
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庶務・情報発信 |
1名 |
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越冬隊計 |
32名 |
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夏隊 |
隊長(夏隊長) |
1名 |
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基本観測 |
電離層定常 |
1名 |
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海洋定常 |
3名 |
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測地定常 |
1名 |
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モニタリング観測 |
3名 |
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研究観測 |
重点研究観測 |
10名 |
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一般研究観測 |
12名 |
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設営 |
建築・土木 |
4名 |
|
機械 |
3名 |
||
輸送 |
1名 |
||
野外観測支援 |
1名 |
||
庶務・情報発信 |
1名 |
||
夏隊計 |
41名 |
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合計 |
73名 |
研究開発局海洋地球課