南極地域観測事業

第57次南極地域観測隊越冬隊の現況(平成28年6月~9月)

1.気象・海氷状況

6月

度重なる低気圧の接近と停滞により、曇りや雪の日が多かった(雪日数25日)が、月平均気温は-14.3℃と平年並み(平年値-15.2℃)を推移した。オングル海峡を含め、オングル諸島周辺の海氷流出はなく、5月までに広がった開放水面の凍結が順調に進んでいると見られる。

7月

先月に続き、相次ぐ低気圧の影響を受け、曇りや雪の日が多い月(雪日数20日)だった。極夜明けの初日の出は17日となった。下旬は晴天日が続き、月最低気温-34.0℃を観測するなど、寒冷な気温となった。中旬に相次いだブリザードの襲来により、オングルカルベン以西とラングホブデの長頭山沖以南の海氷に変化が見られ、開放水面が確認された。

8月

晴天時の気温は冬らしく寒冷であったが、度重なる低気圧の接近により、月平均気温は-13.7℃と非常に高く、8月における月平均気温(高い方から)の極値を更新(月1位)した。A級ブリザードが2回襲来し、最初のブリザードは4日間を越えて吹き荒れ、最大瞬間風速44.5m/sとなる猛烈な風を観測したが、建物や観測機器等に不具合が無かったのは幸いであった。オングル海峡の海氷に変化はないものの、中旬のブリザードに伴い、リュツォ・ホルム湾内では海氷の割れ込みが進み、湾入り口から弁天島、ラングホブデ、スカルブスネス、スカーレンにかけて、幅約2~8kmのリードが広がった。

9月

上、中旬にそれぞれC級ブリザードが来襲したが、その他の日は穏やかで安定した天候が続いた。日照時間も173.0時間と多く(平年値:136.5時間)、9月の月間日照時間(多い方から)の10位の記録を更新した。極度に気温が低下することもなくなり、晴天日の日中は春の到来を感じさせる陽気となった。オングル海峡の海氷に変化はなく、4月に開放水面が広がったラングホブデ以北の海氷は60cm~90cm(平均75cm)の厚さとなっている。

2.基地活動

6 月

極夜に入り慣れない環境の中、観測、設営作業ともに、隊員は与えられた任務をこなし、生活も積極的に楽しんでいる。極夜期間ということもあって、東オングル島近くの海氷上以外での野外行動は行なわなかった。21日の冬至にあわせ、21日~25日までミッドウィンターフェスティバルを行ない、越冬後半に向けて英気を養うとともに隊員間の親睦を深めた。

7 月

1日に58次隊の隊員室が開設され、各部門間の調整や意見交換などが開始された。中旬にはブリザードが頻繁(5回)に襲来し、外出制限(注意令:5回、禁止令:3回)の発令も多くなった。ブリザードによって基地建物周辺のドリフトが大きく発達したが、迅速な除雪作業により、ドリフトはすべて除去された。極夜が明け、8月からの大陸方面での野外オペレーションに備え、とっつき岬ルートの海氷状況調査を行なった結果、同ルート上の海氷は比較的安定しており、海氷上の雪上車での移動は問題ないことを確認した。

8 月

急速に明るい時間帯が増えるなか、前半はブリザードを伴う悪天が続いたものの、後半に入って比較的穏やかな天候が続き、S16における橇の掘り出しや雪上車の移動など、10月の内陸調査旅行に向けた準備が本格化した。4月に海氷が流出して開放水面が広がったオングル海峡の海氷調査を開始した。また、テレビ会議を使った打ち合わせなど、58次隊との連絡や調整も活発に行なわれた。

9 月

月全体を通して比較的穏やかな日が多かった。10月の内陸調査旅行に向けたS16への燃料の移送、内陸で使用する大型雪上車SM100の海氷上の移送、4月に開放水面が広がったオングル海峡からラングホブデ方面にかけての海氷状況調査とルート工作など野外行動が本格化した。極夜前に野外行動を十分に実施できなかった影響もあり、安全に関する意識の向上を図るべく、ディスカッション形式のワークショップを開催し、隊員間で熱心な討議を行なった。58次隊との連絡が頻繁になり、受け入れ準備の段取りに関する会話も多くなった。

3.観測

6 月

基本観測、研究観測、公開利用研究はいずれも一部を除き順調に実施している。一般研究観測のSuperDARN短波レーダー観測は機器調整に時間を要しており、6月も再開に至っていない。

7 月

基本観測、研究観測、公開利用研究は一部の機器に不調が生じているものの、いずれも一部を除き順調に実施している。一般研究観測のSuperDARN短波レーダー観測は、ようやくHF2での観測を再開することができた。

8 月

基本観測、研究観測、公開利用研究は一部の機器に不調が生じているものの、いずれも一部を除き順調に実施している。一般研究観測のSuperDARN短波レーダー観測は、1月以来停止しているHF1での観測は再開には至っておらず、早期再開が望まれる。

9 月

基本観測、研究観測、公開利用研究は一部の機器に不調が生じているものの、いずれも一部を除き順調に実施している。10月の内陸調査旅行に向けた機材の準備と、調査に出かけるメンバーが不在となる期間の引継ぎを観測系の隊員間で綿密に行った。

4.設営作業

6 月

基地内の設備、機器の維持管理を順調に行なっている。また、58次隊に向けた調達参考意見、持ち帰り物資リストの作成を行なった。ブリザード後には積極的に除雪を行なっている。

7 月

基地内の設備、機器の維持管理を順調に行なっている。また、58次隊に向けた調達参考意見の作成を行なった。

8 月

基地内の設備、機器の維持管理を順調に行なっている。A級のブリザードが襲来したため、通過後は除雪をはじめ、建物・車両・設備等の機器点検を特に入念に行った。

9 月

基地内の設備、機器の維持管理を順調に行なっている。10月の内陸調査旅行に向けた準備として、車両の整備、橇の修理、食材の準備、大陸への燃料の移送などが急ピッチで行なわれた。ブリザード後には積極的に除雪を行ない、建物や各種配管の維持に努めている。

5.その他

昭和基地と国内の小中学校等をテレビ会議システムで結ぶ南極教室は、6~9月にかけて合計14回の接続を行い、イベント対応として8月には極地研の一般公開と南極北極科学館のライブトークを合計4回行なった。Facetimeを利用した簡易版の南極教室も実施している。その他、極地研ホームページや雑誌、新聞への各種原稿提供を行ない、観測隊活動のアウトリーチに努めている。
各隊員が講師となって開催する観測隊恒例の南極大学や、農協係による野菜の栽培、喫茶係による喫茶室の運営など、生活係の活動は隊員の基地生活に潤いを与えている。8月21日には家族懇談会があり、極地研に集まった留守家族にテレビ会議システムを使って越冬活動の様子を伝え、和やかな時間を楽しむことができた。


お問合せ先

研究開発局海洋地球課

極域研究振興係
電話番号:03-5253-4111(内線4144,4451)

-- 登録:平成28年11月 --