平成23年3月
先導的情報通信人材育成推進委員会
「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」は、大学間及び産学の壁を越えて潜在力を結集し、教育内容・体制を強化することにより、専門的スキルを有するとともに、社会情勢の変化等に先見性をもって対処できる世界最高水準のIT人材を育成するための教育拠点の形成を支援するプログラムである。
評価は、補助事業の目的が十分達成されるよう、専門家や有識者により教育プロジェクトの進捗状況や成果等を確認し、適切な助言を行うことで、補助事業の効果的で効率的な推進に資することを目的に、評価要項に基づいて行うこととし、プロジェクト開始から2年経過後に中間評価、補助期間終了後に最終評価をそれぞれ行うこととしている。
平成22年度については、補助期間が終了した平成18年度採択のソフトウェア分野における高度IT人材育成を目的とした6拠点について、実績報告書の提出を受け、書面評価を実施するとともに、全ての拠点に対してヒアリングを行い、実施状況や成果等を確認し、当初の目的を達成できたか否かについて評価を行った。
各拠点においては、複数の大学・企業との連携による層の厚い産学連携教育体制が構築されるとともに、それぞれの特徴を生かした、個性的で実践的な教育カリキュラム、教材、教育方法等が開発され、学生のスキル向上等の教育効果も確認されているなど、高度IT人材育成に関してこれまでに類例のない教育拠点が形成された。
具体的な取組としては、教育カリキュラムについては、ITに関わる最新動向や最新技術等を扱う産業界出身の講師陣によるオムニバス講義や、企業の実問題を扱い、実際の顧客に対する「業務分析」から「設計」、「製造」、「テスト」まで一連のソフトウェア開発プロセスを学ぶチーム演習科目、企業におけるプロジェクトの一員として、システム開発やソフトウェア開発に参画するインターンシップ科目など、各拠点におけるそれぞれの特色に応じて、多様な手法を用いた実践的な科目が構築されている。また、学生を海外に派遣して、ソフトウェア開発成果の発表を行うとともに、企業技術者や学生等との議論を行う研修プログラムを実施し、学生自身に国際的な実践的な場面において、自身の開発したソフトウェアが張り合えることや外国語での対応などにおいて自信をつけさせている取組も見受けられた。
教材等の作成状況については、講義スライドの蓄積に加え、ビデオ教材や講義ノートの作成なども確認でき、本補助事業の成果が形になって現れていたと判断できる。
また、学生の知識・スキルや、自主性、積極性、幅広い思考能力といった点の向上など、教育効果が得られていることも確認しながらプロジェクトが進められており、IT分野の知識やパーソナルスキル等を定量的に測定できるスキル診断ツールの開発等を行った拠点もあった。
さらに、教員の教育力の向上のため、さまざまなFD活動が行われており、学内・連携大学はもとより、企業関係者、学生なども交えた授業計画会議など、関係者が意識を共有して教育を改善していくような取組を進めた拠点も見受けられた。
以上のことから、本事業が目指した世界最高水準のIT人材を育成するための教育拠点の形成という目標に向けて着実に前進していると判断された。なお、育成された学生の受入れ企業の担当者からのアンケートにおいても、積極性・主体性、問題意識、実行力、プログラミング力、論理的思考力、ドキュメント作成力といった観点で高い優秀性が示され、今後、ますます高度化するIT分野において、リーダーとして切り開くことができる能力が身についていることが確認できた。また、大学を越えた人材育成という点でも各大学のヒアリング等を通じて大きな成果が得られていると考えられた。実際、学生に対するアンケート調査においても、コミュニケーション能力やチームワーク力の育成といった点で多くの学生が本事業のプロジェクトが優れていると回答している。
しかしながら、本事業において形成された拠点における人材の輩出は年間200名程度であり、産業界が求めるボリュームには不足している。したがって、今後の課題は、各拠点の取組をさらに発展させながら、その成果の他大学等への共有化を進め、より多くの人材育成につなげていくという点であると考えられる。
上述の趣旨を踏まえ、各拠点は、引き続き我が国のIT分野の産学連携教育のリーダーとして他大学等へ成果の普及に努めるとともに、文部科学省においては、今後とも各大学が必要とする支援等に努めるよう要請する。
拠点別最終評価結果
大学名 |
筑波大学(申請大学)、電気通信大学、東京理科大学 |
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設置形態(申請大学) |
国立 |
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教育プロジェクト |
高度IT人材育成のための実践的ソフトウェア開発専修プログラム |
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学長の氏名(申請大学) |
山田 信博 |
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取組代表者 |
所属部局 |
システム情報工学研究科 |
【事業概要】※拠点からの「実績報告書(最終評価)」より抜粋 |
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本プログラムは、筑波大学が電気通信大学および東京理科大学と連携し、日本経済団体連合会を窓口とする産業界との連携・協力のもと、実践的なソフトウェア開発に重点をおいて、組み込みソフト系とエンタープライズ系における世界最高水準の人材育成拠点形成を目指すものである。これら2つの分野において、企業のソフトウェア開発分野の指導者的な技術者として、国際競争に貢献できる世界最高水準の人材育成を実践的かつ効果的に実施する。 |
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【先導的情報通信人材育成推進委員会による所見】 |
