南極地域観測事業

第23回南極観測実施責任者評議会(COMNAP)の概要

 南極観測実施責任者評議会(COMNAP)は、南極条約体制のもとで、国家事業として南極観測を実施する機関の責任者の合同会議として、1989年に結成され、2011年現在、29カ国が加盟している。
 2011年7月31日~8月3日にストックホルム(スウェーデン)で開催され、メンバー国27カ国の他、南極条約事務局、SCAR、チェコ共和国、IAATO(南極観光ツアー業協会)がオブザーバーとして出席。日本からは、藤井理行(国立極地研究所長)、白石和行(同副所長、COMNAP副議長)、石沢賢二(同南極観測センター)の3名が出席した。
 毎年開かれる総会では、さまざまな専門家グループによる分科会や調整会議が開かれ、南極条約協議国会合(ATCM)や環境保護委員会(CEP)からの諮問への対応や南極観測の抱える諸問題の討議、SCARとの協調や実際の南極におけるオペレーションの情報交換等の実務的な討議を行なっている。とくに、近年は南極観測における安全の確保、研究や観測が南極の環境に与える影響を最小限度にするための技術的問題、国際協力による研究や現地活動の推進についての話題が中心となっており、各国の南極観測事業実施における最も重要な国際会議として位置づけられている。

主なトピックス

  • ウエブサイトが更新され、情報交換の場が広がった。AFIM(飛行情報マニュアル)改訂版の検討、物資供給業者向けの南極の非在来生物種リストの作成、事故例のデータベースとしてAINMR(Accidents, Incidents and Near-miss Reporting)のシステム構築、津波による沿岸基地への災害予測報告など、多くのCOMANPプロジェクトに進展があった。
  • 各国観測活動の炭素排出量調査と各国基地の緊急事態対応策調査への協力が求められた。
  • 新たに、COMANPの歴史を25周年に出版すること、火山灰の影響によるリスクアセスメントに関するプロジェクトを始める。
  • 専門家グループの活動としては、SCARの医学グループとCOMNAPの医療専門家グループの合併により、医療医学合同グループで新たなTORのもとに活動が始まった。
  • 訓練専門家グループでも新たなTORの検討がなされた。
  • 各国の関心が高い安全問題については、今後も総会の都度、中心的テーマとして挙げることを確認した。
  • ノルウエーが冬至の時期に緊急飛行により越冬隊員をトロール基地から帰還させたことが報告された。
  • 各国の設営協力の会合をもった。特に夏期間の協力体制を強化するため、連絡通信網を充実すること、計画の周知徹底などが提案された。
  • その他、アウトリーチ専門家グループ、環境専門家グループの非公式会合や南極条約環境保護委員会代表との会談があった。

ワークショップ

  • EXCOM(執行委員会)が主催するワークショップ「COMNAPの目指す道」が開かれた。
  • 日本と中国の呼びかけで、「内陸トラバースワークショップ」が開かれ、内陸オペレーションの方法、技術的問題などに関して10件の口頭発表と約15件のポスター発表/展示があった。日本からは内陸で利用する新型無人トラクターの構想を発表した。

その他

  • EXCOMの改選があり、Heinz Miller(ドイツ) (議長); Juan Jose Danobeitia(スペイン), Brian Stone(米国)(以上、新選出の副議長); Mariano Memolli(アルゼンチン)、Yeungseng Li (中国)、Maaike Vancauwenberghe (ベルギー)(以上、継続の副議長); Michelle Rogan-Finnemore(事務局長)という構成になった。
  • 次回は2012年7月にSCARと共催で、米国ポートランド市で開催される。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課

-- 登録:平成24年02月 --