高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約

          前文
    この規約の締約国は、地理的、文化的、教育的及び経済的なきずなを強化するという共通の意思に従い、国際連合教育科学文化機関憲章に定めるとおり「この機関の目的は、教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献することである」ことを想起し、アジア太平洋における教育に係る伝統、制度及び価値観に著しい多様性が存在することを認識し、アジア太平洋において存在する文化及び高等教育制度の多様性が、特別の資源であることを確信し、アジア太平洋において知識の向上を奨励し、及び高等教育の質を不断に改善するため、締約国の人的な潜在力を最も適当な形で利用することを目的として、締約国間の協力を強化し、及び拡充することを約束し、自国の規則に妥当な考慮を払いつつ、各締約国の国民(特に学生及び学者)による各締約国の教育資源の利用を容易にすることにより、アジア太平洋の人々が文化資源を十分に活用できるようにすることを希望し、締約国間の協力の枠組みにおいて、高等教育の資格の承認が、学生及び学者の国際的な移動を容易にすることを確信し、アジア太平洋において経済的、社会的、文化的及び技術的な発展を容易にし、並びに平和を促進することを目的として、文化交流を強化することが必要であることに留意し、多くの締約国が、これらの締約国間で高等教育の資格の承認に関する二国間又は小地域の協定を締結していることを想起しつつも、この規約によってアジア太平洋全域に協力を拡大することによりかかる努力を強化することを希望し、 この規約が、世界の他の地域を対象とする国際連合教育科学文化機関(以下「ユネスコ」という。)の承認に関する規約及び千九百九十三年の高等教育における修学及び資格証書の承認に関するユネスコの勧告との関連においても考慮されるべきであることに留意し、これらの規約が採択された後、アジア太平洋における高等教育の広範にわたる変化が、国内及び各国間の教育制度の多様化を著しく展開させたこと並びにこうした展開を反映するよう法的文書及び慣行を調整する必要があることを認識し、他のユネスコの地域規約の当事国と共に世界的な規模で積極的な国際協力に従事する意思を有し、高等教育の資格の承認に関する実際的な課題について共通の解決策を見出す必要があり、これによりアジア太平洋における学生及び学者の移動が容易になることを認識し、承認に関する現在の慣行を改善し、並びに当該慣行を一層透明性の高いものとし、及びアジア太平洋における高等教育の現状に一層適合させる必要があることを認識し、各締約国が他の締約国によって付与された高等教育の資格を承認することは、締約国間の高等教育上の移動を促進するための重要な措置となるものであることを考慮し、各締約国の文化的状況に適した方法により生涯教育及び教育の民主化を促進するため、高等教育の資格の承認をできる限り広範に確保することを希望し、各締約国が資格のための制度を設け、及び認める権利並びに各締約国の機関の自律性を尊重して、次のとおり協定した。
        第一章 用語の定義
          第一条
    この規約の適用上、
    「千九百八十三年規約」とは、千九百八十三年十二月十六日にバンコクで採択されたアジア太平洋における高等教育に係る修学、修了証書及び学位の承認に関する地域規約をいう。
    「(高等教育を)受ける機会」とは、資格を有する候補者が高等教育への入学を出願し、その入学許可について検討される権利をいう。
    「認定」とは、高等教育課程又は高等教育機関について、適当な水準を満たしているものとして承認し、又は証明することを可能にする評定及び検討の過程をいう。
    「(高等教育機関及び高等教育課程への)入学許可」とは、資格を有する者による特定の高等教育機関又は高等教育課程における修学を認める行為又は制度をいう。
    「(機関又は課程の)評定」とは、高等教育機関又は高等教育課程の教育の質を確認する過程をいう。
    「(個人の資格の)評定」とは、権限のある承認当局が外国において付与された個人の資格に対して行う書面による審査又は評価をいう。
    「避難民」とは、自らの所在地又は環境及び職業上の活動から離れることを強制された者をいう。
    「権限のある承認当局」とは、政府機関又は政府により公式に認められた非政府機関であって、外国において付与された資格の承認について決定を行うものをいう。
    「締約国の構成要素」とは、国、州、連邦又は地域の段階における公的機関をいう。
    「(高等教育課程を)受講するための一般要件」とは、高等教育を受ける機会のためにいかなる場合においても満たされなければならない条件をいう。
    「高等教育」とは、締約国の関係当局が自国の高等教育制度に属すると認める中等教育後の教育、訓練又は研究をいう。
    「高等教育機関」とは、締約国の関係当局が認める高等教育を提供する施設をいう。
