2.各論 (8)中核的研究拠点(COE)育成

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昆虫機能利用研究:昆虫機能を利用した新材料の創出に関する研究

(研究期間:平成8年度~17年度)
研究代表者 竹田  敏  (独立行政法人農業生物資源研究所昆虫新素材開発研究グループ長)
研究機関 独立行政法人農業生物資源研究所動物生命科学研究所
研究課題の概要
  昆虫特有の生体機能に着目し、その代謝や遺伝子機能などをゲノム解析と並行して分子レベルで解析する。また、有用生体素材、生体機能等の特性解明と機能模倣を通じて、化学修飾、高次構造の変換など分子改変による利用技術の開発を図る。さらには有用物質の効率的大量生産システムを開発することによって、これまでにない機能を持つ新生物材料を創出する。
(1) 総評
  調整費によるCOE化のための措置が独立行政法人農業生物資源研究所動物生命科学研究所(旧農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所)全体の活性化につながっており、また調整費充当研究を核として基礎研究を中心に優れた成果が出ていることから、COE化を目指すのに極めて優れた研究であるといえる。
  今後のCOE化については、以下1及び2を踏まえ、研究内容・体制を一部見直して継続すべきである。
1 基礎研究の成果を用いた応用研究面でのさらなる努力やそのための組織改革・強化
2 人材の思いきった登用や日本のみならず世界への本研究所の開放
(2) 評価結果
1 COE化対象領域における研究マネージメント
    国際研究集会への若手研究者の派遣や、海外の実力のある研究者の招聘によって、優秀な人材特に若手研究者や国際的リーダーの育成に意欲的に取り組んでおり、その結果30歳代前半の若手研究者が大きく成長し、研究者の意識改革も進んでいる。
  COE化の開始後研究基盤のより一層の強化が図られているが、3年目評価後も昆虫免疫実験棟の新設等、研究施設の適切な整備がなされている。
  開放性・流動性の確保の点では、外国人研究者の積極的な招聘や民間・大学との共同研究などかなり努力はなされているものの、人材の思いきった登用や本研究所の世界へのさらなる開放(国際的な広い交流)が求められる。
  評価機能の充実については、年1回の機関評価委員会、3、4ヶ月毎のサブリーダー会議、年度末成績検討会への国内評価委員1名の参加等、努力がなされているといえる。ただし、今後は応用化の視点からみた評価システムの構築も必要である。
  研究運営の弾力化については、サブリーダー会議やCOE事務局が十分機能している。また研究総括責任者の機動的な業務の遂行がなされているといえる。今後は人材配置の一層の弾力化が望まれる。
  国際科学誌への掲載が顕著に増えていることから、研究成果の積極的な発信がなされているといえる。このことは他の生命科学領域への昆虫研究の広がりを示すものでもある。また、ニュースレター等の一般的な広報誌の充実、国際シンポジウム開催など、その他の研究成果の発信も活発である。
  全体としては、COE化を進める上で良好な研究環境が整備されており、その取り組みは極めて高く評価される。
2 COE化対象領域における研究成果
    植物(イボタ)と昆虫(イボタガ)の攻防を担う化学物質の機能の解明、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス遺伝子の新しい翻訳開始機構の発見をはじめ基礎研究を中心に世界レベルの優れた成果が得られている。ただし、今後応用面でインパクトの大きい成果を出していくため、応用研究面でもさらに努力することが望まれる。
3 調整費充当研究はCOE化対象領域における位置付け
     COE化対象領域において発信される優れた論文や特許出願等の研究成果、国際共同研究の展開、民間・大学等の共同研究の展開等については、いずれも調整費充当研究が主体となっているものであって、調整費充当研究が核となって連携が図られているといえ、極めて高く評価される。今後応用化への一層の展開を指向するには、これまで調整費充当領域で行われてきた研究を中心としつつ、他の研究とのより緊密な連携が求められる。
4 COE化の推進の機関に対する影響
     COE化対象領域における論文の質の向上、外部研究者の参画、研究開発マネージメント等は、本研究所全体の活性化につながっており、極めて高く評価される。
5 所管省庁の積極的な指導、支援
  昆虫免疫実験棟をはじめとする研究施設の新設・整備、研究総括責任者の機動的業務遂行の組織面からの支援、中間評価に対応した人的強化等、期待された取り組みが行われたものといえる。
6 3年目評価の結果の反映
     3年目評価において指摘された事項について、予算面及び人的配置面で適切に対処されており極めて高く評価できる。
7 今後の取り組み方針
     3つのサブテーマを置き、課題の重点化を図りながら研究を行い、今まで特許化された技術の実用化を進めていく方針とされている。この方針については今までのプロジェクトの展開を踏まえた意欲的な取り組みであり、高く評価される。しかし、今まで特許化された多くの技術の実用化を図るのであれば、企業との共同研究推進体制の整備、研究戦略や評価システムの検討等、応用に向けた組織改革・強化が必要である。

