南極地域観測事業

第14回観測事業計画検討委員会 議事概要(案)

1.日時

平成21年3月27日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 16階 16F3会議室

3.出席者

出席者 小池 勲夫 国立大学法人 琉球大学 監事

 

北川 源四郎

 

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構

統計数理研究所長

 

柴田 明穂 

国立大学法人 神戸大学大学院 国際協力研究科 教授

 

永原 裕子 

国立大学法人 東京大学大学院 理学系研究科 教授

 

中村 雅美

 

日本経済新聞社 東京本社編集局 科学技術部

編集委員

 

野本 敏治 

財団法人 溶接接合工学振興会 理事長

 

安岡 善文 

独立行政法人 国立環境研究所 理事

 

藤井 理行

 

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構

国立極地研究所長

 

佐藤 夏雄

 

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構

国立極地研究所 副所長(総括・研究教育担当)

 

白石 和行

 

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構

国立極地研究所副所長(極域観測担当)

 

牛尾 収輝 

第49次越冬隊長

 

小達 恒夫 

第50次隊隊長

 

門倉 昭 

第50次隊副隊長

 

本吉 洋一

文部科学省科学官 兼 第51次隊隊長

  工藤 栄 第51次副隊長
  藤本 真美 外務省地球環境課

 

藤原 智

国土地理院 企画部 国際交流室長

 

田代 照政 

気象庁 観測部計画課 南極観測事務室長

 

長濱 則夫 

情報通信研究機構 宇宙環境計測グループ

 

成田 学

 

海上保安庁 海洋情報部海洋調査課

主任海洋調査官 

 

並木 正治

海上保安庁 海洋情報部 環境調査課

事務局 

生川 浩史

文部科学省 海洋地球課長

 

丸山 修一 

文部科学省 海洋地球課 課長補佐 

4.議事

【1】 前回の審議状況及び前回の議事録(案)について、事務局より説明があった。議事録について、修正、意見がある場合は、3月24日(火曜日)までに事務局に連絡をいただくこととされた。

【2】1.第32回南極条約協議国会議(ATCM32)について

外務省より、第32回南極条約協議国会議について説明があった。主な意見は以下のとおり。

柴田委員 
 ぜひ日本の政府代表団には頑張っていただきたいと思います。私が伺いたいのは、文部科学省が今回の会合にどういう立場で対応されているかということです。南極条約50周年記念のタイトルにありますように「平和と科学の50年」であり、南極条約の基本理念はまさにこの2つの概念です。平和的利用と科学観測活動の自由をもってして、そこから人類が利益をこうむるということです。1959年にできた条約ではありますが、まさにこの平和と科学というのは、日本の戦後を象徴する2つの概念です。科学を基礎として、日本はこれまで経済発展してきたこと、そして平和に基づいてこれまで日本が発展してきたこと、これはまさに戦後日本を象徴するような理念が反映されている条約であります。平和的利用につきましては、宇宙も平和的利用の原則が掲げられていると言われますが、実は南極条約の平和利用はもっと徹底した平和利用でありまして、侵略的、攻撃的な軍事活動をしないというだけの平和的利用が宇宙条約の原則です。それに対して、南極条約は、すべての軍事的活動を基本的に禁止するという意味で徹底した平和主義であり、その意味では日本の平和憲法とも合致するという、大変日本にとって意義深い条約であります。今回、アメリカが主催をして、まさに原点に立ち返って平和と科学を中心とした南極条約をもう一度見直して、今後の50年をさらに見据えて、戦略的に平和と科学を南極においてどうしていくかという議論がなされるかと思います。そういう中で、しかるべき政治レベルがご出席されるということですが、もちろん政治レベルでのこうした議論への参加とともに、科学を政策的に推進されている文部科学省として、この会議にどういう積極的な立場でご貢献されようとしているのか。具体的には、例えば政治宣言において今、いろいろと起草作業が行われていると、おそらく初日の閣僚会議で採択されると思いますけれども、どういう立場でその政治宣言に日本の科学技術の貢献を反映されようとされているのか、このあたりを現時点で構いませんので、少しお伺いしたいと思います。

