本研究会は文部科学省として取り組むべき研究開発領域に関する検討を行う場であるが、政府においては、関係省庁で以下のような取組みや検討が行われてきており、これらの取組みや検討を踏まえ、関係省庁の取組みの連携協力のための体制を整えるとともに、その中に文部科学省の研究開発を位置付け、本研究開発に対して、例えば、探知・処理技術の開発に有用な先端的研究成果の提供、研究開発の上で必要となる実証試験や評価の実施に必要な協力等が得られることが重要である。
防衛庁では、前述のとおり、自衛隊の運用場面(激しい戦闘状況下)における効率性等を追求した地雷の探知・除去に関する研究開発を行ってきている。
その過程で蓄積された各種の要素技術は、人道的な観点からの対人地雷等の探知・除去のための技術と共通する部分も多く、また、本研究会の検討対象である研究開発領域の絞込みの評価軸の一つに「早期に役立つ技術」という点を据えていることをも踏まえれば、防衛庁における先端的な研究成果を可能な限り本研究開発に活用できるようにするなどの、柔軟な対応が望まれる。
また、地雷探知・除去という特殊な分野に係る研究開発を進めるに当たっては、一定の条件を備えた実証フィールドの確保等が必要になることも考えられるが、その場合についても、上記と同様、可能な限り防衛庁から協力を得られることが望ましい。
我が国は、1997年に特定通常兵器使用禁止制限条約の地雷等に関する改定議定書、1998年に対人地雷禁止条約を締結した他、「犠牲者ゼロ・プログラム」を提唱し、普遍的かつ実効的な対人地雷の禁止の実現と地雷除去・犠牲者支援の強化とを車の両輪とする包括的なアプローチをとることが不可欠との考えを表明、その推進に積極的に取り組んでいる。また、アフガニスタンに対しては、復興の前提となる安全確保のため、緊急に必要な機材の整備、除去事業への支援、犠牲者支援計画への協力を行うとともに、関係省庁とも協力しつつ地雷除去技術の開発等も進めていく。
我が国産業における地雷探知・除去機器の開発や現地導入の実績と産業技術総合研究所等におけるこれまでの関連技術の研究開発を連携させ、既にある産業技術及び機器をベースとした小型化やモジュール化等を念頭に置いた、現地仕様へのチューニングを短期間で即効的に行う研究開発及び実証の実施のあり方について検討を進めているところである。
研究開発に当たっては、現地における実証試験を行うための試作機開発までを目標とする。
現地における技術実証の前の段階においても、国内のテストフィールドにおいて、性能評価、安全性評価等の試験を行うことが必要になることが考えられる。
現地における技術実証については、国際機関、地雷被埋設国、地雷処理NGO等による実施が必要であり、円滑な技術実証の実施の観点からは、研究開発段階から技術実証の実施を担う組織を関与させていくことが適当である。
研究開発実施体制は、研究開発の性格を踏まえた最適な体制にすべきである。
対人地雷の探知・除去技術の研究目標は、
この2つのフェーズの研究が密接に連携しながら実施されることが必要である。
(2‐1)の前提条件の下で、対人地雷の探知・除去技術に関する研究開発実施体制の要件としては以下のとおりである。
対人地雷の探知・除去技術の有する公共技術的な性格とともに、アフガニスタン政府や国際機関との国際協力の必要性を踏まえ、国(文部科学省)の政策に基づき、能力を有する公的機関により取り組むことが求められる。即ち、責任ある公的機関のプロジェクトとして、目的指向的かつ集中的な研究開発の実施がなされる必要がある。
基礎的な研究成果を発展させ、試作機のレベルに至るまで、一貫して研究開発を進めることが求められる。このような多様な研究フェーズに取り組むことのできる体制が必要である。
大学、公的研究機関や産業界の広範な研究人材の中から公募等により優れた研究者や技術者を結集することができる研究開発実施体制を整えることが必要である。
一定期間で現地技術実証レベルに到達するよう工程管理を行うこと、NGOや国際機関等との連携協力を行うこと、地雷探知・除去に関する国際動向等を踏まえ適宜プロジェクトに反映すること、さらに経理面を含め研究開発の全工程について支援すること等のプロジェクト・マネジメントが適切に実施されることが必要である。
前記d)に示すようなマネジメントの実施や、現地のニーズへの適切な対応や国際協力の枠組みの下、研究開発が全体として戦略的かつ効率的に実施されるためには、研究開発活動全体を統括する者(研究統括)及び計画管理調整、関係機関調整、情報収集・分析等の技術的管理や経理的管理等を行うスタッフチームを置き、研究開発活動全体を俯瞰し総合的にマネジメントできる体制を整備する必要がある。
研究開発体制の中にニーズ側(ユーザ側)の機関の者をアドバイザリスタッフ等として評価作業等に組み込んでいくことが重要である。
本プロジェクトについては、3年以内及び5年以内に現地において実証試験を行い、その後、地雷探知・除去活動に提供していくことの実効性の観点から外務省の協力及び目的達成の技術的評価のために防衛庁の協力、並びに研究開発の連携を図る観点から経済産業省の協力が不可欠である。また、本研究開発上必須の、現地の埋設地雷の状況や、土壌、地形等に関する調査については、外務省の主導の下、実施され、必要な情報等が入手できることが極めて重要である。
科学技術・学術政策局基盤政策課
-- 登録:平成21年以前 --