84.ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発(新規)

平成21年度要求額:1,000百万円
(平成20年度予算額:−百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 ナノテクノロジーを活用した環境技術による社会システムを10年で構築するためのロードマップを提示することを条件とし、大学や研究開発独立行政法人が産業界と連携して研究拠点単位で申請することを必須条件として、研究課題を公募する。
 研究拠点に求める機能としては、先端的な計測施設・装置等が共用化されていること、拠点の核となる機関が知と人材育成の機能を担うこと、出口意識の強い課題設定と産学連携の強化のため産業界のメンバーが拠点運営に参画すること、強力なリーダーシップを持つ研究者の下に人材が集中すること、等が求められる。研究拠点は、提案された社会システムの有用性や研究の達成目標等を審査の上、2件程度採択することを予定している。

2.指標と目標

【指標】

 各研究拠点における成果の指標として、定量的には論文数、特許出願数等、質的には論文被引用数、特許実施許諾数等を設定し、プレス発表やシンポジウムなどの成果公開の実績、企業との応用研究に発展した技術の量や質、関連研究の外部資金獲得額等を複合的に勘案して、課題提案の際の目標に対する達成率を評価する。

【目標】

 各課題について、応募時にロードマップの提出を求め、採択時に最終・中間・年度計画と目標を定める。中間目標の達成度を文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下のナノテクノロジー・材料委員会の中間評価で判定し、またプロジェクト進捗会議を開催して年度毎の目標達成状況をPD、POおよびナノテクノロジー・材料開発推進室において評価する。
 例えば、次世代太陽電池の発電効率の抜本的な向上により、現状の一次エネルギー発電による電気料金に匹敵する安価な太陽電池や、超低消費電力のLED等を複合的に組み合わせることで、太陽光のみで自活できる住宅を作ったり、白金を使用しない燃料電池で置き換えたりすることにより、市販が可能な燃料電池車の実用化を目指す。

【効果の把握手法】

 文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下のナノテクノロジー・材料委員会による評価の他、交付対象施設及び施設設置者に対する現地調査を実施する。
 また、評価の結果、進捗が思わしくない場合は、研究実施者の交代や契約からの除外等を行うなど、厳格な審査を実施する予定。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 これまで環境問題を抜本的に解決する環境技術がなく、これには分子・原子レベルで物質を制御できるナノテクノロジーの活用や、要素技術に収れんせず、社会システムの構築までを見越した技術開発を、産学連携で推進することが極めて重要である。この問題意識は、「ナノテクノロジーを活用した環境技術のあり方に関する検討会 報告書」においても言及されており、従来の目的志向型のプロジェクト研究に加え、社会システムの革新を念頭においた産学連携の体制を構築することで、基礎から応用までが一体となった研究拠点により、強力に研究を推進する必要がある。

2.有効性の観点

 我が国は、これまでのナノテクノロジー研究によって培われた高いポテンシャルを有しており、また、環境・エネルギー技術についても世界をリードする技術を有している。これらを融合することにより、例えば太陽光のみで自活できる住宅用電力供給システムや、省エネ自動車、高効率大規模発電プラントを構築することができると見込まれる。

3.効率性の観点

アウトプット

 研究拠点が上げた研究成果で、インパクトの大きなものはウェブサイトなどの公表媒体を用いて迅速に公開し、定期的に開催するシンポジウムにおいて詳細な内容を発信する。応用段階に達した研究課題は、企業などとの連携研究に推移させてさらに研究を加速させ、事業全体の効率化を図る。

事業スキームの効率性

 各研究分野でトップレベルの研究者を集めたドリームチームを結成し、研究者間の連携を促進するコーディネータを配置して連携関係を構築することによって、最も高いレベルで効率的に研究開発を推進することができる。中間評価を厳格に行い、課題を厳選するとともに、研究拠点を構成する研究者を柔軟に変更する等により、効率的な運営を行う。社会システムを抜本的に変える成果を求めるので、その波及効果はインプットである5億円に比較すると大きなものになると想定される。

代替手段との比較

 京都議定書で掲げられた温暖化効果ガスの削減目標を達成するためには技術的に大きな飛躍が必要とされるが、従来の民間企業の取組だけでは実現は難しく、国際的な戦略も必要であることから、政府によるトップダウンの政策推進が最も必要な分野である。

-- 登録:平成21年以前 --