丸山海洋地球課長補佐 
 ご質問の件でございますけれども、先生が今おっしゃられたように、日本としては南極条約の原署名国として、基本的には南極条約の各国の南極観測体制を引っ張ってきている立場という理解をしております。我が国も50有余年にわたって南極観測を継続して行ってきているわけですけれども、それはある意味では南極条約体制のもとでしっかりとやってきていることのあらわれであろうと思っております。
今回、ATCMがアメリカで行われるということで、例年になく、今ご説明にあったように、政治レベルの会合等も予定されておるわけでございます。政治宣言等の内容は、意図していたものというよりはどちらかというと一般的な理念であるとか、重要性についての発言がおそらく中心になろうと思っております。
一方で、閣僚レベルの懇談会的なようなものも開かれるということでございますので、どちらかというとそちらのほうで日本としての立場であるとか、日本のこれまでの南極に対する貢献、科学への貢献等についてはアピールをしたいと思っております。
今会議に文科省から人を派遣ことが必ずしもできなかったという実態ではございますけれども、我々としては南極条約の協約国会合の中身についてできるだけコミットしながら、成功に導いていけるよう努力をしていきたいと考えております。

小池委員長 
 極地研からは行かれるのか。

藤井極地研究所長 
 極地研からは、代表団に4人参加します。

柴田委員 
 前回の議事録において、資料の1ですけれども、9ページに私の発言の中に、これは海洋地球課長からのご発言を受けて科学技術外交という言葉をおっしゃっていただき、私は大変頼もしく思ったわけです。まさに科学技術外交をする場がATCMでありまして、それはもちろん科学をやっておられる極地研の方々からのインプットを、政策的に日本政府としてどう利用して、どう政治に結びつけていくかという、科学者からのもう一つ前に進んだレベルでのことを多分おっしゃっていた、科学技術外交というのは科学そのものではなくて、それどう政策的に使うかということであると私は理解しておりました。おそらく、これまで50年の南極条約の歴史の中で、今回の会合ほど科学技術外交を日本として推進できるチャンスはほかになかったのではないかと思います。そういう会合に、文科省の方がお1人も出席されないというのは、少し、南極条約をどういうふうに思っておられるのかというようなことも含めまして、私は残念に思います。まだ2週間ありますので、可能であればそのあたりも再検討いただければと思います。

生川海洋地球課長 
 前回、柴田先生からお話をいただき、私もぜひ行きたいということでいろいろ検討させていただいたのですが、実際に向こうでやってくるファンクションと、それから他の業務との関係もあって、今申し上げたような形に話がなっているところではございます。 一方で、科学技術外交が重要であるという考え方は全く変わっておりません。ただ、科学技術外交自体を文部科学省だけがやるわけでもないというふうに考えておりますし、あるいは会議に出ないとそれができないということでもないと思っておりますので、改めて検討はさせていただきますが、このタイミングでございますので、実際問題として文部科学省から出席者を出すというのは容易ではないと思います。だからといって文部科学省が南極について手を抜いておるとか、あるいは科学技術外交について腰が引けておるということでは全くないことは、ぜひご理解いただいた上で、我々も今回だけじゃなくて、今後の会議も含めて、積極的に対応していきたいというふうに思っておりますので、そこはぜひご理解をいただければありがたいと思います。

小池委員長 
 科学技術外交の場合、文科省と外務省との密接な連携というのが非常に大事ですので、ぜひその辺を密に連絡をとって、今度の会議でうまい成果を上げるようにということをお願いしたいと思います。

2.第49次南極地域観測隊越冬隊について

牛尾第49次越冬隊長より、第49次南極地域観測隊越冬隊について説明があった。

3.第50次南極地域観測隊について

小達第50次隊長より、第50次南極地域観測隊夏報告及び越冬隊報告について説明があった。つづいて、白石国立極地研究所副所長より、平成20年度交換科学者派遣報告について説明があった。主な意見は以下のとおり。

小池委員長
 「しらせ」が使えなくなり、1年間、オーストラリアの船を使って行った観測でしたけれども、観測地帯とするとあまり支障はなく、予定をこなしたというふうに考えてよろしいですか。

小達第50次隊長 
 そのとおりです。観測は、停船観測につきましては、計画された11点、すべて実施しております。昭和基地沖の海洋観測につきましては、先ほど申しましたように、氷縁が南に下がっていたということで、当初計画の氷縁にあった観測点は「海鷹丸」で実施されたため、我々、氷海内の観測は、かなり南の点だけで済んだということでございます。

