南極地域観測事業

第50次南極地域観測隊越冬隊の現況

 門倉昭越冬隊長以下28名は、1月29日に昭和基地の運営を第49次越冬隊から引き継ぎ、順調に越冬活動を続けている。

(天候)

 2月 : 月間を通して晴天が続かず、天候の安定しない日が続いた。20日から21日にかけてはA級ブリザードが記録され、日最大平均風速47.4 m/s、日最大瞬間風速54.3 m/sと2月としては観測史上1位を記録した。
 3月 : 月の前半は曇天の日が続き、吹雪を伴う日も多かった。後半は、晴天が続いた後、曇りの日が多くなった。4回記録したブリザードのうち3回はA級であった。海氷状態は安定している。
 4月 : 月間を通して曇りや雪の日が多く、中旬から下旬にかけては風の強い日が多かった。ブリザードはA級、B級1回ずつ記録し、13日には外出禁止令が発令された。衛星画像によるとリュツォ・ホルム湾全体の定着氷の領域は縮小する傾向にあったが、昭和基地周辺の海氷状態は安定している。

(基地活動)

  越冬交代後、越冬内規・各指針を確認し50次隊の現状に即した改訂を行った。2月3日には越冬成立式・福島ケルン慰霊祭を行い、越冬の成功と安全を祈願した。事故防止及び野外行動の開始に備え、野外安全行動訓練・海氷安全講習や消火訓練を実施した。また、3月上旬、中旬と2回にわたり手空き総員参加で島内の一斉清掃を実施した。海氷状態の安定に伴い走行ルートの設定を開始し、4月にはとっつき岬、向岩までのルート工作が完了し、内陸方面についても、S16方面のルート整備が行われた。野外行動の本格化に伴い、各隊員が野外行動で不在になる場合のバックアップ体制の検討・確認を行った。基地内の災害監視の観点から、通信室のTVで一括して各カメラの映像がモニター出来るようにした。

(観測部門)

 定常観測、モニタリング研究観測、プロジェクト研究観測、萌芽研究観測のいずれも概ね順調に実施されている。2月下旬より宙空部門のオーロラ光学観測が開始され、灯火管制のもとオーロラ活動が数度観測されている。重点プロジェクト研究観測に関連するものとして、2月中旬に昭和基地で初めて「極中間圏雲」が観測・撮影された。また、ルート工作と併せて気水圏部門が海氷厚・積雪測定、地圏部門が海氷GPS装置の設置・動作試験を行った。4月にはエアロゾルゾンデの観測を成功裏に行った。気象部門では、北の浦の海氷上に雪尺を設置し観測を開始した。医学研究として、食事調査、心理調査を実施した。また宇宙医学との共同調査として、ハイブリッドトレーニングを開始した。

(設営部門)

 発電機点検のための電源切替、燃料移送など定期的な業務も含め、各部門とも概ね順調に推移している。2月は夏期作業を継続して実施した。ブリザード後の除雪を含めて、各車両の修理・整備、基地内ネットワークの整備、各施設の修復・補強工事、ライフロープ・標識用旗竿の整備など基地メンテナンスに関わる作業を中心として精力的に行っている。安全面では、野外行動に備え、スノーモービル運転講習、雪上車講習を行った。また、4月には推薬庫の整理・廃棄物処理を行い、環境保全物品を収納した。調理部門では、今次隊で試験導入した予備食用冷凍弁当の試食およびアンケート調査を全隊員に実施し、結果を国内に報告した。

(その他)

 TV会議システムを利用した情報発信として、国内小中学校などと南極教室を行っている。5月2日には極地研の立川移転記念のイベントで交信を行った。3月より生活諸係の活動が本格的に開始され、映画上映・誕生日会・釣り大会など各種イベントが実施されるようになり、越冬生活に変化と潤いを与えている。また、野菜栽培装置を使った農協係の活動で、レタスやバジル等が定期的に収穫されている。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課

極域研究振興係
電話番号:03-5253-4111(内線4144)、03-6734-4144(直通)

-- 登録:平成25年02月 --