南極地域観測事業

第34回南極条約協議国会議(ATCM34)概要

平成23年7月1日
日本代表団

1.概観

 第34回南極条約協議国会議は、6月20日から7月1日までブエノスアイレスにおいて開催され、南極における科学的調査活動、観光・非政府活動のあり方、環境の保護、気候変動の影響、事務局の運営等について、集中的な議論が行われた。我が国からは、外務省・環境省・水産庁・文部科学省(国立極地研究所)が参加した。

2.各論

(1)南極条約発効50周年

 本年が南極条約発効50周年を迎えることから、23日午後に閣僚級会合が開催され、各国より人間活動の増大や気候変動の影響といった新しい問題に協力して取り組むことの重要性が示された。また、南極における国際協力や科学的調査の重要性を謳うとともに環境保護に関する南極条約議定書の未締結国に対する加入を促す内容の宣言が採択された。

(2)南極における我が国初の査察の実施

 我が国は、南極条約および環境保護に関する南極条約議定書の規定に基づき、2010年1月から2月にかけて南極において我が国として初めて6カ国の基地に対する査察を行った。今次会合では、我が国代表団よりその結果を発表し、各国から高い評価を得た。

(3)観光・非政府活動への対応

 現在、年間三万人を超える観光客が南極を訪れており、大型観光船のみならずヨット等小型船舶を使ったものなど、観光活動の形態も多様化している。このような状況に対応するため、南極環境の保護及び安全管理面から議論がなされた。また、南極観光に関する既存の制度を見直し、次回会合に向けて優先順位をつけて議論を進めるとともに、ヨット等小型船舶の活動を各国政府が認可する際に使用するチェックリストや南極観光活動に特化した査察用のチェックリストの作成に向けて、次回会合までの期間に、協議国等の間で議論を続けていくことになった。

(4)南極地域の環境保護

 南極地域には、環境上、科学上、歴史上、芸術上若しくは原生地域としての顕著な価値又は科学的調査の保護のため、71の南極特別保護地区(Antarctic Specially Protected Areas; 以下「ASPA」)、4の南極特別管理地区(Antarctic Specially Managed Areas; 以下「ASMA」)、及び85の南極史跡記念物(Historic Sites and Monuments; 以下「HSM」)が設定されている。これらASPA及びASMAには、それぞれが有する価値を保護するため、地区毎の管理計画が策定されており、これらに基づき、厳正な保護がなされているところである。今次会合では、既存の9地区のASPAの現行管理計画の改正、1地区のASMAの現行管理計画の改正、及び1件のHSMの新規指定、1件のHSMの改正が採択された。

(5)南極条約事務局の運営

 南極条約事務局から前年比名目ゼロ成長の来年度予算案が提出され、了承された。予算増を抑えるための事務局の堅実な取り組みが多くの国から高く評価された。また、各国が提出する会議文書の翻訳経費を可能な限り抑え効率的な会議運営を実現するために、文書の種類に翻訳を行わない背景文書という新たなカテゴリーを設けることになった。過去の決定等ですでに有効でなくなっているものの整理が行われるとともに、事務局が国際機関等から照会を受けた際の具体的な対応について決定され、手続規則が改定された。

(6)次回会合

 第35回南極条約協議国会議は従来より会期を2日短縮し、2012年6月4日から13日まで、オーストラリアのホバートで開催される。

(参考)

 南極条約は、1959年に採択され、1961年に発効。2010年5月現在、締約国数は48。そのうち、我が国を含む28カ国が協議国となっている。我が国は、同条約の原署名国であり、1960年に同条約を締結、協議国として、南極地域における平和の維持、科学的調査の自由の保障とそのための国際協力、軍事利用の禁止、領土権主張の凍結、環境保全と海洋生物資源の保存等の面で、積極的役割を果たしてきている。その後、1991年には環境保護に関する南極条約議定書が採択され、環境影響評価(附属書1)、南極の動物相及び植物相の保存(附属書2)、廃棄物の処分及び廃棄物の処理(附属書3)、海洋汚染の防止(附属書4)、南極特別保護地区規定等(附属書5)と共に1998年に発効、南極の環境及び生態系の包括的保護が進められている。

(了)

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-- 登録:平成24年02月 --