中村委員 
 第49次の越冬隊のことを伺いますが、エアロゾルの観測を始められて、ナトリウムとか、あるいはほかの元素、マグネシウムとかというのは同じ挙動を示すのですが、硫黄だけが違う挙動を示すというご説明でしたふぁ、この理由はわかりますでしょうか。 それとも、エアロゾルの起源は、南半球の南極で観測されている起源はどう違いがあるのか、ご存じだと教えていただければと思います。

牛尾第49次越冬隊長 
 今日お示しした図では、硫黄だけがほかの元素と違う変動傾向を示したということで、その理由についての解析、研究はこれからだと思います。図でも、天候による変動も非常に激しいですが、1年間弱を通して見ますと、季節変動の違いが硫黄とほかのカルシウム、ナトリウムとでは明らかに違うというのは、2008年に限ってではありますが、結果が出たことで、プロセスの説明についてはこれからというところです。

中村委員 
 エアロゾルの起源はどちらになりますか。どちらから飛んできたかということになると思いますが。

牛尾第49次越冬隊長 
 昭和基地は海に囲まれており海岸の基地ですので、特に天候が悪いときは北寄りの風のため、海のほうから運ばれてくるものが多いと思います。

中村委員 
 大陸ではないです。アフリカ大陸とか、オーストラリア大陸ではない現象です。

牛尾第49次越冬隊長 
 ずっとたどればそういうところもあるのではないかと、私は理解していますが、そういう研究にも今回のデータというのはつながると思います。今回の機械は特殊で、それに詳しい隊員技術者を49次としては派遣しています。今の50次隊では同じ装置を使った観測というのは継続していませんので、年による違いというのは、この49次、50次では見られないですが、今回のデータをきちんと解析すると、また将来新しい研究、観測手法というものにつながると私は思います。

小池委員長 
 エアロゾルなどの大気の観測では、そのときにどっちからのどういうふうな風向きでどうなったかという情報を同時に得ていないとなかなか解析が難しいです。日本周辺は非常にたくさん観測点があって、ちゃんとしたデータが出ているのですが、南極の場合はそういうデータは常に取られているのですか。

牛尾第49次越冬隊長 
 地上気象のデータは、定常観測で行っております。

小池委員長 
 観測密度はどうか。

牛尾第49次越冬隊長 
 観測点の分布密度でしょうか。

藤井極地研所長 
 観測点の分布密度は1000キロ四方に1点です。もう少し粗いかもしれません。ECMWFという客観解析データを使ってバックトラジェクトリー分析をして、一部のものは南米の南から来る、例えばそういうのは特殊な同位体なのです。さっき示したマグネシウムとカルシウムというのは、基本的には海塩成分だと思います。また、硫黄に関しては、夏に多くて冬に少ないということで、海の生物活動で出てきますメタンスルホン酸や、DMSが大気中で光化学反応を起こして、夏にふえるという現象です。基本的にはそうだと思いますが、硫黄には火山活動起源であるとか、ほかの人為起源の硫黄というのもありますので、このような細かいことがわかりますと、大気の流れの解析ですとか、さらに微量の成分をこれから観測につけ加えていくことで、いろいろな物質の循環の様子が明らかになっていくのではないかというふうに期待しています。

北川委員 
 エアロゾルのデータは多変量で、並行して上下している部分と、傾向的に独自に動いているのがあるので、そこを明確にデータ処理うまく分けるとよいでしょう。

藤井極地研所長 
 統数研と隣り合わせになりますので、ぜひそういう手法を学びたいと思っております。

4.第51次南極地域観測について

丸山海洋地球課長補佐より、外部評価委員会における第48次越冬隊及び第49次夏隊の評価結果について説明があった。つづいて、白石国立極地研究所副所長より、第51次南極地域観測実施計画の概要について説明があった。主な意見は以下のとおり。