    「高等教育課程」とは、締約国の関係当局が自国の高等教育制度に属すると認める修学の課程であって、その修了によりその学生に対して高等教育の資格を付与するものをいう。
    「準用」とは、「それぞれの相違を考慮して」を意味するラテン語の語句である。
    「非伝統的な資格取得の形態」とは、代替的な提供手段を通じて資格を取得することをいう。
    「部分的な修学」とは、高等教育課程の同質な部分であって、それ自体は完結した課程ではないが、知識及び技能の相当の取得と同等に取り扱うことができるものをいう。
    「高等教育を受ける機会を与える資格」とは、関係当局が付与する資格であって、教育課程を修了したことを証明し、及び当該資格を有する者に高等教育への入学許可について検討される権利を与えるものをいう。
    「高等教育の資格」とは、高等教育機関が付与する学位、修了証書その他証明書であって、高等教育課程を修了したことを証明するものをいう。
    「質の保証」とは、受入可能な水準が維持され、及び引き上げられていることを利害関係者に保証するため、高等教育制度、高等教育機関又は高等教育課程の質を評価し、及び向上させるための進行中の過程をいう。
    「従前の学習の承認」とは、いずれかの者が正規の又は正規でない学習の結果として有する知識及び技能を正式に認めるための過程をいう。
    「資格の承認」とは、締約国の権限のある承認当局が外国において付与された教育の資格の価値について定め、及びその価値に対して与える正式な確認をいう。
    「中等教育」とは、初等教育、準備教育若しくは中間教育又は基礎教育に続くあらゆる修学の段階(生徒に高等教育のための準備をさせること、中等学校の修了証書の取得に生徒を導くこと又は生徒が高等教育に進学することを可能にすることをその目的に含み得るもの)をいう。
    「(高等教育への入学許可のための)特定の要件」とは、特定の高等教育課程への入学許可を得るため、又は高等教育における特定の修学分野に係る特定の資格を付与されるため、一般要件に加えて満たされなければならない条件をいう。
    「ユネスコ修了証書補足文書」とは、欧州地域における高等教育に関する資格の承認に関する規約(「リスボン承認規約」と一般に呼ばれるもの)の参考文書であって、当該補足文書が添付される資格の原本にその名が記載されている個人が行い、及び修了した修学の性質、水準、状況、内容及び状態に関する記述を提供する文書をいう。
        第二章 権限のある承認当局
          第二・一条
  1 締約国は、自国の中央当局が承認事項について決定を行う権限を有する場合には、この規約に直ちに拘束されるものとし、また、自国の領域内におけるこの規約の実施を確保するために必要な措置をとる。
  2 締約国は、承認事項について決定を行う権限が自国の構成要素にある場合には、署名の時若しくは批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の時に又はその後いつでも、自国の憲法上の状況又は構造に関する簡潔な説明を寄託者に提出する。このような場合には、権限のある承認当局に指定された締約国の構成要素は、自国の領域内におけるこの規約の実施を確保するために必要な措置をとる。
  3 各締約国は、承認事項について決定を行う権限が個別の高等教育機関その他の主体にある場合には、自国の憲法上の状況又は構造に従い、この規約の本文をこれらの高等教育機関又は主体に送付し、並びにこの規約に対する好意的な考慮及びその適用を奨励するために全ての可能な措置をとる。
  4 1から3までの規定は、次条以下の諸条に定める締約国の義務について準用する。
          第二・二条
    各締約国は、署名の時若しくは批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の時に又はその後いつでも、承認事項についての各種の決定を行う権限のある当局についてこの規約の寄託者に通報する。
          第二・三条
    この規約のいかなる規定も、一の締約国が付与する高等教育の資格の承認に関し、当該締約国が拘束される現行の若しくは将来における条約に含まれ、又はこれらの条約から生ずる一層有利な規定に影響を及ぼすものではない。
        第三章 資格の評定に関する基本原則
          第三・一条
  1 一の締約国が付与する資格を有する者は、権限のある承認当局への申請により、適時に、かつ、適切に当該資格の評定を受けることができる。
  2 各締約国は、1に定める資格を有する者の権利を確保するため、承認の申請がされた資格の評定が、得られた知識及び技能に主たる焦点を合わせたものとなるよう、適当な措置をとることを約束する。
          第三・二条
    各締約国は、資格の評定及び承認において用いられる手続及び基準が、透明性、一貫性、信頼性及び公平性を有し、かつ、差別的でない  ものであることを確保する。
          第三・三条
  1 承認についての決定は、承認が求められている資格に関する適当な情報に基づいて行う。