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日本経済団体連合会からの多大な支援を得て、産学連携が十分に機能した教育拠点が形成されており、産業界が求める実践的なIT人材の育成が行われている。 |
大学名 |
東京大学(申請大学)、東京工業大学、国立情報学研究所 |
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設置形態(申請大学) |
国立 |
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教育プロジェクト |
情報理工実践プログラム |
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学長の氏名(申請大学) |
濱田 純一 |
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取組代表者 |
所属部局 |
情報理工学系研究科 |
【事業概要】※拠点からの「実績報告書(最終評価)」より抜粋 |
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本プログラムは、東京大学情報理工学研究科、東京工業大学情報理工学研究科、国立情報学研究所が連携し、産業界の協力を得て先導的ITスペシャリストを育成することを目的とする。先導的ITスペシャリストとは、社会を先導するような技術創造のできる技術創造人材(ITクリエータ)と、ソフトウェア開発技術の体系的知識をもちソフトウェア開発全般を俯瞰して開発過程を設計することのできる開発設計人材(ITアーキテクト)の能力を併せ持ち、実践力を持つ人材である。情報理工実践プログラムは、極めて優れた先導的ITスペシャリストを育成するため、教育カリキュラム・教育体制の質的向上と永続化を目的としている。 |
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【先導的情報通信人材育成推進委員会による所見】 |
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社会へ大きく波及するキラーアプリケーションを、企画から開発まで行うことができる人材を具体的な人材像として、基礎力、開発力、創造力の三本柱を養成する3つのコースからなる“三位一体の教育方法”を構築し、学生の実践的創造力を涵養することにより、例えば、特許を取得し、ベンチャー企業を起業した修了生も複数輩出できているなど、世界に通用する学生が育成されている。 |
大学名 |
名古屋大学(申請大学)、南山大学、愛知県立大学、静岡大学 |
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設置形態(申請大学) |
国立 |
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教育プロジェクト |
OJLによる最先端技術適応能力を持つIT人材育成拠点の形成 |
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学長の氏名(申請大学) |
濵口 道成 |
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取組代表者 |
所属部局 |
名古屋大学大学院情報科学研究科 |
【事業概要】※拠点からの「実績報告書(最終評価)」より抜粋 |
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本プロジェクトの目的は、計算機科学及び情報通信の基礎の上にソフトウェア工学を系統的に修め、最先端ソフトウェア技術に柔軟に適応し、その応用及び技能への転化を可能にする先導的IT人材を教育するための拠点を形成することにある。 |
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【先導的情報通信人材育成推進委員会による所見】 |
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近隣の国公私立大学が強く連携し、「メタ技術」というコンセプトの下でカリキュラムを構築するとともに、PBLとOJTの融合概念として独自に考案したOJLにより、メタ技術の展開力を涵養するというアプローチは、時代の要請に合った取組として評価できる。 |
大学名 |
大阪大学(申請大学)、大阪工業大学、京都大学、高知工科大学、神戸大学、奈良先端科学技術大学院大学、兵庫県立大学、立命館大学、和歌山大学 |
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設置形態(申請大学) |
国立 |
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教育プロジェクト |
高度なソフトウェア技術者育成と実プロジェクト教材開発を実現する融合連携専攻の形成(IT Spiral) |
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学長の氏名(申請大学) |
鷲田 清一 |
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取組代表者 |
所属部局 |
大学院情報科学研究科 |
【事業概要】※拠点からの「実績報告書(最終評価)」より抜粋 |