小池委員長 
 51次では試行するということになっておりましたので、2ページに書いてありますように、これは従来の同行者による研究として申請されたものの中から、この2件について適当と認めて、それを今回の試行の例として採択したいということでしょうか。極地研のほうから、こういう候補として2つ挙がってきて、ここでそれを認めていただいて、最終的に総会にかけるという形になると思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。この「公開利用研究」というのは、今度、新「しらせ」になって隊員及び同行者のキャパシティーが20人増えるということで、それをどういうふうに有効に使うか、51次の場合はそんなに大々的にはとてもできないため、これぐらいでスタートするということです。しかし、52次、第Ⅷ期からはもう少しちゃんとした形としたいということでのご提案です。あとは名前が依然として仮称になっているのですが、この「公開利用研究」でよいでしょうか。

北川委員 
 前から議論してきたことが、「公開利用研究」の試行という形で実現しそうだというのは、大変結構なことだと思います。ただ、ずっと議論した結果で、特に51次、試行という形でこういうことだろうと思います。これは、従来の観測というのが非常に長期的な計画に基づいてやっているのに対して、むしろボトムアップ的な研究だと思います。そういう観点から見ると、これこそまさに学術研究の部分で極地研がやられているような共同研究、共同利用とかの目的に非常に合致したものだと思います。そうしますと、要するにこの研究分野のコミュニティーの要求とか意見を反映してやっていくというところで、そういう意味ではもう少し極地研を表に出した形でできないでしょうか。確かに、このペーパーでも下から10行目あたりに書いていますけれども、名称等も極地研の共同利用というような形にできないのでしょうか。人数についても、初回はともかく、もう少し20名の枠の半分以上ぐらいは使っていただけないのでしょうか。

小池委員長 
 10名ぐらいは少なくとも使っていただきたい。

北川委員 
 また、経費についても、とりあえずこういう形でもできるというのはいいかと思いますが、大学共同利用機関の指名は、こういう科研費のSを取ったような方でなくても、先ほど若手の問題というのがありましたけれども、もっと極地研が経費負担、要するに国のほうからちゃんと経費を取って、そこを面倒見るようなシステムができないかという気がいたしました。加えて、最後の3ページ目の選択した理由の3つ目のポツで、「観測計画に支障の無い範囲で」とありますが、ボトムアップの研究の部分はある程度きちんと確保されているというような形になっていくのがよいのではないかと思いました。その辺、ちょっと極地研のお考えはどうでしょうか。

白石極地研副所長 
 「観測計画に支障の無い」という理屈を付けない確保は、少なくとも8期計画の最後のほう、あるいは9期計画にそういう形になればいいなと思います。私自身も、もっと「公開利用研究」の幅が広がればと思います。ただ、今いきなりこれをやると非常に混乱を起こします。常に南極観測は変革が必要であると思っていますが、少しずつ変えないと現場が混乱しますので、こういうやり方にならざるを得ないのです。ボトムアップということに関しては、第8期計画からは既に本体の、国家事業としての南極観測事業にボトムアップのシステムを取り入れております。それは、一般研究、萌芽研究という部分です。ただ、それも8期計画という中でのボトムアップの研究計画ですので、これは機動的ではありません。来年やりたい、再来年やりたいというのには間に合わない計画です。その意味では、そういうボトムアップの計画は、「公開利用研究」で行うのがふさわしいかなというふうに思います。それから人数は、本隊があって、この「公開利用研究」は附属的なものだという考えは、これは今の時点では外せないのではないでしょうか。南極観測事業を国家事業としてやっている以上、「公開利用研究」のほうが南極観測事業の国家事業のほうを凌駕するようになるというのは、相当なコンセンサスが必要です。それは文科省のお考えも聞きたいと思います。それで、将来どうなるかわかりませんが、研究者から見れば、確かにこのような不自由な体制ではなく、もっと自由にやらせろということになるのでしょうが、南極観測の中でやろうとすると、スタートとしてはこの辺が妥当ではないかというのが私の考えです。もう一つ、大学院生の問題があります。少なくともこの試行、先ほどの大学院生の単独での参加は認めないとしております。私たちが恐れているのは、「公開利用研究」にお金があるから学生を送りたい、ぽんと預けられても観測隊は困ってしまいます。特に、隊長には安全の確保とかいろいろな意味での大きな責任がありますので、無責任な形の指導教官がいる場合を恐れますが、そういうふうにならないように責任体制をはっきりさせるという意味で、排除しております。