  2 適当な情報を提供する責任は、第一に資格を有する者が負う。当該資格を有する者は、誠意をもって当該情報を提供する。
  3 締約国は、適当な場合には、自国の教育制度に属する全ての教育機関に対し、これらの教育機関において取得された資格の評定を目的とする情報提供の合理的な要請に応ずるよう指導し、又は奨励する。締約国は、特に、自国の教育制度に属する教育機関に対し、要請に応じて、かつ、合理的な期間内に、資格を有する者又は承認が求められている締約国の教育機関若しくは権限のある承認当局に関連情報を提供することを奨励する。
  4 関連する要件を申請が満たしていないことを証明する責任は、資格の評定に関連する情報が適当に提供される限り、権限のある承認当局が負う。
          第三・四条
    各締約国は、資格の承認を容易にするため、自国の教育制度に関する適切かつ明確な情報が提供されることを確保する。
          第三・五条
    資格の承認についての決定は、権限のある承認当局が事前に定める合理的な期間内に行うものとし、当該期間については、当該資格に係る全ての必要な情報が提供された時から計算する。承認が与えられない場合には、承認を与えることを拒否する理由が表明され、及び当該資格を有する者がその後の段階で承認を得るためにとり得る措置に関する情報が提供される。承認が与えられない場合又は承認について何らの決定も行われない場合には、当該資格を有する者は、合理的な期間内に、各締約国における適当な手続を通じて不服申立てを行う権利を有する。
        第四章 高等教育を受ける機会を与える資格の承認
          第四・一条
    各締約国は、資格が取得された締約国における高等教育課程を受講するための一般要件と当該資格を承認することが求められている締約国における高等教育課程を受講するための一般要件との間に実質的な相違があることが明らかである場合を除くほか、自国の各高等教育課程を受講することができるよう、他の締約国によって付与された資格であって自国の各高等教育課程を受講するための一般要件を満たすものを承認する。
          第四・二条
    前条に規定する締約国による承認については、これに代えて、他のいずれか一の締約国において付与された資格を有する者が自己の要請によって当該資格の評定を得ることを可能にすることで足りるものとし、この場合には、同条の規定を準用する。
          第四・三条
    特定の高等教育課程への入学許可が、高等教育課程を受講するための一般要件に加えて特定の要件が満たされるか否かによるものである場合には、関係する締約国の権限のある承認当局は、他の締約国において取得された高等教育の資格を有する者に追加的な要件を課すること又は他の締約国において取得された高等教育の資格を有する者が同等の要件を満たしているか否かについて評定することができる。
          第四・四条
    学業修了証書を付与した締約国において当該学業修了証書を高等教育を受ける機会の前提としての追加的な資格試験と組み合わせることによってのみ高等教育を受ける機会が与えられる場合には、他の締約国は、これらの要件を自国における高等教育を受ける機会の条件とすること又は自国の教育制度においてこのような追加的な要件を満たすための代替的な措置を提示することができる。
          第四・五条
    特定の高等教育機関又は当該高等教育機関の高等教育課程への入学許可については、制限的又は選択的なものとすることができる。ただし、第四・一条から前条までの規定の適用を妨げない。高等教育機関又は高等教育課程への入学許可が選択的なものである場合には、入学許可の手続は、外国において付与された高等教育の資格の認定が前章に定める公平性及び無差別の基本原則に従って実施されることを確保するものとすべきである。
          第四・六条
    特定の高等教育機関への入学許可については、資格を有する者による当該高等教育機関における修学を有益なものとするため、その一又は二以上の教授言語その他特定の言語について当該資格を有する者が十分な能力を有していることを証明することを条件とすることができる。ただし、第四・一条から前条までの規定の適用を妨げない。
          第四・七条
    非伝統的な資格取得の形態により取得された資格であって、これにより一の締約国において高等教育を受ける機会が認められるものは、他の締約国において公正な方法で評定される。
          第四・八条
    各締約国は、高等教育課程への入学許可のため、自国の領域内で運営されている外国の教育機関によって付与された資格について、自国の法令が定める特定の要件又は自国と当該教育機関の本国である締約国との間で締結した特定の協定に基づいて承認することができる。
        第五章 部分的な修学の承認
          第五・一条