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新情報処理パラダイムに基づく技術分野: 大域情報処理技術

(研究期間:平成8年度~17年度)
研究代表者 大蒔  和仁  (独立行政法人産業技術総合研究所情報処理研究部門長)
研究機関 独立行政法人産業技術総合研究所
研究課題の概要
  巨大なネットワーク上につながれた多様な計算機、多様な利用者および多様なデータをスムーズに接続するための技術を開発することを目標とする。具体的には、世界規模のネットワークをセキュリティを確保しつつシームレスに接続するためのソフトウェアやハードウェアの技術開発、及び分散協調ソフトウェアアーキテクチャーの開発とそうしたソフトウェアが正しく動作することを保証するための理論研究を行う。
(1) 総評
  本研究は、世界規模のネットワークコンピューティングインフラの構築(GRID(Ninf))、多くの言語・多くの文字を計算機で自由に扱うためのソフトウェア(Mule)の開発、及びマルチエージェント技術における評価のための国際的ベンチマークソフトウェア(サッカーサーバー)の開発については、世界的に重要な成果を上げており高く評価できることから、COE化を目指した優れた研究であると評価される。今後は、テーマの絞り込みを行うなど研究(計画)内容を一部見直して継続すべきである。
(2) 評価結果
1 COE化対象領域における研究マネジメント
    技術移転やリエゾンを通じた産業界との連携強化、および機関評価委員に外国人を加えた国際的な評価体制を整備するなど、研究マネージメントに関しては一層の取組みの強化が必要である。
2 COE化対象領域における研究成果
    世界規模のネットワークコンピューティングインフラの構築(GRID(Ninf))、多くの言語・多くの文字を計算機で自由に扱うためのソフトウェア(Mule)の開発、及びマルチエージェント技術における評価のための国際的ベンチマークソフトウェア(サッカーサーバー)の開発については、世界レベルの優れた成果が得られたと評価できる。
3 調整費充当研究はCOE化対象領域における位置付け
    調整費充当研究は、昨今のインターネット社会を支えるソフトウェア技術、ミドルウェア・ハードウェア技術、理論開発などの基盤技術に係るものであり、それぞれ世界的に重要な成果を上げ、自己努力領域研究に応用されていることから、調整費充当研究が核となって他の研究領域との連携が図られているといえ、高く評価できる。
4 COE化の推進の機関に対する影響
    本COE育成プログラムにより、情報処理技術(特にインターネットに関わるソフトウェア・ミドルウェア)に関する研究を行う公的研究機関として、特にオープンソースソフトウェアの拠点、ネットワークコンピューティングの拠点として海外も含め広く外部に認知されており、このことが概ね機関全体の活性化にもつながっているといえる。
5 所管省庁の積極的な指導、支援
    ミレニアム予算や補正予算等、COE以外の予算を投入して指導・支援していること等、経済産業省により期待された取り組みが行われたものといえる。
6 3年目評価の結果の反映
    実用に近い形で実証できるテーマ8件程度に絞り研究を推進するなど、3年目評価の結果を適切に反映しており、高く評価できる。
7 今後の取り組み方針
     取り組み方針が示されているが、TLOを通じた成果の技術移転やリエゾンを通じた産業界のニーズ把握、およびCOE化に向けたテーマの絞り込みなどのさらなる取り組みの強化が求められる。


 

-- 登録:平成21年以前 --