小池委員長 
 南極の場合は南極観測事業というのが国のお金でやるということで動いていて、それを極地研が取りまとめをするという格好になっているわけです。そのため、極地研としては決め方に関してはボトムアップで行っており、今度の場合も8期計画をそれで決めていきましたと。でも、そこに全部南極に関する研究が網羅されるわけではとてもないわけです。だからその意味で、先ほど北川委員のおっしゃった共同利用研として、日本の研究者のコミュニティーが南極を使いたいという様々な希望が出たときに、それに対してきちんと極地研としてはこたえる必要があるというのも確かだと思います。それで、船が新しくなって、今まではキャパシティーがないからとてもできませんとの説明であったのですが、少なくとも船に関しては20人ぐらいの余裕は出てきています。それ以外のところがかなりまだタイトなので、なかなか難しいということだと思いますが、それを、片方は非常に主で残りはみんな従であるというのは、研究者のコミュニティーとするといかがなものかという意見が、私も出るのではないかと思います。すぐには変えられないにしろ、その比率が少しずつ、2対1ぐらいになるとか、そういう形に将来的には移っていくというのではどうでしょうか。

藤井極地研所長 
 私は今、委員長総括しかかったような考えを持っています。今までできなくても、キャパシティーの関係で「ふじ」、それから前の「しらせ」でも、こういう自由になるスペース自体がほとんどなかったので、できなかったのです。新しい船で初めて、ある意味チャンスが来たと思っています。ただ、まだいろいろな意味で、航空機も試行的に導入しておりまして、かなり多くの人間を新しい船でというにはまだ、いろいろな様子を見ながらやっていかなきゃいけないところです。将来的にはこの部分をかなり大きくしたいとなると、かなりの研究者のニーズが満たされると思います。地球の、あるいは環境の研究、宇宙生命の研究にとって、南極の持つ価値というのは非常に大きいものがありますから、なるべく多くの研究者に行っていただけるような環境整備をしていく、その第一歩というふうにお考えいただきたいと思っております。南極観測の場合には、失敗はかなり大きな事故だとか何かにつながりますので、前向きですが着実に、とやっていきたいというところでございます。この概念の導入というのは、非常に大きな意味合いを持っていることだというふうに、極地研の我々は理解しております。

小池委員長 
 51次に関しては試行に行い、52次からは、なるべくきちんとした形で、もう少し規模を広げてやる方向ですね。先ほど、白石副所長は、8期の最後くらいにはとおっしゃっていましたが、私はやはり南極に興味を持ってくださる研究者のコミュニティーの層をふやすということは非常に大事だと思います。それがないと、なかなか研究というのは広がってこない、先へ進みませんので、その意味で、広げて、こんなテーマも南極にあったのかというようなのが出てくるのを、こういうところでどんどんやってもらうことのほうが良いのではないでしょうか。それに、先ほど出ていましたけれども、科研費を取ったものしか認めませんよとかいうことをやり始めると、みんなシュリンクしてしまうので、極地研のほうもそれをサポートして、若手だったらぜひ行ってくださいという形にしないと、なかなか広がらないような気もします。

永原委員 
 宇宙でも同じような状況にありまして、活性化といいますか、層をふやしていくために、今議論されていましたように、あまり大きくないけれども簡単にそこに加わることのできる、やはり費用を負担していただくことがかなりクリティカルであるということを、JAXAで我々は随分議論をしております。それは若い人が加わっていける、確かにさっき副所長がおっしゃったような安全性の問題というのは非常によくわかるんですが、若い人にとってはお金を持っているかと言われても無理なのと、ただ、確かに最近はお金の使い方もかなり自由になって、例えば半額、若手のAとかSとかを持っていると、それで一部負担すれば残りを極地研がサポートしてくださるとか、何かフレキシブルな使い方、今のそういうことも全体のシステムも非常に前向きに変わっているので、そういうことをうまく利用して、前向きな方向で進めていただきたいと思います。それから、例えば、今回この事例に挙がりました2件目の南極天文学開拓という天文分野でも結構重視していまして、チリ以外に新しい場所をつくれるところはないのかということは、随分議論をしています。これはそういう意味で、従来であれば地球環境系、あるいは生命系だけであった南極が、また新たな展開になれるわけです。そういう意味で、こういう他分野への積極的な、どこにニーズがあるかというのを知らない部分なので、ぜひこういうことをもう少し積極的に、なかなか不特定多数でどこに呼びかけたらいいかというのは難しいとは思うんですが、こういうのも少し積極的に呼びかけをされて、進めていただけたらと思います。