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本プロジェクトは、世界最高水準のIT人材として求められる専門的スキルを、ソフトウェア工学に関する最新の技術から、現在標準的に用いられている実践的な技術まで幅広く修得し、それらを活用して活躍できる能力と考え、そのような能力を備えた高度なソフトウェア技術者育成を目標とした。その目標を実現するために、実践的なソフトウェア構築技術を有する民間企業4 社の専門家群と、ソフトウェア工学の分野において最新の研究を進めている関西圏の9大学情報系研究科に分散している該当分野の卓越した専門家群の力を結集することにより、ソフトウェア工学分野で教育・修得すべき内容をより豊富にかつ体系的・実践的に教育課程に取り込んだ融合連携型専攻の構築を行った。この融合連携型専攻に属する卓越した専門家群による教育の結果、世界最高水準のソフトウェア技術者の育成が可能となった。また、重要視している実践的教育については、参画企業と協働して、教科書的例題ではなく現実の開発プロジェクトそのものを教材とすべく開発を進め、生の教材を用いた教育を実現した。 |
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【先導的情報通信人材育成推進委員会による所見】 |
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近畿から四国までの多くの大学が参加した波及効果の大きい取組により、それぞれの専門性を活かしてSWEBOK(ソフトウェア工学知識体系)を意識したカリキュラム設計や教材作成が行われたほか、異なる大学から学生を一堂に会させるPBLなど、ソフトウェア技術者育成の教育パッケージを構築したことは評価できる。 |
大学名 |
九州大学(申請大学)、九州工業大学、熊本大学、宮崎大学、福岡大学 |
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設置形態(申請大学) |
国立 |
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教育プロジェクト |
次世代情報化社会を牽引するICTアーキテクト育成プログラム |
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学長の氏名(申請大学) |
有川 節夫 |
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取組代表者 |
所属部局 |
大学院システム情報科学府 |
【事業概要】※拠点からの「実績報告書(最終評価)」より抜粋 |
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本プロジェクトでは、産学官の連携のもと、Project Based Learning(PBL)を中核とした実践科目を実施することにより、次世代情報化社会を牽引する情報通信技術(ICT)の指導的技術者を育成する。次世代情報化社会において、単なる「技術に長けた技術者」ではなく、幅広い知識と高い倫理観に裏打ちされた高い理想を持つ、真の技術的リーダーであるICTアーキテクトの素養をもった人材を育成する。 |
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【先導的情報通信人材育成推進委員会による所見】 |
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日本経済団体連合会・九州経済団体連合会等の支援を活用し、産学連携が十分に機能した教育拠点が形成されており、産業界が求める実践的な高度IT人材の育成が行われていると評価できる。 |
大学名 |
慶應義塾大学(申請大学)、早稲田大学、中央大学、情報セキュリティ大学院大学 |
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設置形態(申請大学) |
私立 |
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教育プロジェクト |
先端ITスペシャリスト育成プログラム |
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学長の氏名(申請大学) |
清家 篤 |
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取組代表者 |
所属部局 |
大学院政策・メディア研究科 |
【事業概要】※拠点からの「実績報告書(最終評価)」より抜粋 |
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本プログラムは、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科、理工学研究科、早稲田大学大学院理工学研究科、中央大学大学院理工学研究科、情報セキュリティ大学院大学、日本電信電話株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、一般社団法人Mozilla Japanとの産学NPO連携により、先端ネットワーク、大規模分散システム、革新的なIT応用システムを構築できる実践的なITスキルを備えたスペシャリストの育成を目的としている。日本の産業界では、最先端のITシステム開発をマネジメントできるスペシャリストの育成に期待が寄せられているが、本プログラムは、そのニーズに応えるエンジニアの育成だけでなく、Web2.0の次に到来するITパラダイムシフトを視野に入れて、新しい革新的なITシステムやビジネスモデルまでを創出できる先導者としてのITスペシャリストの育成にも力を注ぐものである。 |
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【先導的情報通信人材育成推進委員会による所見】 |
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連携大学間を結んだ遠隔講義システム等の教育環境が十分に整備され、教員等の限られた教育リソースを共有する仕組みが確立されている。 |
情報教育推進係
-- 登録:平成23年05月 --