    各締約国は、他の締約国の高等教育課程の枠組みの中で修了した部分的な修学を適当な場合には承認し、又は少なくとも評定する。承認するとは、当該修了した部分的な修学と承認が求められている締約国の高等教育課程の一部又は全部との間に実質的な相違があることが明らかである場合を除くほか、承認が求められている締約国の高等教育課程の修了のために当該部分的な修学を考慮に入れることをいう。
          第五・二条
    前条の規定は、非伝統的な資格取得の形態により行われた部分的な修学について準用する。
          第五・三条
    各締約国は、特に、次の場合において、部分的な修学の承認を容易にする。
    (a) 次の(i)と(ii)との間に事前の合意がある場合
      (i) 関連する部分的な修学に責任を有する高等教育機関又は権限のある承認当局
      (ii) 求められている承認に責任を有する高等教育機関又は権限のある承認当局
    (b) 学生が部分的な修学を修了した高等教育機関が、当該学生が当該部分的な修学のために定められた要件を満たしたことを証明する証書又は成績証明書を付与している場合
        第六章 高等教育の資格の承認
          第六・一条
    各締約国は、承認についての決定が主に高等教育の資格によって証明される知識及び技能に基づくものである場合には、実質的な相違があることが明らかである場合を除くほか、他の締約国において付与された高等教育の資格を承認する。
          第六・二条
    前条に規定する締約国による承認については、これに代えて、他の締約国において付与された高等教育の資格を有する者が自己の要請によって当該資格の評定を得ることを可能にすることで足りるものとし、この場合には、同条の規定を準用する。
          第六・三条
    前二条の規定は、締約国の教育制度の枠組みの中で、かつ、当該締約国の規制に従っ    て非伝統的な資格取得の形態により取得された高等教育の資格について準用する。
          第六・四条
    いずれかの締約国における他のいずれかの締約国において付与された高等教育の資格の承認は、次の結果のうち一又は二以上のものをもたらし得る。
    (a) 承認が求められている締約国において当該締約国の資格を有する者に適用される条件と同じ条件に基づき、更なる高等教育(関連する試験を含む。)を受ける機会又は大学院課程の準備課程の受講
    (b) 承認が求められている締約国の法令又は当該締約国内の管轄区域の法令に従った学術上の称号の使用
    (c) 承認が求められている締約国の法令又は当該締約国内の管轄区域の法令に従った雇用の機会
          第六・五条
   締約国の権限のある承認当局による他の締約国において付与された高等教育の資格の評定については、次の者のうち一又は二以上のものに対する意見として利用することができる。
    (a) 教育機関(当該教育機関の課程への入学許可を目的とする場合)
    (b) 他の権限のある承認当局
    (c) 潜在的な雇用者
          第六・六条
    各締約国は、自国の領域内で運営されている外国の高等教育機関によって付与された高等教育の資格について、自国の法令が定める特定の要件又は自国と当該高等教育機関の本国である締約国との間で締結した特定の協定に基づいて承認することができる。
        第七章 難民、避難民及び難民に類する状況にある者が有する資格の承認
          第七条
    各締約国は、自国の教育制度の枠組みの中で、並びに自国の憲法上及び法令上の要件に従い、難民、避難民及び難民に類する状況にある者が一の締約国において取得した資格につき証拠書類によって証明できない場合においても、これらの者が高等教育課程の受講又は雇用に係る活動を行うための資格の承認について関連する要件を満たしているか否かを公正かつ迅速に評定するための手続(従前の学習の承認を含む。)を作成するため、あらゆる合理的な努力を払う。
        第八章 評定事項及び認定事項並びに承認事項に関する情報
          第八・一条
    各締約国は、自国の高等教育制度に属する教育機関によって付与された資格の質が承認が求められている締約国における承認を正当化するものであるか否かについて、他の締約国の権限のある承認当局が確認することができるようにするため、これらの教育機関及び自国の質の保証の制度に関する適切な情報を提供する。この情報には、次のものを含める。
    (a) 自国の高等教育制度に関する説明
    (b) 自国の高等教育制度に属する各種の高等教育機関の概要及び各種の高等教育機関の典型的な特徴の概要
    (c) 自国の高等教育制度に属する承認され、又は認定された高等教育機関(公立及び私立)の一覧であって、各種の資格を付与するこれらの高等教育機関の権限並びに各種の高等教育機関に入学し、及び各種の課程を受講するための要件を示すもの
    (d) 質の保証の仕組みに関する説明
    (e) 自国の教育制度に属すると認める自国の領域外に所在する教育機関の一覧
          第八・二条
