埋設処分業務の実施に関する基本方針

平成20年12月25日
文部科学大臣
経済産業大臣

1. はじめに

(1)基本方針の位置づけ

 原子力は、原子力発電やそれを支える核燃料サイクルのみならず、研究開発や産業、医療などの幅広い分野において利用されており、我々は、様々な形で原子力の便益を享受している。一方で、原子力の利用に伴い発生する放射性廃棄物については、原子力の便益を享受した世代が、対応を先送りすることなく、安全な処理・処分への取組に全力を尽くさなければならない。
 原子力発電で生じた使用済核燃料の再処理から生じる高レベル放射性廃棄物等の地層処分については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(平成12年法律第117号、以下「最終処分法」という。)により、認可法人原子力発電環境整備機構(以下「NUMO」という。)が処分の実施主体とされており、また、原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については、既に日本原燃(株)が処分事業を行っている。
 一方、研究機関、大学、医療機関、民間企業等において、放射性同位元素や放射線発生装置、核燃料物質等が使用され、多様な低レベル放射性廃棄物(以下「研究施設等廃棄物」という。)が発生しているが、これらの研究施設等廃棄物については、現在、処分がなされず、各事業者において長期間にわたり保管されている状況にあり、近い将来、研究開発等に支障を来す懸念が高まっている。このため、研究施設等廃棄物について、早急かつ確実な処分事業の実施に向けた社会的な要請が高まっている。
 これらを踏まえ、第169回国会において、「独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律」(平成20年法律第51号)が成立した。この法律により、我が国の研究施設等廃棄物の約8割を発生させるとともに、処分に関する技術的知見を有する独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)が、研究施設等廃棄物の処分事業の実施主体として明確に位置づけられ、原子力機構以外の発生者(研究施設等廃棄物を発生させる事業者(集荷や保管を行う事業者を含む。))が発生させた研究施設等廃棄物についても、委託を受け、原子力機構が発生させた研究施設等廃棄物とともに一元的に処分を行うこととされた。
 本基本方針は、原子力機構が行う埋設処分業務が円滑かつ確実に実施されるよう、「独立行政法人日本原子力研究開発機構法」(平成16年法律第155号)第18条第1項の規定に基づき、定めるものである。

(2)埋設処分業務を進める際の基本的考え方

 原子力機構は、事業の実施主体として、責任を持って、主体的に埋設処分業務を実施することとし、国は、原子力機構が行う埋設処分業務が円滑に進むよう、原子力機構と一体となって埋設施設の立地に向けた活動に取り組むなど、積極的に原子力機構を支援する。
 原子力機構は、以下の基本的考え方に基づき、埋設処分業務を実施する。
安全の確保
 原子力機構は、関係法令を厳に遵守し、関係者に対する十分な教育・訓練の実施をはじめ、事業の安全確保に万全を期する。
事業の透明性及び信頼の確保
 原子力機構は、積極的な情報公開を通じ、事業の透明性及び信頼の確保に努める。
立地地域の理解と共生
 原子力機構は、事業の意義・目的や、安全確保のための取組について、立地地域住民をはじめとする国民の理解の増進を図るとともに、埋設施設の立地が、立地地域の活性化につながるよう、立地地域との共生に努める。
発生者による応分の負担と協力
 事業に要する費用については、原子力政策大綱で示された「発生者責任の原則」に基づき、発生者は、廃棄物の量や性状等に応じて応分の負担をするとともに、処分事業の円滑な実施に協力する。
合理的な処分の実施
 原子力機構は、安全確保を大前提に、効率的な処分を行うための研究開発を進め、経済性に配慮しつつ合理的な処分の実施に努める。

2. 埋設処分業務の対象とすべき放射性廃棄物の種類に関する事項

(1)埋設処分業務の対象とすべき放射性廃棄物の種類について

 原子力機構の行う埋設処分業務の対象とすべき研究施設等廃棄物は、最終処分法に基づきNUMOの業務に属する地層処分が必要な高レベル放射性廃棄物等を除いた低レベル放射性廃棄物のうち、次に掲げるものとする。
1)原子力機構の業務に伴い発生した低レベル放射性廃棄物(日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構から承継した放射性廃棄物を含む。)
2)原子力機構以外の研究機関、大学、医療機関、民間企業等の原子力利用により発生した低レベル放射性廃棄物のうち、これらの発生者から原子力機構が処分の委託を受けた放射性廃棄物
 現在、原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については、日本原燃(株)が処分を行っている。このような、他の事業者によって処分が行われる放射性廃棄物については、原子力機構の埋設処分業務の対象としないが、原子力機構は、日本原燃(株)と密接に協力し、廃棄物の種類によっては一元的な処分を検討することを含め、我が国全体として抜け落ちのない効率的な放射性廃棄物の処分体制の構築を図る。