白石極地研副所長 
 今のお話ですが、新しい分野の開拓ということに関しては、一昨年から南極観測シンポジウムというのが6月ごろに行っていまして、新しい観測提案を伺っています。ドームふじに天文をつくるというのは、8期の重点研究提案として挙がってきたのですが、提案自身は非常に魅力的ですけれども、現実問題として、8期のうちにドームふじに天文台をつくるというのは、非常にお金だけではなくて技術的な問題があります。ですから、まずは天文台を置いて、そこに人が住めるだけの環境をこちらで用意しなければいけないわけですから、そういうベーシックなところから我々はスタートしようということで、重点研究からは外したのです。こういう萌芽的な、あるいは調査的なことは必要だろうと考えて進めようとしています。

中村委員 
 この試行の2件というのは非常に結構だと思いますし、「公開利用研究」の仮称を取るのは、そのまま取っても構わないと思うのですが、この2件の研究の概要を拝読していますと、南極での利用を前提に科研費のSを取られているというようなことが読めるのですが、そういうことはあるのでしょうか。

白石極地研副所長 
 基盤研究Sの課題名は「海氷生産量のグローバルマッピングとモニタリング構築」ですので、南極に特化しているわけではありません。その中の一課題として南極のダンレー岬のポリニヤをできたらやりたいということです。

中村委員 
 2件目は今、副所長がおっしゃったように、将来の天文台を南極に設置するということの瀬踏みでしょうか。要するに、経費について全部参加者が負担することになりますから、「公開利用研究」が先にあるのか、科研費を取るのが先にあるのかということです。

白石極地研副所長 
 科研費で「公開利用研究」にこれからアプライしようという人は、非常に微妙な時間差があります。9月に科研費を申し込むときには、まだわかっていないため、通ったらやりますというのでは多分、科研費は通らないでしょう。

中村委員 
 また、「公開利用研究」も通らないわけでしょう。

小池委員長 
 かなりトリッキーです。これは8期の非常に大きな課題になります。

5.南極地域観測第8期計画について

 丸山海洋地球課長補佐より、南極地域観測第6期5か年計画外部評価書について説明があった。つづいて、白石国立極地研究所副所長より、南極地域観測第8期計画(検討素案)について説明があった。主な意見は以下のとおり。

中村委員 
 資料7の第48次越冬隊、49次の越冬隊の外部評価委員会の評価を踏まえて、例えば資料10の第8期の計画の5ページ目の6ポツのところです。資料7の、例えば3ページ目の黒丸の上から2つ目の、個々のプロジェクトは確かに評価が進んでいるのですが、南極観測の目標とか、全体としての意義が出てくるのはおかしいんですが、わからないところがあるので、50年たてばかなり違ってくるのかなと思いますので、第8期の計画をする上で、必ず枕詞に南極観測をやるのはこういう意味があるんだと、昔から変わらないところもあるし、新たにつけ加えた意義があるんだということを少し盛り込んでいただきたいと思います。そうするとこういう資料7にあるような表現が出てこないのではないかと思いますので、ぜひその辺のところをまたお願いしたいと思います。

白石極地研副所長 
 これは今のところガイドラインといいますか、バイブルにしようとしているので引き合いに出しますが、この「新たな南極観測事業のあり方」の中で、最初に南極地域観測事業の目的と意義ということで触れております。極地研としては、これをかみ砕いてやっていきたいという気持ちがありますので、これをもう少しわかる形でこの中に盛り込んでいきたいと思います。

安岡委員 
 今の、資料10の第8期の計画ですけれども、ここで、先ほどお話のあった「公開利用研究」というのは7ポツで、これはあまり書かれていませんから中身がちょっとよくわかりませんが、全体の観測事業の中の位置づけをもうちょっと明確にしておかれたほうが、いいような気がいたします。8期で、1つの目玉としてやられるときに、1の基本的な考え方の中で観測事業のあり方というのを検討されているんですけれども、どうもその枠外にあるというイメージがあって、ここのところ、どういう制度設計をするかによると思いますが、明確にしておいたほうがいいのではないかと思います。今の、直前にあったお話とも関係すると思うのですが、世の中に対して、南極観測がどういう意義を持つのかということの1つの方向性を示すことになると思います。

