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東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成-寧波を焦点とする学際的創生-(小島 毅)

研究領域名

東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成-寧波を焦点とする学際的創生-

研究期間

平成17年度~平成21年度

領域代表者

小島 毅(東京大学・大学院人文社会系研究科・准教授)

領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 本領域は、西暦10世紀から19世紀にいたる東アジア海域の交流の諸相を、この海域自体の歴史的変容過程を明らかにすることをとおして、日本におけるいわゆる伝統文化が形成されてくる仕組みを考究することを目的としてきた。その作業を通じて、人文学の諸分野はもとより、社会科学・自然科学系の研究者も参加した共同研究の場を構築し、従来の個別実証的な研究成果を多角的で総合的な観点から継承しつつ、新たな知見を獲得することによって、当該分野における研究の地平を開き、将来の研究進展にとっての確かな基礎となるものを提供する意義を持っている。
 具体的には、文献資料研究部門においては、史料を単に我々が利用するための道具として扱うのではなく、それらの史料が文字に記録された経緯、それが保存されて今に伝えられるにいたった過程を考慮し、文献資料という存在自体の性格を再検討することをめざした。現地調査研究部門においては、人文学のなかで従来フィールドワークとあまり関わらなかった分野を中心に、現地での調査・巡見による研究精度の向上や、研究手法の質的転換を課題とした。文化交流研究部門においては、異国間・他地域間の交流を周辺的な特殊な事例とみなすのではなく、日常的で本質的なものとしてとらえ、伝統文化の形成に際して諸種の交流が果たした役割を多面的に追究することによってその意義に対する再評価を試みた。

(2)研究成果の概要

 上記3部門それぞれに、文献資料研究部門は12、現地調査研究部門は10(中途から移籍により11)、文化交流研究部門は12(中途から移籍により11)の計画研究を配置し、それぞれに研究課題を設定して成果の獲得に努めた。その結果、個々の課題について、本領域設置前と比べて飛躍的な研究の進展が見られた。その概要は研究成果報告書に個別に記載してある。それらにより、寧波とその周辺地域の自然環境や社会文化が、中世以降の日本の歴史に対して、従来想定されていた以上に広範で重要な影響を与えていることを実証的に明らかにすることができた。
 また、領域全体に共通する課題となりうるものとして、6点にわたる重点項目を発見し、それら相互の有機的な関連のもとに、全6巻からなる書籍として総合的な叙述を行う作業に取り組むにいたった(2011年4月以降に公表の予定)。さらに、個別の計画研究や研究集会などの成果をもとに、それをさらに展開させるかたちで全17巻からなる叢書の編集作業を開始している(2010年10月より順次刊行予定)。このように、領域終了後も、ここで得られた成果の整理作業や、新たな課題の発見にともなう次の段階の研究が進捗している状況である。

審査部会における評価結果及び所見

B (研究領域の設定目的に照らして、十分ではなかったが一応の成果があった)

 本研究領域は、寧波を焦点としつつ、東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成についての学際的なアプローチを目指したものであり、具体的な歴史学上の新発見を含む多くの成果をもたらした。この研究領域の成果発表の一環として『東アジア海域叢書』(全20巻)『東アジア海域講座』(全6巻)の刊行が計画されており、これらを通じて東アジア海域交流や、五山文化や儒教を含む日本伝統文化についての研究と理解が大きく進展することが期待される。啓蒙的な「にんぷろかるた」の作成・配布を含めて、広範囲な成果発信に対する積極的な姿勢が評価される。
 一方で、個別具体的な成果を越えて、この研究領域全体として何が明らかになったのかが明確ではない。また世界の学会の中での位置付けもまだはっきりしていない。また研究領域名にうたわれている「学際的創生」という観点から見た場合に、自然科学を含む学際的恊働によって、個別具体的な発見を越えてどのような新しい学問的視野が開かれたかも明らかではない。このように、研究領域の設定目的に照らして達成が不十分な面もあるが一定の成果があったものと評価できる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年01月 --