南極地域観測事業

第52次南極地域観測計画の概要(案)

 平成22年度の第52次南極地域観測隊の観測計画(以下「第52次計画」という。)は、平成21年11月の南極地域観測統合推進本部総会で決定される予定の「南極地域観測第8期計画」を基本に、その開始年次(6年次)の計画として位置付けられる。第8期計画では、将来問題検討部会報告「21世紀に向けた活動指針」(平成12年6月)以降に発表されたさまざまな提言や我が国が戦略的に推進している「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」(2005-2014年)を踏まえ、現在ならびに過去の地球システムに南極域が果たす役割と影響、特に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による報告で社会的にも大きな注目を集めている「地球温暖化」の解明を目指す。このため、第Ⅷ期初年度として、昭和基地に大型大気レーダーの設置工事を行う。

 また、第52次計画は、新南極観測船「しらせ」就航の第2年次にあたり、昭和基地における新たな輸送体制と新たに導入された輸送用ヘリコプターによる効率的なオペレーションが期待される。さらに、新観測船をブライド湾に回航し、セールロンダーネ山地方面の地学調査を支援する。また、往復の氷海内を含む南大洋では、専用観測船も加えた船上観測を実施する。

 第52次隊の南極観測計画は、観測計画と観測を支える設営計画からなる。観測計画は基本観測と研究観測に分けられる。

1.観測計画

  •  基本観測はさらに、定常観測とモニタリング観測に分かれる。定常観測については、第7期とほぼ同様の観測計画を可能な限り継続して実施するが、前年から新たに新観測船に装備されたマルチナロービームによる海底地形観測を本格的に実施する。一方、海洋物理・化学部門においては、これまでの担当機関の撤退により、新たな方策を模索する。モニタリング観測は、第8期計画を機に見直しを行った以下の五つの分野の観測を実施する。
     (1)「宙空圏変動のモニタリング」、(2)「気水圏変動のモニタリング」、(3)「地殻圏変動のモニタリング」、(4)「生態系変動のモニタリング」、(5)「地球観測衛星による環境変動のモニタリング」
     
  •  研究観測は、重点研究観測、一般研究観測、及び萌芽研究観測の三つのカテゴリーに区分される観測から構成される。
    ・ 重点研究観測は、「南極域から探る地球温暖化」の初年度の計画として、学問分野を越え、分野を横断した緊密な連携のもとで、地球全体を一つのシステムとして捉え地球環境問題を理解・解明する観測を実施する。本課題遂行の上では、(1)「南極域中層・超高層大気を通して探る地球環境変動」と、(2)「温暖化過程における南極海生態系の応答」、(3)「氷期—間氷期サイクルから見た現在と将来の地球環境」の三つのサブテーマが設けられ、計画立案されている。第52次計画では、これまで萌芽研究観測として実績を重ねてきた「南極昭和基地大型大気レーダー計画」をサブテーマ(1)の中心課題に設定し、南極域中層・超高層大気の長期変動の解明を目指す。サブテーマ(2)では新観測船「しらせ」と専用観測船を併用した集中観測により、地球温暖化関連気体観測を重点的に実施する。また、サブテーマ(3)では、内陸トラバースルート上での浅層掘削コアやフィルン採集、ドームふじ基地の深層掘削孔検層などを実施する.
    ・ 一般研究観測及び萌芽研究観測として、公募によって採択された科学的価値の高い計画から年次計画の優先順位の高い計画を選択して実施する。また、内陸基地における将来の天文観測の予備的調査に着手する。
     
  •  第8期から新たな観測のカテゴリーとして新設した「公開利用研究」については、採択システムを検討しつつ実施する。

2.設営計画

 設営計画は、昭和基地の維持と整備を第一優先とする。特に、昭和基地に設置する大型大気レーダーの付帯設備工事を進めるとともに、その他の観測体制を支援する基地設備の整備を実施する。
 また、新観測船就航に伴って導入された輸送システムを検証し、さらに実効的なものとする。さらに、将来の内陸輸送体制の確立を図るために車両や橇の開発を進める。
 環境関連では、より一層の環境負荷軽減を図るために、自然エネルギー利用システムの構築、埋め立て廃棄物の実態調査を進める。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課

極域研究振興係
電話番号:03-5253-4111(内線4144)、03-6734-4144(直通)

-- 登録:平成25年02月 --