白石極地研副所長 
 極地研では、カテゴリーの表をつくって、南極観測事業をこっちに置いて、それと一線を画してこちらに「公開利用研究」を置いています。南極観測は国家事業であるというのがありますが、しかし現実にはボトムアップ的なことをやっているわけです。国家事業としての南極観測事業が大前提でやっていまして、こういう新たな、全く新しい考え方の「公開利用研究」を入れたというのは、極地研としてはかなりの思い切ったことなる。ですから、その辺のすり合わせと言いますか、落ち着きがまだよくないと思います。多分、南極観測事業とは何かという議論をしないといけないんじゃないかなという気がいたしております。

小池委員長 
 確かに、国家事業ということで、非常に極地研がずっと中心になってやられているというのはわかるのですけれども、共同利用研としてコミュニティーにどういう形で極地研が貢献するかということは、国家事業を通じても貢献するし、南極をより広く使ってもらうと、そのファシリティーを提供するという意味でも良いでしょう。私は両立するものだと思うんですけれども、私も極地研は外から眺めていますので、国家事業という思いが頭の中にぴんと来ないのですが、極地研の中にいらっしゃる方は国家事業ということがもう100%頭の中に占めてしまって、何かほかのことは非常に考えにくくなっているような印象を受けるのですがいかがでようか。

白石極地研副所長 
 現実には、共同利用研ですので、実際に国家事業に携わっている研究者の方々は共同利用研究者でもあって、自分たちの提案された仕事をきちんとやっていると思うのですが、それを一面から見ると国家事業なのです。例えば、将来この観測事業、国家事業としての南極観測事業を再定義して、定常的な観測、モニタリング観測のようなものは国家事業だけれども、そのほかの研究は全部「公開利用研究」であるという考え方もできるのかもしれませんし、まだその辺は議論が不十分だという気がいたします。

藤井極地研所長 
 中期的な計画にのっとって、今まで第1期、第2期と数を数えて、今、第7期が行われているわけです。それにもう一つ、カテゴリーを今つけ加えようとしています。その2つ合わせて我が国の南極観測プログラムだというふうに思っています。こちらはある意味では、Japanese Antarctic Research Expeditionという、昔から言われていたJAREという枠組みで、こちらは今、公開利用研究であり、全体で中期計画にのっとって粛々とやる計画と、機動的、自由闊達な発想のもとにやる部分とは両輪にしていきたいと考えています。その第一歩ということで、僕は第8期を位置づけたいなというふうに思っています。これが非常にうまくいけば、例えばこちらのお金をこちらに持ってくるとか、その部分は自由闊達にできない部分があります。ただ、極地研としては、南極観測というのは単に粛々と続けていく以外に、新たな分野に開放して裾野を広げていくことで、さらにいろいろな価値が出てくるというふうには私たちも思っておりますので、実は非常にこの部分、我々も期待はしています。

小池委員長 
 「公開利用研究」の導入というところが、扱われ方が少し寂しい野ではないかと思います。これは1つの8期の目玉となるものですので、もう少し華々しくデビューさせてあげたほうがいいような気もしますが、ご検討を願います。

野本委員 
 初めに南極観測の50周年という話があって、それから国家事業のプロジェクトということもよくわかりますし、ボトムアップ的なというような議論があって、上のほうから考えるか、下のほうから考えるかというのが、今、入り乱れていると思います。ちょうど50年たったときですから、特に8期を素案として出されるときに、ボトムアップ的でないとできないということもよくわかりますが、一方ではトップダウンというか、50年たったからもう一度考え直すというような観点を、すぐに入るかどうかという話ではありませんけれども、いつかそれは入れなければいけないと思います。ですから、あまり下のほうからばかり考えないで、守りばかりでないというような考え方をぜひこの時期、50周年を考えていただいたら、少しフレキシブルに考えられる、楽に考えられるのではないかと感じました。すぐに計画ということではないかもしれませんが、どうぞお考えいただけたらと思います。

