南極地域観測事業

第52次南極観測隊同行結果報告

1.背景・目的

 環境省は、「環境保護に関する南極条約議定書(以下「議定書」という。)」の国内担保法である「南極地域の環境の保護に関する法律(以下「法」という。)」に基づき、南極地域の環境保護を推進しているところであるが、日本から遠く離れている同地の法の実効性を確保するためには、現地における法の履行状況の確認が必要である。このため、法の付帯決議においても環境省職員の派遣が定められているところである。
 環境省は、平成9年度から断続的に職員を南極地域観測隊(夏隊)に同行させ、現地における同法の履行状況の確認、及び環境影響に関する情報収集等を行ってきており、今回で8回目の同行であった。

2.期間

派遣期間:平成22年11月24日~平成23年3月20日

うち現地活動機関:平成22年12月23日~平成23年2月18日

3.確認・調査内容

 第52次南極地域観測隊(夏隊)に環境省職員1名が同行し、以下を目的とした確認・調査を行った。

(1)南極地域活動実態把握調査

 南極地域における実際の活動と確認申請事項との整合、及び法の遵守状況の確認を行った。

(2)南極地域環境調査

 昭和基地及び周辺露岩地域等における動植物相等を把握するための調査を行った。

(3)南極地域環境資質調査

 我が国が管理主体となっている第141南極特別保護地区(Antarctic Special Protected Area:以下「ASPA」という。)であるラングホブデ雪鳥沢の管理計画レビューのための調査を行った。

(4)南極地域環境実態把握モニタリング調査

 昭和基地を運営する南極地域観測隊が周辺環境に与える影響を継続的にモニタリングするため、基地周辺の水、土、生物等のサンプル採取を行った。

(5)査察に関する昭和基地の現状確認

 平成21年度のオーストラリアによる昭和基地査察時に受けた指摘事項の確認を行った。

4.確認・調査箇所

 観測活動については、ルンドボークスヘッタ、ラングホブデ雪鳥沢、ラングホブデ袋浦、水くぐり浦、スカレビークハルセン、とっつき岬、スカルブスネスきざはし浜、オングルカルベン、ラングホブデ雪鳥沢、設営活動については、自然エネルギー棟建設工事現場、PANSYアンテナ設置工事現場に同行し、確認・調査を行った。

5.確認・調査結果

 4.の箇所において、3.の確認・調査を行ったところ、結果概要は以下の通りであった。

(1)南極地域活動実態把握調査

 確認申請事項との整合、及び法の遵守状況の確認を行ったところ、以下の行為等が確認された。

(ア)コンクリートプラントの洗浄水の扱い

 コンクリートプラントのオペレーションが申請通り行われているかを確認した。その結果、コンクリート洗浄水はドラム缶に入れ、上澄みだけを流し、沈殿物したものは廃棄物として持ち帰ることとなっていたが、実際には洗浄水はドラム缶などで受けることなくそのまま現場で廃棄されていた。

(イ)土砂の採取及び廃棄

 第一夏隊宿舎と自然エネルギー連建設現場の中間に当たる斜面において確認申請に記載のない土砂の採取が確認された。また、特にAヘリポート周辺にて確認申請に記載のない土砂の盛土が確認された。

(ウ)廃棄物等の残置

 昭和基地及び周辺地域等においては、環境保全隊員を中心とした一斉清掃作業により廃棄物は減少しつつある。しかし、撤去されたアンテナの基礎や支線、コンクリートブロック、木片等が多数残置されていることから、取り扱いについて検討の上、廃棄物については撤去する必要がある。

(2)南極地域環境調査

 観測隊に同行した地区において移入種の有無を確認したところ、移入種は発見されなかった。

(3)南極地域環境資質調査

 ASPA141の管理計画では立入許可条件で「科学的目的」もしくは「管理目的」として、それ以外の立入を禁止している。確認申請時、しらせ船内及び現地において報道と教員の立入について数度にわたり要望があったところ、要すれば管理計画レビューにおいて立入許可条件の見直しを検討する必要がある。

(4)南極地域環境実態把握モニタリング調査

 モニタリング試料の採取を、水質5地点、土壌調査4地点で行った。また、生物(ペンギン(死体)4羽、ショウワギス10匹)の採取を行った。
 調査結果については、各試料の分析結果が出る本年の秋頃に専門家による検討委員会を開催、同結果を分析の上、公表することを予定している。

(5)査察に関する昭和基地の現状確認

 2010年にオーストラリアによる昭和基地の査察で指摘を受けた事項として、オイル漏れ及び放置された廃棄物の問題があった。オイル漏れについては今回も確認され、基地でのミーティングにて改善方法を議論した。廃棄物については改善されつつあることを確認した。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課

-- 登録:平成24年02月 --