OECD非公式教育大臣会合「高等教育における成果の評価」 平成20年1月11日~12日 渡海文部科学大臣 議長サマリー

和訳

 OECD国の大臣が高等教育における成果について非公式に議論するための会合が開催された。冒頭の講演で、資生堂の池田守男氏は、21世紀において社会が高等教育機関や制度に対してもつ多様な期待やOECD諸国がその期待に応える必要性について強調した。OECDのアート・デ・ゲウス事務次長は、経済成長の原動力としての高等教育の役割のさらなる重要性や、高等教育を評価し発展させ知識社会のニーズに応えるためのよりよい方策が強くもとめられていることについて述べた。私は、高等教育政策が量的側面のみでなく質的側面にもより焦点をあてるための改革を進める上でのまたとない機会が我々の前に広がっていることについて強調した。

 議論の中で、我々は

  • 基礎研究、技術移転、文化の保存と発信、若い人やそう若くない人の教育、広い社会との関わりといった成果が、効率的に、公平性をもって、高い水準で生み出されることが高等教育に求められており、政府その他の関係者はますますこの課題に対応するための手だてとして、評価をみていることに留意した。
  • 自己評価、ピア・レビュー及び第三者評価を通じて教育研究の質を評価に関する各国の経験について、また評価による恩恵を最大化する方策について意見交換するとともに、イノベーションや学習といった概念を評価するにあたって課題があることも確認した。
    追加の財政支援など、評価結果を高等教育機関へのインセンティブ付与に関連づける取組は質の保証・向上や機関間の競争促進に非常に役立つ可能性があるが、同時に国内における格差の拡大につながるおそれもあり、低い評価を受けた機関の改善を促す政策課題があることについて合意した。
  • 高等教育機関の成果の評価の基礎となる情報を改善する重要性や学生の志向性や地域の労働市場の状況、機関の使命、入学者の構成について考慮する必要性について確認した。
  • ベルリン原則はランキングの実施・作成に関する枠組となりうるものであり、これを歓迎するが、国際ランキングも含めたランキングは、その基礎となっている情報が有効でなければ、ランキング自体も有効なものとはならないこと、高等教育機関の行動をゆがめる可能性があることについて留意した。
  • 機関の直接的な業績成果として研究成果を評価することは教育成果の評価に較べて問題点が少ないことや、教育成果の評価には卒業(修了)生の就職や生活状況といった側面の成果が含まれていることが理想的であることについて合意したが、現在のランキングが研究成果を偏重していることが教育における業績改善意欲をそぐ可能性があることについて議論した。
  • 評価は機関や個人に対する影響があってはじめて効果的なものとなるが、潜在的な学生や雇用者にとって重要な問題であるため、政府その他関係者は、正確で時宜を得た成果に関する情報を提供し公表するよう努め、推進すべきことについて合意した。こうした環境整備は、公式の評価機関はもとより、メディアその他の観測者による高等教育機関の評価・ランキングの質の向上に資するものになりうることに留意した。
  • 教育成果の評価が高等教育の提供における画一化を進め、目的・使命、機関構造の多様性を阻害する可能性について議論し、高等教育の評価は成果の多面性を評価するものでなければならないことについて合意した。
  • 学習成果の評価に係る有効で信頼性のある取組の重要性が強調され、アカウンタビリティの向上や、政府や高等教育機関、質保証機関による学習成果の評価方法の改善に資するための、学習成果の評価に関する国際的な検討の可能性を探るOECDの取組(フィ-ジビリティ・スタディ)を歓迎した。しかし、潜在的なメリット・デメリットについてさらなる議論が必要であることに留意した。フィ-ジビリティ・スタディは学習成果の全ての側面を評価できるものではないが、歴史的経緯や言語、文化さらには国ごとに異なるカリキュラム、課程年限や進学率の差に留意する必要があることを提言した。
  • 本取組過程の透明性及び高等教育機関や関係機関の関与を確保し、フィージビリティ・スタディの概念や成功のための条件、取組の有効性に関する評価方法について明らかにする必要性が強調された。
  • フィージビリティ・スタディの範囲、参加機関・国の数、対象専攻分野、費用についての詳細に関する情報提供をもとめた。
  • フィージビリティ・スタディの手法を確立するため、現在、評価手法としてどのようなものがあるか把握する必要性をみとめた。
  • フィージビリティ・スタディの結果をもって、この後の取組について各国は意志決定することに留意した。

 有馬朗人元文部大臣、小宮山宏東京大学総長、マーシャル・スミス・ウィリアム・アンド・フロラ・ヒューレット財団ディレクターに対して、我々の議論への貴重な貢献について感謝したい。私の国での改革の重要な参考となる意見交換に寛大、寛容に貢献してくださった参加大臣にも感謝したい。他の大臣にとってもこの意見交換が同様に意義深いものであったことを望む。

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