    各締約国は、高等教育の資格の承認を容易にするため、次のことにより、関連する情報で正確な、かつ、最新のものを提供する。
    (a) 自国の高等教育制度及び資格に関する信頼すべき、かつ、正確な情報の入手を容易にすること。
    (b) 他の締約国の高等教育制度及び資格に関する情報の入手を容易にすること。
    (c) 自国の法令に従い、承認事項及び資格の評定に関する助言又は情報を提供すること。
          第八・三条
    各締約国は、高等教育に関する情報を提供する国内情報センターの設立及び維持のための適切な措置をとる。各締約国の国内情報センターの形態は、異なり得る。
          第八・四条
    締約国は、自国の国内情報センターを通じて又は他の方法により、次の文書の利用を促進する。
    (a) ユネスコ修了証書補足文書又は他の同等の資格の補足文書
    (b) 国境を越える高等教育の質の保証に関するユネスコ及び経済協力開発機構の指針又は自国の各高等教育機関が自国の法令に従って作成する同等の文書
        第九章 実施
          第九・一条
    この規約の実施を監督し、促進し、及び容易にするための機関は、高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約委員会(以下「委員会」という。)とする。
          第九・二条
  1 この規約により設置する委員会は、各締約国の一人の代表者で構成する。
  2 この規約の締約国でない国は、委員会の会合にオブザーバーとして参加することができる。アジア太平洋地域において承認の分野で活動する政府機関及び非政府機関の代表者についても、委員会の会合にオブザーバーとして出席するよう招請することができる。
  3 委員会は、締約国の権限のある承認当局がこの規約を実施し、及び高等教育の資格の承認の申請について検討するに当たり、指針となる勧告、宣言、議定書及び良い慣行のひな形を、締約国の過半数による議決で採択することができる。締約国は、これらの文書に拘束されないが、これらの文書を適用し、これらの文書に対する権限のある承認当局の注意を喚起し、及びこれらの文書の適用を奨励するため、最善の努力を払う。
  4 委員会は、ユネスコの枠組みの下で採択された高等教育に係る修学、修了証書及び学位の承認に関する規約の適用のためのユネスコ地域委員会との関係を維持する。
  5 委員会の会合の定足数は、締約国の単純多数とする。
  6 委員会は、その手続規則を採択する。委員会は、少なくとも三年ごとに通常会合として会合する。委員会は、この規約が効力を生じた後一年以内に第一回会合として会合し、この規約の実施を管理するため、その後五年間は、毎年会合する。
  7 委員会の事務局の役割は、ユネスコ事務局長に委託する。
          第九・三条
  1 高等教育上の移動及び学術上の承認に関する国内情報センターのネットワークを設立する。同ネットワークは、権限のある承認当局によるこの規約の実際的な実施を支持し、及び支援する。
  2 各締約国は、国内情報センターのネットワークに対し、自国の国内情報センターの構成員の一人を任命する。二以上の国内情報センターが設立され、又は維持される場合には、これらの国内情報センターの全てが、同ネットワークの構成員となる。ただし、これらの国内情報センターは、一の票のみを有する。
  3 国内情報センターのネットワークは、全体会合として毎年会合する。同ネットワークは、議長その他の議長団を選出する。
  4 国内情報センターのネットワークの事務局の役割は、ユネスコ事務局長に委託する。
  5 国内情報センターのネットワークは、学術上の承認及び高等教育上の移動に  ついて、関連する情報を締約国から収集する。
        第十章 最終規定
          第十・一条
  1 この規約は、全てのユネスコ加盟国及びバチカン市国による署名及び批准、受諾、承認又は加入のために開放しておく。
  2 全てのユネスコ加盟国及びバチカン市国は、次のいずれかの方法により、この規約に拘束されることについての同意を表明することができる。
    (a) 批准、受諾、承認又は加入を条件とすることなく署名すること。
    (b) 批准、受諾、承認又は加入を条件として署名した後、批准し、受諾し、承認し、又は加入すること。
    (c) 批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託すること。
  3 批准書、受諾書、承認書又は加入書は、ユネスコ事務局長(以下「寄託者」という。)に寄託する。
          第十・二条
    この規約は、アジア太平洋地域の五のユネスコ加盟国が、この規約に拘束されることについての同意を表明した後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。他の国については、この規約に拘束されることについての同意を表明した日の後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
