平成21年度要求額:2,400百万円
(平成20年度予算額:1,500百万円)
光科学技術及び量子ビーム技術分野の研究を推進している複数の大学及び公的研究機関等を中核として、民間企業やレーザー光等の最先端の光・量子ビームを利用した研究を実施している研究者等も参画して形成されたネットワーク型の研究開発拠点。
最先端の光の創成や、量子ビーム技術における先端的な要素技術開発を目指したネットワーク型の研究開発拠点による、次の内容を含む提案を公募により採択する。
本事業では、単に、個々の研究機関における新しい光源等や量子ビーム関連要素技術の研究開発を推進するだけではなく、既存の最先端光源等の活用(共用)から若手人材育成まで一貫して実施することにより、産学官の光科学技術・量子ビーム技術分野のポテンシャルを結集することを目指している。これにより、光科学技術・量子ビーム技術分野のみならず各重点科学技術分野における世界最先端の成果獲得や産業分野での画期的イノベーション創出に貢献する。
平成21年度には、光科学技術に関しては、特に産業界やユーザー研究者からのニーズの高い光源・計測手法等の研究開発を実施するネットワーク研究拠点を1拠点追加募集する。また、量子ビーム技術に関しては、既存施設の高度利用等から波及する利用研究へのニーズが高いこと、平成21年度からJ-PARC中性子実験装置が本格的に稼働する予定であることなどから、中性子を利用した先導的研究開発も含めて、「高度化ビーム技術開発課題」を中心に3〜4課題追加募集する。
ネットワーク型の研究拠点の構築等を通じて、光・量子科学技術分野のシーズと各重点分野や産業界のニーズとを融合した、最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発を実施するとともに、若手人材の育成を図る。
本事業において、技術面・機能面で互いに相補う特性を持つ複数の研究機関によって効果的なネットワーク研究拠点が形成され、
について、採択された研究拠点毎に研究計画等においてあらかじめ具体的な目標を設定するとともに、当該目標の達成に関しては、毎事業年度の成果報告書や適宜実施する拠点参画機関へのヒアリング調査等により把握することとしている。
具体的には、本事業の実施に当たって、光・量子科学技術分野の幅広い見識を有するプログラムディレクター(PD)及びプログラムオフィサー(PO)を配置し、その強いリーダーシップの下で、効果的ネットワーク形成のための各参画機関間の調整や必要な助言等を行うとともに、上記目標についても、PD及びPOが、論文数、特許出願数、社会経済へのインパクトなどの総合的な観点から、研究拠点毎に毎年その達成状況の確認を行うとともに、次年度の具体的な研究業務計画等にその結果を適宜反映するなど定期的に成果確認を行うこととしている。
光科学技術及び量子ビーム技術は、ナノテクノロジー・材料、情報通信、ライフサイエンス等の重点科学技術分野を先導するキーテクノロジーであり、各分野における画期的なイノベーション創出の源泉である。このような観点から、欧米はもとより中国などでも、他に先駆けて新しい光源・ビーム源を実現し、これを革新的な方法によって活用することなどのために、凌ぎを削った研究開発を戦略的に推進しているところである。
我が国においては、これまでSPring-8、JRR-3、TIARA等を利用した世界最先端の研究成果のほか、面発光型半導体素子、セラミクスレーザー素子、超伝導高周波加速空洞など光・量子ビームの要素技術においても、我が国独自開発で世界トップにたつ成果を輩出しており、光・量子科学技術分野のポテンシャルは極めて高いと言える。
一方、光・量子科学技術を戦略的・積極的に推進するための光源・ビーム源開発プロジェクト等は、国家基幹技術としてのX線自由電子レーザーの開発などの特定の領域以外はほとんど存在していないことに加えて、我が国の光産業の現状をみると、近い将来、世界市場の主流を占めると予想されている高出力半導体レーザーに関しては、現時点における需要が低いことからその開発に消極的であり、将来的な国際競争力低下が懸念されている。
今後、先端科学技術分野や産業分野において国際競争力を強化していく観点からも、全国に散在する光・量子科学技術のポテンシャルを結集し、世界をリードする次世代光源・ビーム源や計測機器、ビーム制御技術等を研究開発する必要がある。また、今後、急速に世界市場規模が拡大すると予測されている光産業などにおいて、これらの要素技術開発等は産業応用への発展も期待され、このような汎用性の高い先進的・革新的な計測技術等を応用可能性や利用可能性の広い共通基盤技術として開発する意義は極めて高い。
このため、光・量子科学技術分野において世界的にもポテンシャルの高い今、これらのポテンシャルの結集を図り、本分野を戦略的・積極的に推進することが必要である。
平成20年度には、光科学技術について2拠点、量子ビーム技術について5課題を採択・実施しているところであるが、これらに加えて、平成21年度には光科学技術について1拠点、量子ビームについて3〜4課題公募により採択する予定である。
各拠点においては、それぞれの特徴をいかして、世界をリードする最先端光源や画期的な量子ビームの利用技術、光・量子科学に係る汎用性の高い要素技術等を開発するとともに、ネットワーク研究拠点への参画機関が保有する既存光源等をネットワークに参加するユーザー研究者に提供することも行うこととなっているため、これら先端研究資源を活用した融合研究(共同研究等)が進展することも期待できる。
さらに、光科学研究拠点において実施する若手人材育成プログラムは、大学院生やポストドクター等を対象として、最先端の光源等の研究開発に参画しながら、基礎科学と産業技術応用の間が近接した当該分野の知識体系を実践的に習得する機会を提供するものであり、次世代の光科学技術を担う若手人材(大学院生やポストドクター等)にとっては自己の研究能力を研鑽・向上させる好機となるものと期待される。
本事業では、光科学技術についてはあわせて3拠点、量子ビーム技術についてはあわせて8〜9課題採択し、我が国に散在するポテンシャルを日本全体として結集する仕組みを構築することとしている。本事業では、これまで個々の機関において別々に実施されてきた光・量子科学技術分野の研究開発や若手人材育成等について、互いの強みや特性をいかした連携・協力体制の下で強力に推進することとなるため、効果的・効率的な事業スキームであると考えられる。
本事業では、新しい光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発を要素技術開発の段階から実施するだけではなく、次世代の光・量子科学技術分野を担う若手人材を育成するためのプログラム等をも策定・実施することとしており、特定の独立行政法人の事業として実施するだけでは、ネットワーク形成に限界があるものと考える。一方、委託費により本事業を実施した場合、多数の大学が主体的に参画したネットワーク形成が可能となること、産学官の多様な研究機関の参画が可能となることなど施策の広がりが大きくなる。また、委託費により公募型で本事業を実施することにより、ネットワーク研究拠点への応募に際して、各研究機関は自助努力によりネットワーク形成を進めていくことになるため、これが呼び水となり、採択拠点数以上にネットワーク形成が進展することが期待できるなど波及効果も大きい。
-- 登録:平成21年以前 --