(2)当面、第一期事業において取り扱う研究施設等廃棄物について

 放射性廃棄物の処分は、原子力関連施設の解体を含めた原子力利用の進ちょくや、放射性廃棄物の処分に関する安全規制の整備の進ちょく等に応じて、合理的な処分体制を構築しつつ、段階的に実施する。
 当面、最初の事業として原子力機構が行う研究施設等廃棄物の処分事業(以下「第一期事業」という。)においては、平成60年度までに発生が見込まれる廃棄物であって、4.(1)に掲げる方法(トレンチ処分及びピット処分)による処分が可能なものを対象とすることとする。
 第一期事業の対象とする廃棄物の処分の方法ごとの物量の見込み等については、「独立行政法人日本原子力研究開発機構法」第19条第1項の規定に基づき原子力機構が作成する埋設処分業務の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)の中で明確化する。
 なお、研究施設等廃棄物のうち、一般的な地下利用に対して十分に余裕を持った深度(地表から50メートル以深)に処分する方法による処分(余裕深度処分)が必要となる廃棄物については、今後の原子力利用の進ちょく等を踏まえつつ、その取扱いについて検討を進める。

3. 埋設施設の設置に関する事項

(1)埋設処分地の選定

 埋設施設の立地の選定については、手続きの透明性を確保し、公正な選定を行うことを基本とし、原子力機構は、実施計画において、埋設施設の立地の選定に係る手順及び基準を明確に定め、これを公表するとともに、当該手順等に沿って、埋設施設の立地の選定を行う。
 原子力機構は、埋設施設の立地の選定に係る基準を定めるに当たっては、原子力安全委員会が作成した「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」(昭和63年3月/平成5年1月、平成13年3月一部改訂)において示された、埋設施設の敷地及びその周辺における自然環境や社会環境等に関する基本的立地条件を踏まえる。さらに、埋設処分業務を円滑に実施する観点から、一定規模の事業用地の確保の容易さ、廃棄体の輸送の利便性等に関する基準についても定める。
 原子力機構は、埋設施設の立地について、当該地点の属する地方自治体(市区町村及び都道府県)の了解を得るものとする。
 国は、研究施設等廃棄物の処分を推進する立場から、処分事業の実施主体である原子力機構と一体となって、埋設施設の立地のために必要な活動に取り組む。

(2)立地地域住民及び国民の理解と協力

 研究施設等廃棄物の処分事業の円滑な実施のためには、当該事業について、立地地域の住民をはじめ、広く国民の理解を得ることが不可欠である。
 国及び原子力機構は、研究施設等廃棄物の処分事業について積極的な情報公開に努めるとともに、発生者の協力も得つつ、広聴・広報活動を充実し、広く国民に対して、事業の意義・目的や、安全性について理解の増進を図る。また、原子力機構は、事業に関する国民の懸念や不安に対して的確に応じられるよう、一元的な相談・情報発信体制を整える。
 特に、埋設施設の立地地域の住民に対しては、説明会やシンポジウム等を通じて、安全確保のための取組、埋設施設の立地が自然環境や社会環境に及ぼす影響等について、住民の視点に立って分かりやすく説明する。

(3)立地地域との共生

 国及び原子力機構は、研究施設等廃棄物の埋設施設が地域と共生し、その立地が、立地地域の持続的な活性化につながるような方策を講じる。その際、事業の実施主体である原子力機構の研究開発能力を活かした方策の可能性についても検討する。また、本処分事業の便益を享受する他の発生者に協力を求めることも考慮する。 

4. 埋設処分の実施の方法に関する事項

(1)埋設処分の方法

 第一期事業においては、原子力機構は、廃棄物に含まれる放射性核種の種類や濃度、性状等に応じ、次に掲げる方法により、浅い地中に埋設処分を行う。
1)浅い地中に、鉄筋コンクリート製の施設(コンクリートピット)を設置して処分する方法(ピット処分)
2)放射能濃度が極めて低いものについて、トレンチ(壕)を掘り、コンクリートピット等の人工構造物を設置しない方法により、浅い地中に処分する方法(トレンチ処分)
 原子力機構は、研究施設等廃棄物の埋設施設について、埋設処分が終了し、施設を閉鎖した後は、埋設処分した廃棄物の放射能が減衰し、安全上支障のないレベルになるまでの間、当該施設が存在した区域を適切に管理し、安全を確保する。