          第十・三条
  1 この規約の締約国であって千九百八十三年規約の当事国でない国は、千九百八十三年規約の当事国となることを差し控えることを約束する。
  2 この規約の締約国であって千九百八十三年規約の当事国である国については、次のとおりとする。
    (a) これらの締約国の相互の関係においては、この規約を適用する。 
    (b) 千九百八十三年規約の当事国であってこの規約の締約国でない国との関係においては、引き続き千九百八十三年規約を適用する。
          第十・四条
  1 いずれの国も、署名の時又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の時に、この規約を適用する領域を特定することができる。
  2 いずれの締約国も、その後いつでも、寄託者に宛てた宣言により、当該宣言において特定する他の領域についてこの規約の適用を拡大することができる。この規約は、当該他の領域については、寄託者が当該宣言を受領した日の後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
          第十・五条
  1 いずれの締約国も、寄託者に宛てた通告により、いつでもこの規約を廃棄することができる。
  2 廃棄は、寄託者が通告を受領した日の後十二箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。ただし、廃棄は、この規約に従って既に行われた承認についての決定に影響を及ぼすものではない。
  3 この規約の趣旨又は目的の達成に不可欠な規定の締約国による違反の結果としてのこの規約の終了又は運用停止は、国際法に従って行う。
          第十・六条
  1 いずれの国も、署名の時又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の時に、第四・七条、第五・一条から第五・三条まで、第六・三条及び第八・四条のうち一又は二以上の規定について、その全部又は一部を適用しない権利を留保する旨を宣言することができる。その他のいかなる留保も、付することができない。
  2 1の規定に基づいて留保を付した締約国は、寄託者に宛てた通告によりその全部又は一部を撤回することができる。撤回は、寄託者が通告を受領した日に効力を生ずる。
  3 この規約の規定について留保を付した締約国は、他の締約国に対し、当該規定の適用を要求することができない。ただし、留保が部分的な又は条件付のものである場合には、留保を付した締約国は、自国が受け入れている限りにおいて、当該規定の適用を要求することができる。
          第十・七条
  1 この規約の改正は、締約国の三分の二以上の多数による議決で、委員会によって採択される。採択された改正は、この規約の議定書に組み入れられる。当該議定書は、その効力発生のための方法(いかなる場合にも、当該議定書に拘束されることについての締約国による同意の表明を求める。)について明記する。
  2 第三章については、1に定める手続によるいかなる改正も行うことができない。
  3 改正のための提案については、寄託者に通報するものとし、寄託者は、委員会の会合の遅くとも三箇月前に締約国に当該提案を送付する。寄託者は、また、当該提案をユネスコの執行委員会に通報する。
          第十・八条
    寄託者は、この規約の締約国及び他のユネスコ加盟国に対し、次の事項を通報する。
    (a) 第十・一条2の規定に従って行われる署名
    (b) 第十・一条2の規定に従って行われる批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託
    (c) 第十・二条の規定によるこの規約の効力発生の日
    (d) 第十・六条の規定に従って付される留保及び同条の規定に従って行われるその撤回
    (e) 第十・五条の規定に従って行われるこの規約の廃棄
    (f) 第十・四条の規定に従って行われる宣言
    (g) 前条の規定に従って行われる提案
    (h) 第二・二条の規定に従って行われる権限のある承認当局についての通報
    (i) この規約に関連して行われるその他の行為、通告又は通報
 
    以上の証拠として、下名の代表者は、正当に委任を受けてこの規約に署名した。
   
    二千十一年十一月二十六日に東京で、ひとしく正文である中国語、英語及びロシア語により作成した。原本は、国際連合教育科学文化機関に寄託するものとし、その認証謄本は、第十・一条に規定する全ての国及び国際連合事務局に送付する。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課国際企画室

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(高等教育局高等教育企画課国際企画室)