柴田委員 
 もうぜひこういう形で進めていただければと思います。先ほど、両輪のごとくということで、ボトムアップの部分をさらに拡充されるというのは、私もぜひそういうふうにしていただきたいと思っております。他方で、おそらく日本としてそう分けたとしても、外から見ると日本の観測活動だという意味では1つのものだと思います。外から見れば日本としての観測活動だということになりますので、先ほど大学院生が勝手に、同行者の話のコンテクストで出てきましたけれども、そういう同行者の活動もやはり外から見ると日本の活動の一部として、何か事が起きれば日本の責任になるという意味では同じです。そういう意味で、責任ある観測事業というコンセプトもどこかに入れていただく必要があるのではないでしょうか。責任があるというのは、自己規制するという意味ではなくて、世界的に見ていろいろな意味で責任のある観測事業を推進されていくというようなコンセプトも、どこかで反映していただければと思います。

中村委員 
 第8期計画の資料10の5ページ、6ポツの一番下の丸のところで、「教育関係者の観測隊への参加など」というふうに書いてあるのですが、この場合の教育研究者というのは、範囲は何か考えておられるのでしょうか。

白石極地研副所長 
 学校の先生を具体的に考えています。

中村委員 
 これまで同行者ではないのでしょうか。

白石極地研副所長 
 今まで同行者で学校の先生が行った例はありません。隊員として行った例はあります。

中村委員 
 隊員としては高校の先生がありますね。それを同行者的なものに広げようということですね。

白石極地研副所長 
 今の時点では同行者というカテゴリーで入るのが一番スムーズだと思いますが、例えばそういう教育プログラムのようなものを南極観測事業の中に位置づければ、隊員として行くことも可能だと思いますが、そこまでやる必要があるかどうかという問題にもなるかと思います。

中村委員 
 それは広報活動の一環として、ぜひやっていただければと思いますが、南極観測の意義がわからないというところも、位置付けにあるのではないかと愚考します。一般の人たちは50年たって南極観測まだ続いているのかというのが本音だと思います。だから、意義を伝えるときには教育関係者が一番ではないでしょうか。だから、数に限りがあると思うので、1年に2、3名としても、10年たって20、30名ですから、ごく一滴なんですけれども、でも口コミでかなり広まっていくことは考えられますので、むしろそういう意味では、意義とかを広めるためにはそういう関係者の同行、参加は必要かと思います。

白石極地研副所長 
 それは、我々もほんとうにすぐにやらなければならない、51次できれば始めたいと今、考えてはおりますけれども、現地に先生が行って、現地から発信、衛星回線を使ったテレビ授業ができますので、そういった道具も使って、非常に多くの子供たちに発信できるだろうということを期待しております。

中村委員 
 それはぜひやっていただけるといいと思うのですが、例えば、スペースシャトルで若田さんがかなりテレビでやっていますね。それから、宇宙で日本人のクルーが乗れば、必ず宇宙授業をやるというふうなこともやっていますので、そういう少しシンボリックなところをやれれば、少しは国民の目が向くんではないかなというようなこともあります。

白石極地研副所長 
 テレビ会議システムを使った双方向のというのは、もう既に今、年間に50回ぐらい昭和基地からやっておりますけれども、それでかなり成果が出ていますので、もっと続けたいと思います。現地の隊員の負担はすごいのですけれども、大変なのです。それ専門の人を連れて行くぐらいの意気込みでというところです。

小池委員長 
 毎回はなかなか大変でしょうが、6期の間に何回かそういうのを企画していただきたいと思います。極地研のほうが積極的に働きかけて、そういうことをやってくださる先生を探して、行っていただくような格好をとらないとなかなか、手を挙げてくださいだけでは難しいと思います。

白石極地研副所長 
 文科省とも連絡をとって、どういう方法が現実的かということを検討しておりますので、いい方法が見つかるかと思います。

6.平成21年度南極地域観測事業関係概算要求の概要について

丸山海洋地球課課長補佐より、平成21年度南極地域観測事業関係概算要求の概要について説明があった。

―― 了 ――

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研究開発局海洋地球課

極域研究振興係
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-- 登録:平成25年02月 --