 (2)事業運営

 研究施設等廃棄物の埋設処分業務は、原子力機構が行う研究開発業務と異なる性格を有していることから、原子力機構は、事業の運営に関し、以下の事項について特段の配慮を行い、円滑な事業運営を図る。
1)処分事業を安全かつ確実に実施するために必要な人員を適切に配置し、十分な教育・訓練を実施するとともに、事業に対する国民・社会の信頼を確保するため、情報公開とコンプライアンス(法令遵守)の徹底に努めること。
2)他の発生者からも費用を徴収して研究施設等廃棄物の埋設処分を行うことから、本事業と、原子力機構が行う他の事業とで、経理を厳正に区分し、徴収した資金を確実に処分事業に充てること。
3)長期にわたり事業を確実に継続しなければならないことから、資金管理を適切に行い、計画的に事業展開できる体制を構築すること。
4)クリアランス制度や、ウラン廃棄物に係る安全規制の整備の進ちょくに適切に対応すること。また、廃棄物に関する研究開発を進め、処分事業に最新の技術的知見を積極的に活用すること。
5)全国の様々な事業所から発生する廃棄物を取り扱い、廃棄物の集荷や処理などの関連する事業とも密接な連携が必要となることから、これらの関係者のニーズを適切に把握するとともに、廃棄物の取扱いや受入れに関して原子力機構が作成する基準や指針、技術情報の共有など、関係者との連携、協力を進めること。
 国は、関係者間の連携協力を促進するとともに、必要な予算の確保に努める。

5. 資金計画に関する事項

(1)資金計画の策定

 原子力機構は、第一期事業で処分を行うこととなる研究施設等廃棄物について、放射性廃棄物の処分に関する規制の最新の動向などを踏まえ、処分の方法ごとの物量調査を行い、これに基づき、第一期事業を合理的かつ確実に実施するために必要な総事業費を見積もり、収支計画及び資金計画を実施計画の中で公表する。また、これらについては、定期的に見直しを行う。
 原子力機構は、収支計画及び資金計画に基づき、埋設処分の方法ごとに、透明性を確保しながら公正かつ合理的な処分単価を設定することとし、これらの計画に変更が生じた場合には、処分単価を適切に見直す。

(2)必要な資金の確保及び適正な管理

 原子力機構は、設定した処分単価に基づき、自ら発生した廃棄物の処分に要する経費に相当する額を計画的に措置するとともに、他の発生者から処分の委託を受ける際は、確実に処分に要する経費を徴収する。これらの資金は原子力機構が行う他の事業とは独立した、埋設処分業務に係る勘定(以下「処分勘定」という。)で適切に管理し、埋設処分業務の実施に必要な経費として充てるものとする。処分勘定については、毎年度、独立行政法人会計基準などの関係法令に基づき、独立して決算を行い、その結果を公表する。 

6. その他埋設処分業務の実施に関する重要事項

(1)安全の確保

 原子力機構は、関係法令を遵守し、地域住民や作業員について万全の安全確保を図りつつ、研究施設等廃棄物の埋設処分業務を実施する。また、埋設処分業務に携わる全ての者に対して、定期的に安全管理に関する教育・訓練を施す。
 研究施設等廃棄物は、安全規制に関する複数の法令が適用されることを踏まえ、整合性のある安全規制の下で合理的に処分事業が実施されるよう、原子力機構は、安全規制当局に対して適切に情報提供を行う。

(2)廃棄物の発生段階での対応

 発生者は廃棄物の発生量の低減に努めるとともに、適切に廃棄物の分類・管理を行う。国は、発生者における廃棄物の保管量や保管状況を定期的に把握する。 

(3)輸送・処理に係る体系的な対応

 国及び原子力機構は、主要な関係機関(社団法人日本アイソトープ協会や財団法人原子力研究バックエンド推進センター等)と協力しながら、廃棄物の集荷や輸送、焼却や減容等の処理などを含めて、研究施設等廃棄物の合理的・体系的な処理・処分体制を構築する。 

(4)放射性廃棄物の低減や安全性向上のための研究開発の推進

 原子力機構は、廃棄物量の低減、合理的な処分の実施及び事業の安全性の向上に係る研究開発を充実する。

(5)年度計画の作成と実施状況の評価

 原子力機構は、埋設処分業務について、実施計画に基づき、毎年度、当該年度に実施する事業に関する計画(以下「年度計画」という。)を作成し、公表する。また、埋設処分業務の実施状況について、各年度終了後速やかに、当該年度の年度計画に照らして評価を行い、その結果を公表する。

 

お問合せ先

研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室

電話番号:03-6734-4576
ファクシミリ番号:03-6734-4419

(研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室)

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